異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第33話 私は抱き枕じゃないよ

 私が凍りつかせた部屋から出て、多少ティアとお話をしながら歩いていくと、ほんの数分でダンジョンの出口が見えてきた。

 

「なんか、ひっさしぶりにダンジョンの外に出る気がする……」

「マスター、それなら私は初めて」

「あ、そっか」

 

そんな事を話しながらダンジョンを出ると、そこには結構崩れた街並みとそれを直してる人達、眼を丸くしたギルドの受付嬢の人が待っていた。私とロイドがここに来た時の人とは別人だ。

 

「ひっ、死が……」

「ふぇ?」

「いえ、Sランク冒険者の『流星群』さんですね。その隣にいる子は貴女の関係者でしょうか?」

「そう、私はマスターの精霊」

「う〜ん、もうちょっと笑った方が良いんじゃないの?こんな感じで」

「むり」

 

ティアがあまりにも無表情だからほっぺをムニムニ引っ張ってみたんだけど、無理らしい。ご飯食べてた時みたいに笑っていれば良いと思うんだけど……ティアのほっぺプニプニしてて楽しい。

 

「むにむに……」

「ますはー、やめへ」

 

そんな事をしている私達を、受付嬢の人がなんかすっごく微笑ましいものを見る目で見てきている。

 

「そろそろ良いでしょうか?」

「え、あ、すみません」

「だから言ったのに」

 

ティアがムッとした雰囲気で言ってくる。でも仕方ないじゃん、気持ちよかったしムニムニするの楽しかったんだもん。

 

「確かあなたは治癒の魔法が使えましたよね?なら、怪我人の集まってるギルドに行ってもらえますか?」

「はーい!」

「はい」

 

リュートさん達も多分ギルドにいるだろうし、元気よく返事して私達はギルドに向かって歩いて行く。怒ってないといいなぁ…リュートさん達。

 

「それにしても、なんで街が壊れてるんだろう? ダンジョンからモンスターでも出てきたのかな?」

「気づいて、ないの?」

 

ティアが驚いた目で私を見てくる。あれ? なんか私おかしなこと言ったかな? そんな目で見られる理由なんてないと思うんだけど?

 

「何を?」

「はぁ…マスターの魔法が原因」

「へ? なんの?」

「街が壊れた原因」

「はい!?」

 

え、嘘でしょ? だって私は……そういえば流星落としたりスターライトブレイカーしたり、壊毒撒き散らしたり色々やってたや。それに、クトゥルフも少なからずドタバタしてたし。

 

「そりゃあ壊れもするか。暴れすぎたもんなぁ…」

「次からは、自重して」

「もう次なんて起きないことを祈るよ」

 

絶対人には使わないって決めてた魔法を乱発してようやく倒せたんだし、もう二度と戦ったりしたくはないかな。神格を倒せる方が異常らしいんだけども。

 

「正直、周りへの被害なんて何も考えてる余裕もなかったし、もう一回やれって言われても」

「マスター、右」

「勝てる気が…え、右?」

 

話してる最中に急にそんな事を言われたので、私はちょっと足を止めてしまった。そして右側を向こうとした瞬間、隣の道から飛び出してきた木箱と思いっきりぶつかってしまった。

 

「ふぎゅっ」

「すみません!」

 

ちょっとだけ吹き飛ばされてしまった私は、文句を言ってやろうと思って埃を払いながら立ち上がる。私にぶつかった人はどうやら少年で、右手は義手になってるみたいだった。っ、この義手って……

 

「なんだロイドか。ただいまー」

「すみません、苦情はコレを……イオリ?」

 

木箱の向こうのロイドと目が合う。なんか物凄く久しぶりに会った気がするなぁ〜なんて思っていると、ロイドが手に抱えていた木箱を取り落としてしまった。中からガラスが割れるような音がして、木箱から何かが染み出してくる。

 

「えっと、それってポーションじゃなむぐっ」

 

ポーションとかだったら一大事だから大丈夫なのか聞こうと思ったら、言い切る前に私は抱きしめられていた。それはもうがっしりと。

 

「ぷはっ、いきなり何するのさロイド!」

「本物のイオリだよな? 偽物だったり幽霊だったりしないよな!?」

「私の事をギュってしてるのに分からないとか言ったら、流石の私も怒っちゃうよ?」

こんなに密着してる状態で別人だとか言われたら、今まで私とどう接してたんだって思っちゃう。っていうか、何時まで私を抱きしめてるつもりなんだろう? そろそろ苦しくなってきたんだけど。

 

「マスターは、そう簡単には渡さない」

 

そう思った次の瞬間、私はティアに抱きつかれていた。さっきのロイドと違っていい匂いではあるんだけど……まあいいや。もしかしてティアって、心読めてたりするのかな?

 

「マスターのなら、少しは」

「まさかの事実だったというね」

 

全く、これだから神様ってやつは……もしかしたら、神様の名前の職業を大量に持ってる私も読心が出来るようになる可能性が微レ存?

 

「本物でいいんだよな……よかった……」

「おい小僧! 何やってんだ!」

 

そんなくだらない事を考えている時に、とてもホッとしている様子のロイドに大きな怒声が浴びせられる。それに私もロイドも体を縮こまらせてしまったのに、一切反応しなかったティアにはなぜか負けた気がする。

 

「全く、ポーションを全部無駄に……ふむ、再会出来たのか。よかったじゃねえか」

「はいっ!」

 

そして近くに歩いてきたおじさんに、ロイドが元気よく返事をする。やっぱりポーション入ってたんだ、あの木箱。

 

「あのあの、すみませんおじさん。ロイドがポーションダメにしちゃったのって、私とぶつかったのが理由なんです、ダメにしちゃった分のポーションなら私が出しますし回復魔法も使えるんで余り怒らないでくれませんか?」

「あぁ、元々厳しく注意するくらいしかしねえよ。ははっ……おじさんか……そうか、俺はおじさんか……」

 

おじさんの雰囲気が、目に見えて暗くなる。でもおじさん以外にいい感じの呼び方ないんだもん。おじちゃんなら良かったのかな?

 

「マスター、どっちでも変わらない」

「えぇ〜、じゃあティアも何かいい呼び方考えてよ」

「……おじちゃん」

「もうあんまり、おじちゃんおじちゃん言わないでくれ……おじちゃんの精神が持たねえよ」

 

そんな事があって、私達はおじちゃんに連れられてギルドに向かっていった。


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