がっこうぐらし!The world in confusion   作:ウィングゼロ

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chapter29

SIDE悠里

 

穴から地下へ降りて既に10分はかかっているだろうか漸く地面が見えてきて岩場から飛び降りて無事に着地する。

 

地面は瓦礫が山のように散乱して、これは多分先ほどの攻撃してきた人がやったのだろう。

 

取り合えずまだそれほど遠くには行ってないと思うから警戒して進むことにしよう。

 

いつでも放てるように弓を構えながら進もうとした矢先後ろから勢いよく着地、直ぐに振り向くとウィザードだったかしら?それに変身してる誠くんだ。

 

「悠里!一人で行くな!」

 

「ご、ごめんなさい」

 

誠くんに注意された、確かに深追いしてたかも。

 

「…まあ、ここまで来たんだし追いかけるか」

 

「そうね…まだ遠くには行ってないはずだから…気を付けないと」

 

そういえば胡桃たちに心配してるわよね…

 

「それにしても、ここは明かりついてるんだな」

 

地下施設の通路は明かりがついており、この電力は上の学校の自家発電の電力を使われているのだろう。

 

「さてと、どこに…」

 

通路を歩き始めたその時誠くん頭上から重い音が聞こえてきてわたしの目にランスを持った女の子が誠くん目掛けて降ってきた。

 

「誠くん!上!」

 

「うおっ!」

 

わたしの声に反応して上を向いた瞬間横に避けて女の子はそのまま地面にランスを突き刺す。

 

「お、女の子?」

 

髪は黄緑で青い瞳、服装などはボロボロな布一枚

 

まさか、敵の正体がまだ幼さを残すこんな女の子だったなんて思ってなかった。

 

「外した…!たあぁぁぁっ!」

 

奇襲を外されたが女の子はランスで誠くん目掛けて突きを繰り出す。

 

「ちょっと!待て!なんでこんな!」

 

「こんなって何よ!あんた達は私を殺しに来たんでしょ!?」

 

…あれ?もしかしてこれって…

 

「違う!」

 

誠くんが否定するが女の子は全く聞き入れることをしない。

 

「嘘よ!そういって殺す気なんでしょ!? 」

 

女の子はランスの柄を引っ張り伸ばすとランスが変形してガトリングに変形した。

「変型しただと!?」

 

誠くんが驚くのも束の間女の子がトリガーボタンを押すが弾が発射されることない、つまり弾切れのままだった。

 

「こうなったら!」

 

女の子が柄を押してまたランスに変わり、再度おもいっきり引っ張るとガトリングにならずに黒い怪物が出現しその生物は体が伸びて誠くんよ体に喰らいつく。

 

「誠くん!?」

 

「ぐっ!うおっ!」

 

食らいついた生物はそのまま誠くんを放り投げて壁に激突させる。

 

「く、くそ…こうなったら!」

 

誠くんはリングを指につけてベルトに翳すのだが。

 

[エラー]

 

「なっ!どうなってる!?」

 

[エラー、エラー、エラー]

 

取り乱す誠くんは再度試してみるが結果は同じでいったい何が起きたというのか

 

そんなことをしている間に怪物は元に戻りそのままガトリングに変わると先程弾切れを起こしていたはずが弾が発射されて全弾誠くんに命中する。

 

「ぐっ!!」

 

先程まで弾切れのはずなのに何故いつの間に補充したのか…

 

そういえば、指輪を使うには魔力を使うと聞いた…だが、魔力はそんなに使ってはいないのに使えなくなった…まさか…!

 

「魔力を吸いとられた!?」

 

この推測なら今の状況に辻褄が合う、今撃ってる弾は誠くんの魔力を使ってる可能性が高い。

 

「こんなんで…」

 

弾の雨を耐えている誠くんがそう、口に漏らす。

 

その姿は何故か…震えている?

 

「負けたって幸助さんたちに知られたら…め、冥王に…!ま、まけてたまるかぁ!!!」

 

負けるのが怖いのか?弾の雨を平然としながら特攻する。

 

「うそ!全然効いてない!?」

 

全く怯まないことに驚いていると遂に女の子の目の前に到達し誠くんは押さえつけよけようと手を近づけたときだった

 

「っ!?」

 

「きゃっ!」

 

足元の瓦礫に蹴躓き女の子を押し倒して転倒した。

 

「だ、だいじょ…」

 

心配して近づいてみたけど…あらあら…

 

誠くん?なんでどさくさに紛れて女の子の胸を掴んでるのかしら?

 

「え?」

 

すっとぼけた声で返す誠くん、それに対して女の子は顔を赤めている。

 

「きゃああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

悲鳴をあげて動かせる左手で誠くんの顔をおもいっきりぶん殴り吹き飛ばして壁に激突させる。

 

「こ、これは不可抗りょぐふぅ!」

 

言い訳をいってるけど直ぐ様接近した女の子のランスの突きを溝に直撃したあと形態をガトリングにして誠くんにゼロ距離で弾を射撃。

 

「死ね!この変態!!!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?!?」

 

前からガトリングでのゼロ距離射撃で後ろは壁のためにゲームのはめ技みたいな光景が繰り広げられられている。

 

「弾切れ!」

 

遂に撃ち果たしたようで弾が出てこなくなりこれで終わりだと誠くんも半分意識が朦朧としている中ほっとしていると思った矢先ガトリングからランスに切り替えて乱れ撃ちの次は乱れ突きの連続。

 

「まだまだぁ!!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?!?」

 

悲鳴をあげ続ける誠くん、本来なら助けないといけないけど今回は誠くんが悪いんだしね、見逃すことにした。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

乱れ突きの繰り出すこと10分程が過ぎたあと漸く女の子は疲れはてたのか構えを解いて荒い息を整えている。

 

壁に持たれて倒れている誠くんは変身は解除して至るところボロボロで何本か矢も刺さっている。

 

……矢のことは気にしないでね、いいわね?

 

「りーさん!」

 

ふと、声が聞こえた方向を向くと向こうからジュードくんが連れてきたのか胡桃達がやって来た。

 

「胡桃、みんなも」

 

「勝手に先走らないでくれ!本当に…心配したんだからな」

 

予想通り胡桃に怒られた、他のみんなも同じ心境の表情で見てくる。

 

「ごめんなさいね」

 

反省してみんなに謝ると話の話題は気絶してる誠くんに向けられる。

 

「さ、桜崎くん!?こんなひどい怪我を!」

 

「あ、あのさ、りーさん」

 

取り乱すめぐねえを他所に胡桃が気まずそうに私に聞いてくる。

 

「なにかしら?」

 

「誠の体に何本か矢が刺さってるんだけど…」

 

「それで?」

 

「いや…あの…」

 

「それで?」

 

「…なんでもないです」

 

聞くのを諦めた胡桃、此処は知らぬが仏というし聞かない方がいいから懸命な判断ね。

 

「あ、音姫さん」

 

「な、なに」

 

私が声をかけると直ぐに音姫さんは取り乱した声で答える。

 

「誠くんに起きたらまたOHANASIしないといけなくなりまして…」

 

「…若狭さん、その話後でじっくり聞かせてね」

 

音姫さんは先ほどの取り乱しが嘘かのように頬を笑んで私のOHANASIに賛成し、その後ろの胡桃は誠死ぬなよっと小さな声で天を仰いでいた。

 

「えっと、ところでその女の子は…誰なの?」

 

気まずい雰囲気を変えようとジュードくんが女の子について聞いてくる。

 

「っ!!」

 

女の子も気が緩んでいたのかとっさにランスを構えようとする。

 

「まって、私達は管理局じゃないのよ」

 

彼女は誠くんが来たときの私達と同じことを考えてしまっているのだ。

 

「あなたが此処で何をされていたかはわからないけど、私達はあなたに危害を加えないわ」

 

優しい物腰で女の子に接して構えたランスを構えを解いた。

 

「お疲れ…オスカー」

 

そういうもランスは消えて待機状態の腕輪に変わった。

 

「まだ、信じた訳じゃないからもし、敵だって判断したら容赦しない」

 

「ええ、わかったわ、少し話せる場所にいきましょうか…君はここ詳しい?」

 

ここにはじめて来た私よりここにいた彼女に案内してもらった方がいいと思い話を持ちかける。

 

「わかった、着いてきて」

 

話がまとまり移動することになりジュードくんが気絶している誠くんを担ぐ。

 

「もしかして、そいつも連れていくの?」

 

「え?うん、もしかしてダメなのかな?」

 

「別に」

 

誠くんを連れていくことに完全に嫌な気でいる女の子…まあ、誠くんが悪いしね

 

「誠のやつなにしたんだよ」

 

胡桃がそう呟き、私達は説明できる場所まで移動する。

 

「ここなら話せるはずよ」

 

女の子に連れられてついた場所は幾つか大型のパネルが設置しており、極めつけに大型のガラスが張られている。

 

「ここは?」

 

辺りをキョロキョロする胡桃が興味本意で聞いてみる。

 

「実験室の傍観する部屋よ」

 

女の子の口からは物騒な名前が聞こえて聞いた胡桃は勿論私達もそれを聞いて固まった。

 

「実験…って」

 

音姫さんも信じられない顔をしての女の子を見るがそんな女の子はいたって平然としている。

 

「プロジェクトDKの実験、私はそれの被験者だったの」

 

「被験者って…君、ご両親とかは?もしかして…」

 

めぐねえが女の子が被験者だったことを聞いてふと彼女の両親のことを聞いてみた。

 

「知らない…ここにいた以前の記憶は実験の時に戦闘知識を刷り込まされたときに忘れたし」

 

「それってつまり、自分のことに関してなにもわからないってこと?」

 

私の言葉に女の子は頷いた、そんなの酷すぎる。

 

「それじゃあ、ここにいた局員はどこにいったの?」

 

ジュードくんのいう通りだ、ここがつかわれていたのはまだ最近だったはずだ、それならばどこにいったか知ってるとおもったのだろう。

 

「大体一ヶ月前にウイルスがまかれただの、ここも危険だのいって転送装置でどっかにいったわ」

 

「あなたを置いて?」

 

「そうよ、失敗作だったから放っておいても餓死するだろうって言われてね」

 

「なんだよ、それ…身勝手すぎるだろ」

 

胡桃は身勝手な管理局に怒りを覚えた。勿論私もだ、無理矢理実験に使われて要らなくなったら簡単に捨てる?本当に人間の所業じゃないわ、そんなの

 

「ところでプロジェクトDKってなんことなの?」

 

ふと、音姫さんが先程から出てきたプロジェクトについて聞いてみた。

 

「どうやらウイルス兵器と同時平行で進めていたプロジェクトだったみたい」

 

答えたのは女の子ではなくジュードだった。

 

その当人は今、設置されているパネルを操作してその中にある情報を閲覧しているようだ。

 

「正式名称プロジェクトDarkKnight(ダークナイト)目的は暗黒剣の使い手を量産するのが目的だったみたい」

 

ダークナイト…暗黒騎士?

 

「おい、それってまさか」

 

胡桃も何か勘づいたのかその答えをジュードに聞いてみる。

 

「胡桃の思ってる通りだよ、月宮雄也の因子…DNAを被験者に投与し暗黒剣の使い手を増やす」

 

「そんなことを…それにいつの間に月宮くんの因子なんか…」

 

「…多分健康診断などで採取した血液なんかを使っている確率がある…けど」

 

健康診断…いつも通りやっているところから…こんな研究に使われているなんてゆうくんが知ったら落ち込むに決まってる、また管理局を許せない理由ができた。

 

「そうよ、そんなの生半可ものじゃない、投与している人達はみんな細胞なんかが出来てるから…そこに全く違う血液…DNAなんかを投与した結果反作用が起きてまた一人また一人と死んだわ…そして生き残ったのは私だけ…」

 

「……」

 

研究で死者が出ていることにみんな押し黙る。

 

「私も死ぬ気はなかった、だから残ってたこのオスカーを使ってあそこから食べ物を持って籠ってたの」

 

「そうだったのね、一人で寂しかったのね…」

 

「寂しい?」

 

私がいったことに女の子は反応する。

 

「だってこんなところで一人でずっといたんでしょ?」

 

「別に寂しいなんて思ったことはないわ」

 

「…私達と一緒に来ない?」

 

私がいった言葉は女の子を含めめぐねえたちも驚かせる。

 

「なんのつもり?」

 

「だって放っておけないもの…こんなところで一人にさせられない…それに一人より、みんなと一緒にいた方が楽しいわよ」

 

私は優しい微笑みを女の子を向けて答える。

 

女の子も少し考えた後、考えをまとまったのか答えを口にした。

 

「わ、わかったわ、そこまでいうなら着いていってあげる」

 

「ふふ、それじゃあ行きましょ?『優花』ちゃん」

 

「優花?」

 

私が名前を口にすると女の子は不思議がってその名前を口にした。

 

「だって名前がないなんて不便でしょ?優しい花って書いて優花…かわいい名前でしょ?」

 

「優花……私の名前」

 

自分の名前を復唱する優花ちゃん、その顔は嬉しそうな顔をしていた。

 

「気に入ってくれたみたいね」

 

「べ、別に!でも、名前がなかったから…その…ありがとう…」

 

小さな声でお礼を言われた…素直じゃないわね

 

「それじゃあ若狭さんは見つかったことだし地上に戻りましょうか」

 

一件落着となったことでめぐねえが地上に戻ろうと提案し私達は頷く。

「これで、地下施設に回っていた電力を地上に回せるしここにあるデータは全て移しました、もうここにいる意味はないよ」

 

ジュードくんもやることは全てやったようで、胡桃達が来た方法で地上に戻った。

 

 

そして校長室のエレベーターで地上に戻ってきた私達はもうくたくたでもう一眠りした方がいいかしらと思っていたけど外を見ると夕日が昇りそうになっていた。

 

「もしかして…もう、朝なのかしら」

 

「みたいだな、地下にいるとわからなかった」

 

そうだねっと由紀ちゃんも同意していると隣にいる優花ちゃんがその夕日を見てぼそりと呟く。

 

「綺麗…」

 

「そっか、優花ちゃん、ずっと地下にいたわけだから見たことないんだったわね」

 

そういって優花ちゃんの頭を撫でるとむすっとした顔で私を見る。

 

「ちょっ!私を子供扱いするな!私はもう一人前なんだから!」

 

「はいはい」

 

優花ちゃんの威張るところを見て私はクスリと微笑む

 

どたばたしてたけど今日も1日頑張らなきゃね!

 

 

 

余談

 

「さてと、またじっくりとOHANASIしましょうか」

 

「…はい」

 

それから目覚めた誠くんを音姫さんと一緒に説教したのは言うまでもない。


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