すみませんm(_ _)m
受験ややわ……
貴意side
むむっ。恋って、とっても複雑なんだネ。改めて思い知ったよ。
7月中旬の、べっとりとした空気を歩きながら感じているオレは、実にCOOLだ。暑さに負けないように、涼しい格好の制服姿をしながら、ただいま通学路を一人であるいている。ブレザーのボタンを全部開けて、Yシャツの第一ボタンもあける。まさにカッコいい男とはオレのことだな。
正直、オレはカッコいい顔をしていると自信がある。前に自分の部屋で鏡を見ていたのだが、それはもう……めちゃくちゃカッコよすぎて惚れるところだったほどだ…。
しかし、こんな完璧副会長でも、ただひとつだけ、どうしてもできないことがある。それは…
「あ、おはよー貴意くん。」
突然背後から思い人の声が聞こえたので、ビクリと肩が動いた。ゆっくりと首を動かし振りかえるオレは、まるで錆び付いた人形が動くみたいにギコチナイ。
「お…おはよう……内井さん。」
いつもと違って突然現れて緊張しているのか、自然と声が震えてしまう。顔は熱くなって、身体中から汗が噴き出して止まらない。視界がグルグルしはじめて、内井さんが二人にみえだした。
「どうしたの貴意くん? もしかして具合が悪いの?」
「そそそそ、そんなわけないよ。気のせい気のせい。オレは…大丈夫だから。」
昨日も練習しまくった完璧スマイルで今日こそは…落とす!!!
言い終わった直後に、会心の笑顔を内井さんに向けると、内井さんはホッとしたのか、優しく微笑んだ。
「なら保健室に行かなくても大丈夫だね。よかったよかった!」
「なっ!? …う、うん。…そう、だね…………。」
クソーーーーー!!!!!!!
イベントを逃しちまったぁあー!!!!!!
オレは心のなかでとにかく叫んだ。さっきの行動をとって後悔しながら、頭を抱える。
保健室に行くだとっ!? それはもう落ちたも同然!! 男のオレが覚醒して、一気に畳み掛けて…そして、見事にハッピーエンドになる、そうはならなくとも好感度が一気に急上昇する大大イベントをオレは逃しちまったぁあー!!
ベットで弱ってるオレを見て、内井さんはときめき、オレの顔とか体をさわりはじめて、そしてオレが寝たフリをしながら内井さんの腕を掴んで「も、萌那…好き…だよ。」って呟いたら一瞬でノックアウトだったのにぃー!!
「オレのバカ…」
つい、口に出てしまうのは、しかたなのない癖である。
気づかれない程度にため息を一つ着いて、オレは気をとりなおすことにした。
なんにせ、今日は偶然同じ時間帯での登校なんだぞ。こんなのなかなかない。まるで運命の神様がオレの頑張りを称えるかのように、こんな奇跡を起こしてくれたのだ。これは有効に使わなくては…!!
そんなことで頭をいっぱいにしていると、ふと、内井さんの髪の毛に目がいった。
とてもきれいな髪の毛で、一本一本が艶やかで、お団子で結んでいるのに、柔らかい印象をオレに植え付けた。とても綺麗で上品な髪の毛なのに、内井さんは髪の毛を下ろそうとしない。体育の水泳の時は、下ろしているものの、上がるとすぐさまお団子になおしてしまう。だから、内井さんのストレートヘアーはレア物なのだ。噂では、好きな人にしかストレートヘアーを見せないとか…
髪の毛を見たあとに、自然と内井さんの横顔を見てしまった。首が勝手に動いて、視線が内井さんの綺麗な横顔に釘付けにされてしまう。
整いすぎた綺麗な顔立ちに、キュッとした薄いピンク色の唇。肌は前の体育祭で少し焼けているが、それがちょうどいい。はにかんだ笑顔を人が直視すれば、その人は一瞬で虜にされてしまい。気づいた時には、すでに【内井萌那生徒会長ファンクラブ】に入会していることだろう。
それほど彼女は、とてもすごい人なのである。
そんなすごい人に、オレは恋に落ちてしまった。
恋に落ちたきっかけは、生徒会に入った時だ。当時は、オレが会長にならなかったのに納得がいかなくて、不機嫌なまま生徒会室に行ったのだ。するとどうだろう、扉を開けたそこには、夕日に照らされながら窓を眺めている生徒会長がいたのだ。窓を少し開けていて、風が微かに入ってくる。
そしてコチラに気がついたのか、ニッコリと微笑んだのだ。その笑顔は美しく、綺麗で、マジで惚れた。
ハッとして、首を横に振りさっきの光景を頭から離す。あのころは、外見だけ会長だと思っていたからだ。彼女に近づき、スッと右手を差し出した。
「よろしく、演芸 貴意だ。仲良くしてくれると助かる」
オレの最高にカッコイイSMILEでキメた。このオレ様の完璧イケメンSMILEにかなう女子は存在しない! なので、オレの完璧イケメンSMILEを見た者は、必ず堕ちる!! ハズだった。
「うんっ! ヨロシクねー!」
オレよりも倍の可愛い笑顔でやり返されて、見事にオレの方が堕ちてしまったのである。
そんな懐かしい思い出に浸っていると、内井さんは脚を止めて、ある一点に目が釘付けになっていた。嫌な予感がして、オレもソッチを向いてみると……案の定、そこにはオレの永遠のライバル、塚崎 真守が居るじゃないか。
塚崎 真守とは、成績優秀、運動神経抜群、優しい、イケメン(まあ、オレには及ばないけど(笑))、友達想い。まさに、女子の理想がぎっしりと詰まった結晶だ。女子からはモテ、男子からは尊敬の眼差しで見られる。誰もが見惚れ、近づく、カリスマだ。まあ、オレの方がモテるし? イケメンだし? 優しいし? 友達想いだぞ?
えっ、声が震えてるって?
そそそそそ、そんな分けないだろ? こんなにカッコイイオレがビビるなんてないんだからな?
ゴッホん。しかし、そんな奴にもキチンと弱点があるのだ。その弱点、それは奴が極度の鈍感ってことだ。いや、ホントに。
誰もが意識はするだろう女の子のアタックを奴は見事に躱し、気づかない。いや、気づくことが無いのだ。そのような構造になってる。
例えば、誰が見ても可愛らしい女の子が「好き」と言ったら「俺も友達として好きだよ」と、最高の笑顔で言うやつだ。
fwo iguzanpo 誰が見ても可愛らしい女の子が顔を赤くしたら「熱あるの? 保健室いく?」と、心配そうに言うやつだ。
正直言って、なんであそこまで鈍感なのか分からなすぎて、女の子に同情する始末だ。もはや病気と言っても過言ではない。
そんな奴に、内井さんは恋をしている。
何でかは分からない。なんであんな奴に恋をしてしまったのか、オレには分からない。けれど、オレが内井さんに向ける本物の好きと同じように、内井さんは奴に本物の好きを向けているのだ。それがたまらなく悔しい。
コッチを向いて欲しいのに、奴なんて居なくなればいいのに。そう何度も思ったさ。けど奴にもいい所があるのを、オレは知っている。だから余計に腹が立つ。悪質だ。
「けれどもオレは、諦めない」
緊張で震える手を誤魔化すように握りしめる。心臓が加速し、身体中が熱い。それでも、オレは彼女のコトを諦めたくは無かった。勇気を振り絞り、口にした。
「うちい……、もっ……萌那っ!」
コッチを向け!! 向いてくれ!!
「んっ、いきなり名前で呼んで……どーしたの?」
彼女はオレに顔を向けて、面白おかしく笑った。オレに名前で呼ばれたのが意外だったのか、少し驚いた顔をしていた。
それがたまらなく嬉しくて、嬉しくて。湧き出る羞恥心を抑えながら、返事をする。
「なんでもない!」
「……えぇー、なにそれー」
そう言って彼女は話を続けてくれた。
オレの好きな人は、オレの後輩が好きだ。オレもその後輩は嫌いじゃない。いい後輩と思っている。だからこそ、彼女のことに関しては、一歩も引く気は無い。もしお前が萌那を選ばなかったとしたら、オレが持っていくからな。
複雑な心境だが、オレは何故か、微笑んで萌那の話を聞いていたのだった。
息抜き程度には書き進めます……
受験が終われば、すぐにでも投稿しますので、もうしばらくお待ちください。
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