頑張ります。
どうも、塚崎真守(つかさき まもる)です。現在友達と一緒に登校中でございます。
「真守よぉ~どうだった?」
ニヤニヤしながら俺に感想を求めてくるコイツは、山下 朝一(やました あさいち)と言う奴だ。スゴく独特な名前ですぐに覚えることも出来たし、何より幼稚園からの付き合いだからな。嫌でも覚える。朝一って長いから俺はあさと呼んでいる。
「何がだよ?」
すると更にニヤニヤし始める。なんだコイツ……気持ちが悪いな。
「金曜に貸したゲームだよ。で?どうだった?」
お前がそこまで感想を求めるなら、俺は容赦なく言うぞ?勿論アイツが知らないような事まで知ってるぜ。なんにせ全クリしたからな。そこまで俺は暇人だった訳だ。
「あの金髪のヒロインが一番最初にクリアしたヒロインだな。確かに顔もいいって言われてたし性格もいいけど、本当の自分に自信がなくて、偽りの自分を演じてたって言うところが良かったな。ソコから主人公に泣きながら本当の自分ってどうやったらなれるのでしょう。っていう台詞が良かったな。あと、全員のヒロインのエンディングを見たあとの皆との別れもとても泣けたな。泣いてないけど。それに…「はい、もう良いです。許して下さい(泣)」
なんだよ、まだまだたくさん感想を言っても良いのに。でも、俺の勝ちだな。誇らしい気分のまま学校に到着し、あさと一緒に教室に向かった。ちなみに俺とあさは同じクラスだ。何故だかコイツとはずっと同じクラスなんだよな。まぁ、嫌いじゃないからいいんだけど。
教室に入ると、突然、内井 義成(うちい よしなり)が後ろから飛びついてきた。
「よっシー登場!!」
コイツも俺とあさの友達だ。よっシーは毎朝、俺達に何かしら驚かしにくる。そのたびに面白いリアクションをするのが……
「ウワァッ!??」
あさだった。今回のリアクションは、背中に乗ったよっシーにびびったあさが約10センチ中に浮き、ダッシュで教室の隅まで行った。この時間僅か30秒。素晴らしい!俺の周りには陸上選手になれる人がとても多いな!そのうちオリンピックにでも出られるんじゃないか?……冗談もさておき、今はまずよっシーに降りてもらう事を優先しよう。
「ひとまず一回降りたらどうだ?」
「おぉ、ワルいワルい(笑)。朝一が面白いもんだからね?」
そう言ってよっシーは俺の背中から降りた。俺の隣に立つとやはり目立つな。なんにせよっシーは背がとても小さい。俺が162だとすると、よっシーは147…………だ。
「ププッ」
「なっ!?……お前俺の背が小さいことを馬鹿にしただろ?」
「すまん。だけど………………フフッ、ゴメン。俺には堪えきれない。」
とうとう笑いだしてしまった。イヤ、俺にしては頑張ってこらえた方だ。ホントだぞ?初めてあったときなんか見た瞬間笑い出したしな。クククッ。
笑いがやっとのことでおさまってくると、よっシーは怒りながら俺を睨んた。
「お前の眼鏡ぶっ壊して殺ろうか?」
ヤバイな、よっシーはとても背が小さいことを気にしているんだよなぁ。このままだったらマジで眼鏡を壊されるかもしれない。なので俺は正直に謝る事にした。
「ゴメン、ゴメン。次からは気をつけるわ。」
多分……。と言う言葉を飲み込んで謝るポーズをとった。すると溜め息をついてから俺を見るよっシー。これは許したときの仕草なのだ、つまり許してくれたって事だな。良かった、良かった。
「もういい。それには馴れたしな。」
なれたんかい!ついつい突っ込みを入れてしまう俺だった。
突然ガラララッ、っとドアがいきなり開く。何事かと思いそっちに視線を向けてみると、不良と噂されている基 茜(もとい あかね)が教室に入ってきた。
基が教室に入ることで先程まで静かにしていたクラスメイトが騒ぎだす。ヒソヒソと小声で何かを言ってはチラチラと基を見ている。そうされるたんびに、基はキッとした鋭い目で睨んだ。
葵とは違って腰まで伸ばした髪の毛を揺らしながら歩く姿は、まるで「近づくな」とでも言っている様だった。鋭く少しつり上がった目に、整った顔立ち。本当に不良なのか?と疑わせるような容姿は、葵と並ぶことが出来るほどの美少女だ。
基は自分の席に着くと鞄から荷物を取り出して机の中に入れ、ロッカーに鞄を置いた。そしてそのまま、教室から出ていった。…………何故基を不良と言うのか俺には解らないな。さっきの行動からしてみると何も不良らしいことはしてないよな?ホント、意味わかんねぇー。
俺は1つ溜め息をついてから自分の席に座って荷物の整理を始める。あさとよっシーも自分の席に着くと荷物の整理を始めた。
俺は先程の基の事が気になって、自分でもわかるくらいモヤモヤしていた。本当にこれでいいのか?と。
俺達の学校は二、三年生はクラス替えがなく二年生からずっと同じクラスなのだ。その中で基だけが一人だけでやっていけるわけがない。っていうか、そうなってほしくないんだ。このクラスは皆が仲良くなってもらわないと、俺と約束した奴に合わせる顔がなくなる。それだけは本当に避けたい。
基を探し出すために教室を出ると、俺は迷わず屋上に向かった。何で屋上に行ったか分かるって?男の勘だっていうのは嘘で、俺が一年の頃にあさとよっシーとで屋上に行ったら、基が居たのを見たからだ。俺は悩みがあると屋上に行って気分を晴らしたくなるからな、それと一緒だと思う。悪魔でも俺はだがな。
重たいドアを開けると思った通り、基がフェンスに手をかけて町を眺めていた。
「おはよう基。」
基の隣に並んで同じ様にフェンスに手をかけると、いつの間にか基が俺の隣から約10メートル離れた位置に移動していた。俺って嫌われてるんだな……苦笑いを浮かべながら、俺は思っていたことを口にした。
「基って不良と呼ばれてるけど、全然不良じゃないよな?」
「ウチは十分不良だ、文句あるのか?それともからかってんのか?どっちにしろお前はウチの敵に変わりはない。」
俺の言ったことに反論し、更にキツイ言葉を返してきた。自然と自分の心に何かが刺さってきた気がした。何だろう、この悲しい感情は……俺が黙っていると、基が睨みながら俺にいい放った。
「例えお前がウチの所に来ようが、ウチの気持ちをあじわうことは決してない。ウチはお前より辛い想いをしてきた。そんな気持ちがお前に分かるはず無いだろ、だからウチの目の前から消えろ。」
グサグサと俺の心をエグるようにその言葉は突き刺さった。確かに、確かにそうだけど……俺は言い返す言葉が見つからなかった……。
俺が何も言わずにうつむいていると、基は黙って屋上から姿を消したのだった。
「これじゃ、基はずっとあのままだぞ。それでいいのか?イヤ、ダメに決まってる。でも…………」
先程の基が言ったように、俺は基の気持ちを知らない。過去に何があったのか、どんなことがあって心を閉ざしてしまったのか、どうして不良になったのかさえ、俺は何も知らない。さっき言われた言葉が頭を横切る。
『例えお前がウチの所に来ようが、ウチの気持ちをあじわうことは決してない。ウチはお前より辛い想いをしてきた。そんな気持ちがお前に分かるはず無いだろ、だからウチの目の前から消えろ。』
そう、基は言った。力が足につたわらなくて、フェンスに寄りかかりながら座る。
「辛い想いって、どんな辛い事があったんだよ…………。」
「私、知ってますよ。」
突然頭の上からそんな言葉が聞こえてきた。その言葉は、俺にとっては希望の言葉にも聞こえた。その人を見てみると、葵と同じくらいの長さの髪で前髪をピンで止めている女の子だった。
「私、愛川 彩夏(あいかわ さやか)。茜ちゃんの友達です。」
その言葉を聞いて、俺は最後の希望を愛川にかけるとこにした。
「愛川、俺に教えてくれ、基の過去を。」
「はい、それでは言いますよ。」
俺は愛川から視線をそらさずに、じっと見つめて話を聞くのだった。
たくさん出てきましたすみません。
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