①タブラさんの口調とキャラ
②たっち・みーさんのリアルが忙しくなった理由
③大侵攻時の八階層での戦いとそれに関するモモンガさんへの周りの印象
④モモンガさんのキャラビルドへのこだわりとその原因
※大きいものはこのぐらいでしょうか。他にも細々とあると思います。書いて置いた方が良いものがあれば教えて下さい。
・2015/11/10 修正
ここはギルド《アインズ・ウール・ゴウン》の本拠地。全十階層からなるナザリック大地下墳墓。
その第九階層にある円卓の間。部屋の中央には黒曜石の輝きを放つ巨大な円卓が鎮座している。
今そこには3つの異形の影があった。
影の一つは豪奢な漆黒のアカデミックガウンを着た骸骨。その肉も皮も無い頭部の空虚な眼窩には赤黒い光が灯っている。《アインズ・ウール・ゴウン》のギルド長であるモモンガだ。
「……こんな感じで作ってみようかと思うのですが。どうでしょうか?タブラさん」
モモンガの隣りで資料を見ていた異形が、その蛸の様な形状の蒼白い顔をあげて答える。
「ギルドメンバーのアバターに変身する事で、その人物の力の8割を使いこなす事が出来るのか。良いのではないか?41人分ともなれば汎用性が高い。どの様な状況にもある程度対応出来る」
「はい。宝物庫の領域守護者の予定ですから弱くては話しに成りませんし。少しやり過ぎかとも思ったのですが……。ペロロンチーノさんはどう思います?」
モモンガがその場に居たもう一人、仮面を着けて背中に羽のあるバードマンに話しかける。
「良いんじゃないかな?やったぜ!宝の山だ! って油断している所に、ころころ能力変えてくるびっくり箱みたいな奴が居るって。きっと驚きますよ」
ペロロンチーノが楽しいを意味するアイコンを顔の横に出しながら答える。
「まあ、実際は宝物庫に侵入された時には、NPC一人ではもうどうしようも無い状況なんですけどね。時間稼ぎぐらいにはなりますか」
そのモモンガの言葉に何がそんなに楽しいのか、アイコンを連発しながら「最後っぺだ〜」などと喜ぶペロロンチーノ。それを見るモモンガの顔の横にも笑顔のアイコンが浮かんでいた。
ペロロンチーノが落ち着いた所で再び話が始まった。
「次は……ふむ。ネオナチの軍服に身を包み、ドイツ語を巧みに操る。悪の幹部らしさが出ているのではないか?舞台役者の様な派手な動きというのもけれん味を効かせられる。ウルベルト辺りが喜びそうだな」
「そうですか!」
照れアイコンを出しながらも嬉しそうな声がモモンガから聞こえてくる。彼にとっては仲間が喜んでくれるかも、というだけで心踊る事なのだ。
「しかし……」
「……何でしょう?」
タブラの言葉に、一転して不安気な声が響く。
「設定が少なくはないか?」
「えっ」
その言葉にキョトンとした感じで骸骨の首が傾げられた。
〔ぶくぶく茶釜さんがログインしました〕
その時現われたのはピンク色のグロテスクな肉塊、もといスライムだった。
「茶釜さん、こんばんは」
「こんばんはです。モモンガさん、タブラさん」
「うむ、善き夜だな」
恐ろしい骸骨とグロテスクなスライム、名伏し難き邪神が穏やかに挨拶を交わす。異様な光景だが、これがナザリックの日常風景である。
「姉ちゃん、今日は遅かったな」
「ん、新しいエロゲの収録が押しちゃって」
「エロゲはもうやめてってオレあれだけ言ってんじゃん!!」
「黙れ、愚弟。すり潰すぞ」
「すり潰すってナニを!?」
この姉弟のケンカもまたナザリックの日常風景であった。
騒がしい二人の声を聞きながらモモンガは考えていた。新しいNPCの設定は数日を掛けてようやく捻り出したものだ。正直これ以上は何も思い着きそうにない。どうするべきか……。
「モモンガさん、そんなに考え込んでどうしたんです?」
いつの間にかケンカを終えたらしいぶくぶく茶釜がモモンガの顔を覗き込んでいた。ちなみにペロロンチーノはその後ろで膝を抱えていた。隣りではタブラが慰めている。今回も姉の勝利だったらしい。
落ち込むペロロンチーノを見なかった事にしてモモンガはぶくぶく茶釜と話し始めた。
「今日は私が作るNPCについて相談にのってもらっていまして」
「あっ、やっとNPCを作り始めたんですね。モモンガさんったら自分は最後で良いって遠慮してましたからね」
「遠慮していた訳ではありませんよ。皆さんが必要だと思うNPCを作り終ってから、余裕があったらと決めていたので」
「ギルマスの鑑ですねぇ」
そんな事無いですよ、と骨の手を身体の前に突き出してプルプルと振るモモンガ。そのユーモラスな動きに、今ならタブラさんとギャップ萌え談義ができそうね。などとぶくぶく茶釜が考えている事など誰も知る由も無い。
「それでですね、お二人に設定を見てもらっていたのですが……」
「何かありました?」
「もっと設定が必要ではないかと思うのだ」
ペロロンチーノを慰め終ったのか、タブラが話しに加わってくる。
「設定が少ないのだ。キャラメイクというものは詳細な設定が有るからこそ素晴らしいものを造り出せるとは思わんか? 特に綿密な設定を積み上げ、相反する属性をも繊細に組み込み、最後に意外性を乗せる事によって生みだされるギャップこそが……」
「ストッ〜プ!タブラさんのギャップ萌えへの情熱は知ってますけど絶対長くなりますよね、それ。ね、また今度聞きますから。今はモモンガさんのNPCについてです」
「む……。そうか、そうだったな。済まない」
復活したペロロンチーノがタブラの暴走を止めた。モモンガは良くやったペロロンチーノ!と思わずガウンの下でガッツポーズをしてしまっていた。
「しかし設定ですか〜。とりあえず私も見せてもらっても?」
「ええ、もちろんです。茶釜さんの知恵も貸して下さい」
〔たっち・みーさんがログインしました〕
「皆さん、お久し振りです」
そこに居たのは騎士と呼ぶに相応しい白銀の立派な鎧を着込んだ人物。このギルドの前身である最初の九人の発起人、たっち・みーであった。
「たっちさん!」「おひさ〜」「こんばんは!」「久しいな、たっちよ」
嬉しさを隠し切れないという足取りでモモンガがたっち・みーに近付く。
「たっちさん、こんばんは。今日は大丈夫なんですか?」
「はい。ようやく時間が取れました。……モモンガさん、申し訳ない。中々ログイン出来なくて」
「いえいえ、お気になさらずに。お子さんがお産まれになったばかりなんですから。ご家族に時間を使ってあげて下さい」
「ありがとうございます。そう言って貰えると助かります」
たっち・みーは妻の妊娠と仕事上の昇進が重なり、少しずつログインの回数が減って来ていた。子どもが産まれてからは殆どログイン出来ていなかった。
モモンガはそれを少し寂しく思うが、同時にこうして時間を作ってまで顔を見せに来てくれた事が嬉しい。やはり此所は皆にとっても大事な場所なのだ。自分がこのギルドのマスターである事を誇りに思う。
「そうだ!今日は子どもの写真を持って来たんですよ。見ます?」
「はい。ぜひお願いします」
モモンガは、この場にウルベルトさんが居なくて良かったな。リア充死ね!とか言い出してケンカになってたはず。などと考えながらたっちから写真を見せてもらう。
「可愛いでしょ。このふくよかなほっぺ。もみじみたいな手。 俺の指を握ってくれた時は感動しました。この子は俺が守って行くんだって改めて気合いが入りましたよ」
「可愛いですねぇ」
たっちさんデレデレだなぁ、でも本当に幸せそうだ……。そう思ったモモンガは無意識に呟く。呟いてしまった。
「子どもかぁ。良いなぁ……」
「それだ!!!!」
「うわっ!」「へっ?」「どうした!」「何事だ!」
ピンク色の肉塊が全身をぶるんぶるんと震わせながら興奮している世にもおぞましい姿がそこにはあった。
「急に大声出すなよ、姉ちゃん!びっくりするだろ!」
「子どもだ!子ども!」
「……うちの子が何か?」
少しばかり引き気味のたっちが尋ねた。
「そうじゃなくって!NPCですよ!NPC!」
未だに興奮状態のぶくぶく茶釜を取りあえず宥めようとモモンガが話しかける。
「えっと、茶釜さん。落ち着いてゆっくり説明してもらえませんか?正直さっぱり分かりません」
「だ〜か〜ら〜!モモンガさんの『子ども』って事にしません?このNPC」
「……はっ?」
そのまま固まってしまったモモンガを置き去りにして話しは進んで行く。
「このNPCって宝物庫に配置するんですよね。一番安全な場所に一番大切な『子ども』を匿っているってどうでしょう? タブラさん?」
「……なるほど! 魔王の後継者であれば暗殺や誘拐の危険が付き纏う。しかし本人にはそういう輩を撃退する力は未だ無く。それを危惧した魔王の手によってダンジョンの最奥、宝物庫にて守られていると。魔王にとっての真の宝とは光り輝く黄金でも貴重なマジックアイテムでも無く、愛する我が子である……。素晴らしいギャップだ」
『子ども』という設定がもたらすギャップが気に入ったのか、何処か酔った様な声でタブラは話していた。
「でもこいつドッペルゲンガーまんまの見た目だよ。モモンガさんに全く似てない。種族も違うし。それに、アンデッドに子どもが出来る訳が……。エロゲ的な方法でどうにかなるな、うん」
「うるさい、このエロゲ馬鹿。引き千切るぞ。……見た目は専用の外装を作れば良いとして。種族とアンデッドの問題は……。良いアイディア無いですかね?」
何処か遠くを見ている風だったタブラがその言葉に腕を組んで考え出す。
「アンデッドの問題は……。生者であった頃の子どもであるとすればどうだろうか。種族に関しては母親がドッペルゲンガーであれば良いのか? いや、それだとハーフになるな……」
いや、しかし、などとぶつぶつ考え込んでいるタブラをたっちは苦笑しながら見ていた。相変わらずだな。などと考えながら。
ふと先程より黙り込んだままの、普段から何かと遠慮しがちなギルド長が気になり声をかける。
「あ〜、どうしますこれ? ……モモンガさん?ちょっ!モモンガさん!?」
そこには手を床に付きながら何事かを呪文の様に呟く骸骨がいた。
「何コレ? 子ドモッテナニ? 母親ッテナニ? 俺ドウテイナノニ……」
「しっかりモモンガさん!おい!お前ら一回やめろ!モモンガさんが何かヤバい!」
――数分後
白銀の聖騎士が、見るからに邪悪な骸骨を心配そうに見守っていた。
「モモンガさん、本当にもう大丈夫ですか?」
「はい……。どうにか。皆さん、御心配おかけしました。少々混乱してしまいまして」
申し訳なさそうな声で頭を下げるモモンガ。
「ごめんなさい。姉ちゃんが変な事言い出して。今日は無理せずログアウトしたらどうですか?」
普段は頼れるギルド長である友人の、めったに無い姿を見て泣きそうな声のペロロンチーノ。それに対して優しい穏やかな声でモモンガが応える。
「もう大丈夫ですよ。ありがとう。ペロロンチーノさん」
その後、改めて話しを聞いたモモンガが簡潔にまとめた。
「つまり、魔王ロールの一環としてNPCに子ども設定を加えては?という事ですか。茶釜さん」
「そうそう。DQの竜王しかり、DBのピッコロ大魔王しかり。結構魔王が子どもなり子孫なりを残している作品ってあるのよね」
「その作品の事は良く分かりませんが、魔王的には有りだという事ですね。……しかしですね、まず前提が間違っています。俺のロールは死を支配し超越した魔法使いです。魔王ではありません」
それはモモンガにとって譲れない部分なのかきっぱりと言い切った。
「だが実際には、PvPの時のあの高笑いなど魔王そのものだと思うが。ウルベルトなどは、『磨けば光る悪のカリスマ』とやらがギルド長には有ると言っていたぞ」
え、何それ。近頃演技指導が厳しかったけどあの人そんな事言ってたの? 驚くモモンガに追い討ちをかけるかのようにペロロンチーノの言葉が続く。
「本人がどう思っているかは別にしても、ナザリックは非公式ラスダン、モモンガさんは非公式ラスボスって言われてますし」
続けてたっちまでもが言う。
「あ〜、そう言えば俺も似た様な事聞いたな。確か……、非公認魔王だったか?」
「……はい?」
普段あまり掲示板等を見ないモモンガにとっては初耳な話だ。
「私ってそんなに強く無いんですが」
実際の所、モモンガはロールプレイ重視のビルドの為に、中の上から上の下辺りの強さだ。PvPの勝率はかなり良い方ではあるが、絶対的な強さは無い。それに強さで言うならたっちやウルベルトの方が上で、知略・戦略はぷにっと萌えやベルリバーには敵わないと本人は思っていた。
「いやぁ、あの大進行の時の第八階層殲滅戦の映像を見ちゃうとねぇ」
その茶釜の言葉にモモンガは納得した。せざるを得なかった。
あの時千人程いたプレイヤー達を殲滅したのは間違い無く自分なのだ。
八階層の存在と自分専用のワールドアイテム、それからもちろんギルドメンバー全員のサポートがあったからではあるが。しかしながら、あの映像を見ただけではそういった事は分からない。映像から分かるのはモモンガがたった一人で千人近い100レベルプレイヤーを殲滅した事のみ。
冷静に考えると下手なレイドボスより強い。そのうえノリノリの悪役ロールがさまになっていた。これが自分自身でさえなければ『怒れる魔王光臨!!』等と喜んでいた事だろう。
「……分かりました。魔王扱いは諦めます。元々キャラ作りは模索中でしたし。まぁ死の魔法使いが魔王の座に上り詰めたと考えれば矛盾は無いでしょう」
「ふわっとしたキャラであの魔王っぷりとかすげぇな」だの、「流石ウルベルトが言う所の原石だな」などと聞こえて来るが、モモンガは努めて無視する。
「ですが、血の繋がった子どもは有り得ません」
「モモンガさん、随分はっきり言うね。何で?」
ペロロンチーノが不思議に思って尋ねる。
「誰にも話して無かったのですが、俺の考える死の支配者には裏設定みたいなものが有ります。それに基づいて考えると、生前に家族が居ても現在生きている事は有り得ません」
「どんな設定か聞いても?」
「それは……ちょっと……」
言いづらそうにしているモモンガにたっちが助け船を出す。
「まぁ、ロールしているキャラに対するこだわりは誰しも有るものですし、それは良いんじゃないですかね」
ありがとうございます、と頭を下げたモモンガにたっちが軽く手を上げる事で応える。
「ギルド長よ。では生者であった頃に子どもが居て、そして亡くしている、という事ならば有り得るのか?」
「そうですね、それならば矛盾は無いです」
「じゃあ養子はダメ〜?」
「アンデッドに養子って何ですか。ダメです。それにしても茶釜さん。何でそんなに『子ども』設定にこだわるんですか?」
「いや、さっきモモンガさん子ども欲しそうだったから?」
「何で疑問系なんですか。まったく……。面白がってません?」
「バレたか」「やめて下さい」と二人のじゃれ合いに和やかな空気が部屋を包む。
少し時間が経った頃、考えが纏まったのかタブラとペロロンチーノから設定案が出される。それは以下の通りだった。
--*--*--*--*--*--
かつてとある森に一組の父と息子が住んで居た。
父親は魔法の研究をしつつ、近隣の村からモンスター退治の依頼を請負いながら生計を立てている。
妻は産後のひだちが悪く、産まれたばかりの子どもを残して天国へ行ってしまった。
しかし、赤子だった息子も間もなく10歳。今まで病気も大きな怪我も無く健康そのものだ。
周囲との関係も良好で平凡ながら穏やかな毎日が続いて行くと信じていた。
そう、あの悲劇が起こるまでは……。
--*--*--*--*--*--
「ちょっと待った!!」
モモンガが椅子から立ち上がり、大声を出す。温厚な彼にしては珍しい行為だ。
「なにかね、ギルド長。これから盛り上がるのというのに」
「いや、これ設定というより小説か何かですよね!もっと短く!簡単にお願いします!」
「え〜、オレ頑張って書いたのに〜」
ペロロンチーノぉぉ!! 貴様のせいかぁぁ!!
モモンガは叫びたくなるのをぐっと堪え、二人を説得する材料を探す。
「もうかなり遅い時間ですし、たっちさんもそろそろ帰られるでしょうから、簡潔にお願いしたいのですが」
空気を読んだたっちがそれに合わせる。
「ん? あぁ、そうですね。中途半端は気になるし、結論を先に教えてくれるとありがたいですね」
改めて話された内容はこうであった。
--*--*--*--*--*--
生者であった頃に愛する息子を無惨にも目の前で殺される。
その悲しみから男は、自ら死の支配者になった。
その後、息子の似姿を部下に取らせるようになる。
息子の姿を与えられた影響か、部下は死の支配者を本当の父親の様に慕うようになった。
しかし、例え偽りだとしても、息子の姿をした存在を再び失う事を死の支配者は恐れた。
だからその部下を宝物庫に閉じ込めた。
--*--*--*--*--*--
「……と、このような設定はどうだ?裏設定に沿っているか?」
「はあ……。確かに矛盾はありませんが……」
モモンガは何でもないような受け答えをしているが、現実の鈴木悟は冷や汗を流していた。
先程は裏設定などと言ったが実際はそんな格好の良いものでは無かった。死の支配者、死の超越者にこだわり続けた理由。それに気が付いたのは最近の事。結局の所女々しい感傷なのだ。タブラの作った設定はその感傷を刺激するものだった。心の奥底に閉じ込めていたものを覗かれている気がしていた。
黙り込んでしまったモモンガが迷っているように見えたのか、声がかけられる。
「モモンガさん、難しく考え過ぎ。タブラさんの設定を全部使わなくても良いんだし」
「茶釜さん……」
「そうですよ。基本、タブラさんは詰め込み過ぎですから」
「たっちさん……。でもせっかくタブラさんが考えてくれたのに……」
「私は構わんぞ。あくまで提案だ。ギルド長の好きにすると良い。設定を考えただけで楽しめたしな」
「オレも楽しかった!って言うか、子どもの様な存在自体は良いの?モモンガさん?」
皆に気を使わせてしまったかもなと、なるべく明るい声を出してモモンガは答える。
「それは問題無いです。自分では他に思い付きませんし。せっかく皆さんで色々考えてくれたんですからね。……そうですね、タブラさんの設定を参考にしてみます。そのままでは使わないと思いますが」
そう、使わなくても良いのだ。特に死の支配者になった理由なんて。女々しい感傷などまた心の奥底に沈めてしまえば良い。仲間と共に居れば忘れてしまえる。所詮その程度のものなのだから。
モモンガは、いや鈴木悟は気付かない。
沈めてしまったそれこそが、自身にとっての渇望である事に。
--*--*--*--*--*--
この後の未来――
独りになってでもギルドを維持しながら帰って来ない仲間を待ち続けて。
異世界に飛ばされ本物の死の支配者〈オーバーロード〉となり、人としての心を磨り減らしながらも探し歩き。
世界の全てを犠牲にしても構わないという狂人の理で執着する。
全ての行動は沈めてしまったその渇望が故に。
人として当たり前の望みが、純粋だったその願いが、澱み歪んでしまっても。
鈴木悟は、いやアインズ・ウール・ゴウンは気付かない。
――未だ気付いてはいない。
アインズ様と息子設定パンドラの二人旅が書きたかったはずなのに、どうしてこうなった。
ギャグだったのにうちのモモンガ様が一人でシリアス始めたせいです。軌道修正出来ませんでした。
この時空ではもう無理ですね。