俺がポケモンマスター   作:てんぞー

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確認とPWC

「―――これから練習試合の回数を増やしていこうと思う」

 

 フエンタウン、旅館の庭に手持ちのポケモン、そしてヒガナとナチュラルを集め、全員の前でその説明をする事にした。今、片手に握っているのは少し前にポケモンリーグより送られた資料だった。今季の注意事項、捕虜としたアクア団とマグマ団の事、そして何よりもポケモンバトルに関する事が細かく書かれてあった。幸い、これ以上黒尾がレギュレーションに引っかかるような事はなかったが、それとはまた別方向で問題が露出していた。

 

「さて、練習試合の回数を増やす理由だが、これは再来年、とある地方で開催する事が決定したとある大会に関する事だ―――俺自身を鍛える事とは別に、今いるお前らとの相性、そして誰を選出するか、そういうのを決める意味でも練習試合の回数を増やしていこうと思っている。だからお前ら、バトルがこれから増えるから張り切っておけ。事件があるとかないとか関係なく割とマジでやるからな、これからは」

 

 そんな此方の言葉にヒガナが首を傾げて割り込んでくる。

 

「で、その大会って何なの?」

 

 あぁ、そう言えば肝心の内容を言い忘れてたな、と呟き、返答する。

 

「―――ポケモン・ワールド・チャンピオンシップ、通称PWCだ」

 

 その名前を知っている手持ちは、選手たちは全員無言のまま動きを停止させ、そして闘志を漲らせ始めた。その様子を見て心の中で軽くモチベーションに関するチェックを入れる―――全員十分にスタメンを狙っているな、と判断する。ただヒガナの方は聞き覚えがないらしく、首を傾げたままだった。その姿に苦笑していると、ナチュラルから話を切り出してくる。

 

「君はなんというか……本当に世間知らずというか箱入りというか」

 

 なによ、とナチュラルにヒガナが睨んで視線を向けるが、ナチュラルも大分鍛えられているせいかそれを受け流しながら答える。

 

「宴だよ」

 

「宴?」

 

 うん、とナチュラルは答えながら頷き、

 

「―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だよ。参加資格は最低で地方リーグ優勝から、四天王クラスのトレーナーや、殿堂入り、現行チャンピオンとかが世界中から集まってこの星で本当に誰が最強なのか、それを競い合う場だよ。簡単にわかりやすく説明すると」

 

 そこでナチュラルは一旦言葉を区切り、

 

「……オニキスやダイゴレベル()()が参加できるというかする」

 

「うわぁ……え、マジ?」

 

「マジマジ」

 

 ヒガナの言葉に答えながら、そのまま説明を続ける事にする。

 

「再来年―――つまりは2年後にアローラ地方にスタジアムを新設する事が決定した。俺も残念ながらアローラ地方の事は全く知らない。だけど調べた情報だとあの島は島巡りの伝統があって、それがあったおかげでポケモンジム、そしてポケモンリーグの概念が全くかみ合ってないもんで、今までポケモンバトル用のスタジアムさえなかったらしい。だがアローラ地方もリゾート地としての開拓も進んで、外の文化をある程度学び、発展する必要が出て来た」

 

 そんな訳で、

 

「バトルだ、ポケモンバトルだ。アローラ地方にもリーグ式じゃないがポケモンバトルの文化がある。だから援助の代わりにリーグを組み込むためにポケモンスタジアムの新設が決定された。アローラ地方の特異な伝統と文化を組み込んで全く新しいステージ―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になると予想されている。アローラ地方の宣伝、その活性化、そしてここもまたポケモンリーグの管轄である事を証明する為にも2年後のWPCはアローラ地方で行われる事になった」

 

 そういう理由から練習試合を増やす事が決定した。というか増やさざるを得ない。割と真面目にこの2年間、どれだけ自分が成長できるかが勝利の鍵だ。いや、成長限界であればとっくの昔に迎えている。だから後は指示能力を経験を通して磨く事だけが勝負なのだ。それをポケモンたちが身に着ける事もまた一つの必要な事でもある。だからバトルだ。確かにトレーニングも重要だが、もはやこういう領域に来ると100回の鍛錬よりも1回の試合を行って動きの確認や、戦闘経験を重ねる必要がある。

 

 特にカノン、シド、そして黒尾。この三人に関しては未知数な部分が多い。

 

 俺もやや異能を持て余している部分がある―――そんな部分を残していては絶対に勝てないだろう、まだ見ぬ極悪とも表現すべきライバル達に。

 

「本来ならホウエンのジムを全て回る程度で済ます予定だったが―――俺から連絡を入れて予定を変えさせてもらった。指導とかで回るのは若いジムリーダーが居る場所が中心としていたが、予定を変えて次はキンセツシティ、その後はルネシティで元ジムリーダーアダンと戦う」

 

 そしてそれが終われば、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()するぞ」

 

「え、可能なの?」

 

「公式の試合じゃない練習試合だからな。申し込んで向こうの都合が空いていれば十分いける」

 

 何より四天王とチャンピオンはPWC参戦確定枠だ。つまり2年後のPWCにおいて絶対戦う相手でもある。俺がこの半年で新しい異能を習得し、それでポケモンバトルにおける動きを大きく変化してきた事は目敏いトレーナーであれば既に把握しているだろう。ポケモンバトルで最強の武器とはやはり、情報だ。相手がやる事を理解していればそれに対応するメタを用意する事も出来るからだ。

 

 だから練習試合は向こうにとって渡りに船とも言えるものだろう。何せ、情報が全く存在しない新しい戦術に対して自分で感触を得られるチャンスなのだから。映像や口頭で得られる情報も確かに存在するだろうが、脅威という事に関しては自分でぶつかって感じ取るのが一番安心できるし、信頼できる。そういう意味でも俺が相手側だったらまず間違いなくこの申し出を受け入れるだろう。向こう側もPWCでの優勝を狙っているのはまず間違いないのだから。いいや、ポケモントレーナーとして、出場する以上は優勝以外ありえない。

 

 それはトレーナーとしての闘争本能なのだから。

 

「そういう訳でこれからはガンガン練習試合を申し込むし、試合回数は増やして行く。ただ練習試合だから負けてもいい、とか相手が強かったから負けてもしょうがない、とか言っているような奴や考えているような奴はガンガン置いて行く―――その事に関しては貴様ら、既に覚悟しているな?」

 

 その言葉に応える様に空へと向かって咆哮が響き渡った。空そのものが揺れるような感触の中、シレっとツクヨミとヤベルタルが集団に混じって本当に空間を揺らしているのを見た。お前らそれ以上やるとフエンが時空の狭間へと消し飛ぶから破壊のオーラと反物質のコラボレーションはマジで止めろ、と声を吐き出して二人を止めさせ、両脇にダメなロリを抱えて拘束する。これで良し、

 

「威厳はお亡くなりになったけどね」

 

「うるせぇぞそこの野生児。このレジェンド・ウェポンを解き放っても良いんだぞ」

 

「とくぎはそんざいがなくなっていたということにすること」

 

「特技は行方不明という事実を残す事だけ」

 

「よくそのキチガイポケモンを掴んでいて平気でいられるね」

 

 ツクヨミとの付き合いが長いからそれで伝説のポケモンに対する扱い方を覚えてしまったというか―――うん、なんというかロケット流だ。ポケモンに対して自分からぶつかって行くというか、なんで俺がポケモンを恐れなきゃいけないんだ? というか、まぁ、大体そういう感じのノリである。無論、最初はポケモンが怖かったのは事実だ。それを克服さえしちゃえば後はそのまま突き抜けるだけだ。

 

 とりあえず、これで一番最初の業務連絡を終わらせた。次の話に移るぞ、と言葉を送るとポケモンと助手たちから返答が返ってくる。いや、ポケモンたちはそれでいいのだが、ナチュラルとヒガナもすっかりと慣れてしまったもんだよなぁ、と思う。ヒガナに関してもこの旅が終わったら正式にアシスタントとして雇ってしまおうか? 妖怪アイス狂い相手に若い子を見せつけるのも結構楽しいのかもしれない。まぁ、それはそれとして、

 

「んじゃあ次の連絡だ―――新しいパーティーの形、軸が見えて来た」

 

 一番最初にポケモンに触れた時、自分は夜という天候を黒尾と共に生み出した。それを通して自分が支配する、適性は、環境はこの空だと思ったのだ。天候を軸にする事でパーティーを活躍させてきた。ツクヨミ(ギラティナ)の力によって引き出された天候を重ね、融合させるという行動で更に戦術は広がり、そして新たな発想を生み出した。そしてその更に先へと今は進んだ。

 

 カノンの異界展開―――そして俺の決戦場。

 

 それを通して理解した。俺が支配するのはちっぽけなフィールドではなく、世界そのものだった。

 

 異邦人だから―――異世界人だから―――純粋にこの世界で産まれた人間ではないから。創造主アルセウスによって生み出されていない唯一例外の存在だから。全てが0と1で構成された中で唯一アルファベットで構成されている存在。即ち自分は異物である。そんな気持ちはないし、そうであるつもりはない。だが間違いなく世界から見れば俺は異物である。だからこそ伝説種の中ではツクヨミと最も相性が良かったのだろう。何よりも世界という存在に干渉、そして生み出せる彼女に対して。

 

「俺の適性は()()だ。天候からこれからは戦術を異界ベースに変えて行く」

 

「失礼、それは可能かしら? カノンの経歴を考えれば彼女が可能なのは解るわ―――だけど天賦でもなんでもない努力でここまでついて来た私達は?」

 

 ミクマリのその言葉にまぁ、心配するよな、と頷きを返す。

 

「問題ない。断言する()()()()()()()()、と」

 

「ボスが断言できるなら問題ないわ。それを信じる事にするわ」

 

「まぁ、基本的に約束は絶対破らないタイプだものね」

 

 男が言葉を曲げちゃあいかんのよ、と苦笑しつつ答える。そして同時に考える。これだ、この異界の展開、支配、それがこのオニキスというトレーナーに与えられた唯一の才能なのだと思う。育成に関しては実機で出来る事の真似事をしているのに近い。だがこれはもはやどこにも存在しない、自分だけの技術、能力だ。これが俺のオリジナルであり、

 

 そして終着点だ。

 

 ―――最終パーティーの構想はおぼろげにだが、既に見えてきている。

 

 後は自分の構想をどれだけ現実に出来るか、ポケモンがそれについてこれるか、そして自分がそれを再現するだけの実力を持っているか否か、それだけの問題だ。失敗すれば全てを失うだけだ。とても簡単な話だ。それだけは今までと何も変わらないのだから。

 

 ともあれ、

 

「という事で少々天候関連に関しては勝手が変わる部分はある。その調整を軽く終えたらキンセツシティ、キンセツジムでジムリーダーのテッセンとバトルだ、いいな?」

 

 返答に再び大気が震えた。誰もがやる気十分であり、PWCという明確に見える目標に対して進む力を持っていた。故にホウエン地方で起きている事件―――グラードン、そしてカイオーガは邪魔でしかなかった。

 

 その先の戦いに興味があるのだ。

 

 早々に潰して終わらすことを決めた瞬間でもあった。




 という訳でアローラの情報待ちですのよ。久しぶりの更新とまだ続けるつもりはありますのよ? って感じで更新で。オニニキの相性は空間、フィールド支配系が一番高くて、後は悪や残虐性、闇とも言える面を心に抱えたポケモンと相性がいい。間違いなく犯罪サイドの人間である。

 そして今でもなんだかんだで片足犯罪者である。

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