貴方にキスの花束を――   作:充電中/放電中

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Re.Beyond Darkness 九条凛END 『この世界で、行けない彼方【後】』

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沙姫邸を出発して数時間後―――…

 

秋人は一人(・・)で山を歩いていた。命じられた山ごもりをする為である。

 

山ごもりは武道を志すものなら一度は行う修行法である。山は人間の住む領域ではない、野生動物や地形、天候と危険はいくらでもある。住み慣れた場所から遠く、隔絶された場所は精神にも尋常でない負荷がかかる。山登りやキャンプとは根本的に違うのだ

 

「凛のいる場所は…まだ先か…っと、」

 

パキンっ

 

秋人は足元を確かめながら進む。木々に囲まれ足元には草が生い茂り、人工物はどこにも見当たらない。日はまだ高い為視界は良かったが、草木で鬱蒼とした山は自分の息遣いと草や枯れ木を踏む音以外には何も聞こえなかった。

 

「というか凛と一緒に山ごもりじゃなかったのかよ…、ホントにココに居るんだろうな」

 

額の汗を腕で拭いながら呟く秋人。周りは相変わらず人の気配はない。話は秋人が山へと放り込まれた時まで遡る――――

 

 

*****

 

 

「秋人くん、君と会うのは初めてだったね。私が凛の父、九条戎だ。天上院グループの執事長をしている」

「ど、どうも…初めまして」

 

"超"がつく高級車には秋人と執事長・九条戎の二人しか乗っていない。揺れも音もない車内は快適そのもので、車は目的地へと速やかに進行している。正確にはもう一人、運転手が車を走らせているのだが、向い合せに座る秋人が窺い知ることは出来なかった。

 

「さて、最初に地図を渡しておこう。この地図に印が五つ記されているのが分かるかな」

「えっと、はい」

 

秋人はまじまじ見つめてくる戎に困惑し、動揺していた。しかし流石は執事長、戎である。本来ならこのまま拉致し、そりゃあもう酷い説教をかますところだ。が、燃え上がる嫉妬心を抑えつけ用件を簡潔に説明しだした。

 

差し出された山の地図には赤いマーカーでバツ印が付けられていた。五つの印は山の端と端、頂上、中腹とバラバラな位置に付けられている

 

「この地図と同じものを凛にも渡してある。凛はこの5ヶ所のどれかのポイントに向かうはずだ、そこが昔から有名な修行の場所だからね」

「どこか…?」

「そうだ。五ヶ所のどれに凛が向かうのか、正直な所私も知らない。だが、君が凛にとって真の友であり、凛を大切に思う者なら…凛がどの場所に向かうか分かるはずだ。」

 

力強く言い切った戎の言葉に秋人はもう一度地図を見る。大きな地図に記される印はそれぞれ大きく離れており、もし全てを周っていくことになれば、かなり時間が掛かるだろう。特に頂上付近には大きく深い渓谷があり、登るにも困難であることが分かる。

 

秋人は困惑の視線を戎に向けるが、戎は憮然とした口調で

 

「凛を探す時間はいくらでも掛かっていい。だが、君と凛に持たせた水や食料も限られたものだ。見つけるなら、早いほうがいいだろうな……………ついたぞ」

 

言われるがままに車を降ろされる。目の前には生い茂る緑の木々、地図では分からなかった険しい自然が広がっていた。地図からかなり広く大きな山だと分かっていたが、実物は秋人が思った以上であった

 

「これを……って、ヒントか何かは…」

 

秋人は小さなリュックと地図、方位磁石を渡される。そして、大きな山に呆然とし振り向いた時、車は無情に走り去っていた。

 

 

*****

 

 

そして、現在

 

「まだ先…か、でも、もうすぐ頂上に着くはずだ」

 

秋人は地図に方位磁石を照らし合わせながら歩みを進める。この手慣れた作業、実はヤミに『戦闘は出来なくてもいいですから、もしもの時に身を守れるよう覚えなさい』と叩き込まれたものだ。

 

毎朝の徒競走による体力づくり、帰り道と家での"金色印の緊急事態・克服講座"による知識補充。秋人は金色先生のおかげでもしも(・・・)の時もなんとか出来ていた。

 

ちなみに余談ではあるが、金色先生は鍛え終えた秋人と共に宇宙を旅することを当然計画している。もちろん、二人っきりで。

 

「っと…暗くてよく見えないな…ライト、ライトっと……」

 

すっかり夕暮れとなった山は昼間とは不気味さの度合いが違っていた。ヤミのように気配探知などできないが、今にも茂みから何かが出てきそうで秋人は息を呑む。懐中電灯を片手に疲れを感じる足を叱咤するように叩き、獣道を進む

 

と、そこに

 

「…罪を、拾いに来たぜ」

 

猛獣より酷い怪物が現れた。

 

「え…?誰だ、アンタ」

 

突然現れた男は全身黒ずくめ、襟口が大きく開いた黒のロングコートを羽織っていた。とても登山者に見えない長身の男は、異質な空気を纏わせて秋人を睨んでいる。濡れる黒髪から垣間見える瞳は陰鬱そうに細められ、今にも襲い掛かってきそうだ

 

「っていうかいきなり出てくるなよ、びっくりしただろ」

「フッ…それはお前に"罪"があるからだ。不幸を届けに来たぜ」

「は?罪?」

「そうだ。"虚ろう者"よ…今、お前の手には"罪"がある」

「罪ってなんだよ?地図とライトしか持ってないぞ、水とか食料ももう無くなったしな」

「…それが、虚ろうお前が持つ"罪"だ。」

 

ザッ

 

細い獣道を塞ぐように黒ずくめの男が立ち塞がる。男は秋人を睨みつけ、威圧のプレッシャーを全身から放った。放たれた強烈で重いプレッシャーは周囲の動物たちを直ぐ様遠ざける、何千羽の鳥たちは山を飛び立ち、地を這う獣たちは一斉に走り逃げ出した。

 

強烈過ぎるプレッシャーは歴戦の勇士ですら恐怖で動けなくするものだ。秋人を真正面に捉え、男は獰猛な笑みを浮かべる。まるっきり肉食獣を思わせる凄みのある笑みは、例えば『ムチと念力を得意とする殺し屋』なら見ただけで失神してしまうだろう

 

秋人は名も知れない男に道を阻まれ、意味もわからず威圧されたがすぐに答えに辿り着いた。

それは金色先生もスパルタ山特訓で同じ過ちをしたことが―――

 

「…もしかして、迷った?」

「…。」

 

男は、クロはコクリと頷いた。

 

―――過去にあったからだ。

 

 

6

 

 

「こっちか…!」

「いや、そっちは逆だぞ。しかもさっき通ってきた道じゃねぇか」

「フッ…気配がしただけだ、"組織"のな」

「なんのだっての…そんなんだから、びしょ濡れになるまで迷ったんだぞ」

 

草をかき分け、クロと二人で山を登る。気温も下がって周りは既に真っ暗闇だ。高々と生い茂る木々のせいで星空さえも見えない。

 

クロには出会ったその場で地図を片手に説明したが、説明していくうちにクロの顔色がどんどん青くなり、最後には冷や汗まで流していたので秋人は仕方なく連れて行くことにした。

 

「ところで、"虚ろう者"よ。何処に向かってるんだ」

「"虚ろう者"って『道に迷った人』って意味だろ?俺は迷ってないっての」

「フッ…お前には"罪"があるから"大罪へ至る道"が解かるんだったな、」

「"罪"って『地図』のことか…『街へおりる大きな道』も分かるから心配すんな。凛と合流したら案内してやるよ」

「フッ…ならば、それまで俺はお前の露払いをしてやろう」

「はいはい、露払いの意味は…そのまんまだな」

 

クロが先を歩み、結露した草木をかきわけ進んでくれるので秋人は後ろで楽ができた。ムダに長く、やたら丈夫そうなロングコートのおかげでクロ自身も問題なさそうだ。聞けばクロはずっと山の中をウロウロウロウロ彷徨っていたらしい、夜露で全身びしょ濡れになるまで…

 

まぬけな同行者だが、一人より二人。秋人は心に随分余裕が出来たのを感じていた――――凛は、今もひとりのはずだ。無事、だろうか…

 

「…ところで、俺の"相棒"を見せてやろうか」

「そう簡単に『武器』を見せびらかすんじゃないっての」

「フッ、俺の"相棒"は気が短い。一度怒らせたら周りを死の静寂に包むまで止まらないぜ」

「お前はいつもどんだけ乱射してるんだっての…」

「見ろ!"虚ろう者"よ!この俺の"相棒"を…っ!」

「だから見せんなっての!ああこらっ!銃を近づけるんじゃねぇ!あぶねぇだろ!」

「フッ…"相棒"は俺の精神を喰らい、弾丸に変えて撃つ。つき合わされる俺は仕事を終えたら当分動けなくなる。敵の"組織"が黙ってないからな、暴れた俺もしばらくはダンマリだ。」

「疲れきって寝たいだけじゃねぇか!お前って残念なイケメンだな…」

 

クロの言っていることが分かるのが悲しい。同じ男だから、こういう言葉がわかってしまうのだ。

 

と、そこへまた

 

「なるほど、ここがドクター・ミカドを拉致するに適したポイントか、見晴らしも…」

 

巨漢のサングラス男が茂みから出てきた。

 

「…誰だ貴様ら」「フッ…」「いてっ!いきなり止まるなよ、顔打っただろ」

 

現れた巨漢の男はどう見ても地球人ではなかった。なぜなら男は地球より文明レベルの高い服を身に纏い、耳や指の形も人と違う。服を構成する特殊繊維はクロの着ているものと同じ、地球外製のものだ。クロは戦闘態勢へと移行しながら思考を巡らせる

 

―――白のロングコートとサングラスの男。たしか、殺しの請け負いや武器の密輸・製造、あらゆる軍事を行う組織(マフィア)で………組織(マフィア)で………組織(マフィア)で?

 

「フッ………ダメだ、思い出せん。」

「おい、クロ、なに止まってんだっての…さっさと歩けよ」

「何者だ貴様らは、まさか今の話を聞いてたんじゃないだろうな…――ってクロだと!?あの殺し屋クロかッ!?」

 

巨漢の男は青ざめる。"殺し屋クロ"といえば超一流の殺し屋、闇の世界で知らない者など一人もいない。連れている部下も少ない今では勝ち目はなかった

 

「フッ………ダメだ、よく見てもまったく分からん」

「ん?なんだ?なんか居んのか、よっと…………だれ?」

「…ッ!クロが二人!?殺し屋クロには弟が居たのか!?」

「はあ?」

「フッ…」

 

秋人を背で庇うように立つクロ、驚愕に後ずさる巨漢の男、その影から次々と部下が現れる。

 

「ボス…どうかしましたか」「…敵ですか」「そうですー!ココに御門先生はよく来るんですよー!体に良い薬草がたくさん生えてるんだそうですー!たまにつまみ食いしてますよー!」

 

クロに庇われ見えない視界で秋人はよく知る口調でしゃべる声を聞いた。だが、知っている三つ編み少女はその口調でしゃべる声じゃない、まさか…

 

「…お前は"赤毛のメア"か、知っているぞ。"金色の闇"と同じ生体兵器だな」

「違いますです(・・・・)!失礼ですねアナタは!私は"神の使いサイレント"です!」

「フッ…いつの間にか知らん組織が増えたらしい」

「…俺は何も聞いてない」

 

「おい、答えろ生体兵器…ソイツらは何だ」

「この人達はですねー、御門先生(※の能力)に一目惚れされたそうで、コッソリ呼び出して告白(※マフィアへ勧誘)したいそうですー!」

「…何?」

「御門先生もいいお年ですし、小じわも増えてきましたし、ティアーユ先生に女で負け越す前に!今のうちに良いお相手を見つけてほしいです!」

「…俺は何も知らなかった」

 

「ミカド、ティアーユ…知っているぞ。確か、二人ともかなりの科学者だったはずだ」

「そうです!研究ばっかりしてないで女の幸せを味わってほしいです!『お静ちゃんの魂を別の身体に移す実験が上手く行ったら、これで私も若返…なんでもないわ』なんて怪しげな事言わないでほしいです!恐ろしいですっ!」

「フッ…」

「…これは覚えてたらダメなやつだな」

 

微妙に噛み合わないクロとサイレントの会話を背に隠れながら秋人は聞いている。そして、先程まで居たはずの男たちは消えていた。クロもサイレントも元々関心が薄かったせいか気付いていない。

 

「ボス、どうしますか。このままでは我々の計画が…」

「シッ…心配いらん。こちらにはあの生体兵器もいる、うまく利用すればクロも倒せる…今は待て」

 

三人から密かに距離をとり、姿を隠した男たちは策を練っていた。それぞれ手に暗器を携えクロの油断した瞬間を待つ

 

「…よく分からんが、結局アイツらは何者だったんだ。悪者じゃないのか」

「さっきから失礼ですねー!アナタ!神にーさまに言いつけますよ!でも、ちょっと気になるから調べてみましょう――――」

「…とにかく、俺はそんな命令はしてない。何も知らなかったって事でいこう」

 

サイレントは携帯電話を取り出し、長く編んだ三つ編みを突き刺した。全身にナノマシンの輝線を走らせ、電脳世界へアクセスする。

 

キィィイイイイイイイイイン

 

遺伝子操作の証である朱い髪から漏れる光が、ただでさえ神秘的な容姿を神聖なものにまで押し上げている。風もないのに光を宿す朱髪がたなびいて揺れていた。

 

そして、"神の使いサイレント"は薄い唇を開き語り始める―――…

 

「『曖昧さ回避 「とらぶる」は漫画作品およびそれを原作とするアニメについて説明しているこの項目へ転送されています。その他の「トラブル」については「トラブル (曖昧さ回避)」をご覧ください。』」

「…なんの話だ」

「ウィ○ペディアじゃねぇか!もうやめろお静!それ以上は危険過ぎる!」

「あ、神にーさまー!」

 

秋人の声にサイレントから神秘的な雰囲気が消失し、表情もほのぼのとしたものに戻る。会えて余程嬉しいのか手まで大きく振っていた。秋人はクロを押しのき、お静inメアの肩を掴み大きく揺さぶる

 

「お前は!お前は!まったく!ホントにやるやつがあるかっての!」

「へ?へ?うあぁああ~んやめて下さい~神にーさまぁ~!地面がぐらぐらしますぅぅ!」

「いいからさっさと出ろっての!メアに身体を戻せっての!後で俺が怖い目にあうだろが!早くしろ早く!」

「うあぁあああぁん!揺らさないで下さいましぃい!勝手に口から声がぁあああぁサイレントヴォイスがでますぅぅう!」

「だからそういうのやめろっての!この迷惑オバケが!」

「迷惑オバケとはなんですかぁあああああぁあうあうああう!」

「フッ…お前たち、楽しそうだな」

 

「…今だッ!殺れっ!」

 

木々の影から男たちが飛び出し、三人へ襲いかかる。闇に閃くマズル・フラッシュ、轟く銃声。巨大なバズーカ、マシンガン、銃火器全ての弾丸はクロに向かい放たれていた。

 

「フッ…―――そのまま大人しくしていれば、死なずに済んだのにな」

 

振り向かないクロが引き金を引く。黒い装飾銃から放たれた弾丸は蛇のようにうねりながら目標を撃ち抜いた。着弾――爆音。

 

「なっ…!?」

「怯むな!撃ち続けろ!」

 

気の短い男たちが弾丸の雨を浴びせる中、背中越しに撃たれる『追跡(ホーミング)弾』はクロと秋人たち三人を守り続ける。円を描くように回り迎撃する銃弾は最小限の動きで全てを弾き、爆発させる。三人の周りが爆炎に包まれ黒煙を放っていても、秋人たちは吸い込むことさえない。

 

「…お前たちにはこの二人を傷つける危険さが分からないらしい。妹の赤毛を傷つけられたら"金色の闇"は黙ってないだろうし、"虚ろう者"を傷つけられたら……考えたくもないな」

 

爆炎が晴れる。

 

「死ね!クロ!」

 

ボスと呼ばえていた男が武器を構え、狙い撃つ。くるりと振り向き、標的(ターゲット)にされる二人を背で庇いながらクロは

 

「俺はザコに全力を出すバカな獣とは違う……――――――――――喰らえ!『電磁光弾(レールガン)』!」

 

最高出力で引き金を引いた。

 

 

7

 

 

「なぁ、コイツらにココまでする必要あったのかっての。見た感じザコっぽいぞ」

「フ…ッ……」

「なんかこの黒い人も真っ白になってますねー神にーさま。とりあえず皆さんまとめて御門先生のところに連れていきますね」

「ああ、頼んだぞ」

「ふ………ッ、もえつきたぜ……まっしろ」

「お静、コイツが危ないこと言い出す前にとっとと連れていけ」

「はぁーい、おまかせ下さい!神にーさま!」

 

クロと襲ってきた武装組織・ソルゲムの戦闘員たちを引き連れお静inメアは飛び去っていった。朱い髪を変身(トランス)させ木々のカーテンに穿たれる大穴へと、夜の空へと消えてゆく。大きな満月の中にひとひらの朱い花びらが消えていった。

 

「さて、行くかね…クロのおかげでだいぶこの森荒らされたな…歩きにくいっての」

 

硝煙のモヤが立ち込める中を秋人は進む。クロの全力全開・最高出力の『電磁光弾』のおかげで森と空の間に空洞が生まれ、夜空が見えていた。今日はとても美しい月夜だったらしい。

 

「凛は今どこにいるんだろう、もしかして同じ月を見てたりとかは…ないな、修行してそうだ」

 

 

一方その頃、凛は――――

 

 

「…秋人は今どこにいるんだろう。無事でいるといいが………しかし沙姫様も味なことをされる、"秋人が私のもとに無事たどり着けたら――"などと…」

 

凛は手元の地図に目を落とす、地図には一箇所だけ印がなされていた。その場所こそ、凛が今いる場所だ。

 

秋人の地図と同じ物だが秋人の地図には印が五つ。その中に一つ、凛の居場所が含まれているらしい。秋人が凛の居場所を選び取れれば秋人の勝ちだ

 

しかし、実際には五つの全てがダミーだった。つまり秋人が地図に従い、印の場所に辿り着いても凛には会えない。こんな事はもちろん、凛は知らないことだった。

 

娘を溺愛する策士な執事は『そのポイントへ向かうはず』と言い『その場所に凛がいる』とは一言も言っていない。印はダミーであり、探す場所は広大な森という難易度の高い試練だった。

 

『ダミーの場所を地図から選び、もしその場所へ着いたら…そこでこの山ごもりは強制的に終了とします。所詮、彼はその程度の男ということです。運命の相手ならば地図に騙されず凛の元へたどり着くはずですので…』

 

という執事長の無茶苦茶な発案を主の沙姫が取り入れた結果である。"運命の相手"という一言に心惹かれたのだ。

 

沙姫の頭の隅では『もはやデートでもなんでも無いですけど…いいんですか?!』と正論を訴えているが、そんな邪魔な理性など、背負い投げからの片十字絞。片十字絞は、交差した手で襟を握り首を絞める技である。喧嘩女王(クイーン)により沙姫の理性はしっかり絞め落とされていた。

 

「それに、どこかで爆発の音も聞こえたが…秋人は無事なんだろうか。探しに行きたいが、私が動けばすれ違う可能性が高い。今は信じて待つしか無いか…――――待つというのはとてもつらいな、秋人…」

 

言葉の最後はとてもか細く、森の静寂の中へと消えていった。この時、凛は初めて自分自身の弱さを知る。

 

この山ごもりは沙姫の気まぐれがきっかけでも、父の意地悪な発案が元になっていたとしても、凛にとっては自分の心を見直すいいきっかけとなっていた。

 

確かに九条凛は秋人と出会ってから、平常心ではいられない事がたくさんある。鍛錬の最中でも秋人の顔が思い浮かぶと平常心ではいられずいつものように動けず、厳しい修行でたどり着けていた無我の境地に居られなくなるのだ。

 

「…こんな様では父上を悪くは言えないな、早く昔の勘をとりもどなければ」

 

凛は袴の襟を正して気合を入れ直し、弓を構える。『射法八節』のイメージを頭に浮かべながら身体を動かしてゆく―――

 

『射法八節』とは矢を放つまでに行う八つの動作のことである。

 

『足踏み』で土台となる下半身をつくり、『胴造り』で土台となった下半身の上に弓を構える姿勢を作る。姿勢が出来たら『弓構え』て『打ち起こし』で弓を持ち上げ、『引き分け』で弦を引き始める。めいいっぱい弦を引いたら『会』で気力の充実を待つ。そして『離れ』で矢を放ち、『残心』で姿勢を保つ

 

この連続動作を『射法八節』と呼び、これが弓道の基本となっている。凛は剣道だけでは補えない心の修行を弓に求めていた。ちなみに、万能剣であるブラディクスver2.0は家に放置してある。飛ぶ斬撃や身体能力向上はいいのだが後から『踏んでくれ踏んで下さい』と煩いのだ。

 

ヒュン!

 

山中に開かれた野原で、凛は迷いを解き放つよう一心不乱に矢を放っていた。

 

 

8

 

 

「おおう…、これは凄いな…」

 

深い谷とボロボロの吊橋。秋人もこんなものを見るのは初めてだった。

 

「……深いな」

 

秋人は立ち止まり渓谷を覗き込む。谷底を覗き込んでも白い(もや)がかかって底は見えない、落ちたらまず命はないだろう。吹き上がる谷風に頬を撫でられ、秋人の背筋に冷たいものが走った。

 

「で、この吊橋で渡れ…ってボロすぎだっての、何年ものだよ」

 

吊橋はロープも古く橋床も朽ちかけていた。ロープを留めている支柱も、蹴飛ばせばへし折れてしまいそうなくらい年季が入っている。

 

向こう側までは10メートル以上あり、ジャンプではとても渡れそうにない。谷を渡るには目の前にあるボロい吊橋の他はなさそうだった。『もしかしたら別の橋が』と秋人は思わない。なぜならこの山ごもりはアホ女王(クイーン)沙姫プレゼンツであり、あの沙姫が違う道など用意しているはずもないからだ。ちなみに正解である。更に付け加えればボロボロになったのはクロの電磁弾の余波のせいだったりする。

 

「仕方ない…!凛が渡れたなら俺も渡れるはずだっての!」

 

秋人は早速一歩踏み出し、腐食して黒くなった橋床を踏み抜かないよう進んでゆく。慎重に足元を確かめながら進み、橋の中央に到達して「意外に行けるか?」と思い始めた頃、ロープの軋む音にブチブチと嫌な音が混じってきた。吊橋も傾いてきている

 

「げ、これってもしかして………うおおぉ!?」

 

最悪の想像が頭をよぎり、急いで渡ろうと走り出した瞬間、吊橋は崩壊を始めた。前方のロープが断裂してゆき、吊橋が傾いてゆく

 

「まずい…っ!」

 

吊橋は橋の効力を失い、跳ね馬のように暴れる。バランスを崩した秋人は必死にロープにしがみつくが、揺れで連鎖的に橋床が落ちてゆき支柱が吹き飛ぶ、ついには片側との繋がりが断たれてしまった

 

「うおおおおぉおおお!?――――がっ…!」

 

無我夢中でロープにしがみついたまま、岩壁へ叩きつけられる秋人。朽ちた橋床や瓦礫が谷底へと落ちてゆく、落下音すら飲み込んだ谷底は不気味に暗く、まるで秋人が落ちるのを口を開けて待っているようだ

 

「いってぇ…っ!くそっ!焦るな、こういう時こそ平常心だっての…俺!」

 

唐突の緊急事態に秋人は荒い息を吐き続ける、掴んだロープを手に巻き付け、身動きせずじっと堪える。荒い呼吸が少し落ち着きだした時、ピンチ打開の策が思い浮かんだ

 

「そうだ!近くに凛がいるはずだ!だったら何か目印を………………………これで!」

 

懐にしまっていたライトを取り出す、か細い光だが今はこれに頼るしかなかった。

 

「頼むから気付いてくれよ…!」

 

秋人はライトを口に咥え上空を照らす。この光の線に凛が気付いてくれれば、まだ望みはある。

 

一縷(いちる)の望みを光に託し、秋人は空を照らし続けた。

 

 

9

 

 

「ふぅ、こんなものか………」

 

凛は道着の袂で汗を拭った。集中して矢を放っていたおかげで身体には心地いい疲労感がある。秋人に会えず不安な気持ちもほんの少し紛れていた。

 

「ひい、ふう、み………ん。矢は全部あるな」

 

木に刺さる矢を矢筒へ集める。狙いの印に刺さる矢は数本、あとはバラバラに散っていた。それは心の揺れを示しているようで、凛は心の中で溜息をつく

 

的になってくれた木を掌で叩きねぎらった後、凛は気を晴らす為に見晴らしのいい場所に立った。木々の香り強い風が凛の頬をなぶってゆく、袴袖と結った髪が風に任せて靡いていた。

 

「…。」

 

"秋人に会いたくなると、見晴らしのいい場所に行きたくなる"いつの間にか凛はそういうクセがついていた。

 

凛の立つ場所は山の頂、空気は澄みきって景色はとても良い。全てが見渡せる頂は360度のパノラマだ。静かな森、夜の暗闇の中に浮かぶいつもの月はいつものように佇んでいた。

 

静かな月夜はいつも凛の気持ちを落ち着かせない。日常から切り離されたような隔絶感と、寂しく物悲しい気持ちにさせる

 

―――こうして一人、静かで美しい景色を見ていると本当に自分は世界に一人きりという気分になる、消える前に見た時の秋人もこんな気持ちだったのだろうか。

 

凛が知るはずもなかったが、凛の居る場所は秋人の地図に印はない。だが凛は秋人が此処に来ると信じているし、知っている。

 

―――秋人も見晴らしのいい高い場所が好きだ。なら、この場所に来るはずだから…

 

「満月、か………」

 

月の光が頬の輪郭をかたどっている。空を仰ぐ形の良い顎の先に、凛だけの月があった。

 

月光の淡い輝きを宿す横顔はどこか不器用な女の表情を映している。微かに吹く山風は、凛の頬を撫でて黒髪をそよがせる。柔らかそうな頬に乱れた黒髪が数本張り付いていた

 

月と佇む少女は大人びて、美しい。月を仰ぐまま、月に魅了される凛

 

真っ黒い空に浮かぶ白い雲たちが月のまわりを漂っている。木々の葉がさざめく音が優しい癒やしをくれている。

 

凛はそっと目を閉じる。風を感じていたかったから。想う気持ちを止めていたいから。

 

「…秋人……………ん?」

 

目を閉じる寸前、凛は視界の端に微かな光の線を見た気がした。目を開けてみれば光の線は確かにあり、月へ向かって伸びている。

 

「なんだあの光は、あちらの方角には確か…――――!」

 

答えの閃きを得た凛は弾けたように走り出した。

 

 

10

 

 

「…うっ、そろそろ、本気でヤバイっての………っ!」

 

崩壊した吊橋、秋人は極力無駄な動きはせずロープにしがみついていた。それでもロープは徐々に綻んでゆく、ロープが結びついている支柱も秋人の重みに耐えきれず地面から抜け始めている、体力の限界と共に少しずつ谷底へと落ちている感覚があった。

 

目の前の岩壁にはしがみつくような場所もなく、また秋人は道具も何も持っていない。

支柱が地面から完全に抜けてしまったら、谷底へ落ちてゆくことになる……それを防ぐすべは秋人にはなかった。

 

吹き荒れる谷風に揺られ、しがみつく命綱さえも最早風前の灯。過酷な状況は秋人の体力と精神を加速度的に摩耗させてゆく、

 

「凛…」

 

朦朧とする意識の中で秋人は心に住む女の名を呟いた。

 

―――秋人!

 

心の呟きに答えるように声が聞こえる。そう、いつもこんな風に怒ったような心配していたような声で名を呼び、迎えに来てくれる彼女だ

 

「俺にも幻聴が聞こえるとか………とうとう終わりが見えてきたな、幻も見えるんじゃ…」

「秋人!」

「…凛!幻じゃないな!」

「秋人!キミはそんなところで何をしている!」

 

秋人が視線を反対側の崖へ向けると、そこには道着姿の凛が立っていた。聞こえてくる声も見える姿も幻ではない。秋人は咥えていたライトを吐き捨てる、生きて戻る為に小さな光はもう不要だった

 

「秋人!待っていろ!今そちら側へ……くっ!それでは間に合わないか!他に何か方法は…っ!」

 

―――吊橋を渡らず秋人のいる向こう側へたどり着くには、一度下山してからでないと無理だ。それには途方もない時間が掛かる、その間まで秋人の体力もロープも持たないだろう。考えられる唯一の方法といえば…

 

「凛!そこから支柱を射って固定してくれ!それから後は何とかする!」

「!」

 

凛の思い浮かべた無茶無謀な救出方法と秋人の提案は同じだった。

 

「しかしそれは無茶だ秋人!支柱もロープと直線上にある!ロープにかすりでもすれば秋人、キミは…!」

「凛なら出来る!やってくれ!」

「無理なことをいうな!支柱を射って固定など!加減は出来ないんだぞ!?この風の中で狙えるわけがないだろう!」

勝負はイメージが大切(・・・・・・・・・・)なんだろ!?負けると思っていたら本当に負ける(・・・・・・・・・・・・・・・・)んじゃなかったのか!」

「!」

 

それは、秋人が消えた時に春菜に言った凛自身の言葉だった。

 

あの時、凛は春菜にだけは負けたくなかった、負けるわけにいかなかった。秋人を忘れた事にして想いを無かったことにしようとする春菜にだけは。

 

しかし今は違う、見えない鎖に縛られているように動くことが出来ない

 

「ッ!しかし!それは……………秋人!何をッ!?」

 

目を伏せ苦しそうな凛、秋人はその表情を見た後、命綱であるロープを強く引っ張った。その衝撃で支柱は更に傾き、危うく地面から抜けそうになる。凛は思わず悲鳴まじりに叫んでいたが、同時に秋人の意図も分かっていた。前より支柱が傾いたお陰で狙いやすくなっている、その代わりに掴まるロープも秋人自身の命も更に危うくなっている

 

「凛…」

 

頼むよ、そんな事を呟いた秋人の表情(かお)を、凛は今までに何度か見たことがあった。屋上で、あるいは教室で、そして最後は『とらぶるクエスト』の魔王城で…覚悟を決めた男の顔を

 

「秋人…」

 

凛はそんな表情をする秋人を頼もしいと思うと同時に、その表情は好きじゃなかった。そんな表情をする秋人は必ず無茶をする。そして誰かを深く悲しませるのだ。

 

その無茶が一体誰の為か、何の為に無茶をするのか、凛はそれを誰よりよく知っている。知っているからこそ凛は好きじゃないのかもしれない

 

だが、今回はあの時と違っている。消えたあの時は全部秋人一人で考え、秋人が一人で行動した。今の行動は凛を信頼しているからであり、凛一人の為に無茶をしている

 

秋人の心に住む暖かな春のように微笑う女の為でなく、出会ったときから傍に居る九条凛ただ一人の為に――――

 

ならば、

 

凛は無言で弓を手に取った。

 

 

11

 

 

     " この矢は誰の為に射る? "

 

――――…そんなもの、秋人の為に決まっている。

 

『勝負はイメージ、負けると思ったら本当に負ける』

 

春菜に言った私の、秋人が私に言った言葉の通りだ。気持ちで負けてはならない、この恋の勝ち負けだってまだ決まっていない

 

だから、

 

この矢は私が、九条凛が誰より愛する想い人の為に射るものだ。なら、届かないはずがない。射抜けないわけがない

 

だから、

 

凛は息を大きく一つ吐くと、地面の砂利を払い足場を固める。脚は肩幅よりやや大きく開き、肩の力を抜く。頭の中には完璧な『射法八節』のイメージが既にあった。

 

ギッ

 

弓を構え、矢をつがえる。正面からゆっくり打ち起こし、そして弦を引き始める。見えない鎖となっていた恐れや迷いは跡形もない。気負いや緊張すら今の凛の中には微塵も存在しなかった。

 

そして、弦を引き絞る。しなる弓と張りつめる弦、矢の先が目標に重なる…

 

この瞬間、凛は明鏡止水の境地に達していた。

 

波一つさざめきのない精神は知覚能力を極限まで研ぎ澄ませ、風の動きすら瞳に捉えさせている。秋人の呼吸、大地の微かな動き、音、光、風――――それら全てと今、凛はひとつになっていた

 

―――ここは、何処なんだろう

 

そんな疑問がふいに浮かんだ。

 

凛は狙いを定め弦を引き続ける。弦を引ききった姿勢『会』を維持したまま、その瞬間を待つ。吹き上がる谷風が身を叩き、長い一つ結びが大き揺れて頬を打っても凛は微動だにしない

 

吹き荒れる谷風を視ていた凛は先程の疑問の答えを得ていた。その答えは月夜の下、吹き荒れる谷風の中にある――――…そして、その答えを私が、九条凛が(すく)い上げなくてはならない

 

私一人ではきっと此処へは来れない。厳しい修行でたどり着く"無我の境地"とはまた違う、あそこには本当に何もない、自分自身さえも無いのだから当然だ。だから此処はそういう何もない場所じゃない、むしろ沢山のもので溢れている場所だ。世界の何もかもが輝き、何もかもが在ると分かる

 

一人では辿り着けないこの場所はきっと―――

 

「この世界で、行けない彼方…――――今!」

 

美しく澄んだ弦音と共に放たれた矢は、風の隙間を通り抜け狙いと寸分違わぬ場所を貫いた。

 

「すげぇ…………………やったな、凛」

 

凛の放った矢に見とれる秋人、縫い付けられた支柱は地面から離れる寸前だった。

 

 

12

 

 

「ん……はむ、んちゅ」

 

秋人と抱き合い、凛は頬を赤らめながら唇を重ねる。心を解き放った凛にもう遠慮はなかった。

 

「んっ………ちゅ、んんんっ!」

 

月明かりの下、二人は夢中になって口づけを交わし合う

 

救出が成功した後、ふたりして抱き合いながら喜び、それから凛がお説教をして秋人を小突き、「すまなかった」と頭を下げる凛を今度は秋人が抱き締めたのち、二人は自然とキスをしていた。

 

キスの快感に酔いしれて霞のかかる意識の先に、凛はこれから先のふたりの未来を見た。

秋人と共に過ごす未来、穏やかなで幸せな日々を過ごす未来、凛の待つ家に帰ってくる、子供と新たな主人となった秋人との未来が――――

 

たっぷりと長い時間をかけ濃厚なキスを終えると、凛は視線を合わせて言った、

 

「秋人、おかえり……………よく来たな」

「ただいま………………って、おかえり?来たな?」

「ああ」

 

この世界と、私のところにだよ、と微笑む凛が居る場所。その場所を優しい光が降り注ぎ、ふたりをスポットライトのように照らしている。その光の筋の先に、凛と秋人の月があった。

 

「秋人、私はキミの事が好きだ」

 

そう言ってもう一度微笑んだ凛は、月の魔力を帯びて壮絶に綺麗だった。

 

そんな凛の表情に一瞬、秋人の目にも未来が見える、着物を着る清楚な大和撫子を感じさせる妻が微笑んでいる。それはいつかの夏に見たお伽噺の姫のようで――――

 

「だから行こう、ふたりでしか行けない場所に」

 

凛の辿り着きたい場所、凛と秋人のふたりなら行ける場所。その場所は毎朝訪れる陽の光のように暖かく、そして―――そこでは世界の何もかもが輝き、何もかもが在る

 

地球から月よりも遠いその場所は、決して帰ってこれない場所じゃない。だけれど、凛と愛する男のふたりでしか行けない彼方だ。

 

「なに、心配するな秋人。ふたりならちゃんと行ける場所だぞ、一人では行けないが」

「そう言われると大変な場所っぽいな…この山だけでも殺し屋っぽい宇宙人が出てきて大変だったってのに」

「二人で進むのが難しくなったら、人数を増やせばいいな。秋人、私は子どもは沢山欲しい…弓道や剣道の大会ができるくらいに」

「………それって何人?」

「団体戦だと基本は五人一組だが…大会だからな、チームは大勢いるだろうな。となると家も道場も手狭になるか。となると沙姫様に相談せねば………ね、秋人」

 

いつもの真面目な"凛"とした表情で思案にふけったかと思ったら、急に顔を赤らめてもじもじと視線をそらす凛、あまりの可愛さに固まる秋人

 

「ゆっくり……ぶ、分割でいいよな?」

「分割はいいが、ゆっくりはダメ…――――――――んっ」

 

口づけを交わすふたりのいる場所、その足元で月光と朝日の入り混じった光が風に揺らいでいる。朝露の中で光が輝き、抱き合うふたりを写し込んでいる。抱き合いながらキスに夢中な凛は見ることさえできないが、世界はその美しさを知っている。二人が輝きの中にいることを―――

 

 

もうすぐ、夜が明ける――――そうしたら、また日々が始まる。

 

朝起きたらごはんを食べて、ふたりして学校に行く

 

学校では授業を受けて、おしゃべりをして、終わったら一緒に帰る。

 

たまには寄り道だってするかもしれない。

 

笑ったり怒ったり、思い悩んだり、楽しかったり嬉しかったりすることもあるだろう。

 

秋人が傍にいさえすれば、凛にとっての全てのものはそこに用意されている

 

そんな幸せな日々はふたりでしか行けない―――――――――ふたりだけの、世界の彼方

 

 

                                       終わり




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2017/04/15 一部改訂

2017/04/20 一部改訂

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