ダンジョンに裸で潜るのは間違っているだろうか 作:白桜 いろは
――“
迷宮都市オラリオには、そう呼ばれる一人の冒険者が居る。
曰く、
曰く、彼は万年金欠にして、ダンジョンに防具すら身につけず潜る戦闘狂。
加えて、曰く――彼の目の前に立つ時は己の得物を隠す事を努々忘れる事なかれ。
光刃煌めく君の
――……。
「余計なお世話だこの駄神が!どうせ犯人はお前だろ、変な噂を流すんじゃねぇ!おかげで酒場で散々言われたじゃねぇか!いくらなんでもそこまで飢えてはないっての!」
「やかましいわねこのお馬鹿!“美女より血の滴る剣を”なんて座右の銘の馬鹿にはピッタシの言葉でしょうが!美の女神たるこの私に見向きもしないでまた変な武器を買ってきたくせに!これ以上噂を広めて欲しくなかったら、そんな風に無駄に金を使う前にちゃんと私に貢ぎなさいよ!」
「んだとコラ!」
「なんですってぇ!」
暗い裏路地に面する一つの小さな部屋の中で、二人の人間が互いに睨みを利かせていた。
片方はボロボロのズボンをはき、同じくボロ布を上半身に巻いただけの男。鋼色に輝く短髪を乱雑に切りそろえただけの、野犬を思わせるような獰猛な風貌をしている。
もう片方は一転して、新品の扇情的な白ドレスを身に纏った美女である。緩くウェーブのかかった金髪を腰近くまで垂らし、翡翠色に輝く大きな瞳が美しく整った小顔にくりりと輝いている。十人中十人どころか、世界中の老若男女の誰に聞いても“美しい”と返される美女である。
「「ふんぐぎぎぎぎぎっっっ!!」」
その二人が埃だらけの小さな部屋でメンチをきかせる――そんな馬鹿馬鹿しい光景。
彼らは互いの顔を後一センチにまで近づけながら、互いに腕を組んでにらみ合う。
「大体貢ぐって、んな逆ハーみたいな生活で散々男共を騙した挙げ句に奴らに逃げられた馬鹿が言うんじゃねぇ!村から出てきたばかりの俺が加入してなきゃ、今頃路頭を迷ってたくせに!」
「ハン、馬鹿なことを言うんじゃないわよ!それにあれは逃げられたんじゃないのよ、使えないゴミだから私の方から切っただけに決まってるじゃない!」
「「あぁん!?」」
これがたった一人の冒険者“戦鬼”しか抱えていない“アフロディーテ・ファミリア”、その日常であった。
「大体武器ばっかりに金を使って防具すら碌に買わないアンタに馬鹿って言われたくないわよ!そんな裸同然の装備でダンジョンに潜るなんて脳みそが足りてないんじゃないのこの馬鹿!」
「実用品すら揃えず上納金でドレスばっかり買ってる、金勘定の“か”の字も知らない自称美(笑)の女神様にこそ言われたくないわこの馬鹿!」
そんな二人の仲睦まじい喧騒が、今日も月夜に響き渡る。
コレは、武器に魅せられた一人の少年と、美が形を成した一柱の女神。
彼らの紡ぐ、とある一つの