超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第八話 顔面強打

「生命力を斬撃に?」

 

白夜叉の言葉に十六夜は眉根を寄せ尋ね返す。

 

「それって危険なんじゃ………」

 

飛鳥は困惑した表情を浮かべ、聞く。

 

耀は一見無表情だが、内心かなり焦っていた。

 

「お主たち、生命力とは何だと思う?」

 

白夜叉の行き成りの質問に全員が困惑し、首をかしげる。

 

「生命力とは命とは違う。生命力は、人間だけでなく動物、植物、果ては修羅神仏にとって生きるための行動をするためのエネルギーじゃ」

 

「どういうことだ?」

 

「要するに生命力とは電池、命とはモーターみたいなものじゃ。モーターを動かす電力が無いとモーターは動かん。生命力とは生きるための動力源じゃ、すなわち、私たちは無意識のうちの生命力を消費し、生きている」

 

白夜叉の説明に一同は納得し、話を続ける。

 

「さらに言うと、生命力は回復する。寝る、遊ぶ、食う、もしくは個人の趣味をするなどでな」

 

「要するに娯楽で生きるための英気を養うみたいなもんか」

 

「そう言った解釈で構わんだろう」

 

そう言うと白夜叉は眠る蓮花を見る。

 

「蓮花のあの斬撃は生命力を攻撃手段に変換したものじゃ。生命力は生きるための意志と言っても過言じゃない。その意志は時に、とてつもなく強力なものになる時もある。蓮花のあの技は、その意志を無理矢理引き出して攻撃に変換したんじゃろう」

 

「なら、なんで態々止めたんだ?」

 

「そうね、生命力が回復するならあの技を止める必要はないわね」

 

十六夜と飛鳥の言葉に、白夜叉は溜息を吐き、少し無言になってから話をした。

 

「蓮花のあの斬撃は消費が桁違いじゃ。例えて言うと、一日で回復する生命力が10とすると、一回の斬撃で消費する生命力は100ぐらいじゃろう」

 

「回復が追いついてないってことか?」

 

「うむ。超回復・超再生のギフトで強制的に眠りにつくことで、無理矢理生命力を回復しているだろうが、恐らくそれも間に合ってはおらんだろう」

 

白夜叉はそう言って、四人を真剣な目で見る。

 

「蓮花の事で一番に気を付けないといけないのは、生命力を空にすることじゃ。生命力を回復させるには、ほんの僅かでも生命力が残ってないといかん。食事や睡眠で生命力を回復させるにも、生命力は必要じゃ。生命力が残ってないとその行為をすることができない。そして、生命力が無くなった場合、どうなるかは分からんが、蓮花にとって良くないことが起こるはずじゃ。よいか?なるべく、あの技は使わせてはならん。仮に使ったとしても一回の戦闘で一回きりじゃ」

 

「う……う~ん………」

 

そこで、蓮花が唸り声を上げ、頭を上げる。

 

「あれ?僕どうしたんだっけ?」

 

「よぉ、起きたか。蓮花」

 

「お主は、私とのゲームの後、気を失ったんじゃ」

 

「じゃあ、僕負けたの?」

 

「いや、この勝負は引き分けでよい。さて、お主にもこれを渡しておくかの」

 

そう言って、白夜叉は蓮花にパール・ホワイトのギフトカードを渡す。

 

「何これ?」

 

「それはギフトカード。正式名称を“ラプラスの紙片”と言い、所持してるギフトのギフトネームを現す。顕現しているギフトを収納できる超高価なカードじゃ」

 

「へ~」

 

そう言う、蓮花の手にあるギフトカードには

 

“ライフリカバリー”

“ライフキャパシティオーバー”

“薄氷の生命”

“穢れた太陽”

“名刀:鬼灯”

“吸命ノ御業”

 

と、六個のギフトが記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話しも終わり、コミュニティに帰ろうとし、白夜叉が見送りに来てくれた。

 

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

 

「あら、駄目よ、春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むものだもの」

 

「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」

 

「僕もいつか本気のシロちゃんと戦いたいな」

 

蓮花は白夜叉と仲良くなり、いつの間にかシロちゃんと呼んでいる。

 

「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。蓮花とはごめんじゃがの」

 

酷い!と言いながら、蓮花がショックを受ける

 

「………ところで」

 

白夜叉は微笑を浮かべるがスっと真剣な表情で四人を見てくる。

 

「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」

 

「ああ、名前と旗の話か?それなら聞いたぜ」

 

「なら、“魔王”と戦わねばならんことも?」

 

「聞いてるわよ」

 

「………では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 

「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」

 

「“カッコいい”で済む話ではないのだがの………全く、若さゆえなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが………そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」

 

その言葉に全員が息を飲む。

 

「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧達はともかく、おんしら二人の力で魔王のゲームは生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ。」

 

「……ご忠告ありがとう。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」

 

「ふふ、望むところだ私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。………ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」

 

「嫌です!」

 

黒ウサギが即答する。

 

「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯を遊んで暮らせると保証するぞ?三食首輪付きの個室も用意するし」

 

「三食首輪付きってソレもう明らかにペット扱いですから!」

 

そんな大騒ぎをしながら、蓮花達はコミュニティへと帰った。

 

ちなみに、蓮花はコミュニティまで十六夜の背中に乗せてもらっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サウザンドアイズから出た一行は、ノーネーム本拠の門前に到着した。

 

「この中が我々のコミュニティでございます。しかしこの近辺はまだ戦いの名残がありますので……」

 

黒ウサギは躊躇いながらも門を開ける。

 

「っ、これは…!」

 

飛鳥は思わず息を飲んだ。

 

それは皆もそうだった。

 

そこは廃墟となり、生活感は何一つなかった。

 

「…おい黒ウサギ。魔王とのゲームがあったのは今から何百年前の話だ?」

 

「……僅か三年前でございます」

 

「…ハッ、この風化しきった街並みが三年前だと?」

 

十六夜は風化した木材を拾い握りつぶす。

 

「……断言するぜ。どんな力がぶつかってもこんな壊れ方はあり得ない」

 

「ベランダのティーセットがそのまま出ているわ。これじゃまるで。生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」

 

「……生き物の気配も全くしない。整備されなくなった人家なのに獣がよって来ないなんて…」

 

「…魔王とのゲームはそれほどに未知の戦いだったのでございます。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心をおられ…去っていきました」

 

それを聞き、誰もが言葉を発さなかった。

 

そんな中、最初に口を開いたのは十六夜だった。

 

「随分と愉快なことしてくれるじゃねぇか。この借りはきっちり、利子付けて返さないとな」

 

笑ってはいるが、怒りをあらわにし、十六夜は風化した敷地内を見つめる。

 

「絶対に、名と旗印を取り返さないとね」

 

蓮花はそう言い、自分の足で歩き出す。

 

そして、歩き出して数歩で転び、頭を地面に打ち付けた。

 

「…………黒ウサギ、お嬢様、春日部、当面の目標はここら一帯の通路の整備にしようぜ」

 

「YES。黒ウサギも、激しく同意なのです」

 

「私も賛成よ」

 

「右に同じ」

 


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