超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第五話 背骨骨折

「な、なんであの短時間で“フォレス・ガロのリーダーに接触してしかも喧嘩を売る状況になったんですか!? しかもゲームの日取りが明日!?」

喧嘩を売る状況になったんですか!?”」「しかもゲームの日取りが明日!?」

「それも敵のテリトリー内で戦うなんてッ! 準備する時間もお金もありません!」

「一体どういう心算があってのことです!? 聞いているんですか四人とも!!」

 

ガルドとギフトゲームをすることを黒ウサギさんに言うとウサ耳を逆立てて切れた。

 

「「「ムシャクシャしてやった。反省しています」」」

 

「黙らっしゃい!!」

 

口裏を合わせていたような言い訳に黒ウサギさんは激怒した。

 

逆廻君はニヤニヤ笑っている。

 

「別にいいだろ。見境なしに喧嘩を売ったわけじゃないんだしよ」

 

「十六夜さんは、面白ければいいと思いますが、この“契約書類(ギアスロール)”を見てください」

 

契約書類(ギアスロール)”とは“主催者権限(ホストマスター)”を持っていない者たちがギフトゲームをする時に必要なもので、そこにゲーム内容、チップ、賞品が書かれていて最後に“主催者(ホスト)”が署名をして成立する。

 

ちなみに、内容はジン君たちが勝てばガルドは全ての罪を認め箱庭の法の下に正しく裁きを受け、その後、コミュニティを解散する。

 

もし、負けたら、ガルドの罪を黙認すること。

 

「はぁ、仕方がありませんね。まぁ、いいです。“フォレス・ガロ”相手なら十六夜さん一人いれば楽勝でしょう」

 

それって逆廻君って強いってことなのかな?

 

「何言ってんだ。俺は参加しねえよ」

 

「あら、分かってるじゃない」

 

逆廻君と飛鳥ちゃんの発言に黒ウサギさんが慌てる。

 

あ、ちなみに友達になったから久遠さんと春日部さんは名前呼びになったよ。

 

名前で呼んだら何故か顔を赤くしてたけどなんでだろう?

 

「ダメですよ!コミュニティの仲間なんですからちゃんと協力を」

「そういうことじゃねえよ。この喧嘩はコイツらが売って、ヤツらが買った。それに俺が手を出すのは無粋だってことだよ」

 

「あ、そうだ。聞いてよ逆廻君。僕が売った喧嘩なのに、三人共僕には参加するなって言うんだよ」

 

「「「こんな脆い人連れて行くのは心が痛むから、無理」」」

 

「ナイス判断だ」

 

逆廻君は僕の味方じゃなかった。

 

悔しい…………

 

「………もう、好きにしてください」

 

肩を落とし困り果てる黒ウサギさんだった。

 

「あはは……それじゃあ、今日はコミュニティに帰る?」

 

ジン君が苦笑しながら黒ウサギさんに聞く。

 

「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰り下さい。ギフトゲームが明日なら“サウザンドアイズ”にギフト鑑定をお願いしないと」

 

「“サウザンドアイズ”?コミュニティの名前か?」

 

「YES。"サウザンドアイズ"は特殊瞳のギフトを持つ者達の群体コミュニティで、箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

 

「ギフト鑑定ってのは?」

 

「ギフトの秘めた力や起源などを鑑定することです。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出所は気になるでしょう?」

 

知らなくてもいいけど、折角だし知っておこうかな。

 

 

 

 

“サウザンドアイズ”へ向かいながら町の様子を眺める。

 

途中、桜の木のようなものがあり、飛鳥ちゃんが不思議そうに呟く。

 

「桜の木……ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けるはずがないもの」

 

「いや、まだ、夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

「……?今は秋だったと思うけど」

……?今は秋だったと思うけど」

 

「あれ?まだ冬じゃなかった?」

 

かみ合わない会話に僕たち四人は頭をかしげる。

 

「皆さんは別の時間軸から呼ばれました。元いた時間軸で歴史や文化、生態系など所々、違いがあるはずです」

 

「パラレルワールドってやつか?」

 

「正しくは立体交差並行世界論というものですけど、説明はまたの機会に」

 

そう言って黒ウサギさんは案内を再開する。

 

「ねぇ、逆廻君」

 

「あん?」

 

「立体交差平行世界論って何?」

 

「説明してもいいが、一日二日かかるぞ」

 

「やっぱいいや」

 

「はいよ。後、俺のことは十六夜でいいぜ」

 

「なら、僕の事も蓮花でいいよ」

 

十六夜君と話しているといつの間にか“サウザンドアイズ”の支店に着き、ちょうど店の店員が暖簾を下げるところだった。

 

「まっ、」

 

「待った無しですお客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

「なんて、商売っ気のない店なのかしら」

 

「全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

「文句があるなら他所の店へどうぞ。あなた方は今後一切出入りを禁じます」

 

「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!」

 

文句を言う黒ウサギさんに対し、冷めたような目をする店員さん。

 

「確かに“箱庭の貴族”である月の兎のお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を窺いますのでコミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

店員さんがそう言うと、黒ウサギは言葉を詰まらせる。

 

名前ないから、仕方ないか。

 

「俺達は“ノーネーム”ってコミュニティなんだが」

 

十六夜君が躊躇いもなく名を名乗る。

 

「どちらの“ノーネーム”様でしょう。旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか」

 

このままじゃ中に入れてもらえないから、幼馴染に教えてもらったあの方法を使う。

 

店員さんは近づいて来る僕を警戒し、身構える。

 

そんな店員さんに、僕は上目遣いになり、首をかしげる。

 

「……お願い、入れて」

 

か細く言うのがポイントらしい。

 

「「「なっ!?」」」

 

すると何故か飛鳥ちゃんと耀ちゃんが顔を赤くして短く声を上げて、何処からか白髪の小さな女の子が短い悲鳴を上げて落ちて来た。

 

誰?

 

「おい、蓮花。今の何だ?」

 

「幼馴染から教えてもらったお願いの方法。これ使うと大抵の人はお願い聞いてくれるんだ」

 

「……そうか」

 

十六夜君は何故か引き攣った笑顔をして、白髪の女の声を拾い上げる。

 

「で、お前は何もんだ?」

 

「し、白夜叉様!?」

 

十六夜君が拾い上げた女の子を見て、黒ウサギさんが声を上げる。

 

知り合い?

 

「おお!黒ウサギ!やっぱり私の予感は当たっておった!それに、こんな可愛く儚げな女子も連れて来るとはやるのぉ!」

 

え?何で僕の方を見るの?

 

「取り敢えず、挨拶代りに、おんしの体を触らせろ!」

 

そう言って白髪女の子もとい白夜叉さんが抱き付いて来る。

 

ゴキッ!

 

あ、背骨逝った…………

 

背骨が折れたため、僕は暫く動けなかった。

 

で、白夜叉さんはと言うと

 

「白夜叉様!蓮花さんは、非常に脆い方なんです!もっと丁寧に接してください!」

 

「す、すまなかった」

 

黒ウサギさんにお説教されてました。

 

僕が回復した後、白夜叉さんは僕たちを自分の私室に案内してくれた。

 

「改めて、私は、四桁の門、三三四五外門に本拠を構える“サウザンドアイズ”の幹部、白夜叉だ。黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

 

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

投げやりに受け流す黒ウサギさんだった。

 

「それと、先程はすまんかったの。儚げと思ったが、まさか物理的に脆いとは思わなかったものでな」

 

「気にしてないからいいよー」

 

白夜叉さんに手を振りながら言うと、隣で耀ちゃんが小首を傾げながら白夜叉さんに質問をした。

 

「外門って何?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心に近く、同時に強力な力を持つ者達が住んでいるのです」

 

黒ウサギさんが描いた図をみて、それが、あるものに似ていることに気付いた。

「……超巨大玉ねぎ?」

 

「超巨大バームクーヘンではないかしら?」

 

「どちらかと言えばバームクーヘンだ」

 

「僕もバームクーヘンに一票」

 

結果、黒ウサギさんの描いた箱庭の図はバームクーヘンに似ていることになった。

 

「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番皮の薄い部分にあたるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は“世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこはコミュニティに属してはいないものの、強力なギフトを持ったもの達が住んでおるぞ―――その水樹の持ち主などな」

 

そう言って黒ウサギさんの持っている水樹の苗に視線を向ける。

 

話を聞いたところアレは十六夜君が世界の果てで蛇神を倒しゲットしたものらしい。

 

十六夜君ってやっぱりかなり凄いや。

 

「ところで、白夜叉。あんたの口振りからしてその蛇と知り合いみたいだが、どうなんだ?」

 

「知ってるもなにも、あれに神格を与えたのは私だぞ。もう何百年にもなる話だが」

 

「へぇ~、じゃあお前はあの蛇より強いわけだな」

 

十六夜君の目が獲物を見つけた狩人の目になっていやがる。

 

「当然だ。私は東側の“階層支配者”だぞ。この東側の四桁以下では並ぶものはいない、最強の主催者だ」

 

「つまり、貴女のゲームをクリアすれば私たちが東側最強ってことになるのかしら?」

 

「無論、そうなるのう」

 

「そりゃ、景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

十六夜君達は立ち上がり闘争心を剥き出しにして白夜叉さんを見る。

 

僕も立ち上がろうとすると、十六夜君が肩に手を置いて、優しく座らせた。

 

「お前は大人しくしてろ」

 

酷い……………

 

「抜け目が無い童たちだ。依頼しておきながら私にギフトゲームを挑むと?」

 

「え?ちょ、ちょっと御三人様!?」

 

慌てて十六夜君達を止めようとする黒ウサギさんを片手で白夜叉さんは制する。

 

「よいよ。私も遊び相手には常に飢えとる。しかし、ゲームの前に確認することがある」

 

白夜叉さんは懐から“サウザンドアイズ”の旗印の紋が入ったカードを取り出す。

 

そして、不敵な笑みを浮かべた。

 

「おんしらが、望むのは“挑戦”か?もしくは…………“決闘”か?」

 

その瞬間、白夜叉さんの部屋が崩壊したかと思うと、別の場所に立っていた。

 

白い雪原と凍る湖畔そして、水平に太陽が廻る世界。

 

「今一度名乗り直し問う。私は“白き夜の魔王”―――太陽と白夜の精霊白夜叉。おんしらが望むのは試練への“挑戦”か?それとも対等な“決闘”か?」

 

その言葉を聞き、白夜叉さんがただものじゃないのを悟った。

 

後、この部屋…………寒い……………

 


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