超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ? 作:ほにゃー
意識が戻ると目の前ではレティシアちゃんが、メイド服の女の子を縄で縛っていた。
「さて、蓮花の部屋に侵入し、圧死させた貴様は何者だ?そして、その恰好はなんだ?」
レティシアちゃんの言う通り、その子の恰好はミニスカメイドだ。
いや、そこは別におかしくないけど、なんで足枷、腕輪、首輪なんか付けてるんだろう。
それも、アクセサリー的なものではなく、明らかに拘束用の物だ。
「私の正体はご主人様が良く知ってると思うけど」
そう言って女の子は僕の方を見て来る。
「蓮花、この女はこう言ってるが知ってるのか?」
「え?う~ん………………」
腕を組んで考えるけど、やっぱり心当たりがない。
「もう!忘れるなんて酷いですよ!私です!アルゴールです!」
え?アルゴール?
「な、なんだと?」
「あの時、ご主人様は理性が無く暴れまわっているだけの私を止めてくれました。ご主人様の生命力は温かく、私を優しく包み込み、本来の私を取り戻してくれました。その時、思ったんです」
「この人になら縛られたいって!」
目を輝かせてなんてことを言うんだ。
「貴様、変態か?」
レティシアちゃんが一歩下がり、僕を守るようにアルゴールの前に立ち塞がる。
「違うわよ!私は、好きな人に縛られたいだけの乙女よ!」
「人はそれを変態と言うんだ!」
アルゴールの頭を叩き、レティシアちゃんが言う。
「ちょっと、何するのよ!そんな痛みで私が満足するとでも!もっと強く叩きなさい!」
「くそっ!こいつに肉体的ダメージはただのご褒美か!」
「あのさ、一つ聞きたいんだけど」
騒いでる二人に僕は話しかける。
「アルゴールはさ、ルイオスのギフトだよね。ここにいていいの?」
「それなら大丈夫です。あの坊ちゃん、無理矢理私の力を解放したせいで、私、あの後消滅しちゃったんですよ」
「え!?」
「蓮花、今の話は本当だ。十六夜もそれを目撃している」
じゃ、じゃあ……………どうして今、アルゴールはここにいるの?
「それで……ご主人様は私を止めるために、ご自身の生命力を使い、私の心を落ち着かせ、止めてくれました。その時の生命力が私の中に残り、それのお陰で私は復活できました。まぁ、霊格とかはかなり落ちてますけど」
アハハっと笑い、アルゴールは自分を縛っていた縄を引き千切る。
「ご主人様。私はご主人様に恩があります。その恩を返したい。そして、貴方の為に尽くしたい。どうか、私をお傍に置いてください」
土下座をし、頭を下げて来るアルゴール。
そんな彼女に僕は「うん。いいよ」っと了承した。
「蓮花!本気か!?こいつはあのアルゴルの魔王だぞ。本来ならペルセウス座が無くなったことで、消滅しているはずの存在。つまり、此処にいれば、何かしらの面倒事に巻き込まれるぞ!」
「それでもだよ」
レティシアちゃんにそう言い、ベッドからゆっくりと起き上がる。
「この子には行く当てがないんだ。それを放っては置けない。それに」
アルゴールに近づき、頭を撫でる。
「この子を救うって僕はあの時言ったんだ。例え、姿形が変わってもそれは変わらない。この子は僕が救う」
「…………はぁ。仕方がない。十六夜たちには私から伝えておこう。ともかくだ」
レティシアちゃんはアルゴールに近寄り、手を差し出す。
「これからは私の同僚だ。共に、蓮花をお世話するぞ」
「ええ。よろしくね、レティシア!」
そう言い、二人は固い握手をする。
うん、よかった。
その瞬間、何かが僕の背中に当たる。
ゆっくり下を見下ろすと、胸から手が生え、その手は真っ赤に染まっていた。
あ、これ僕の血だ。
その光景にレティシアちゃんとアルゴールもといアルちゃんは驚いていた。
後ろを振り向くと、そこには一人の少女が居た。
その少女は鋭利な爪の生えた手で僕の胸を心臓ごと貫き、そのまま引き抜く。
その子の手の中には僕の心臓がドクンッドクンッっとまだ鼓動していた。
それを握り潰し、崩れ落ちる僕を、少女は憎しみに溢れた目で見下ろす。
「神代蓮花…………父の仇、取らせてもらうぞ!」
新しい登場人物が一人だと思いましたか?
残念、もう一人いました。
中々平和的に終わらない蓮花の一日でした