超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第十六話 頭部流血と吐血と頭頂部突刺死

「ふ、ふん!名無し如きに一々礼を尽くしていては、我らの旗に傷が付くわ!大人しく、そこの吸血鬼を我らに差し出せ!そいつはうちの大切な商品だ!」

 

怒鳴りレティシアを指差す。

 

「むかつくね。人を物呼ばわりしたり、人のコミュニティを侮辱してくれたり。取り敢えず、上から物を言うのはお行儀悪いし、落ちてもらおうか」

 

刀を鞘に納め、生命力を斬撃に変え飛ばし、足を斬り落とそうとする。

 

鞘から刀身を抜こうとしたその瞬間―――

 

「やめろ―――!!」

 

十六夜が飛び蹴りをして来た。

 

その瞬間、刀が手から落ち消え、蹴られた衝撃で、僕の頭が割れ、血が濁流の様に流れる。

 

加えて、先程の光を弾いたときのダメージも来て、口から盛大に血を拭いて僕は倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生命力を無闇に使うな!それと蹴ったことは謝る!ごめんな!」

 

丁寧に足を揃え、腕をズボンの縫い目に会わせ、腰を90度に曲げた謝罪。

 

丁寧だな~。

 

「ところで、あの後何があった?」

 

「黒ウサギが切れて、攻撃をしようとしたから、俺が止めた。で、レティシアが自らアイツらに自分を差し出し、奴等は帰って行った。ついて行くから俺達に手を出すなとよ……………これから“サウザンドアイズ”に行く」

 

「十六夜君、じゃあ、僕も」

 

「お前はダメだ。留守番してろ」

 

また僕を仲間外れにする気?

 

確かに、僕は皆と比べたら虚弱だし、簡単に死んじゃう。

 

でも、僕にだって引けない時がある。

 

「十六夜君、悪いけど僕も引けないんだ。あの連中だけは許せない。だから、僕も連れてってもらうよ。連れてかないって言うなら…………」

 

「言うなら?」

 

「これから毎日、十六夜君の前で無茶をし続ける」

 

「分かった!連れて行くからそれは止めてくれ!」

 

結局僕は十六夜君に背負われて、サウザンドアイズに向かった。

 

ちなみに本拠が襲われないと限らないので耀ちゃん、ジン君が残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ちしておりました、中でオーナーとルイオス様がお待ちです」

 

“サウザンドアイズ”に着くと、店員さんは僕たちをあっさりと通してくれた。

 

そして、シロちゃんの私室に行くと、ルイオスと言う奴が黒ウサギを見て歓喜の声を上げた。

 

「うわお!月の兎じゃん!実物初めて見た!本当に東側にいるなんてね!つーかミニスカートにガーダーソックスとかエロ!ねー君、うちに来なよ。三食首輪付きで毎晩可愛がってやるぜ?」

 

絵に描いた様なゲスっぷりだった。

 

そんなルイオスに嫌悪感を感じたのか、黒ウサギは脚を両手で隠そうとする。

 

「分かりやすい外道ね。言っておくけど、黒ウサギの美脚は、蓮花君専用の枕だがら無理よ!」

 

「そうですそうです!黒ウサギの脚はって、何をおっしゃいますか!?」

 

「そうだぜ!この美脚は蓮花の枕になる為に存在するんだ!」

 

「そうですそうです!この脚はって黙らっしゃい!」

 

「なんだよ、黒ウサギ。お前は蓮花の面倒を見るのが嫌なのか?」

 

「私達が一丸となって蓮花君のお世話をしないといけないのよ。それなのに、貴女は膝枕を拒むの?」

 

「あ、いえ!膝枕ならいくらでもしますでございますよ!ただ、今回の話と、蓮花さんのお世話は全く関係がないじゃないですか!」

 

「え?何?“ノーネーム”ってそう言う組織なの?介護施設?」

 

取り敢えず、そこで話を仕切り直し、本題に入る。

 

「以上が“ペルセウス”が私たちに対する無礼の数々です!ご理解いただけましたか?」

 

「う、うむ。“ペルセウス”の所有物が身勝手に“ノーネーム”の敷地内を踏み荒したこと。それを捕獲する際における数々の暴挙と暴言。しかと受け取った。謝罪を望むのであれば後日」

 

「あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りは謝罪だけじゃすみません。“ペルセウス”に受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと。“サウザンドアイズ”にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし“ペルセウス”が拒むようであれば“主催者権限”の名の下に」

 

「いやだ」

 

唐突にルイオスは言った。

 

「……はい?」

 

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それに吸血鬼や騎士が暴れ回ったって証拠があるの?」

 

「それなら、そちらの吸血鬼から話を聞いてもらえば」

 

「それが信じられるとでも?アイツはアンタらの元仲間なんだろ?口裏を合わせないとも限らないじゃないか。ま、決闘に持ち込みたいならちゃんと調査しないとね。もっとも、調べられて困るのはどっちかな?」

 

その言葉に黒ウサギは何も言えず黙った。

 

「じゃ、僕はさっさと帰ってあの吸血鬼の売り払いの準備でもしようかな。愛想の無い女って嫌いなんだ。それに、体もガキみたいに貧層だし………ま、あれでも見た目は可愛いからその手の愛好家には堪らないだろう?気の強い女を鎖で繫いで組み伏せ啼かすってのが好きな奴もいるしし、太陽の光って言う天然の牢獄の下、永遠にオモチャにされる美女ってのもエロくない?」

 

「あ、貴方と言う人は!」

 

黒ウサギが耳を逆立て、怒りを露わにする。

 

「しっかし、あの吸血鬼も可哀想だな。無能な仲間の為に、ギフトまで差し出したって言うのに」

 

その言葉に全員が驚く。

 

「“箱庭”で生きてくためにギフトは必要不可欠の生命線。それを馬鹿で無能な仲間を止めるために、ギフトを差し出したのに、手に入れた自由は仮初。他人の所有物って言う屈辱な立場に耐えてまで駆け付けたってのに、その仲間は自分をあっさり見捨てる。目を覚ましたらどんな気分だろうね?」

 

黒ウサギさんは絶句し、顔面蒼白になる。

 

これで謎は解けた。

 

レティシアさんが東側に居る理由。

 

そして、ギフトのランクが暴落してる理由。

 

自分の魂を差し出してまで、レティシアさんは僕たちの元に来たんだ。

 

それを理解し、絶望しきった黒ウサギさんに、ルイオスは聞く。

 

「ねぇ、黒ウサギさん?このまま彼女を見捨てたら同士として、義が立たないんじゃない?」

 

「……………どういうことでしょう?」

 

「取引しよう。あの吸血鬼はそっちに戻してやる。代わりに君は生涯、僕に隷属するんだ」

 

「なっ!?」

 

「一目惚れって奴?それに、“箱庭の貴族”って箔も惜しいし」

 

これに飛鳥ちゃんは怒って立ち上がる。

 

「外道とは思ったけど、ここまでとは思わなかったわ!黒ウサギ、こんな奴の話聞く義理は無いわ!」

 

黒ウサギの手を掴み出て行こうとする。

 

「ま、待って下さい、飛鳥さん!」

 

しかし、黒ウサギは座敷を立たず、困惑していた。

 

「ほらほら、君は“月の兎”だろ?仲間の為に、煉獄の炎に焼かれるのが本望だろ?君たちにとって自己犠牲は本能だもんなあ?義理とか人情とか好きなんだろ?安っぽい命を安っぽい自己犠牲ヨロシクで帝釈天に売り込んだんだろう?“箱庭”に招かれた理由が献身なら、安い喧嘩に安く買っちまうのが筋だろ?ほら、どうなん『黙りなさい!』

 

とうとう飛鳥ちゃんがキレ、ギフトでルイオスを黙らせる。

 

「不愉快だわ!そのまま『地に頭を伏せてなさい!』」

 

ルイオスは体が前のめりになり地に這いつくばりそうになるが、それに抗い立ち上がる。

 

「おい、女。そんなのが通じるのは、格下だけだ!」

 

そう言うと、ギフトカードから鎌を抜き、飛鳥ちゃんに振り下ろす。

 

だが、振り下ろされた刃は飛鳥ちゃんには刺さらず、十六夜君が受け止めていた。

 

「な、なんだお前……!」

 

「十六夜様だぜ、色男。喧嘩なら利子付けて買うぜ?トイチでな」

 

そう言って、十六夜君は鎌の柄を蹴り、押し返す。

 

するとルイオスはよろけ、そして、僕の方に倒れて来た。

 

鎌を持ったまま。

 

鎌は僕の頭に刺さり、そして、ずぶっずずずっっと音を立てて突き刺さってくる。

 

あ、これ結構痛いかも…………………

 

「「蓮花ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」

 

「蓮花さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?」

 

「蓮花くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!?」

 

「ぼ、僕は無実だあああああああああ!!?」

 


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