超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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跳弾死=飛んできたものが跳ね返ってそれが当たって死ぬこと


第十五話 跳弾死と覚醒

「で、お前は何しに此処に来たんだ?」

 

十六夜君はソファーに座り、目の前のレティシアさんに尋ねる。

 

「あ、ああ。黒ウサギたちが魔王相手に名と旗印を取り戻すと掲げてると聞いてな。なんと愚かなと思って、外に出れる機会を得て、諌めに来たんだ。だが、聞いた所によると神格クラスのギフト保持者が居ると聞いてね。そこで試したくなったんだ。新たな同士コミュニティを救えるだけの力があるのかどうかを」

 

「結果は?」

 

黒ウサギが僕に膝枕をしながら尋ねる。

 

「ガルドでは当て馬にもならなかったよ。ゲームに参加した彼女たちはまだまだ青い果実で判断に困る。こうして足を運んだはいいが、私はお前達に何と言葉を掛ければいいのか」

 

レティシアさんは苦笑しながら首を振る。

 

それに対し、十六夜君は呆れたように笑う。

 

「違うな。お前は言葉を掛けるために来たんじゃない。仲間たちが自立した組織として今後やっていける姿を見て安心したかっただけだろ」

 

「……ああ、そうかもしれないな」

 

「その不安を拭う方法はあるぜ。魔王と闘えるだけの力があるのか分からない。なら、その身で試せばいい。だろ、元魔王様?」

 

「……ああ、そうだな。双方が互いに一撃打ち合い、受け合う。最後まで地に足を付けていた者が勝ち。どうだ?」

 

「シンプルイズベストって奴か?早くていいじゃねぇか」

 

そう言うと二人は窓から飛び出し、中庭に降りる。

 

「あのお二人は~!」

 

黒ウサギはそう言い、僕を背中に背負って、同じく窓から降りる。

 

十六夜君は地面で構え、レティシアさんは上空に居た。

 

「“箱庭”の吸血鬼は翼があるんだな」

 

「翼で飛んでるわけではないが……制空権を取られるのは不満か?」

 

「いや。そんなルールは無かったしな。それに、飛べない猿が飛べる鳥に文句を言っても、ギフトゲームじゃ飛べない猿が悪い。だろ?」

 

「分かってるじゃないか」

 

そう言うとレティシアさんは金と紅と黒のコントラストで彩られたギフトカードから大きな槍を取り出す。

 

「レティシア様!?そのギフトカードは!」

 

「下がれ、黒ウサギ。力試しとは言え、これは決闘だ」

 

槍を構え、レティシアさんが言う。

 

「互いにランスを一打投擲する。受け止められなかったら敗北。先手は貰うぞ」

 

「好きにしな」

 

レティシアさんは持っていたランスを構え、そして、十六夜君に向かって投げる。

 

槍は空中で摩擦を帯びて、熱を持ち、まるで燃える隕石の様に十六夜君に向かって飛ぶ。

 

「はっ!しゃらくせぇー!」

 

その槍に対し、十六夜君は拳で殴りつけた。

 

「「…………はっ!?」」

 

「凄いなー」

 

素っ頓狂な声を黒ウサギとレティシアさんが上げる。

 

十六夜君の一撃で、大きな槍は先端からひしゃげるように壊れ、バラバラになる。

 

その破片がまるで散弾の様になり、恐ろしいスピードでレティシアさんに向かう。

 

「レティシア様!」

 

黒ウサギさんが自慢の脚力で飛び、レティシアさんの前に立ち塞がり、破片を払い落とす。

 

そして、その払い落した破片が近くの出っ張ってる石に当たり跳ね返り、僕の頭に突き刺さる。

 

そして、辺りに沈黙が流れた。

 

「「「……………………」」」

 

「蓮花ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「蓮花さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?」

 

「どうしてそうなるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神格が無いの?」

 

血を拭きながら、黒ウサギに聞く。

 

「はい。“純潔の吸血姫(ロード・オブ・ヴァンパイア)”とギフトネームが変わってます。鬼種は残ってますが神格は残っていません」

 

「なんだよ。残ってるのは吸血鬼のギフトだけなのか?どうりで歯ごたえが無いわけだ。他人に所有されたら、ギフトまで奪われるのかよ」

 

「いえ、魔王が奪ったのは人材で、ギフトではありません。武具などのギフトと違い、“恩恵”は様々な神仏や精霊から受けた奇跡、云わば魂の一部です。隷属させたとしても、相手の合意無しにギフトは奪えません」

 

それってつまり、レティシアさんはギフトを自分から差し出したってことだよね…………

 

僕たち三人がレティシアさんを見ると、レティシアさんは苦虫を噛み潰した様な顔をし、目を逸らす。

 

「レティシア様は鬼種の純血と神格の両方を兼ね備えていたため、“魔王”と自称するほどの力を持てたはず。今のレティシア様はかつての十分の一にも満ちません。どうしてこんなことに………」

 

レティシアさんは語ろうとするが言い出せないらしく、俯いてしまった。

 

「ま、あれだ。話があるなら屋敷に戻ろうぜ」

 

十六夜君が僕を背負い、屋敷に戻ろうとする。

 

すると、遠くから褐色の光が降り注ぎ、僕らへと向かっていた。

 

「あれはゴーゴンの威光!?まずい!」

 

そう言うとレティシアさんは僕らを庇うように光を浴びる。

 

「レティシア様!?」

 

黒ウサギが叫ぶ。

 

「十六夜君。ごめん」

 

十六夜君の背中からゆっくりと降り、刀を出し、抜刀する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀を抜いた瞬間、そのままレティシアと光の間に立ち刀を振る。

 

“吸命之御業”で、刀身に生命力を纏わせ、その力で光を弾く。

 

「な!?ゴーゴンの威光が!?」

 

「おい、お前ら」

 

俺はゆっくりと顔を上げ、刀を向ける。

 

「人の敷地に土足で入った挙句、謝りもしないんだ。死なないにしても、それ相応の覚悟は出来てるってことでいいな」

 




久しぶりの蓮花の覚醒でした。

しかし、覚醒終了後、彼の身がどうなるか……………

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