超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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死んでないことが不自然

この前そう言われました。




第十四話 顔面粉砕と頭蓋骨複雑骨折

「今より、“フォレス・ガロ”に奪われた誇りをジン=ラッセルが返還する!代表者は前へ!」

 

十六夜は死んでついさっき、生き返った蓮花の処置を耀、飛鳥に任せ、ジンと共に、“フォレス・ガロ”の傘下になっていたコミュニティに旗を返そうとしていた。

 

だが、傘下になっていたコミュニティ“ルル・リエー”は先程の光景の後では、どうも緊張感が持てず、「あ、はい」みたいな感じになっている。

 

「コミュニティ“ルル・リエー”。この旗印と名前、二度と手放さずにいて下さい」

 

「あ、は、はい。約束します」

 

その後、十六夜は“ジン=ラッセル率いるノーネーム”が“打倒魔王”を掲げてるコミュニティであることを印象付けるように宣言し、ジンを前に出す。

 

「お膳立てはしたぜ。後は、お前自身の言葉が必要だ」

 

十六夜はジンに耳打ちする。

 

ジンは覚悟を決めた瞳と熱意で、全員を見る。

 

「ジン=ラッセルです!今日を境に聞くことが多くなるでしょうが宜しくお願いします!」

 

その言葉に、“ルル・リエー”は、先程の冷めきった感が無くなり、熱気と興奮に歓声を上げた。

 

その後、十六夜とジンは超特急で本拠へ戻った。

 

蓮花の様子が心配だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蓮花、どうしてあんなことしたんだ?」

 

「だって、三人が心配だったからついね」

 

目が覚めたら、十六夜君に何故か説教された。

 

「いいか?お前はただでさえ脆いんだ。仲間を想う気持ちは構わないが、せめて何かをしたならしたって言え。頼むから、三百円やるから」

 

「“箱庭”の通貨って円なの?」

 

どうでもいいことが気になった。

 

「それより、黒ウサギ」

 

膝枕をしてくれてる黒ウサギを見上げるように、尋ねる。

 

ちなみになんで膝枕されてるのかと言うと、無理してはいけないから楽な態勢になって下さいと言われ、膝枕を所望した。

 

アレ楽なんだよね。

 

「“サウザンドアイズ”のゲームが延期になったって本当?」

 

「はい。申請に行った先で知りました。このままでは中止の線もあるそうです」

 

「つまらないことしやがるな。それでも大手コミュニティか?」

 

「なんでも巨額の買い手がついたとか」

 

「所詮は売買組織か。大手コミュニティのくせにプライドはねぇのかよ」

 

十六夜君が詰まらなさそうに言う。

 

「仕方がないですよ。“”サウザンドアイズは群体コミュニティ。白夜叉様の様な直轄の幹部が半分、傘下コミュニティの幹部が半分です。今回の主催者は傘下コミュニティの“ペルセウス”。双女神の看板に傷が付く事も気にならないほどのお金やギフトを得れば、ゲームの撤回ぐらいやるでしょう」

 

達観した物言いだが、きっと僕たち以上に悔しさを感じてるに違いない。

 

「ところで、その仲間ってのはどんな奴なんだ?」

 

「そうですね………一言で言えば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです。指を通すと絹糸みたいな肌触りが良くて、湯あみの時に濡れた髪が星の光でキラキラ光るのです」

 

「おや、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

 

その声に、黒ウサギと十六夜君が窓の方を見る。

 

そこには、先程黒ウサギが言ってた特徴と一致する人がいた。

 

かなり小柄だな。

 

「レティシア様!」

 

黒ウサギがその人の名前を叫び立ち上がる。

 

僕が膝の上に居るのを忘れて。

 

「あ!」

 

グチャ!ゴギャンッ!

 

あ、頭蓋骨と顔が逝った。

 

意識が無くなって来たぁぁぁぁぁ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レティシア様!」

 

黒ウサギが勢いよく立ち上がると、蓮花は膝を滑るように落ち、前のめりになって顔が潰れ、頭蓋骨が砕ける。

 

その光景に十六夜は口を開け固まり、黒ウサギは青ざめ、レティシアは目の前の光景に唖然とした。

 

「…………黒ウサギ」

 

十六夜は思わず黒ウサギを見つめる。

 

すると黒ウサギは、窓際に移動し、レティシアを退かす。

 

そして、窓から体を乗り出そうとする。

 

「死にます」

 

「待て待て待てぇ!!」

 

十六夜が腰に飛びつき、自殺を止めようとする。

 

「離してください、十六夜さん!黒ウサギは、黒ウサギは蓮花さんを死なせてしまいました!なら、死んで償いを!」

 

「落ち着け!なら、俺だって何回アイツを死なせてきた!安心しろ、蓮花なら許してくれる!大事なのは償うことじゃない!失敗をこの先に活かすことだ!」

 

「はっ!そうでした!二度とこのような悲劇が起きる前に、早急に対策を!」

 

「その意気だ!取り敢えず、蓮花をソファーに寝かせるぞ!このままだと二次被害が起きる!」

 

「YES!これ以上蓮花さんを死なせないためにも!」

 

かつての仲間の安否と、新たな同志の力がどのぐらいなのか気になって様子を見に来たレティシアだったが、今の光景に何も言えなかった。

 

自殺しようとした同志、そして、それを全力でかなりテンパって止めた新たな同志。

 

(く、黒ウサギ、一体彼は何者なんだ?そして、あの金髪の者、神格級のギフト保持者と聞いたが、この慌てぶり様……………本当にそうなのか?)

 

レティシアは黒ウサギと一緒に、蓮花をソファーに寝かせてる十六夜を見ながら、ふとそんな事を思った。

 

(しかし、あの少年も大丈夫か?再生・回復のギフトを持ってると聞いていたが、痛そうだ)

 


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