超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第十二話 疲労

翌朝、黒ウサギさんに血まみれの頭を洗ってもらい、皆で簡単な朝食を食べた後、ギフトゲームの舞台となるガルドの屋敷へと向かう。

 

もちろん十六夜君の背中に乗って。

 

途中、昨日のお見えの猫耳の店員さんがガルドに関する情報を教えてくれた。

 

何でもガルドは所有してる舞台区画ではなく居住区画をゲーム盤に使い、さらに、傘下のコミュニティや同士を全員ほっぽり出したとのことだ。

 

おかしな話を聞き、猫耳店員さんからのエールを貰って、居住区角へと向かう。

 

すると、ゲーム盤となる居住区画はジャングルに覆われていた。

 

「ジャングル?」

 

「虎の住むコミュニティだ。おかしくないだろ?」

 

「いや、おかしいです。フォレス・ガロ”の本拠は普通の居住区でだったはずです。それに…この木……」

 

ジン君が木に手を伸ばし、何かに気付いたみたいだ。

 

「ジン君。これを見て」

 

飛鳥ちゃんの声に振り返ると門柱に“契約書類”が貼ってあった。

 

『ギフトゲーム名:“ハンティング”

プレイヤー一覧:久遠 飛鳥

        春日部 耀

        ジン=ラッセル

・クリア条件 ホストの本拠地に潜むガルド=ガスパーの討伐。

・クリア方法 ホスト側が用意した特定の武具でのみ討伐可能。

       指定武具以外は“契約”によってガルド=ガスパーを傷つけることは不可能

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。

・ゲーム開始は敷地内にプレイヤーが入った瞬間から

 

先生 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

                            “フォレス・ガロ”印』

 

「ガルドの身をクリア条件に・・・・指定武具で打倒!?」

 

「こ、これはまずいです!」

 

ジン君と黒ウサギが悲鳴のような声を上げる。

 

「ゲームはそんなに危険なの?」

 

「ゲーム自体は単純です。ですか、このルールに問題があります。これでは、飛鳥さんのギフトで操ることも耀さんのギフトで傷つけることもできません!」

 

「どういうこと?」

 

「“恩恵”ではなく“契約”でガルドは身を守ったんです!“契約書類”のルールは絶対。これでは神格クラスの“恩恵”でもガルドを倒すことはできません!彼は自分の命をゲームクリア条件に組み込むことでお二人の力を克服したのです!」

 

「すいません、“契約書類”を作った時にルールも決めるべきでした。僕の落ち度です。すみません……」

 

ジン君は自分の不手際に落ち込みながら謝罪する。

 

「ま、観客としてはこれぐらい面白くないと不満だがな」

 

「言ってくれるわね。条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何なのか書かれていないし」

 

「その点はご安心を!『指定』と書かれている以上、ゲーム内にヒントが提示してあるはずです!ヒントが提示していなければルール違反で“フォレス・ガロ”の敗北!黒ウサギが居る限り、反則はさせません!」

 

飛鳥ちゃんの言葉に、黒ウサギが元気づけるように励ます。

 

「大丈夫。黒ウサギもこう言ってるし、私も頑張る」

 

「……ええ、そうね。むしろあの外道のプライドを粉砕するためにも、これぐらいのハンデが必要かもしれないわ」

 

耀ちゃんの言葉を聞き、飛鳥ちゃんはいつもの元気に戻る。

 

「三人共頑張ってね」

 

僕は三人に近づき、背中を叩く。

 

これで、よし。

 

背中を叩かれた三人は不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔になり屋敷の敷地内へと入って行った。

 

ジン君達が入って行って数十分ほど時間が経過した時、森の奥から獣に似た咆哮が聞こえた。

 

「な、何ですか!?今の雄叫びは!?」

 

「間違いない。虎のギフトを使った春日部だな」

 

「あ、なるほど……ってそんな訳ないでしょ!」

 

「じゃあ、ジン坊ちゃんだな」

 

「ボケ倒すのもいい加減にして下さい」

 

十六夜君と黒ウサギの言い合いを聞きながら、僕は瞼をどんどん閉じて行く。

 

「ああ…………眠たい……」

 

そして、僕は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎そのものとなったガルド相手に耀は一人で立ち向かっていた。

 

飛鳥とジンを逃がし、素早さを活かして指定武具と思われる白銀の十字剣を手にする。

 

そして、斬り掛かろうとするが、剣はガルドの腕を僅かに掠る程度に終わった。

 

(しまった!)

 

ガルドの爪が迫り、逃げようとするが間に合わない。

 

爪は容赦なく耀の右腕の柔らかな肌に当たり、切り裂く。

 

切られた場所が熱を持ったかの様な痛みを感じ、耀はその場に蹲り、傷口を押さえようとする。

 

だが、次の瞬間、痛みが無くなり血も止まる。

 

何事かと思い、右腕を見るとそこにはあるはずの切り傷が無かった。

 

切られていなかったのではと思ったが、確かに痛みを感じた。

 

だから、切られていたはずだった。

 

なのに、傷は無くなっている。

 

何が起きたのかと言うと、蓮花がゲームが始まる直前に、三人の背中に触れた時、自身のギフト“吸命ノ御業”を使い、自身の生命力を三人に付与していた。

 

そのため、大抵の怪我は蓮花の生命力で回復・再生ができるのだった。

 

だが、耀はそんなこと知らずに、目の前で不思議なことに驚きながらも十字剣を構え直し、ガルドへと斬り掛かる。

 

ガルドは攻撃した態勢で、回避することも防御することも間に合わず、そのまま耀が手にして十字剣の攻撃を額に受け、絶命した。

 

「………さよなら」

 

耀は最後の最後だけ誇り高い虎に戻ったガルドに、僅かながら敬意を込め、別れの言葉を口にした。

 




生命力を三人に分け与えたことで疲れてしまったので、蓮花君は眠りにました。

天使のような寝顔です。

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