超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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新たな主人公の称号

スぺランカー系主人公


第十一話 頭部裂傷 その2

「どういうつもりですか!?」

 

あの後、ジン君は十六夜君を大広間に連れて行き、行き成りそう怒鳴った。

 

ちなみに僕も十六夜君の背中に乗りながら付いて来た。

 

「“打倒魔王”が“打倒全ての魔王とその関係者”に変わっただけだろ」

 

「魔王の力はコミュニティの入口を見て理解できましたでしょ!?それなのに、一体何を考えてるんですか!?」

 

「勿論。あんな面白そうな力を持った奴と闘えるなんて最高じゃないか」

 

十六夜君のその言葉にジン君は怒りをあらわにする。

 

「面白そうって……十六夜さんは、自分の為にコミュニティを滅亡に追いやるつもりですか!?」

 

「そんな気はねぇよ。これは、コミュニティの再建に必要不可欠な作戦だ」

 

「…………どういうことですか?」

 

「なぁ、御チビ。俺達を呼び出してどうやって魔王と戦うつもりだったんだ?」

 

十六夜君の質問に、ジン君は幼いなりにリーダーとして考えを言う。

 

「まず、水源を確保するつもりでした。新しい人材と的確な作戦を組めば、水神クラスは無理でも、水を確保する方法はありましたから。これに関しては十六夜さんが想像以上の結果を出してくれたので、素直に感謝しています。ギフトゲームをクリアしていけばコミュニティは強くなります。例え、力が無くとも、皆が力を合わせればコミュニティは大きくできます。ましてや………これだけの才ある方々が揃えばどんなギフトゲームにも対抗できたはずです」

 

「できたはずってことは、もうできないの?」

 

「当たり前です!魔王を倒す為のコミュニティなんて馬鹿げた宣誓が流布されたら最後、魔王のゲームは不可避になるんですよ!?十六夜さんは自分の娯楽の為にコミュニティを潰す気ですか!?」

 

「呆れた奴だな」

 

怒鳴るジン君に十六夜君はそう吐き捨てる。

 

「これも作戦だ。俺達“ノーネーム”のな」

 

「………どういうことですか?」

 

ジン君は十六夜君を信じてない目つきで睨みながら問う。

 

「まずコミュニティを大きくするって言うが、どうやって大きくするんだ?」

 

「だ、だからギフトゲームをクリアして力を」

 

「なら前のコミュニティは力を付けていないから魔王に敗れたのか?」

 

「……違います」

 

十六夜君の質問にジン君は項垂れて言う。

 

「大きくするには人材が必要だ。優秀なギフトを持ってる奴ほど、名のあるコミュニティに入りたいのは当たり前だ。だが、誰が名も旗印もないコミュニティに来たがる?まずいねぇな」

 

そう言ってジン君に指を突きつける。

 

「“ノーネーム”との取引なんぞ、取引の重要書類に無記名でサインするのと変わらねぇ。信用は出来ないからな。お前はそのハンディキャップを背負った上で、先代を超えなきゃならねぇ」

 

「先代を………超える……!?」

 

そのことにジン君は驚いた表情になる。

 

かつては箱庭の上層からも一目置かれるほどだった先代を超えろなんて言われれば誰だって、驚くよね。

 

「名も無い旗も無い。となれば、リーダーの名前を売り込むしかないよな?」

 

「僕を担ぎ上げて………コミュニティを売り込む気ですか?」

 

「ああ、悪くないだろ?」

 

「た、確かにそれなら旗や名に匹敵する信用を得られるかも………」

 

「そこに“打倒魔王”を掲げ、一度でも魔王のゲームに勝てば波紋は広がる。そして、それに反応するのは魔王だけじゃない」

 

「僕たちの様に他にも“打倒魔王”を秘めたコミュニティにもだね」

 

「そうだ。今回のゲームは魔王の傘下のコミュニティのゲームで勝てるゲーム。被害者は数多のコミュニティ。これはチャンスだぜ、御チビ様」

 

そう言って十六夜君はにやりと笑う。

 

いつの間にか僕も自然と笑っていた。

 

「確かに、他の魔王に目を付けられる可能性もある。だが、魔王を倒した前例もある。だろ?」

 

そう言えば、魔王のゲームで条件を満たすと魔王を隷属できるんだっけ?

 

「今のコミュニティには人材が足りない。俺並とは言わないが、俺の足元並みぐらいの奴は欲しい。だが、伸るか反るかは御チビが決めろ。他に作戦があるなら協力は惜しまないぜ」

 

「………一つだけ条件があります。今度開かれる“サウザンドアイズ”主催のギフトゲームに参加してください」

 

「なんだ?力を見せろってか?」

 

「それもあります。ですが、そのゲームには僕らが取り戻さなければならない、もう一つの大事な物が出品されるんです」

 

「それって、昔の仲間?」

 

僕が聞くと、ジン君は頷く。

 

「それもただの仲間じゃありません。元魔王だった仲間です」

 

「元魔王ってことは、“ノーネーム”は昔魔王とのゲームで勝った経験があるんだ」

 

「で、その魔王を隷属させたコミュニティを滅ぼすこともできる超魔王もいるってわけか」

 

「いえ、そうは呼ばれてません。魔王にも様々な者がいますし、十人十色です。魔王とは“主催者権限(ホストマスター)”を悪用するものの事で、白夜叉様みたいに“主催者権限(ホストマスター)”を持っていても悪用しないものは魔王とは言いません」

 

主催者権限(ホストマスター)”は箱庭を盛り上げるための舞台装置で、それを悪用するものが魔王。

 

それがジン君の説明だった。

 

「主催者は“サウザンドアイズ”の幹部の一人です。恐らく、僕たちから仲間を奪った魔王と取引をして仲間の所有権を手に入れたんでしょう。相手は商業コミュニティだから、金品で手を打てればよかったのですが………」

 

まぁ……貧乏は辛いってことなんだろう。

 

「とにかく、俺は元魔王だった仲間を取り戻せばいいんだな?」

 

「はい。それが出来れば、対魔王戦も可能になります。そうなれば、僕も十六夜さんの作戦を支持しましょう。ですから、黒ウサギには内密に………」

 

「あいよ」

 

十六夜君が席を立ち、僕を担ぐ。

 

「明日のゲーム、負けるなよ」

 

「はい!」

 

「負けたら俺と蓮花はコミュニティを抜けるからな」

 

「はい………え?」

 

ジン君が呆然とする中十六夜君は扉を閉め、自室に向かう。

 

「十六夜君、どうして僕まで?」

 

「お前から目を離したらいけないからだ」

 

さいですか…………

 

そして、僕は十六夜君の手で僕の自室となった部屋のベッドに寝かされる。

 

丁寧に布団も掛けてくれた。

 

十六夜君に寝る挨拶をして、眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この子を救うにはこの方法しかない!』

 

『ごめんね………強く……生きるのよ……』

 

『大丈夫。お前は俺が守ってやるからよ』

 

昔の夢を見た。

 

父さんと母さん、そして幼馴染の夢だった。

 

でも、僕はこれを知らない。

 

知らないはずなのに、何故かとても懐かしく感じた。

 

目が覚め、夢の内容を思い出す。

 

でも、詳しく思い出せない。

 

それがもどかしかった。

 

後、寝てる時ベッドから落ちたみたいで、頭が血まみれだった。

 

起こしに来てくれた飛鳥ちゃんが悲鳴を上げて気絶しちゃった。

 


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