超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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友人にこの主人公を評価してもらったところ

介護され系主人公だねって言われました。

うまいことを言ってくれました。


第十話 頭部裂傷

夜空に十六夜の月が浮かんでいる。

 

黒ウサギ(さん付はいらないって言われた)、耀ちゃん、飛鳥ちゃんの三人はお風呂に入りに行き、僕と十六夜君はコミュニティの子供たちが寝ている別館へと向かい、入口の前に立つ。

 

あ、僕は階段に腰を掛けています。

 

「おーい、そろそろ決めてくれねぇと蓮花が風邪引くだろうが。後、俺も風呂に入れねぇ」

 

十六夜君がそう言うと、風が木々を揺らす。

 

「ここを襲うのか襲わないのか。どちらにしろ、やるならいい加減覚悟を決めて掛かってこいよ」

 

そして、再び風が吹き、木々を揺らす。

 

十六夜君はつまらなさそうな表情をして、石をひとつ拾う。

 

「よっ!」

 

軽いフォームで石を投げると、そのフォームからは想像できないほどのでたらめな爆発音が響き、木々を吹き飛ばし、その衝撃で別館の窓ガラスを振動させる。

 

すると、その騒ぎを駆けつけてジン君がやってくる。

 

「何事ですか!?」

 

「侵入者だよ」

 

「恐らく“フォレス・ガロ”のな」

 

空中から黒い人影と瓦礫が落ちて来る。

 

意識のある人が立ち上がり、十六夜君を見つめる。

 

「この力…………蛇神を倒したという話は本当だったのか」

 

「これならガルドの奴とのゲームにも勝てるかも知れない」

 

「なんだ?お前ら、人間じゃねぇのか?」

 

侵入者は人間とは違っていた。

 

犬の様な耳を持つ者、長い体毛に爪や牙を持つ者、爬虫類のような瞳の者。

 

「我々は人をベースに様々な“獣”のギフトを持つ者、獣人だ。しかし、ギフトの格が低いため、このような半端な変幻しかできないのだ」

 

十六夜君はその侵入者を興味深そうに見つめる。

 

「で、何か話をしたくて襲わなかったんだろ?ほれ、さっさと話せ」

 

「…………あの、話すのは話すのですが」

 

獣人のリーダー格の人が僕をゆっくりと、指差す。

 

「あのお方、頭から血が」

 

「…………え?」

 

十六夜君が恐る恐る僕の方を見る。

 

そこには、頭から血を流し死んでいる僕が居る。

 

ジン君が来てから何も言わないのは、その光景に驚き、気絶しているからだ。

 

何が起きたかと言うと、十六夜君が石を投げた時、その時の爆風で石が飛んできて、僕の頭に当たり、頭がパックリ割れ、僕は逝ってしまった

 

辺りに沈黙が訪れる。

 

「て、テメーら……………」

 

十六夜君が獣人たちの方を向く。

 

「よくも俺の仲間を!許さねぇぞ!」

 

向うの人達の所為にしちゃった。

 

「い、いや俺達じゃ」

 

「いいや!お前達の所為だ!お前達が此処に来なければこうはならなかった!だから、お前らの所為だ!」

 

「理不尽すぎる!」

 

取り敢えず、回復するまでは待ってね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十六夜君、わざとじゃないのは分かってるから、そんな取り乱さないで」

 

「すまねぇ。ある程度のパニックには慣れてるが、流石に人死にはそんな経験無いからよぉ」

 

なんとか落ち着いた十六夜君と一緒に、獣人たちの方を見る。

 

「す、すごい」

 

「再生のギフトか?」

 

「いや、死んでも蘇っている。不死のギフトの可能性も」

 

僕の事で盛り上がっている。

 

「取り敢えず、本題に入ろうか。で、君たちは何の用なの?」

 

先程のリーダー格の獣人が前に出て頭を下げる。

 

「恥を忍んで頼む!我々の……いや、魔王の傘下コミュニティ“フォレス・ガロ”を完膚なきまでに叩き潰してほしい!」

 

「嫌だね」

 

考える時間もなく、十六夜君が即答する。

 

獣人たちだけでなく、気絶から目が覚めたジン君も絶句する。

 

「お前たちもガルドって奴に人質を取られている連中だろ?命令されてガキを拉致しに来たってところだろ」

 

「は、はい。我々も人質を取られている身分、ガルドには逆らうことができず」

 

「その人質ならもうこの世にはいねぇよ」

 

「い、十六夜さん!」

 

隠しもせず、かと言って相手の事を思いやってもいない発言にジン君が声を上げる。

 

「隠す必要があるか?どうせ、明日のギフトゲームに勝ったら、全部知れ渡ることだろ?」

 

「それにしたって、言い方があるでしょ!」

 

「ジン君、落ち着いて」

 

ジン君の肩を叩き、落ち着かせる。

 

「この人達は今まで、命令で子供たちを攫っていた。そして、その攫って来た子供たちはどうなった?」

 

そう言うと、ジン君ははっとして、獣人たちを見る。

 

人質を救うために、子供を攫ってくる。

 

ある意味、この人達も殺しの共犯者だ。

 

「悪党狩りってのは聞こえがいいし、カッコいいけどな。同じ穴のムジナに頼まれてまでやらねぇよ、俺は」

 

「では………本当に人質は」

 

「うん。攫って来たその日に全員殺してるってさ」

 

「そんな…………!」

 

獣人たちは全員がその場に項垂れる。

 

人質の為に、今日まで汚いことに手を汚して来たのに、助けたい人質はこの世にいない。

 

その衝撃は計り知れないだろう。

 

そんな彼等を見て、十六夜君がにやりと笑う。

 

「お前達、“フォレス・ガロ”とガルドが憎いか?」

 

「あ、当たり前だ!俺達がアイツの所為でどんな目にあってきたか…………!」

 

「だが、俺達にはアイツに反抗するだけの力は無い…………!」

 

「それに、奴は魔王の傘下。ギフトの格も遙かに上だ。俺達がギフトゲームを挑んだ所で、勝てるはずがない!いや、万が一勝てたとしても、魔王に目をつけられれば……………」

 

「なら、その魔王を倒すためのコミュニティがあるとしたらどうする?」

 

十六夜君のその言葉に全員が顔を上げる。

 

十六夜君はジン君の肩を抱き、引き寄せる。

 

「このジン坊ちゃんが魔王を倒すためのコミュニティを作るって言ってるんだ!」

 

「なっ!」

 

獣人たちだけでなく、ジン君でされ驚愕した。

 

ジン君達の目的は、コミュニティを守ることと、名と旗印を奪った魔王を倒すこと。

 

だが、十六夜君の言い方では、“箱庭”に居るすべての魔王を敵に回すと言ってるようなものだ。

 

「魔王を倒すとは一体………?」

 

「言葉の通りさ。俺達は魔王のコミュニティ、その傘下を含め全てのコミュニティを魔王の脅威から守る。そして、守られるコミュニティは口を揃えこう言ってくれ。“押し売り・勧誘・魔王関係お断り。まずは、ジン=ラッセルの元にお問い合わせください”ってな」

 

「じょ!」

 

冗談でしょ!?っとでも言いたかったのか、ジン君が口を開こうとすると、十六夜君がジン君の口を押さえる。

 

「人質の事は残念だった。だが、安心しろ。お前達の仇は、このジン=ラッセル率いる“ノーネーム”メンバーが取る!その後の心配もしなくていい!何故なら、お前達のジン=ラッセルがお前達を“魔王”の脅威から守ってくるからだ!」

 

「おお………!」

 

大仰で語る十六夜君。

 

それに希望を見る獣人たち。

 

そして、十六夜君の手の中でもがくジン君。

 

中々にシュールな光景だな。

 

「さぁ、コミュニティに帰るんだ!そして、仲間たちに伝えろ!俺達のジン=ラッセルが“魔王”を倒してくれるとな!」

 


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