超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ? 作:ほにゃー
十六夜君に背負ってもらい、水路に向かうとジン君が子供たちと貯水池の掃除をしていた。
「あ、皆さん!水路と貯水池の準備は整っています!」
「ご苦労様です!ジン坊ちゃん!」
黒ウサギさんの元に子供たちがワイワイと騒ぎながら集ます。
「黒ウサのねーちゃんお帰り!」
「眠たいけどお掃除手伝ったよ!」
「ねえねえ新しい人達って誰!?」
「強いの!? かっこいいの !?」
「YES!とても強くて可愛い人達ですよ!皆に紹介するから一列に並んでくださいね!」
黒ウサギさんが指を鳴らすと、子供たちは一糸乱れぬ動きで整列する。
(マジでガキばっかだな。半分以上は人間以外の種族か?)
(実際に目の当たりにすると想像以上に多いわ)
(私、子供嫌いなのに大丈夫かなぁ)
(元気があっていいな………)
「右から逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん。そして、十六夜さんの背中に居るのが神代蓮花さんです。皆も知っての通りコミュニティを支えるのは力のあるギフトプレイヤーです。皆はギフトプレイヤーの生活を支え、身を粉にして尽くさねばなりません」
「あら別にもっとフランクにしてくれても」
「駄目です。コミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加し彼らのもたらす恩恵で生活が成り立つのでございます。子供の内から甘やかせばこの子達の将来のためになりません!」
「……そう」
黒ウサギさんの有無を言わさない希薄に、飛鳥ちゃんは引き下がった。
「では、皆さん!ご挨拶を!」
『 よ ろ し く お 願 い し ま す ! 』
耳がキーンってなった。
でも大丈夫。
これぐらいなら、まだ鼓膜は大丈夫。
「ヤハハ、元気があっていいじゃねぇか」
「そ、そうね」
(本当にやっていけるかな、私)
十六夜君はヤハハと笑い、飛鳥ちゃんと耀ちゃんはなんとも言えない表情をしてる。
あ、なんか耳の奥が痛い…………
「では、自己紹介も終わりましたし、水樹を植えましょう!十六夜さん、ギフトカードから出してくれますか?」
「あいよ」
そう言い、十六夜君はギフトカードを出し、水樹を黒ウサギさんに渡す。
「では、十六夜さん。屋敷への水門を開けてください!」
「あいよ」
十六夜君は僕を下ろすと、貯水池に下りて水門を開ける。
それと同時に、黒ウサギさんも水樹の苗の紐を解く。
すると、大波の様な水があふれ出し、貯水池を埋めて行く。
しかし、十六夜君はまだ貯水池の中で水門を開けていた。
「少しは待てやゴラァ!流石に今日はこれ以上濡れたくねえぞ!」
十六夜君は慌てて貯水池の縁に跳躍して捕まり、貯水池を出る。
その時、十六夜君の指が僕のズボンの裾を引っ掛けて、十六夜君が力を込めた瞬間、僕は後頭部を地面にぶつけ、貯水池の中に落ちた。
「「「………………」」」
十六夜と飛鳥、耀は言葉を失った。
「「…………」」
黒ウサギとジンも言葉を失った。
『………………』
子供たちも言葉を失った。
「………………え?」
十六夜は、冷や汗を掻きながら思わずそう発した。
「蓮花君!?」「蓮花!?」「「蓮花さん!」」『蓮花様!?』
十六夜以外のメンツが大声を上げる。
「うおおおおおおおお!?蓮花ああああああああ!!」
十六夜は大慌てで貯水池に飛び込み、底の方で沈んでいた蓮花を引き上げた。
数分後、復活した蓮花が最初に見たのは、土下座する十六夜だった。
十六夜はこの日、生まれて初めて自分の意志で土下座をした。