超虚弱体質の不幸少年も異世界から来るそうですよ?   作:ほにゃー

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プロローグ

「ああ………痛い……死にそうに痛い」

 

まぁ、簡単には死ねないんだけどね。

 

付け足すように言い、転がってる左腕を拾い、肩の断面にくっ付ける。

 

「よし、治った」

 

くっ付いた左腕の掌を開いたり閉じたりして、動作を確認する。

 

うん、ちょっと中指と小指が麻痺してるけど数分も立てば治るだろう。

 

何があったのか簡単に言うと、僕はいつも通りの散歩コースである河原の土手を歩いていた。

 

すると、向かいからトラックが迫ってきたんだ。

 

普段の僕なら撥ねられて重傷を負う。

 

おまけに、トラックの運転手は人を撥ねたことが怖くその場を毎回逃げ出す。

 

僕としてはそっちの方が有難いけど。

 

流石にまた撥ねられるのは嫌なので、横に避けた。

 

すると、トラックのタイヤが何かを跳ね飛ばし、それが僕の左肩に当たった。

 

その瞬間、僕は左腕の感覚が消えた。

 

そして、そのまま僕は仰向けのまま倒れた。

 

結局何が、飛んできて何が僕の左腕を飛ばしたのか分からない。

 

ま、いつものことだけど。

 

麻痺が取れたのを確認し、立ち上がると急に立ちくらみがした。

 

「血足りない。ちょっと休もう」

 

そう呟き土手に転がると、脇腹に痛みを感じた。

 

手を伸ばしてみると、何やらそこそこ太く硬いものが刺さっていた。

 

抜いてみると、曲がって錆びてる五寸釘だった。

 

「破傷風………にもならないか」

 

そう言い、釘を投げ捨て横になる。

 

今更だが、僕の名前は神代蓮花。

 

生まれて十六年、世間一般で言う幸運を体験したことのない幸薄い少年です。

 

後、超虚弱体質です。

 

どのぐらいかと言うと、十分も歩ければいいぐらいに虚弱です。

 

ちなみに、今日は家を出て約十一分歩けた。

 

記録更新です。

 

髪が腰に届くぐらいまで長いけど、女じゃない。

 

これでも男です。

 

髪が長いのは床屋まで体力が持たないってのと、自分で髪を切るだけの力が無いからだ。

 

後、よく女顔ってよく言われるけどこれはこれで便利なんだよ。

 

ちょっと上目づかいで小首を傾げてお願いって言うと、男子は大抵お願いを聞いてくれる。

 

でも…………

 

「虚弱なのも困ったものだよね」

 

そう呟き、空を見上げる。

 

あ、カラスが旋回してる。

 

……………やばい、目が回って気持ち悪くなってきた。

 

口を手で押さえ、上半身を起き上がらせると、ヒラヒラと一枚の手紙が膝の上に落ちる。

 

「なんだこれ?」

 

『神代蓮花様へ』

 

「僕宛………誰だろう?」

 

辺りを見渡し、上も見上げる。

 

でも、誰もいない。

 

「読んでみよう」

 

そう決め、封を開け、中身の手紙を読む。

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を世界の全てを捨て、我らの“箱庭”に来られたし』

 

読み終えた瞬間、妙な浮遊感を感じた。

 

思わず下を見ると、巨大な天幕に覆われたと都市が見えた。

 

そして、下に落ちてる感覚がきた瞬間、僕は悟った。

 

「あ、死んだかも」

 

そう呟き、上空4000mから、落下し、緩衝材のような幕を幾つか通り、そして、湖が見えた。

 

「きゃ!」

 

「わっ!」

 

ばしゃん!×3

 

べちゃん!×1

 

水面に叩き付けられるように湖へと落ちた瞬間、僕は意識を失った。

 


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