暗い夜道を貴族が乗るような高級感溢れる馬車がガタゴトと進んでいた。
「そろそろでありんすかねぇ」
その馬車の中の1人、抜きん出た美貌を持った少女が呟く。
彼女の名は「シャルティア・ブラッドフォールン」
種族は真祖(トゥルーヴァンパイア)でありギルド「アインズ・ウール・ゴウン」が誇る拠点、ナザリック大墳墓の階層守護者を任された強者である。
その強さは一対一ならばナザリック最強ともいわれるほど凄まじい実力を持っている。
そんな彼女がこの馬車に乗っている理由はアインズから一つの仕事を任されたからだ。
消えても誰も気にしないような人間、有り体に言えば犯罪者や野盗などの捕縛だ。
そのためにソリュシャンとセバスが扮するわがままお嬢様とその執事を狙う馬鹿共を逆に捕らえるため同乗していた。
そして街から程よく離れたこの場所。
襲撃があるならそろそろだろうと胸を躍らせていた。
だがその時敬愛する至高の御方、アインズから《メッセージ/伝言》が入る。
「これはアインズ様、どうされたでありんすか?・・・はい。・・・はい。任務は順調でありんすが・・・」
声を聞くだけで蕩けそうになるシャルティアだが任務に何か変更でもあったのかと身を引き締める。
「・・・はい。了解したでありんすえ。すぐに行動にうつしんす」
アインズから命令を受けたシャルティアはセバスとソリュシャンに計画の変更を伝える。
「セバス、ソリュシャン。計画に変更がありんした。この襲撃が終わり次第すぐにナザリックに戻るでありんすよ」
「はっ」
「かしこまりました」
そして狙ったかのようなタイミングで馬車が停止する。
そして馬車の扉を開け外に出たシャルティアは下卑た視線でこちらに近づく野盗たちへ向けて、蹂躙を開始した。
「申ぉーし訳ありんせん。少し遊ぶ予定だったでありんすが、アインズ様をお待たせするわけにはいきんせんの」
轟、と一陣の風が舞った後に重い物がドサドサと崩れ落ちる音がした。
数瞬後にはもはや眼を開いている野盗はおらず、冷たい馬車道にただ血が染み込んでいくだけであった。
「ソリュシャン、他に人間の気配はありんすか?」
盗賊・暗殺系の職業を修めているソリュシャンに問いかける。
「いえ、ございません。監視の目も無いかと」
「そう。では少し離れなんし」
セバスとソリュシャン、そしてシャルティアの部下であるヴァンパイアブライドがその場から身を引く。
「《フォース・エクスプロージョン/力場爆発》」
死体を巻き込み、そこら一帯を爆発させる。
「これで問題ありんせんね。《ゲート/異界門》。皆の衆、さっさと帰りんすよ」
アインズに会うのが楽しみな様子で《ゲート/異界門》を開くシャルティア。
「・・・シャルティア様」
セバスが無残な景観に成り果てた道を見ながらシャルティアを呼び止める。
「うん? 何かありんしたか?」
「僭越ながらお伺い致します。先程の《メッセージ/伝言》でアインズ様はなんと仰っておられましたか?」
シャルティアは質問の意図がわからず首を傾げながら答える。
「ふむ、アインズ様は任務の進捗を尋ねられんしたあと、迅速に帰還するように仰ったでありんす。現状を鑑みて、放置して問題のないところまで任務が進んだなら拉致及び殺人の痕跡を消したのち離脱せよ、と」
「見るからに雑魚の集まりでいんしたから、拉致するまでもなく消しんした。アインズ様も帰還の方を優先せよと言いんしたから問題ありんせん。さ、帰るであり・・・な、何よその眼は、セバス、ソリュシャン」
正気かよこいつ、と言わんばかりの眼で見つめられたシャルティアは思わず口調が素に戻った。
「・・・少々あちらの方でお待ち下さい」
きっと説明しても理解出来ないだろう、とセバスは邪魔をされぬようお願いした。
「え?」
「ソリュシャン、手伝って下さい」
「はい。セバス様」
ヴァンパイアブライドも無言で痕跡を消す作業に入る。
「・・・え?」
「おお、戻ったかシャルティアよ」
玉座の間にてシャルティア、セバス、ソリュシャンを迎え入れたアインズ。
「仕事を中断させて悪かったな。問題はなかったか?」
支配者の威厳を崩さぬ様に謝罪する。
「ははははは、はい。何も問題ありんせん。しっかりと痕跡を消して帰還しんした」
動揺しまくりながらシャルティアは答える。
「うむ、そうか。セバスとソリュシャンも何か問題はなかったか?」
満足そうに頷き他の二人にも問いかける。
「はっ。何も問題ございません」
「同じくでごさいます。アインズ様」
二人の優しさに感動するシャルティアであった。
「それで、アインズ様。何故任務に変更が? 何か支障でもありんしたか?」
シャルティアが気になっていたことを尋ねる。
「うむ。私が冒険者に扮し名声を得る傍ら、調査を行っていたのは三人共知っているな?」
三人が肯定する。
「その先で〈ユグドラシル〉のプレイヤーを発見したのだ」
喜色を滲ませながらアインズは言う。
その様子を見て三人はそれぞれ賞賛の言葉を送る。
「流石はアインズ様でありんす。たった数日で素晴らしい結果を出されるとは」
「おめでとう御座います。アインズ様」
「おめでとうございます」
さすがは我らの主人にして至高の41人の長である。と、もともと限界突破していた忠誠心がさらに突き抜けていく。
「なに、偶然だ」
よせよせとばかりに謙遜する主人に、三人はさらなる忠誠を捧げた。
「それでだな、その者をここに招待したのだがナザリックを挙げて歓迎するというのにギルドそのものと言っても過言ではないお前たちが居なくては片手落ちだろう?」
だから呼び戻したのだ、とアインズは三人に説明した。
その言葉を聞いた三人は涙を溢しそうになりながら体を震わせる。
ああ、これが最後まで残って下さった慈悲深き至高の御方。
我等を役立たせ、ギルドそのものとまで仰って下さった。
シャルティアもセバスもソリュシャンも、きっとこれ以上の幸福は存在しないだろうと、心の中で滂沱の嬉し涙が滝のように流れ落ちていた。
そして数時間後。
玉座の間にはヴィクティム、ガルガンチュア以外の階層守護者とプレアデス、セバスが揃っていた。
「全員揃ったようだな」
アインズが守護者達の顔を見渡し会議の開始を告げる。
「それぞれ個別には軽く説明したと思うが、今日エ・ランテルにて〈ユグドラシル〉のプレイヤーと遭遇した」
全員が理解しているのを確認し、話を続ける。
「紆余曲折あったものの、最終的にこのナザリックへと招待することとなった。わざわざ任務中の者達も呼び戻したのはナザリックを挙げて歓待しようと思っているからだ」
何故ならば、とアインズは言う。
「その男―――オーディンと言うのだがな。その男が私の友となったからだ」
ここで初めて守護者達は驚愕を顕にする。
「―――アインズ様」
無礼を承知で話を遮りデミウルゴスが言葉を発する。
「なんだ、デミウルゴスよ」
「エ・ランテルで遭遇したということはその男は人間ではないのでしょうか?」
間違っていてほしい、というようにアインズに問いかける。
「その通りだ、デミウルゴス。何か問題でもあるのか?」
「は、いえ・・・」
「よい、言ってみろ。遠慮する必要は無い、忌憚なく意見を述べよ」
「は、それでは僭越ながら申し上げます。下等な人間如きがアインズ様の友となるのは、些か以上に不敬にあたると愚考いたします」
ナザリックの中でもカルマ値のマイナスが最大クラスのデミウルゴスだ。当然の意見だろう。
「ふむ、アルベドはどうだ? 遠慮はいらんぞ」
守護者一人一人に聴いていこうとするアインズ。
「アインズ様のお心のままに―――と言いたいところですが、私もデミウルゴスと同意見です。下等生物如きがアインズ様の友というのはあってはいけません」
「シャルティア」
「アインズ様が認めんしたなら問題ありんせん」
「アウラ、マーレ」
「私は問題ありません」
「ぼ、僕も大丈夫です」
「コキュートス」
「アインズ様ノオ考エニ間違イハナイカト」
「セバス」
「アインズ様の友となる方ならば、最高のおもてなしをさせて戴きます」
守護者達の意見を聞いたアインズは、大体当人達のカルマ値通りの受け答えだと感じる。シャルティアだけは予想よりもマシだったが。
「お前達の意見は理解した。それを踏まえて私は答えよう」
ここからが本番だと、ある筈もない心臓の鼓動が速くなった気がするアインズ。
「私は人間種に対して嫌悪や侮蔑あるいは慢侮や蔑視といった所謂、悪感情だな。そういったものを持っているわけではない」
今まで守護者達の失望を恐れて言いあぐねていたことを暴露する。
「別に好意を持っているというわけではないぞ?ただあちらが好意を寄せてくるならば多少の情がわき、敵意を持つなら消せばいい。その程度のものだ」
アンデッドにあるまじき意見に守護者達はどう反応するだろうか。
「私はナザリックに所属している者を、過去に友人達が作ったお前達を、家族の様に思っている。人間に限らず神だろうが天使だろうが、他の有象無象の弱者などお前たちの爪の先ほどの価値すら無い」
失望されるだろうか。忠誠を失うだろうか。
「だが例外はある。先程言ったような人間でも神でも天使でも、お前たちの様な吸血鬼や闇妖精や悪魔でも。ナザリック以外の者は私にとって全ては等価値だ。だが・・・」
だがこれは必要なことなのだ。
「だが強者は違う」
それは人間や、友となったオデンキングのためではない。
「先の一件で判明した、脅威と言っても過言ではない生まれつきの異能を持ったンフィーレア・バレアレ。噂が真実ならばデミウルゴスやアルベドに匹敵するやも知れぬ智謀を持った王国の王女と帝国の皇帝」
このナザリックで自分に忠誠を捧げる、何よりも大事な配下達のためだ。
「そして我が友オーディン。彼は純然たる実力で私と同格である強者だ」
そう、オーディンことオデンキング。
彼の存在が、アインズがナザリックの人間軽視の風潮を改善しようとしている理由だ。
この広い世界でたまたま自分以外の唯一のプレイヤーであるオデンキングと出逢った。
馬鹿馬鹿しい。そんな偶然があるものかとアインズはその考えを破棄する。
おそらく、自分達以外にも〈ユグドラシル〉終了時において転移したプレイヤーは一定数いるのだろう。そう考えた方が自然だ。
いまだそれとおぼしき情報は上がってきていないが時間の問題だろう。
そしてプレイヤーが多数いるとなれば、人間蔑視が基本のナザリック配下達はどうなるか。
このナザリックに引きこもるならそれほど問題はないだろう。
だがもう、世界に打って出るという基本方針は決定しているのだ。
任務の途中で何かしらのミスをするものはいるだろう。
それはいい。
それはいいのだが守護者達の力があれば多少のミスは自身で無理矢理に解決する可能性がある。
例えば自身の眷属や召喚したモンスターを使ってナザリックの介在がバレぬように何処かを襲撃する任務があるとしよう。
そして予想外にも返り討ちにあい目的が果たせなかった。
そんな時アルベドやデミウルゴスならばまず報告してくるだろう。
だがシャルティアやナーベラルなど頭に血が昇りやすい者であれば結果だけを重視して目撃者もろとも殺せばいい、と自身で解決しようとするかもしれない。所詮人間如き、と。
だがそれがプレイヤーだった場合はどうだ?
シャルティアならばガチビルドのプレイヤーとだって対等に闘えるだろう。一対一の場合は、だが。
ナーベラルはどうだ? この世界では強いといっても〈ユグドラシル〉では職業レベルと種族レベルを合わせても60と少しの、カンストプレイヤーからすればただの雑魚だろう。
甦らせるのだって限りがある。なにより友人達が手塩にかけて作ったNPC達が死ぬところなど見たくもない。
だから、アインズは守護者達の意識を改善したいのだ。ナザリック上位勢の人間軽視の風潮が弱くなれば、その下にいる者達も影響を受けるだろうと考えて。
「このように一口に強さと言っても色々とある。だが私にとってそれらは全て敬意を払うに値する、欽慕を持って接するべきものなのだ」
守護者達は沈黙を保ちアインズの言葉に聞き入っている。
内容がどうであれ、至高の御方である主がここまで自分達にその心情を吐露したことはない。
ならば一言一句、聞き漏らしてはならないとその御言葉を頭に染み込ませていく。
「お前達の中には人間達にとって悪であれ、と生み出された者もいよう。私はそれを否定しない。だがこれだけは忘れるな」
「強者に敬意を払え」
「たとえ弱者に見えようとも、その身の内に単純な強さとは言えぬ力を秘めた者もいるということを忘れるな」
これを言いたいがために長々と演説したのだ。
守護者達の心に響いてくれるだろうか。
戦々恐々としながらアインズは守護者各位に視線を送る。
アインズの話が終わった玉座の間にしん、と静寂が訪れる。
最初に口を開いたのは、演説の発端となる疑問を問い掛けたデミウルゴスだった。
「アインズ様」
「う、うむ。どうしたデミウルゴスよ」
少しビビりながらアインズは言葉を促す。
「その慈悲深く、そして全てを受け入れる圧倒的な器を未だ知らずにいたことを、一知半解であったこの身の愚昧を御許しください。その深謀深慮と寛大なお心を少しでも理解出来るよう努めることをお約束いたします」
なんか難しいことをいっているがなんとなく言いたいことは伝わった気がしたアインズ。
「流石はアインズ様でありんすえ」
「か、かっこいー・・・」
「強者ニ敬意ヲハラウコトノ意味ハコノコキュートス、シカト理解シテオリマス」
「アインズ様ぁ・・・クフーーーっ!!」
概ね問題ないようだ。アインズはほっと心の中で溜め息をついた。
ちなみにプレイヤーの数とか云々は盛大な勘違いである。
エ・ランテルにある、1階が無惨なことになっている宿屋の前でオデンキングはクレマンティーヌと共にアインズからの迎えの馬車を待っていた。
当初は歩いて向かうと固辞していたのだがアインズがこちらが招待したのだから、と押してきたので好意に甘えることにしたのだ。
それをオデンキングはものすごく後悔していた。
「おい、あいつらが・・・」
「ああ、昨日の・・・」
ひそひそと周りで囁かれる声が、無駄に高性能な耳に入ってくる。
怪我人は治療もしたし、宿屋には修繕費も支払ったが事実が消えるわけではない。
宿屋の前で待っているこの状況は針のむしろだった。
「どしたのー?ディンちゃん?」
「なんで何も感じてないんだお前は・・・」
弱者の視線など気にしないクレマンティーヌに呆れるオデンキング。
ちなみに昨夜異世界だの転移だのとぶっちゃけたオデンキングだが、クレマンティーヌは特に気にした風でもなく「ふーん」の一言で終わった。
クレマンティーヌは強さ以外にはそれほど頓着しないらしい。
益体もないことを考えながら待っていると遠くから馬車の音が近づいてきた。
中級の宿屋の前に停まるには相応しくないほどの格式高そうな馬車がオデンキング達の前で停車する。
馬車の扉が開くと眼鏡を掛けた黒髪の美女メイドが降りてきた。
「オーディン・キニング様とクレマンティーヌ様で御座いますね? ナザリック地下大墳墓の〈プレアデス〉所属、ユリ・アルファと申します。お迎えに上がりましたのでどうぞ馬車にお乗り下さいませ」
見事な礼を見せたメイドに少し気遅れしつつも感謝の声をかけつつ馬車に乗り込むオデンキングと後に続くクレマンティーヌ。
そしてオデンキングはフリーズした。
好みにドがつくストライク。理想の美少女がそこにいたからだ。
「お初に。ナザリック地下大墳墓、階層守護者シャルティア・ブラッドフォールンでありんす。アインズ様の命によりナザリックに到着するまでの間、話し相手をさせていただきんすのでよしなに」
シャルティアは目の前で固まっている男を見ながら何故自分がこのような仕事を命じられたのか不思議に思っていた。
別に自分を卑下するわけではないが、客人を迎えに行くという任務ならばもっと適役がいる筈だ。
少なくとも人当たりがいいとは言えない自分にはこの任務は不適当なのは間違いない。
至高の御方が直々にくだされた命令に不満などないが疑問に思うのは仕方ない。
だがその疑問は数分後には氷解していた。
「シャルティア・・・、もしかしてペロロンチーノさんが作ったNPCの〈シャルティア・ブラッドフォールン〉?」
シャルティアは驚愕した。何故初対面のこの男から自分を作った偉大なる至高の御方、ペロロンチーノ様の名前が出るのか。
「さ、左様でありんすが、何故それを・・・?」
シャルティアの混乱をよそにオデンキングは軽くはしゃぎ始める。
「うわ、マジかー。自分の萌えと性癖を全て詰め込んだって聞いてたけど・・・納得。吸血鬼ロリBBAでゴスロリファッション、適当な廓言葉。うわー、ペロロンチーノさんよくやるなー」
「あ、あのう」
「あ、ごめんごめん。えーと君を作ったペロロンチーノさんとは友達でさ。自分の全てを込めて作ったNPCだって、日頃からよく自慢されてたからちょっと会えて興奮したというか」
シャルティアは驚きに眼を見開き、そして納得した。
いくらプレイヤーで同格だからといっても会ったその日にアインズ様から友と認められたのはそういう訳だったのか、と。
そしてこの任務を命じられたことを感謝した。
「そ、そうでありんしたか・・・。あの、もっとペロロンチーノ様のお話を聞かせておくんなまし」
シャルティアは頬を上気させながらオデンキングにお願いする。
今はもう会えなくなった我が主。
自分のことを自慢気に話していたのだという我が主。
心地好い充足感に包まれながらシャルティアは楽しいお喋りに興じていた。
「・・・そうそう。で、ペロロンチーノさんは言ったんだ。「確かに吸血鬼ロリBBAなら廓言葉ではなく、のじゃロリにすべきという意見もわかる。だがこれが、これが俺のジャスティスだ!!」って」
「な、成る程。よく解りんせんがきっと崇高な話し合いでありんしたのでしょう」
シャルティアはとても喜んでいた。我が主の知らなかった部分を沢山話してくれるこの男は、ペロロンチーノ様の良き友人であったようだ。
もっと知りたい。もっと聞きたい。だけど時間は有限だった。
「オーディン様。クレマンティーヌ様。到着致しました」
メイドのユリ・アルファから声が掛けられる。
「もう着いたでありんすか。では御二人共、パーティー会場の準備は整っていると思いんすがまずはアインズ様がおられる玉座の間に案内いたしんす」
シャルティアが意識を切り替えながら先導する。
「パ、パーティー会場て、マジかモモ・・・いやアインズさん」
普通に案内されて楽しくご飯でも食べるのかと思っていたオデンキングは予想外の歓迎っぷりに少し引いていた。
「至高の御方の御友人が来るともなれば、ナザリックを挙げて歓待するのは当然でありんすよ」
どんだけ崇拝されてんだアインズさん。色々突っ込みたいオデンキングであった。
長い階層を抜けて着いたのは荘厳な雰囲気を醸し出している玉座の間。
そこに座るアインズと後方と左右に侍っているメイドと異形種達。
そして進み出るシャルティア。
「アインズ様。お客人をお連れ致しました」
「うむご苦労であった、シャルティアよ」
そして定位置に戻るシャルティアとユリ・アルファ。
「よく来てくれた、我が友オーディンよ。歓迎するぞ」
左右に両腕を少し開きながら鷹揚にオデンキングに声を掛けるアインズ。
まさに堂々たる支配者のポーズであった。
歓迎の意を示すアインズ。まさに支配者然としたその様相だがオデンキングにはその横に、必死な顔をした骸骨を幻視していた。
「よく来てくれた、我が友オーディンよ。歓迎するぞ」
(合わして、合わして!!)
「ああ、私もかの名高きナザリックの最奥に足を踏み入れることが出来るとは、感動で胸が震えているよアインズ。今日は招待してくれて感謝している」
(何やってるんですかアインズさんwww)
「フ、そう言ってくれると準備をした甲斐があるというものだ」
(別に厨二病じゃないですよ!? ただ部下の望む支配者を・・・!!)
「君のことだ、まだまだ私を驚かせてくれるのだろう?」
(厨二病乙)
「ああ、期待しておいてくれ。それとパーティー会場に行く前に軽く紹介しよう。彼等がナザリックが誇る精鋭、各階層守護者達だ」
(やめて、そんな眼で見ないで!)
「もう知っているだろうがシャルティア・ブラッドフォールン。1階層から3階層までの防衛を担当している」
「先ほどはとても楽しかったでありんす。機会があればまたお話してくんなまし」
「コキュートス。5階層の守護者でありナザリックきっての武人でもある」
「アインズ様ト同等ノ強サトキイテオリマス。ヨロシケレバゼヒ手合ワセヲオネガイシタイ」
「アウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレ。6階層の守護者であり双子の姉弟だ」
「よろしくお願いします!!」
「こ、こんにちわ」
「デミウルゴス。7階層の守護者でありナザリック最高の頭脳の一人だ」
「お見知り置きを」
「そしてアルベド。守護者の統括でありデミウルゴスと同等の頭脳を持った智恵者でもある」
「よろしくお願いいたします」
アインズは守護者の紹介を終えると立ち上がる。
「それではパーティー会場に向かうとしようか。・・・と言いたいところだが、少しだけオーディンと話したいことがある。セバス、先にそちらのお嬢さんを案内して差し上げろ」
「かしこまりました」
セバスが深い礼をもって応じる。
「オーディン、自室の方へ案内しよう」
「あ、ああ」
ドナドナされていく子牛のような眼を向けてくるクレマンティーヌにすまなさそうな視線をやりながらアインズと共に歩きだすオデンキングであった。
ナザリックにいる間にどんどんオデンキングに依存していくクレマンティーヌ。
吊り橋効果とはかくも恐ろしきものなり。
吊り橋(Lv100)
次話は至高の御方の話いっぱい聞いちゃったぜドヤァなシャルティアと階層守護者達の会話から始まります。