オーバーロード 四方山話《完結》   作:ラゼ

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笑いってなんだっけ(遠い目)

説明の下りは勢いで読んでください。



四方山話

「ほう、結婚式の招待状だと?」

「そ、ナザリックがどんな所か知ってる人だけでも呼ぶんだってさ」

 

帝都の城の政務室で、アルベドに招待状を託されたオデンキングがジルクニフへとそれを渡す。アインズの言葉により各国の上層部も招待するのだと勘違いしたアルベドは、その役目をオデンキングにお願いしたのだ。

 

「しかし…くくっ」

「ん? なんか面白いことでも書いてた?」

 

招待状を見て呆れ笑いのようなものをこぼすジルクニフに問い掛ける。

 

「いや、文面は至って普通だとも。しかしこの豪華な招待状、これだけで庶民には一財産になるんじゃないか?」

 

気合いの入ったアルベドお手製の招待状だ。羊皮紙の質感からして最上級で、金の装飾に加え蝋の部分には小さい宝石まであしらわれている。招待客が少ないからこそ出来たことでもある。

 

「ああ、そこか。嫌味だし止めといた方がいいって言ったんだけどなぁ…」

 

常識的に考えてそれは無いと指摘したオデンキング。しかし結婚式を前にしたアルベドはブライダルハイな躁状態。「これくらい必要だわ!」の一言で指摘は切って落とされた。

 

「いやいや、これはこれで悪くない。招待されたものにはナザリックの強さはさておいて、未知の場所には違いない。これほどのものを送るのならばどういった場所かも想像がつくと言うものだ」

 

文化が違うとやり方も変わる。未開の地に招待されたから華美なドレスで行けばいいというものではないのだ。場にそぐわぬ格好は余計な軋轢を招く。

 

その点この招待状は常識はずれの財を知らしめるような装飾がなされているものではあるが、こちらの感性とさして変わらぬことを示している。

 

「そんなもんかねぇ、いいんならいいけど…。じゃ、出席ってことで大丈夫?」

「もちろんだ」

 

それを聞いてリストに丸を付けるオデンキング。

 

「ナザリックが大丈夫そうな人なら何人連れてきてもいいってさ。じゃあ宜しくー」

 

そういって手をひらひらと振りながら転移していくオデンキングを見て、ジルクニフは一人ごちる。

 

「このタイミングで結婚式…いったい何が目的だ? まさか暗殺などということはあり得んしな…」

 

話を聞く限りではこちらに転移してきてある程度は経っているものの、地盤はまだ固まっていない筈だ。友好的に接してくれているのは解るが、こんなタイミングで結婚式をする意味も自分を招待する意味も今一不鮮明である。

 

各国の要人をまとめて一網打尽にする可能性も少し過ったが、そんな面倒なことをせずともやりようは幾らでもある筈だと却下するジルクニフ。

 

「…案外何も裏はないのかもな」

 

種族も強さも、その人格とは比例しないのだとオデンキングを見て理解しているジルクニフ。ばっちり正解を当てつつも連れていく者を選別し始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです、皆さん」

 

王都の冒険者ギルドで依頼を見繕っている漆黒の剣に声が掛けられる。

 

「オーディンさん! お久しぶりです。帝国へ戻られたんじゃ…?」

 

ぺテルが驚いた顔をしながらも笑顔で応える。ルクルットやニニャ、ダインも同様だ。直接の功労者ではないとはいえ、姉妹の再会を膳立てしてくれた物の一人なのだ。好意を持って接するのも当然のことだろう。

 

「ええ、ちょっと所用で転移してきまして」

「て、転移ですか…?」

 

ちょっと近所まで、といった風に何でもないことだと答えるオデンキングにニニャが疑問の声を上げる。

戦闘で使える近距離の転移ならば、高位のマジックキャスターが使う魔法にそんなものがあったと知識として持っているニニャ。しかし帝都から王都まで転移してくるなど、控えめに言っても人間技ではない。

 

「あー、その辺も含めて少々お話したいんです。アインズさんと一緒に冒険しただけならともかく、ナザリックの正式な預りになったメイドさんの身内なので…」

 

ツアレは既にナザリックのメイドとしての立場だ。そうなるとその妹であるニニャや、その仲間達も無関係ではいられないという判断から招待することと相成ったのだ。

 

「…? 解りました」

 

この後セバスとソリュシャンが詰める館にて説明がなされ、漆黒の剣による驚きの声が何度も響きわたったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お初に御目にかかります。ナザリックからの名代として参りました、オーディン・キニングと申します。招待状を預かっていますのでお渡しさせて頂けますか?」

 

王であるランポッサⅢ世に謁見するオデンキング。いきなり会いたいと行っても門前払いは目に見えるため、ジルクニフに口利きしてもらったのだ。

 

人脈さまさまである。

 

「おお、先の戦では世話になった。して、招待状とな?」

 

直接話したのはアインズのみであったが、ゴブリン掃討戦の報告を受けた際に耳にした名前を聞いて礼を言うランポッサⅢ世。

 

目の前の男は怪我の治癒や石化を解くためにポーション等のアイテムを惜しげもなく使用してくれたと聞いていたのだ。

 

実を言うと単に責任を追及されるのが嫌だっただけである。

 

「はい、この度ナザリックの主であるアインズ・ウール・ゴウン、そしてナザリック階層守護者統括のアルベドが婚姻を結ぶ事となりました。つきましては実情を知るものだけでささやかな披露宴を開くこととなりましたので、招待状をお持ち致しました」

 

「ほう、それは目出度い。是非とも参加させて頂こう」

 

特に穿った見方はしないランポッサⅢ世。秘密裏に行ったアインズとの会話が終始和やかだったのが大きいのだろう。

 

「ありがとうございます。……何か?」

 

早々においとましようと、その意を述べかけるオデンキングだがランポッサⅢ世の少し問いたげな雰囲気を察して踏みとどまる。

 

「うむ、いや…少々不躾な質問になるのだが…」

「答えられることなら何でも答えますけど」

 

既に慇懃な態度のメッキが剥がれてきているオデンキング。所詮は一般人である。よくみるドラマなどを真似してそれっぽく見せたはいいものの、ここまでが限界だった。

 

「ああ、そなたは帝国の重鎮と聞いていたのだが、ナザリックとはどういった関係なのかと疑問に思ってな。見る限り随分と親交がありそうだが…」

 

何だかんだで人を見る目はあるのが王たる所以。むしろそれがなければ王とは言えないだろう。

ナザリックの事を話すときの気安い雰囲気を見抜き、名代で来た事実を考慮に入れればそれなりに推測も立つというものだ。

 

「じゅうち…あのお馬鹿皇帝め。単なる客分ですよ、どちらかと言うとナザリックの方に所属してます」

「そ、そうか…ふむ、人間も居るのだな。通常のアンデッドと違うのは充分に理解していたが、やはりそう聞くと安心するものだ」

 

帝国の皇帝をお馬鹿呼ばわりするオデンキングに汗を垂らすランポッサⅢ世。しかしナザリックに人間も所属していると聞いてほっとする。

 

先の言葉通り人間に隔意を持たないのは充分に理解しているものの、根元的な恐怖は中々拭えないものだ。

自分は大丈夫だが、これからナザリックの事を広めていくにしたがって否定的な者は必ず表れる。その際に人間も所属しているという事実は、説得の一助くらいにはなるだろう。

 

「あー、はは、完全に無害とは言い難いかも…」

 

ぶっちゃけるとアインズの指示がなければバリバリ危険です。とは口が裂けても言えないオデンキング。乾いた笑いをしながら誤魔化した。

 

そして暫しの談笑の後、第三王女も是非お誘いくださいと言って退去するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「必ず行きますとお伝え下さいな」

 

ラキュース達蒼の薔薇にも招待状を渡したオデンキング。快諾した彼女達に感謝の言葉を述べて次の目的地へと向かおうとするが、それをガガーランによって引き留められ、話が聞こえないように部屋の隅に連れていかれる。

 

「ひ、ひぃ…。お、俺には心に決めた人が居まして…」

「違えよ!」

 

性的に襲われるのかと身構えたオデンキングに突っ込みを入れるガガーラン。自分の獲物は童貞だと高らかに宣言した後、用件を伝える。

 

「マジすか…?」

「ああ、マジだ」

 

それはイビルアイがデミウルゴスに懸想しているという、驚きの事実であった。

 

「ふーむ…。デミウルゴスに春が来たとな。…だけどなー…」

「やっぱ難しいか?」

「というよりまずナザリックとそれ以外で相当差があるからなー、デミウルゴス。たぶん外部の人だとそれだけで最低条件にも満たないと思うけど」

 

そもそも恋愛感情あるんだろうかと疑問に思うオデンキング。アインズが誘えばあるいは…と思ったところで吐き気を覚え考えるのを止めた。

 

「そうか…」

 

考え込むガガーラン。仲間の恋を応援してやりたいと思う気持ちは本物だが、イビルアイが蒼の薔薇を抜けるのも悲しい。それに恋と仲間なら恐らく自分達を取るだろうという確信があるため、成就しそうにない恋の行方を思い溜め息をついた。

 

「まあ、俺の主観だから。本気なら応援するのも吝かじゃないし」

 

仕事に追われて倒れたデミウルゴスを思い出すオデンキング。息抜きに恋愛というのはありなんじゃないかと、お節介なおばちゃんのような考え方で前途多難な恋を応援することに決めた。

 

「ああ、宜しく頼む。成功したら俺が体でお礼しても…」

「じゃ、お疲れっす」

 

最後まで聞かずに転移したオデンキング。賢明である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー、これで終わったかな…」

 

ガゼフ、カジット、蜥蜴人の代表等にも招待状を渡し終わり帰路につくオデンキング。ナザリックへ到着しアルベドに会う前にアインズへと挨拶しに私室を訪ねた。

 

「こんにちわー…ん? 何してるんですか?」

「ああ、オーディンさん。いえちょっとアイテムの整理をしてまして」

「へー…お、それは…」

 

アインズが持つアイテムを見てなんだったかな、と声に出すオデンキング。

 

「『完全なる狂騒』です。あんまり使いどころの無いネタアイテムなんですけど…何故か9個もあるんですよね」

「あー、それそれ。俺も3個持ってます」

「なんで!?」

 

個人で持てるアイテムには限界がある。枠に限りがある以上無駄に持ち歩くのは憚られるものだ。

 

「ギルドに所属してなくてもホームに置きませんか? 普通」

「いやー、ほら。最後だったから色々適当に詰め込んでたり、貴重なアイテムは手持ちにしてたりで」

「一応最後もPK結構いたでしょうに…」

 

最後だからこそ暴れまわる愉快犯もそれなりには居たのだ。全てが消えるまで幾許もなかったといえど、最後にキルされてロストするのは悔やみを残すのが普通である。

 

「最後は初心者mapのとこ居ましたからねー。過疎ってる上にあんなとこじゃPKも居なかったですよ」

「へー、そうなんですね。じゃあ結構貴重なアイテムも持ってるんですか?」

 

ぐいっと食いつくアインズ。やはり重課金者であり余暇のほぼ全てをユグドラシルに注いでいただけにコレクター魂が刺激されたのだろう。

 

「ナザリックに無くて俺が持ってるアイテムとか無いと思いますけど…」

 

そう言いながらポイポイ中身を取り出していくオデンキング。その様は百年以上昔から続くアニメの某青タヌキが焦った時のようだ。

 

「ふむふむ……。こ、これは…!」

「あ、これが一番レアですね」

 

アインズが驚きの声を上げたアイテム。それは課金ガチャで手に入る『流れ星の指輪』を目にしたからである。このレアアイテムの効果は《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》という超位魔法を三回まで使えるというものだ。

 

それだけ聞くと回数制限のある超位魔法の数が増えるのみ、と思う者もいるかも知れない。しかし《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》は回数制限もそうだが、何よりも経験値を消費して発動するというのが非常に使用を躊躇わせる原因だ。

 

ユグドラシルではレベルダウンしてしまうと―――特に99から100へ上がるのに掛かる時間はそれなりだ。

この世界の一般人で換算するならば10万人殺したところで尚足りぬ莫大な経験値を、その消費なしで三回も使えるアイテムと言うことで超レアという位置付けがされているのがこの『流れ星の指輪』である。

 

しかし、それを持っているだけならばアインズは驚かない。ならば何故驚愕の声を上げたのか。それは―――

 

「なんで3個もあるんですか!」

 

そう、アインズがボーナスをはたいてようやく一つ手に入れたこのアイテムをオデンキングは三つも所持していたのだ。

 

「え? あー、ガチャ引いたら三回連続で出てきました。流石においお…ちょっ! アインズさん! 絶望のオーラ止めて!」

 

絶望のオーラ(物理)がその場に撒き散らされオデンキングをちくちくと攻め立てる。

 

「俺のボーナス全額…」

 

四つん這いになって落ち込むアインズ。かつて仲間のやまいこが同じガチャを引いたときも、一発で引き当てた事を思い出してへこんでいるのだ。

 

「いいじゃないですか! 俺なんかワールドアイテムとか触ったことも無いですよ!」

 

部屋から出てドアの隙間から声を投げ掛けるオデンキング。ちなみに彼が使った金額はアインズの100分の1以下である。

 

「ああ…すみません。少し取り乱しました」

「貴方アンデッドでしょう」

 

部屋に入り直したオデンキングから鋭い突っ込みが入る。しかしきっと耐性を越える絶望だったのだ。

 

「そういや《 ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》ってどうなってるんでしょうね」

 

ふと思い出したようにオデンキングが口に出す。ユグドラシルでは幾つかの選択肢から任意に選ぶ形であったが、この世界は割と現実に則したように魔法が修正さるているのだ。もしかすると本当に願いが叶う指輪になっているかもしれない。

 

「試したいんですけど勿体無かったので…。でも」

 

3個もあるならいいよね? という無言の圧力で1つは実験に使われるのが決まったのであった。

 

「ま、まぁそれは置いといて。指輪と言えば、式の指輪は用意してあるんですか? 一つ持ってるってことはまさかそれとか…」

 

見た目も美しく、レア度は最高ともなれば結婚指輪には相応しいだろう。無理矢理に話題を変えたオデンキングは雰囲気を変えるために結婚式の話を出した。

 

「はい? なんで種族同士の友好を示す式典に指輪が要るんですか?」

「え? いや…え?」

「…?」

 

本気で不思議がっているアインズを見てオデンキングも同様の状態になるが、その一瞬後にピンときて黙りこむ。

 

「あの、オーディンさん?」

「……あ、いやいや言葉の綾です。それよりちょっとアルベドのとこに行ってきます」

「は、はあ…」

「あ、この『完全なる狂騒』要らないんだったらもらっても?」

「ええ、別に構いませんが」

 

見送るアインズは首を傾げたままだ。それを背にして歩くオデンキングの顔には、悪そうな笑みが張り付いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして遂に。波乱の結婚式が幕を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちわー。おっ、アインズさん格好いいじゃないですか」

 

各人が集まり、披露宴直前のタイミングでアインズの元へ赴いたオデンキング。なんとも符に落ちない様子のアインズを見て笑いを堪える。

 

「ああ、オーディンさん…。その、なんというかこの格好って礼服というより…」

 

新郎が着るような服じゃありませんか? と問われたオデンキングは遂に吹き出した。そしてそのタイミングでセバスが呼びに来る。

 

「アインズ様。準備が整いました」

「あ、ああ」

 

吹き出したことに疑問符が浮かぶばかりのアインズ。そしてまだ口元をひくつかせたまま、オデンキングはセバスへ話し掛けた。

 

「セバス、結婚式場の様子はどう?」

「はい。皆様方、内装に感嘆しておられる御様子。料理の方も準備万端でございます」

「…え?」

 

結婚式場。その言葉にも、それを聞いて驚かないセバスにもポカンとするアインズ。

 

「あ、今更ですがご結婚おめでとうございますアインズさん。本当にお似合いだと思いますよ、アルベドと」

 

これは嘘偽りない本心ではあるが、悪戯心バリバリだ。

 

「え?」

 

そしてさらに追い討ちを掛けるオデンキング。鬼である。

 

「ていっ!」

「おわっ!? それは!」

 

オデンキングがアインズに向けて使用したアイテム。それは先日もらい受けたばかりの『完全なる狂騒』であった。

 

 

 

 

 

 

説明しよう! 

 

『完全なる狂騒』とはステータス異常に完全耐性のあるアンデッド等にも精神系魔法が効くようになる優秀なアイテムであるが、使用制限や効果範囲、使用条件のせいでネタ認定された残念なアイテムである! 

しかし現実に則したこの世界ではそれが緩和されており、ワールドアイテム所有者すら無力化してしまう凄まじい宴会用アイテムなのだ!

そしてユグドラシルには表向きの効果とは別に、隠された効果のあるアイテムが多く、御多分に漏れずこの『完全なる狂騒』にもそれは存在していた!

 

それはこのアイテムが8個存在し、アンデッド、インプ、デュラハン、ドッペルゲンガー、ワーウルフ、ショゴス、アラクノイド、オートマトンが周囲にいる場合、勝手に効果が発動し全ての種族を狂騒状態にするという非常に都合のいい能力である!

 

しかし更に更に隠された効果がこのアイテムにはあるのだ!

 

それはこのアイテムが10個存在し、人間、竜人、アンデッド、デュラハン、ドッペルゲンガー、ワーウルフ、ショゴス、アラクノイド、オートマトンが周囲にいる場合勝手に効果が発動し、その効果範囲は通常の1000倍となり全ての種族を狂騒状態にするという非常に非常に非常に都合のいい能力である!

 

引用:ユグドラシル@wiki

 

 

 

 

 

 

 

「なんてことするんですかオーディンさん!」

「いやー、ほら。パンドラズ・アクター使って驚かされた意趣返しといいますか」

「えぇー!!」

 

普段から耐性のお陰で色々と取り繕っていたアインズ。ここぞとばかりに取り乱している。そしてそんなアインズの声をありえない遠さから非常に都合よく聞き付けたプレアデスのメイド達が部屋に押し入る。

 

「アインズ様! どうなさいましたか!」

 

ちなみにこれで人間、竜人、アンデッド、デュラハン、ドッペルゲンガー、ワーウルフ、ショゴス、アラクノイド、オートマトンが揃ったことになる。

 

「い、いや、そそそれがだな…うおっ!?」

 

そしてオデンキングが持っていた残りの『完全なる狂騒』が勝手に表れ、突如光りだした。

 

「へっ?」

「きゃっ!」

「ぬうっ!」

 

それはナザリック全てを包み込むほどの大きさだ。会場に居た者も区別なくアイテムの効果を受けたことで、通常よりも慌てやすくなり普段は隠しているような本心も出やすくなるような中途半端な狂騒状態へと陥った。

 

「いったいなんだったん……うおわぁ!! 骨ぇぇー!」

「えぇー!?」

 

アインズを見て叫びを上げるオデンキング。既に彼も効果を受けているのだ。恐怖心が膨れている時に人骨が隣にいれば無理もない。

 

「あ、アインズさんか…。びっくりした」

「えぇー…」

 

色々ありすぎて混乱中のアインズ。しかし無情にも開催の時間は迫っているのだ。セバスが少し焦りながらアインズを急き立てる。

 

「アインズ様。そろそろ時間が推しております。式場へと参りましょう」

「う、うむ」

 

そうしてぞろぞろとアインズの後ろへ付くセバスとメイド達。一見普通の状態であるが、彼女達も効果は充分に受けている。

 

「なんか落ち着かないな…」

 

最後に出たオデンキングはソワソワとしながら式場の方へと向かい、アインズ達を追いかけた。

しかしその行く手を阻むように最後尾に居たソリュシャンがオデンキングに抱きつき、キスでもするのかというほどに顔を近付ける。

 

「ちょっ! ソリュシャンちゃん!?」

 

今までそんな感情は欠片も見せたことが無かったソリュシャンの行動に驚くオデンキング。

 

「オーディン様ぁ…。私…前からずっとオーディン様を…」

「え、いや、マジ?」

 

蕩けるような顔をして体を押し付けるソリュシャンにたじたじだが、その感触に少しにやけているのが押し返さない理由を表している。

 

「はい…。オーディン様を少しでいいから溶かしたいって…」

「え? いや、マジ」

 

最後までセリフを言えずにオデンキングはソリュシャンの口によって口を塞がれた。

もちろんキスではなく、人間の限界を越えた大きさでオデンキングの頭を丸のみにしたソリュシャンの口によってである。

 

「―――~っ!!」

 

視界が暗くなりヌメヌメとしたものに頭が包まれる不快感に声が出ない。だがレベル差による身体能力の違いにより無理矢理抜け出したオデンキング。ソリュシャンの体液でベトベトである。

 

「あん」

「あん、じゃないから! 死ぬから!」

 

もう少しだけ、とさらに溶かそうとしながら体を擦りよせてくるソリュシャンから逃げ回り廊下を進む。そしてその先には冷たい視線のナーベラルが待ち構えていた。

 

「あ、ナー」

「不潔よ、下等生物」

「えぇー…」

 

頭がベトベトで不潔なのかソリュシャンにベタベタされているのが不潔なのか難しいところである。

 

「大体前から思ってたけど…」

 

ぐちぐちぐちと愚痴のオンパレードである。呪詛のようなそれを聞き流しながらさらに廊下を進む。すると今度はオートマトンのシズ・デルタが待ち構えていた。

 

「ここは通さない…」

「なんの中ボスラッシュ!?」

「嘘。早く行く。」

 

抑揚の無い声で冗談をかますシズ。3人を伴って更に廊下を進むオデンキングだが、ここまでくれば後の展開も解ろうというものだ。

 

角を曲がり、恐らく待ち構えているであろう残りのプレアデスを警戒して防御の体勢をバッと取る。

 

「何をしているの? 下等生物」

「居らんのかいっ!」

 

ナーベラルが蔑んだ目で見下しつつ、微妙な体勢で固まっているオデンキングの横を悠々と通りすぎていった。

 

「俺ってこんな突っ込む役だっけ…」

 

自業自得である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっとオデンキングが式場に入ると、アインズが来賓への挨拶を行っているところであった。

 

「と、ということで…我々は種族の垣根を越えて手を取り合うことが出来ると私は確信しており…」

 

アンデッドなのに冷や汗だらだらのアインズ。少なくともオデンキングにはそう見えた。

 

「さらに下級なアンデッドは安価な労働力となり生産性を増すことが国力の増強に…」

 

もはや結婚式で話す内容では無いところまで言及しているあたりが混乱の何よりの証拠である。

 

「で、あるからして…」

 

(助けて下さい! オーディンさん!)

 

喋りながらオデンキングにメッセージで話し掛けるアインズ。混乱しているとは思えない器用さだ。

 

「あー…」

 

自分の悪戯のせいであるが、少し可哀想になってきたので助け船を出すオデンキング。微妙に話の道筋を修正させながらこう言った方がいい、などとメッセージを返す。

 

「そして、もちろんジルクニフ……ジル」

 

(な、名前なんでしたっけー!?)

 

(ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスです!)

 

「…ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿におかれては…」

 

(セーフ)

 

(アウトです)

 

ちらりとこちらを見たジルクニフと目が合ったオデンキングは、絶対に気付かれたなと確信した。しかし拘っても仕方ない。

 

そろそろ終わらしてもいいんじゃないかと言うオデンキングの言葉にアインズは話を締めにかかる。

 

「少々話が長くなってしまったようですね。ではこの辺で一旦締めさせて頂きましょう。最後に…」

 

(やっと終わる…)

 

(はは、絶対に何人か気付いてますよ、動揺しまくってるの)

 

(誰のせいですか!)

 

「最後に、態々私達のために集まっていただいた皆さんに…」

 

(まぁまぁ、別にただの嫌がらせだけじゃないんですって。人間くさいところを見せればきっと皆もアインズさんを身近に感じて…)

 

(今考えましたよねそれ)

 

(いやいや)

 

(いやいやいや)

 

「…感謝を述べさせて頂きます」

 

(俺にですか?)

 

オデンキングも少し調子に乗っているのは『完全なる狂騒』せいなのだろうか、それは解らない。

ただ解ることは、こんな多重思考が必要な行為は慣れていなければ失敗するのは間違いないということだけだ。

 

(本当にお集まり頂き、ありがとうございます)

 

「即死魔法掛けていいですか?」

 

(……)

 

(……)

 

(逆ぅーーー!! 何十年前のネタですか!!)

 

(間違えたぁーー!!)

 

場が凍ったように静まりかえる。恐ろしい見た目の骸骨が即死魔法を掛けるなどと言っては当然の反応だ。

ましてやこの場には皇帝や王が選別したとはいえ、異形の者達など見たことが無いものすら要るのだ。『完全なる狂騒』が効果を発揮している今、もはや大混乱は目前である。

しかし―――

 

「ぶふっ…くくくっ…」

 

破裂する直前の緊張状態であるこんな状況に、全くそぐわない笑い声が響き渡る。

 

「くくっ…ア、アインズ殿は…ジョークも一流のようだ…」

 

その声の主は、机に手を付きながら腹を抱えるジルクニフであった。彼はオデンキングとアインズの視線の動きや雰囲気を見て何が起きているのか、そのおおよそを察していたのだ。しかし彼は場を静めるために笑ったのではなく、本心から爆笑していた。

 

『完全なる狂騒』がもたらす効果は割と個人差があるのだ。アインズは混乱しやすくなり、オデンキングは突っ込み役になった。ソリュシャンは食欲が抑えられなくなり、ナーベラルは普段の不満が膨れ上がった。シズは可愛い。

 

そしてジルクニフは―――笑い上戸になった。

 

「ぶふっ…くくっ…フゥーハハハ!」

 

しかしとにかく非常事態は回避されたのである。皇帝の笑いにより、なんだジョークだったのかと穏やかな雰囲気が広まった。皇帝スマイルはまさにプライスレスなのだ。

 

「わ、笑ってもらえて何よりだとも」

 

安堵の溜め息をつき、話を終えたアインズ。司会のセバスが順番が前後したことを詫びながら挙式の準備を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華やかな式場。華美でありながらも嫌みさなど一切感じさせないこの場所で祝福に包まれながらアインズとアルベドは人生の伴侶と口付ける。そして永遠を誓い、指輪の交換を行う。

それはこのナザリックで最も重要な指輪、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。これほど交換に相応しい指輪もないだろう。

 

「アインズ様…」

 

しずしずとアルベドが恥ずかしそうにアインズへと寄り添う。誰もが溜め息をつくほどに美しい。普段からは考えられないほどに淑やかなその佇まい。

 

―――当然『完全なる狂騒』の効果である。

 

元から暴走しやすかったアルベドや腹黒であったルプスレギナなどは性格が反転していたのだ。

しかしまさに理想の良妻賢母で才色兼備を地で行くような今のアルベドには、現状の精神が揺らぎやすいアインズもくらくらである。

 

「アルベド…」

 

こうして幸せの絶頂の中で挙式は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

挙式終了後は、立食パーティーの様な形で披露宴を進める。それぞれの面通しが目的でもあるためこの形態が一番良かったのだ。

アインズが一通りに挨拶をした後、各々で挨拶をし始める。しかし『完全なる狂騒』により中々面白いことになっているようだ。

 

 

「皇帝陛下はどこへ?」

「呼吸困難で医務室へ運ばれたそうだ」

「えぇー…」

「ハムッ、ハフハフ、ハフッ!」

 

とある四騎士は姿を消した主を探していたり。

 

 

 

 

「おお、お久し振りです大将軍殿」

「レイ将軍か…。最近はどうだね?」

「はい、さっさと大将軍の座を明け渡してほしいと存じます」

「えっ!?」

「あっ!?」

 

上昇思考の強い某第8将軍が口を滑らしたり。

 

 

 

 

「デミウルゴス様」

「おや、イビルアイ嬢。どうされましたか?」

「はい、私達の結婚式はいつにするのかと…」

「!?」

 

思慕のあまり病み始めた某金髪ロリ吸血鬼が暴走したり。

 

 

 

 

「クライム! クライムクライムクライムクライムクライムクライムクライムゥーーー!」

「ラ、ラナー様!? こ、こんなところで…その、あの」

「クライムよ、次期の王は任せたぞ。いや、明日から頼んでもよいか?」

 

元から狂気を秘めていた黄金の姫が壊れたり、疲れた王様が壊れたり。

 

 

 

 

 

「ソ、ソリュシャンちゃん…今口に入れてるのは…?」

「…ぺっ」

「う、うわ!! と、溶けて骨だけに…! ちょ、誰か…」

「うぅ…」

「あ、カジットさんか」

 

ソリュシャンがカジットをしゃぶっていたりと様々である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓第六階層。地下にも関わらず生い茂るジャングルと、美しい星が瞬く夜空が見える階層だ。

 

「あ、居た。おーいクレマンティーヌ…?」

 

挙式が終わった直後から姿が見えなくなったクレマンティーヌを探して、探知魔法などを頼りにここまで上がってきたオデンキング。

 

「どしたのさ?」

 

高い木の枝の上に座り込み、物憂げな表情で膝を抱えるクレマンティーヌ。オデンキングが横に座っても大した反応を返さない。

 

「……」

「……」

 

地下だというのに吹く風が二人を撫でる。ざわざわと葉の擦れる音はなんとも言えない物悲しい雰囲気を助長しているかのようだ。

 

「…結婚式で、何か思うことでもあったのか?」

「…」

 

ぴくりと反応を返して横を向くクレマンティーヌ。それはその指摘が間違っていない証明だ。

 

「……」

「……」

 

少しの沈黙の後、ぽつりぽつりと言葉が紡がれていく。

 

「前にも話したけど、私の家ってぜんぜん普通じゃなくてさ」

「ああ」

「普通の家庭って想像しにくいんだ。笑顔が無かったとは言わないけど、それは私には向けられなかったし、向けられてる兄貴もどっか歪んでた」

「うん」

 

風が止み、クレマンティーヌの声だけが静かに虚空へと消えていく。

 

「あのアルベドって人、信じられないくらい嬉しそうだったよね」

「ああ」

「家庭を築くってのがどんなものかよくは解らないけど、あの二人が不幸になる姿は想像つかないなーって思ったら、なんとなく変な気分になっちゃって」

「そっか…」

 

短い相槌だけで会話を続けるオデンキング。彼女が慰めや同情などは一切求めていないことは解っているのだ。ただなんとなく話をしたいだけなのだろうと思い、聞き役に徹している。

 

「なーんて、柄に合わないかぁ。冗談冗談、結婚なんて一生する気なんかないしー」

 

枝を支点に膝をくるりと回して一回転を決めるクレマンティーヌ。その勢いで立ち上がり幹を背にしてオデンキングを正面に見据える。

 

「え? じゃあ俺、もしかして一生結婚出来ない?」

「…」

 

少し白々しいような棒読みで言葉を返すオデンキング。言葉の意味するところはどんなに鈍い人間でも解るだろう。

 

「はっきり言わないとこがヘタレだねー」

「じゃあ行動で示そうかね…」

 

星明かりが二人の影を映し出し、黒いヒトガタが重なり合う。

 

 

―――寸前、『完全なる狂騒』の効果が切れた。きっかり1時間。それがこのアイテムの制限時間だ。物憂げクレマンティーヌ終了のお知らせである。

 

「ぶはっ!! こ、行動で―――っ! し、示そうかねぇだって! あっはははは!」

「おまっ! ちょ、ないわ! それはない! シリアスどこ行った!?」

「ざーんねん! クレマンティーヌ様はそれほど安い女じゃないんですー」

 

20メートル以上も下にある地面に向かって飛び降りるクレマンティーヌ。木の上に居るオデンキングに対してにやにやと煽りを含んだ笑みを溢す。

 

「そうだなー。世界でいっちばんの指輪でも持ってきたら考えてもいいかなー」

 

そんな照れ隠しの言葉を口に出しながら離れていく。だがそのセリフを聞いたオデンキングは、少しだけ思案した後に一つの指輪を取り出す。

 

「じゃ、これでいいか?」

「え?」

 

そっと近付き左手の薬指にはめる―――なんてことはせずにポイっとクレマンティーヌの辺りまで投げるオデンキング。

 

「わわっと! …これが世界で一番?」

 

美しく威容を感じるものの、世界で一番と言われれば首を傾げるようなシンプルな指輪。

 

「なんでも願いを三回だけ叶えてくれる指輪。世界で一番稀少じゃないか?」

「…ふーん」

 

じろじろと見回した後、左手の薬指に指輪をおさめるクレマンティーヌ。先程とは違う質の笑みが口元に貼り付いている。

 

「そういやまだ何も食べてないし、戻ろ?」

「はいはい」

 

そういって横に並んで六階層を後にする二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての来賓がナザリックを後にして、滞りなく結婚式は終了した。本当に滞りが無かったと言えるのかは触れてはいけない部分だ。

静かな玉座の間でアインズとオデンキングが話に興じている。取り敢えず今日の騒動については手打ちとなったようである。

 

「でも今日ほど焦った日はありませんよ本当に」

「ははは。まぁ楽しかったからいいじゃないですか」

「まったく…」

 

そして暫く益体もない話が続いた後、少し真面目な雰囲気でアインズが話し出す。

 

「法国はやっぱり何か切り札があるみたいですね。プレイヤー、真なる竜王、神人。色々とキナ臭いことあるみたいです」

「ワールドアイテムもまだあるかもですね。光輪の善神なんて持ってたら洒落になってないですよ」

 

こちらを刺激しないようにしてはいるものの、服従する姿勢は全く見せない法国。やはりなにかしらのの手段はあるのだろうと推測される。

 

「…で、ですね。色々と不安要素もありますし、少し提案があるんですけど」

「提案?」

 

緊張した面持ちでオデンキングを見詰めるアインズ。まるで告白でもするかの様な張りつめた雰囲気にゴクリと唾が喉を通りすぎる音がした。

 

「これ、受け取ってもらえませんか?」

 

アインズが差し出した物。それはナザリックに於いてとても重要な意味を持つ指輪だ。

 

「……いいんですか? ナザリックは異形種じゃないとギルメンにはなれないでしょう?」

「…」

 

ふう、と両手を顔の前に組み合わせて俯くアインズ。ギルドメンバー達との楽しかった思い出や、少しづつ仲間が離れていく寂しさが脳裏を駆け巡る。

 

「…ナザリックの方針の決定は多数決です」

 

そう、それもナザリック規則の一つなのだ。そして今のギルドメンバーはアインズただ一人。

 

「先程多数決により、ギルメンには例外で人間を入れてもいいことになりました」

「あはは、何ですかそれ」

 

呆れ笑いを浮かべながら指輪をはめるオデンキング。少しの照れ隠しも含まれているのだろう。

 

「それに、皆が帰ってきた時の言い訳もちゃんと考えてますよ?」

「へぇ…? どんなですか?」

 

得意気に指を立てて説明を始めるアインズ。骸骨のどや顔は微妙にうざい。

 

「これから私達は種族の枠を越えて友好の輪を拡げ、繁栄を導きます」

「えらい偉大な感じに言ってますけど何も考えてないですよね」

「導きます!」

「はあ…」

 

つまり偉大なる功績を遺すための第一歩を踏み出すのですと語るアインズ。それがいったいどういう言い訳に繋がるのかと首を傾げるオデンキング。

 

「つまりそれを成し遂げた時、誰もが称賛し、我々を讃えるでしょう。もちろんオーディンさんも」

「まあ、成し遂げれば…そうでしょう」

「偉業を達成したオーディンさん…即ち偉業種ということです」

「…」

「…」

 

まさかのオヤジギャグであった。

 

「く、ふっ…!」

 

あまりのつまらなさに逆に笑いが込み上げるオデンキング。友人のペロロンチーノやヘロヘロが帰ってきた時の反応が見物だな、と笑い続ける。

 

「ま、あんまり肩肘張って生きても仕方ないでしょう? ゆったり進めば、世はおしなべて事も無し。徒然なるまま行ければそれで充分ですよ」

「そうですねぇ。こんな意味もない、適当な話で暇を潰す日常が続けばそれが一番ですから」

「あはは、そうですね。…なんて言いましたっけ、そんな感じの言葉」

「ええ、確か―――」

 

 

 

―――四方山話、です。




最後までお付き合頂いて、感謝です。

かるだもさんが完結記念に描いてくれました。ありがとうございます!



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