でもシリアスがあるからこそギャグが映えるんだ。というわけでちょっとギャグは少なめです。
でもかわりにカッコいいアインズ様が見られるよ!!
「全員揃ったようだな」
アインズの声が部屋に響く。
「では、これより会議を始める」
昨晩にスレイン法国の影ありと報告を受けたアインズは一夜明けた今ナザリックの、シャルティア以外の主要な面子を集め会議を行っていた。
「尚、今回の会議にはオーディンさんとクレマンティーヌさんに出席いただいている。理由は会議の内容で解るだろうから省略させてもらおう」
アインズは守護者達を見渡し、異論は無いようだと判断する。
「ではまず1つ目だ。一昨日から昨日の昼にかけてカルネ村、そしてその周辺を探る高レベルと思わしき集団が現れた」
アインズの言葉に真剣に耳を傾ける守護者達。
「2つ目、これは皆が既に知っての通りこのナザリック周辺を探る愚か者達が居る、ということだ」
2つ目の事実が判明した時はナザリックが最大の警戒態勢に入ったがオーディンの報告により、今は監視と一階層にシャルティアを置くだけにとどまっている。
「後者については申し訳ないが、俺達に対する追っ手の線で間違いないと思う」
オデンキングがアインズの言葉に続き説明する。
そう、今ナザリック周辺を伺っているのはクレマンティーヌを追って此処に辿り着いた風花聖典の手の者達であった。
そもそも追われていたクレマンティーヌが態々人の目に付く豪華な馬車に乗って街を出たのだ。ばれない訳がない。
それでも今の今まで襲撃が無かったのは、クレマンティーヌが街に詰めていた者の大半を殺害したことで増援が遅れたことと、それまではこの草原に影も形も無かった筈の巨大な大墳墓を追っ手が警戒していたためだ。
「うむ、だがどちらにせよ全て同じスレイン法国の関係者と判断して間違いないようだ。お前達もオーディンさんを責めることはしないでほしい」
こんな程度のことで新しき友を失うのは御免被るアインズ。
「重々承知しております、アインズ様。既にオーディン様は我等が身内も同然。このような事で責める愚か者はこの場には存在致しません」
アインズの言葉に即座に返答するアルベド。
その言葉に私情と自分の都合がたっぷり詰まっていることは想像に難くない。
「アインズ様ノ友トアラバ御守リスルノハ当然。御命令ヲイタダケレバスグニデモ全滅サセテ御覧ニイレマス」
勇ましく武威を知らしめたがるコキュートス。
「うむ、お前達がオーディンさん達と仲良くなっているのは私としても嬉しい限りだ」
オデンキングをナザリックに招くにあたって懸念していたことは、もはや気にせずともいいようだ。
「話を戻すが、カルネ村に現れた一団はクレマンティーヌさんの話を聞く限りスレイン法国の特殊部隊、漆黒聖典で間違いないようだ」
随分と解りやすい特徴を持っていた漆黒聖典である。
「そいつらの目的だが以前カルネ村を助けた際に滅ぼした者達、陽光聖典という集団だったということが判明しているのだがな、おそらくそいつらが全滅した事を調べに来たと思われる」
アインズが推論を述べる。
「それぞれの集団は普段は違う使命を帯びているらしく基本的に連携はとらぬそうだが、早晩に漆黒聖典のほうもこちらを嗅ぎ付けるだろうからその時どう行動するのかは不明だ」
昨晩、報告の内容を吟味し話すことを纏めていたアインズはすらすらと話を進める。
「オーディンさん達の追っ手、風花聖典の者達については問題ない。有象無象の弱者だ。レベル50程度のモンスターを数体出すだけで終わるだろう」
だが、とアインズは続ける。
「漆黒聖典、こちらの方は定かではないが私やオーディンさん、守護者に匹敵するものが混じっている可能性がある」
守護者達の目に剣呑な光が宿る。
「…だが、だ守護者達よ。心して聞け。高レベルの人物よりも警戒すべきものがあるのだ」
いったいそれは、という目がアインズに向けられる。
「未確定の情報ではあるが、漆黒聖典の中にワールドアイテムを持つ者が居るかもしれん」
守護者達に衝撃が走った。
「そ、それは信憑性のある情報なのでしょうか?」
アルベドがアインズに問い掛ける。
「50%…と言ったところか。クレマンティーヌさんの情報にある漆黒聖典が誇る秘中の秘と呼ばれるアイテムの存在。そして報告にあった漆黒聖典の者達の中で、一番地位が高そうな人物が着ていた龍が描かれたチャイナ服のような装備」
アインズにはそのアイテムに心当たりがあった。
「もしそれがワールドアイテムであったならばおそらく〈傾城傾国〉と云われる物であると思われる。精神操作系統のワールドアイテムだ」
ざわり、と場が揺れる。
それはそうだろう。例えレベル差があろうともワールドアイテムを使われれば、ましてや精神操作ともなれば望まずとも敵の駒になる可能性があるのだ。
ワールドアイテムはワールドアイテムでしか防げない。〈ユグドラシル〉の常識だ。
「それで、だ。その情報を踏まえたお前達の意見を聞いてみたい。各自、忌憚の無い意見を交わしてほしい。プレアデスやセバスにも発言を許す」
そうアインズが言ったものの自然と場の視線はアルベドとデミウルゴスに向けられる。
このナザリックの頭脳はアインズを除けば彼等なのだ。
「では、僭越ながら私から発言させていただきましょう」
その視線の意味をしかと理解したデミウルゴスは一番速く意見を上げる。
「短絡的な意見と思われるかも知れませんがやはりここはナザリック総力を挙げて殲滅すべきかと」
デミウルゴスの出した結論は敵対だった。
「ほう。理由を聞かせてくれるか、デミウルゴスよ」
鷹揚にアインズが静聴の構えをとる。
「は、まずはやはりワールドアイテムの存在です。特に精神操作系統ともなれば一級に警戒すべきもの。考えたくはありませんがアインズ様が万が一にでも操作された場合、我等には手が出せなくなり奴等にとっての鬼札となる可能性があります」
至高の御方が敵の手に落ちる。考えただけで悪夢であるその可能性に守護者達は背中に寒気を覚える。
「更に今の現状です。陽光聖典を壊滅させ、風花聖典に敵対しているこの状況は友好的に話を進めるのには遅すぎるかと思われます。それにスレイン法国そのものがそもそも我等にとって相容れぬ存在かと愚考致します」
意見を終えるデミウルゴス。
「フム、成る程な。アルベドはどうだ。デミウルゴスとは違った意見はあるか?」
どうやらデミウルゴスとアルベドの意見が配下の総意になるようだとアインズは場の雰囲気から理解し、問い掛ける。
「いいえ、御座いません。デミウルゴスの言う通りかと。強いて言うならばアインズ様はナザリックより絶対に動くべきではありません。全ては我等にお任せを。必ずや御期待に添える結果をお見せ致します」
アインズはアルベドの生きる意味の全てなのだ。操られる可能性など1ミリたりとも残したくはない。
「両名とも敵対か…。ウウム、どうしたものか」
守護者達はアインズが何を悩んでいるかを解らずにその身の不知を恥じる。
「…オーディンさんはどう思われますか?」
ここまで殆んど沈黙を保ってきたオデンキングに問い掛ける。
「うーん、原因の半分は俺達だからあまり意見を言える立場じゃ無いんだが…」
悩む素振りを見せるオデンキング。
「いえ、今はどんな意見でも聞きたいんです。もし考えがあるなら言ってみてくれませんか?」
考えが纏まらないアインズはすがる気持ちでオデンキングに視線を向ける。
「とりあえず今アインズさんが悩んでるのって法国というよりプレイヤーの事ですよね?」
確信を持ってアインズに尋ねる。
「…悟られていましたか。はい、その通りです」
「そりゃ解りますよ、確かに高レベルの存在とワールドアイテム。脅威といえば脅威です」
どういう事かとセバスとプレアデス、守護者のアウラ、マーレ、コキュートスはオデンキングに物問いたげな視線を送る。
対してアルベドとデミウルゴスはその一言で全て理解したようだ。ナザリック最高の頭脳は伊達ではない。
「でもナザリックの戦力と比べれば所詮は大人と赤ん坊か、それ以上の戦力差でしょう? それにギルド「アインズ・ウール・ゴウン」はワールドアイテム保持数トップだった筈です。これでどうにかならない訳がない」
ナザリックを褒め称えるような意見にアインズと参謀の二人を除く全員が確かにそうだと肯定の意を示す。
「もしどうにかなるとしたらそれは、プレイヤーの存在でしょう。ナザリックのようにギルドごと転移してくる者がいないとも限らない。沢山の高レベルプレイヤーが転移してくるかも知れない」
少し言葉を切って唇を湿らすオデンキング。
「法国はその内実はともかく、表面上は六色聖典を人類の守り手だと認識して大部分はそれを疑っていません。というかクレマンティーヌに聞く限り事実として行き過ぎな点はあるものの人類の守護者足り得ているようですし」
クレマンティーヌがオデンキングの視線を受け、うんと頷きを返す。
「となればその事実を受け止めたプレイヤーが法国とそれに敵対しているナザリックを見て何を思うか、とアインズさんは考えているんじゃないですか?」
「ええ、その通りです。それに我々はそもそも〈ユグドラシル〉では人間種に対して敵対的なギルドでした。法国の件がなくとも隔意を持って接してくるプレイヤーは少なからずいる筈です」
アルベドもデミウルゴスもやはり、といった風に納得の表情を見せる。
他の守護者とプレアデス、セバスも頷いている。
「臆病、と捉えられるかも知れませんが私は仲間達が残したこのナザリックと、彼等が作ったアルベドや他の者達を失いたくないのです。もし彼等がいつか帰ってきた時に何一つ変わらないナザリックで迎え入れるためにも」
その言葉にオデンキングとクレマンティーヌを除く全員が感動で声が詰まった。
この御方は、どこまでも、どこまでも我等の事を考えて下さっている。これほどの幸福があるだろうか。これほどの慈悲を受け我等に何が出来るだろうか、と。
もはや狂信を越えた忠誠を誓う彼等にオデンキングとクレマンティーヌはちょっと引いていた。
ちなみにアルベドは自分の名前だけ呼んでもらったせいか嬉しすぎて精神が何処かにトリップしていた。
「え、えー、気をとり直してですね、それに対する意見を言ってみていいですか?」
場の雰囲気が物凄いことになっているがオデンキングはそれに圧されず口を開いた。
「はい、お願いします」
えっ、えっ、何この雰囲気、と困惑するアインズも乗るしかないとばかりに相槌を打つ。
「たぶん、今から言う意見は頭の差とかじゃ無くてですね、視点の違いがあるからこその意見だと思います。間違ってもアインズさんやそこの二人には頭の良さでは敵いません」
アインズとデミウルゴスが不思議そうにオデンキングを見返す。
アルベドはまだ帰ってきていない。
「アインズさん達のそれは強者故の考え、というところですかね。カンストしてる俺だってどんだけ戦力があろうがナザリックと敵対するくらいなら、単身で法国に戦争仕掛ける方がまだマシに感じるんですよ」
じっと全員が耳を傾ける。
「つまりナザリックの武力を知った時点で法国は敵対する意志はまず無くなるんじゃないかってことです。たとえ人類以外を嫌悪していようとも国が滅ぶよりはマシだ、と」
その考えは無かった、と驚くアインズとデミウルゴス。
体をビクンッと揺らし帰還したアルベド。
なにやら下着の様子を気にしている。
「今のところはプレイヤーの影は全く見当たりません。となると今やるべき事は敵対ではなくどういう風にナザリックの武力を見せつけるか、どういう風に相手の心を折るか、です」
それに、とオデンキングは言葉を続ける。
「問題の傾城傾国についてはそこまで事が進んだ後なら、心の折れた相手からそれを徴収する交渉なんてデミウルゴスなら朝飯前でしょう?」
だろ? と挑戦的とも取れるその視線に、デミウルゴスはニヒルな笑みを返した。
「…成る程。やはり会議に出席していただいて良かった」
方針は決まったとばかりに立ち上がるアインズ。
「守護者達よ、方針は理解したな? アルベド、デミウルゴス。作戦を練るぞ。もはや敵対の意志を考える事すら烏滸がましいと知らしめ、法国という国から誇りという誇りを奪い!! 恭順以外を示すことの無いようナザリックの威光を見せつけよ!!」
「はっ!!」
全員が片膝をつき、頭を垂れる。
死の王に相応しき完璧な支配者の姿がそこにあった。
「あの、なんでオーディンさん達まで片膝ついてるんですか?」
「はっ!? つ、つい…」
珍しく弄られ役が逆転した瞬間であった。
シャルティア「なんか凄く良いところを見逃した気がする」
この後のアルベドの下着、1000円スタートから始めます。