オーバーロード 四方山話《完結》   作:ラゼ

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やったーランキング1位だー


マジか


日常

オデンキングとクレマンティーヌがナザリックに来て数日、二人はナザリックの住人達にそこそこ受け入れられていた。

何度も出立しようと思ったオデンキングだがその度にアインズに惜しまれ、アルベドの凄まじい形相にびびり出立を延ばし延ばしにしていた。ちなみに主な理由は後者である。

 

滞在している間、色々と面白い出来事があった。

 

 

 

 

 

 

アルベドの場合:case1.

 

「ほ、本当にこれでアインズ様を落とせるのでしょうか? オーディン様」

 

「ああ、間違いない」

 

オデンキングはアルベドがアインズを落とすにあたって何が必要か真剣に考えた。

何しろ一番手っ取り早い、性欲に訴える方法が使えないのだ。

 

しかし見る限り、その精神に全く揺らぎが無いわけではない。

いくら無効化してしまうとしてもタイムラグはあるし、次々と湧き上がる感情は制御出来ないようなのだ。

となるとつまり湧き上がり、制御出来ない感情を利用すればいいのである。

 

すなわち「萌え」だ。

これならきっとアインズにも通じる。

斜め上の思考をしながらアルベドに策を授けたオデンキングであった。

 

 

「アインズ様」

 

「ん? 何だアルベっ…!?」

 

「ニャ、ニャルベドですにゃん」

 

そこに居たのは扇状さよりも可愛さを全面におしだしたアルベド、もとい猫コスをしたニャルベドだった。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……にゃ、にゃー」

 

「か、可愛いぞ……? アルベド」

 

「ア、アインズ様ぁーーー!!」

 

「うおぉ!? 落ちつくのだアルベドよ!!」

 

 

 

 

 

一応成功。

 

 

 

 

 

 

アウラ&マーレの場合

 

「あ、あのー」

 

アウラとマーレがオデンキングにおそるおそる近付いて問い掛ける。

 

「ん? アウラちゃんとマーレちゃんだっけ?」

 

「は、はい」

 

「こ、こんにちわ」

 

お辞儀をするアウラとマーレ。

 

「何か用かな?」

 

オデンキングは先日この二人の性別を知ったとき驚いたが、同時に思った。ありだ、と。

見た目が幼いため、つい子供に話しかけるように接するオデンキング。

 

「あの、シャルティアに聞いたんですけどオーディン様ってペロロンチーノ様の御友人だったとか?」

 

二人は自慢するシャルティアに耐えかねて、もとい自分の創造主の話を聞きたくてオデンキングに会いにきたのだ。

 

「ああ、そうだけど。あ、もしかして二人もペロロンチーノさんに作られたのかな?」

 

シャルティア同様、ペロロンチーノの話を聞きに来たのかと勘違いするオデンキング。

 

「いえ、あたし達の創造主はぶくぶく茶釜様です。ただ、ペロロンチーノ様と姉弟だと聞いたのでもしかしてオーディン様ともお知り合いだったのかなって」

 

もし知り合いならお話を聞きたいな、とおねだりする二人。

 

「(か、可愛えぇー!!)あー、悪いけどぶくぶく茶釜さんとはペロロンチーノさんと一緒に居た時、一回会ったことがあるだけだからなー」

 

残念そうにしょぼんとする二人。

 

「リアルではかなりお世話になったんだけどな」

 

苦笑気味に言うオデンキング。

 

「リアル…。そういえばシャルティアがぶくぶく茶釜様はリアルでは「セイユウ」という職業だったと言ってました」

 

「そうそう。主にお世話になったのはエロゲの…」

 

そこまで言ってはたと気付くオデンキング。

可愛い女の子と可愛い男の娘にエロゲの話をする中身おっさん。

 

ダウトである。

 

「あ、いやその、なんと言ったらいいか…」

 

「セイユウは声で命を創造することが出来る職業と聞きました!!」

 

眼をキラキラさせながら話を催促してくるアウラ。

 

「(どんな認識やねん) そ、そうだな。命を作り、そして男から命の素を絞り出す素晴らしい職業だ、うん」

 

声優について誤魔化しながら二人とお喋りに興じるオデンキングであった。

 

 

 

 

 

 

アルベドの場合:case2.

 

「本当に、本当に大丈夫なの?」

 

もはや同志である二人の間に敬語はなかった。

 

「ああ、間違いない」

 

最初の作戦がそこそこ成功したオデンキングは次なる作戦を実行に移していた。

 

「でも、わざとアインズ様にぶつかるだなんて…」

 

不敬が過ぎる行為に及び腰になるアルベド。

 

「これは必要なことなんだアルベド。大丈夫、その程度のことでアインズさんは怒らない」

 

次にオデンキングが考えた作戦は「シチュエーション」だ。

今はオーバーロードになってしまっているとはいえ、人間だったころに憧れたシチュエーションに何も感じないわけがない。全人類の半分が夢に見る、曲がり角で美女とのごっつんこ。

 

そして始まるラブストーリー。

いける。

根拠の無い確信を持つオデンキングであった。

 

「よし、そろそろだ。ソリュシャンちゃん?」

 

「はい、オーディン様。あと10m、9、8」

 

確実にタイミングを外さぬよう、マスターアサシンであるソリュシャンに協力を依頼したオデンキング。

 

「今だ!! 殺れ!!」

 

「ええ!!」

 

微妙に発音が違ったが気にせずアルベドは突撃した。

 

「キャッ」

 

「うおっ!?」

 

見事に体当たりを決めたアルベド。両足を斜めに揃え、顔は俯かせ両手は体の横で地面に手をつける。〈悪の大臣に襲われる姫ポーズ〉である。

嫌がっていた割に演技もばっちりなアルベド。

 

「す、すまんアルベド。大丈夫か?」

 

心配そうにアルベドに手を差し出すアインズ。

 

「ア、アインズ様ぁーーー!!」

 

「うおぉ!? 落ちつくのだアルベドよ!!」

 

 

 

 

 

成功?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デミウルゴスとコキュートスの場合

 

 

 

好きにBarを利用してくれとアインズに言われたオデンキング。

古今東西の素晴らしい名酒が揃うBarについつい足を伸ばしてしまう。

 

「これは、オーディン様」

 

先客がいたBar、そこにはデミウルゴスとコキュートスの姿があった。

 

「おっと、君達も呑んでたんだ」

 

そして失礼をした、とばかりに退室しようと立ち上がる二人。

 

「あ、気にせず呑んでくれ、というか一緒に呑もう。一人酒は味気ないし」

 

二人を誘うオデンキング。

 

「これは光栄の至り。喜んで御相手を務めさせていただきます」

 

「此方ニオ座リクダサイ」

 

歓迎の意を示すデミウルゴスと椅子を薦めるコキュートス。

 

「ああ、ありがとう」

 

男3人の暑苦しい飲み会が始まった。

 

 

 

 

 

「へぇー、デミウルゴスはウルベルトさんに作られたNPCなんだ」

 

「ええ、我が主を御存じなのでしょうか?」

 

「まぁ、会ったことはないけど色々と有名だしなー」

 

「ほう…。お聞きしても?」

 

珍しく少し高揚した様子で問い掛けるデミウルゴス。

 

「いや、そんなに知ってる訳じゃないぞ? ただナザリックがそもそも知名度の高いギルドだったし、特に有名なワールドチャンピオンのたっち・みーさんていただろ?」

 

「ええ」

 

ちなみにデミウルゴスの創造主である ウルベルト・アレイン・オードルとたっち・みーは仲が悪く、デミウルゴスは至高の41人であるたっち・みーに忠誠こそ捧げているものの少し複雑に思ってもいる。

 

「その人とタメをはるワールドディザスターのウルベルトさんもやっぱ有名っちゃ有名だったわけだよ」

 

「成る程、確かに我が主は最強の魔法職で御座いました」

 

自分の主が〈ユグドラシル〉でも高名だったと知り頬を弛ませるデミウルゴス。

 

「フム、ヤハリアインズ様ト同格ノマジックキャスターダケアリ、オーディン様ハ物事ヲヨク知ッテオラレル」

 

少し人間には聞き取りづらい声質でコキュートスがオデンキングを褒める。

 

「いやいや、常識だってこんくらい。それよりアインズさんの方がめちゃくちゃ物知りだよホント」

 

ナザリックに来てかなりアインズと話したオデンキングだが、アインズの〈ユグドラシル〉についての知識には舌を巻いたものだ。

かなり古株のプレイヤーである自分も知らない情報などを随分と聞かされた。

 

「流石はアインズ様。オーディン様をして物知りと言わせしめるその智謀と知識量には、我々も嗟歎を禁じ得ません」

 

「我ガ主ノ偉大サヲ思イ知ラサレルバカリヨ」

 

忠誠心もやばいけど過大評価も尋常じゃねえなこいつら、と酔った頭でアインズに憐憫の情を送りながらオデンキングは二人と楽しく飲み続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

アルベドの場合:case3.

 

 

「本当に、本当に、ホンットーに大丈夫なのね? これでアインズ様に嫌われたら殺すわよ」

 

もはや客人扱いはしていないアルベド。気安くなったのか扱いが悪くなったのか難しいところである。

 

「ああ、間違いない」

 

作戦1、2とも効果が薄かった今、ここはアインズに聞いたアルベドの設定でもあるギャップ萌えに期待すべきではないかとオデンキングは思っていた。

 

「まず、アルベドは好き、愛してるとか言い過ぎなんだ。そういうのは普段から言葉に出さず、ここぞというところで口に出すからこそ感動するものなんだ」

 

「そ、そんな!? じゃあ今まで私がしていたことは無意味だと…!?」

 

「いや、それがあったからこそ今からやる作戦が映えるわけだ。大丈夫、俺を信じろ」

 

誰が見ても信じられそうにないが切羽詰まったアルベドは別である。

 

「わ、わかったわ」

 

作戦を開始するアルベド。

 

 

 

 

 

 

「アルベドよ、今日は随分と静かだな?」

 

アインズはいつもならもっとぐいぐいくるアルベドに少し物足りなさを感じていた。意外と今までの作戦も効いているようだ。

 

「そう? 別に何もないわ」

 

少し冷たさを含んだ声で無礼な口をきくアルベド。

 

「え…?」

 

「(やばい。何かしちゃったのか俺は…?)」

 

普段ならあり得ないアルベドの態度に何かしてしまったのかと頭をフル回転させるアインズ。

 

「(このままじゃ裏切りBadエンドコースか!? な、何か、何か考えねば!!)」

 

アルベドの機嫌をとるためいくつもの考えを脳内で展開するアインズ。出した答えは。

 

「ア、アルベドよ。今度二人で、ど、どこかデートにでも行かないか?」

 

「ア、アインズ様ぁーーー!!」

 

「うおぉ!? 落ちつくのだアルベドよ!!」

 

 

大成功。

 

 

 

 

 

 

クレマンティーヌとプレアデスの場合。

 

 

 

ナザリック6階層の闘技場でクレマンティーヌとプレアデスの一人、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータが模擬戦をしていた。

 

「オラァッ!!」

 

「くっ、うっ」

 

この世界に於いては至上の決戦とも言うべき、常人には何が起きているかもわからない凄まじき闘いであった。

ちなみにナザリックでは普通である。

 

「このクレマンティーヌ様が負けるはずがねぇんだよぉ!!」

 

気合いと共にエントマを吹き飛ばし、首にスティレットを突きつけるクレマンティーヌ。

 

「そこまでっす」

 

人狼の少女、プレアデスの一人であるルプスレギナ・ベータが声をかけ模擬戦が終了する。

 

「うぅ…悔しいですぅ…」

 

「か、勝った…!!」

 

悔しがるエントマと、勝ったことに感動を覚えるクレマンティーヌ。

 

最近は勝負とかそういうレベルではない化物に囲まれていたため感動もひとしおであった。

 

「いやー、意外と強いんすね、クレちゃんは。正直オーディン様の金魚のフンかと思ってたっす」

 

さらりと毒を吐くルプスレギナ。

 

「誰が金魚のフンよ、誰が」

 

そんなセリフも勝利の余韻で気にしないクレマンティーヌ。

 

「ふん、エントマは我々の中で最弱。これでプレアデスに勝ったとは思わないように」

 

色々とあったクレマンティーヌにまだ少しだけしこりがあるナーベラルが悔し紛れに口を出す。

 

「どこの四天王っすか」

 

突っ込まずにはいられないルプスレギナ。

 

 

 

 

 

 

闘技場の客席から拍手が上がる。

 

「二人とも、素晴らしい闘いだったぞ。エントマもご苦労であった」

 

《フライ/飛行》でプレアデス達の近まで飛んでくるアインズとオデンキング。

 

「クレマンティーヌ…そんな強かったっけ?」

 

自分と闘った時にはあそこまで強そうには見えなかったと首を捻るオデンキング。

 

整列し畏まるプレアデス達と、一応姿勢を正すクレマンティーヌ。

 

「んー、なんだろ。ディンちゃんと闘った後、なんか強くなったんだよねー」

 

本当はその後のしょーもないやり取りでレベルアップしたのだが気付いていない。

 

「(彼女は厨二病なんですか? まさか戦闘中に、このクレマンティーヌ様がーとか言い出すとは思いませんでした)」

 

ひそひそとオデンキングに耳打ちするアインズ。

 

「(ええ、アインズさんのお仲間です。よかったですね、同志が現れましたよ)」

 

ナチュラルにアインズの心を抉る。

 

「(だから私は違いますって!! あれは部下のために仕方なくって言ったじゃないですか!!)」

 

「(冗談、冗談。ほら、メイド達が見てますよ」

 

「(はぁ…)」

 

墓穴を掘ったかと溜め息をつくアインズ。

骸骨が墓を掘るとはこれ如何に。

 

 

「フム、クレマンティーヌさんは元漆黒聖典だと聞いたがどのくらいの強さだったのかお聞きしても?」

 

オーディンの連れ合いということで丁寧な口調で喋る。

 

「うーん…今の実力なら上位にもひけをとらないとは思うけど。ただ、最上位の奴等と番外席次だけは別です。あれは真の化物。実力が離れすぎて良くわからないけど、もしかしたらディンちゃんにも匹敵するかも」

 

自身のレベルが上がったこと、ここに来て強者を沢山見たこと。

それによって今までは漠然としか解っていなかった者達の実力が想像出来るようになったクレマンティーヌ。

 

「成る程、やはりこの世界にも強者は居るものなのだな。プレアデスよ、今見た通りこの世界の人間にも侮れぬ者が居ることは理解出来たな?」

 

アインズはクレマンティーヌに感謝していた。

この状況は自分が押し進めていた意識改善にうってつけの状況である。

 

「ならばこれからは油断や慢心を捨てることだ。常に自分よりも強者が居ることを念頭において行動を心掛けよ」

 

「はっ!!」

 

全員が声を上げたことに満足気に頷くアインズ。

そんなナザリックの日常の1コマであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、アインズの元に1つの報告が上がった。

 

「フム、カルネ村に相当な高レベルとおぼしき集団が情報収集に現れた、か」

 

今は姿を消したようだが、アインズがスレイン法国の特殊部隊と闘った場所でも何やら探っていたらしい。

十中八九スレイン法国の部隊だろうとアインズは確信した。

 

「フン、面白い。敵対するというのなら宣言通り、死を告げに行ってくれる…!!」

 

 

 

 

 

「あの、今は部下の人達居ませんよ?」

 

「あっ」

 

やはり厨二病は治っていないようである。




復活ッ!!

クレマンティーヌ復活ッ!!

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