ここの喋りかたがおかしい、この考えかたをするには説得力が足りない。と思われたかたは是非ご指摘お願いします。
セバスがクレマンティーヌを案内しアインズがオデンキングを自室へと連れていった後、玉座の間に残された守護者達はアインズの新たな友人オデンキングについて話し合っていた。
ちなみにプレアデスは邪魔にならぬよう、セバスの後に続いて部屋を退出している。
「率直にあなた達の意見を聞かせてくれないかしら」
アルベドが守護者達に問い掛ける。
「ふむ、やはり人間がアインズ様の友人というのは少し不快感はあるが・・・」
アインズが守護者に賜った言葉、強者に敬意を払えという言葉を実践しようとするデミウルゴスだが、どうにも人間相手に敬意を払うというのは難しい。
しかしそれも仕方のない部分はあるのだ。
彼を作った至高の41人の1人、ウルベルト・アレイン・オードルは悪に拘りを持つ男だった。
彼の影響を受けて生み出されたデミウルゴスはその根幹とも言うべき部分が既に人間への悪性を持っていた。
「カノ人物カラハアインズ様ノ仰ルトオリ強者ノ気配ヲ感ジタ。ナラバ我等ガ懸念スルコトハナニモ無イ」
コキュートスはアインズに言われるまでもなく、生粋の武人という設定から強者に敬意を払うのは当然のことだと認識していた。
「あたしはアインズ様の御友人に相応しい方に見えたけど?」
「ボ、ボクは別にどっちでも、いいんじゃないかと・・・」
双子の姉と弟はもともとそこまで人間に対する不快感はない。ただ無関心なだけだ。
拷問しろと命じられれば問題なく実行するし、仲良くしろと言われれば努力するだろう。
アウラの方はアインズの友人ということで幾分か好意的に見ているようだ。
「そういやあんた、随分好意的だったじゃない。来るときになんかあったの?」
基本的に人間など虫けら程度にしか思っていないシャルティアがオデンキングに対してとっていた態度にアウラはそういえば、と先程疑問に思ったことを尋ねる。
「んー? 知りたい? 知りたいでありんすか? おチビ。なら相応の態度というものがありんせんかしら?」
ぶん殴りたくなるほどのドヤ顔でシャルティアは守護者達に得意げな態度をとっている。
「あ? なに勿体ぶってるのよ偽乳。なんかあったんならさっさと話せ」
仲が悪いと設定されたこの二人はよく口喧嘩をしているが、実際の仲は気のおけない友人である。
「仕方ないでありんすねぇ。そこまでお願いされんしたらこの私も口が緩くなってしまいんす」
誰も願ってねえよ。守護者達の心情が一致した。
「んふふ、あの御方、オーディン様は至高の41人の1人であり妾を作りんしたペロロンチーノ様の御友人でもありんしたのよ」
瞬間、守護者達に衝撃が走った。
「マ、マジ? あんた適当言ってんじゃないでしょうね」
アウラが驚きながらシャルティアに再度問いかける。
「おや、心外でありんすね。私が至高の御方達のことで嘘などつくと思いんすか?」
その通りだ。なにがあろうともこのナザリックに所属する者達が、偉大なる至高の41人を冗談のネタになどするわけがない。
「ほう・・・。成る程、そういうことでしたか。この一連の流れにも納得がいきました」
デミウルゴスはその明晰な頭脳で、アインズがここにきてその心情を吐露した理由、友とした理由、ナザリックを挙げて歓待する理由を瞬時に把握した。
「ナント。ヤハリ偉大ナル強者ニハ同ジヨウナ強者ヲ惹キ付ケルナニカガアルノダロウカ」
コキュートスも自身を創造した至高の御方に想いをはせ、もしかして我が主も御友人であったのだろうかと期待する。
「至福の数時間でありんした。私の知らぬペロロンチーノ様の一面、あの御方はたっぷりと話してくれたでありんす」
はぁ。と艶かしい溜め息をつきながらシャルティアは、どうだ羨ましいだろうとアウラを煽りだす。
「う、ぐ・・・。このニセチチ!! あんただけずるいわよ!!」
私もぶくぶく茶釜様の話を聞いてみたいと気炎をあげるアウラ。
「も、もしかしてぶくぶく茶釜様もお知り合いだったのかなぁ・・・」
シャルティアの話を聞いて初めてオデンキングに興味を持ったマーレ。
内向的なマーレは基本的にナザリック以外の全てにあまり関心がないのだ。
しかし自身を創造した至高の御方の話を聞けるかもしれないとなれば別だ。興味を示さぬわけがない。
「ぶくぶく茶釜様とペロロンチーノ様は姉弟でありんしたからその可能性は充分ありんすよ」
シャルティアを創造したペロロンチーノと、アウラとマーレを創造したぶくぶく茶釜はリアルでは姉弟の関係である。
その上下関係は完全に姉→弟であり、よくペロロンチーノが馬鹿なことを言ったときに「黙れ、弟」とぶくぶく茶釜が命令するのはナザリックの日常風景であった。
「・・・・・・」
「どうかしましたか? アルベド」
オデンキングがペロロンチーノの友人だったと聞いてからずっと沈黙を保っていたアルベドにデミウルゴスが怪訝な顔をむける。
「なんでもないわ」
そう切って捨てたアルベドの顔には何の感情も浮かんではいなかった。
様子のおかしなアルベドに替わってデミウルゴスが場を締める。
「とりあえず、我等もパーティー会場に向かうとしましょうか。歓迎すべきことに、オーディン様はアインズ様の御友人として相応しい方であったようです。各々、話を聞きたいのは解りますがあまり無礼にならぬよう気をつけましょう」
いまだに悪感情は抜けきらないが、同時に我が主に相応しい御方であったとも認めるデミウルゴス。
そろそろ御二人の会話が終わるかもしれないと思い、後から会場に姿を見せるなどという不敬を犯すわけにはいかないと守護者達とパーティー会場へ向かう。
拝啓
親愛なるクソ兄貴様。
おだやかな小春日和が続いておりますが如何お過ごしでしょうか。
漆黒聖典でのお勤め、御苦労されていることかと思います。
私はといえば叡者の額冠を盗んだり闇の巫女姫を発狂させたりと、恥ずかしながら子供の頃からのやんちゃなところは中々治らないことを痛感する日々を送っています。
さて、余り仲が良くなかった私達ですがこうして筆を取らせていただいたのには訳があります。
子供の頃から両親の期待を一身に受けた貴方に、流石私達の子だといつも褒められていた貴方に嫉妬していたことは話したことはありませんがご存知かと思います。
お前は残りカスだ。産むんじゃなかったと言われ続け、必死に努力しても縮まらないその差に絶望したことも数えきれません。
しかしそれも今は昔。
もはや今の私には貴方に対する隔意はきれいさっぱりと消えてなくなりました。
何があったのか、嘘じゃないのかと疑われるのは当然のことかと思います。
しかし私は知ったのです。この世界には自分の想像を越えたことなどいくらでも起きると。
今までの自分は井の中の蛙、いえ大砂漠の中の砂の一粒にも劣る矮小な存在だったのだと今実感しています。
何があったのかはきっと書いても信じられないでしょうから省きます。
だから一言だけ。
助けてお兄様。
「クレマンティーヌ様」
「はいっ!!」
現実逃避から一瞬で帰還したクレマンティーヌはセバスの声に正気を取り戻す。
「お飲み物はワインで宜しいでしょうか」
「はいっ!! 問題ありません!! ありがとうございます!!」
誰だお前は。
「ではテイスティングを・・・」
「いえ!! 大丈夫です!! おおおお構い無く」
もはやクレマンティーヌは自信の喪失どころではない。
電気イスに座らされ、五秒ごとぐらいに電源ボタンをギリギリで寸止めされる心境がナザリックに入ってからずっと続いている。
自分でも単独で相手をするのは辛いドラゴン・キンが何故か雑用をせっせとこなしていた。
3体で国を滅ぼしかけた伝説のアンデッドがそこらにふよふよと漂っていた。
イワトビペンギンが廊下をてちてちと歩いていた。
常識ってなんだっけ。強さってなんだっけ。
クレマンティーヌの精神はもうボロボロだった。
「クレマンティーヌ様」
「は、はいぃ」
セバスが再度声を掛ける。
「どうかお寛ぎくださいませ。このナザリックに客人を害するものはおりません。全配下にオーディン様とクレマンティーヌ様のことは通達しております。貴方に手出しをすることは決してありません」
セバスはクレマンティーヌの心境を正確に把握し優しげに声を掛ける。
「確かにナザリックは異形が多く、人間を害するものも少なくはありません。しかし我等の主人は慈悲深く優しい御方です。そしてその主人の命を無視する配下は存在しません」
いくつか例外もあるがクレマンティーヌを安心させるためそれについては無視する。
「そ、そうなの・・・?」
いつ殺されるのかと恐怖に怯えていたクレマンティーヌは優しげなセバスの声に少しだけ気を緩ませる。
「はい。私共は御二人様に楽しんでいただくために付いております」
少しずつ落ち着いてきたクレマンティーヌに歓待の意思を見せる。
「わ、私は死ななくてもいいの・・・?」
「ご心配ならばこのセバス、クレマンティーヌ様からの敵対かアインズ様からの命令がない限りは御身を守ると誓いましょう。これでも不遜ながらナザリックの最上位勢にも引けをとらぬと自負しております」
執事として普段自分の力をひけらかすことなどしないセバスだが、クレマンティーヌを落ち着かせるためここは自分の強さをアピールしたほうがよいだろうと考えた。
主から客人をもてなせと命令をいただいたのだ。
何よりもまず死の恐怖を感じる必要はないと理解していただくべきだ。
「・・・わかった。ありがとー。ワイン、いただくわ」
セバスの真摯な言葉にようやく普段通りの自分を取り戻すクレマンティーヌ。
「かしこまりました。そろそろアインズ様とオーディン様も来られるかと存じます。ごゆるりとお寛ぎくださいませ」
まさに完璧な対応。執事の鑑であった。
アインズの部屋に着いた二人。
椅子に腰を落ち着かせながら見つめ合う。
「アインズさん」
「・・・はい」
「アインズ様」
「やめて!?」
とりあえずからかうオデンキング。
「なんなんですか、さっきのは。喋ってる途中で吹き出しそうになりましたよ」
さっきの会話を思い出して、自分も大概だなと恥ずかしくなるオデンキング。
「いや、なんというかその・・・。こちらに転移した時にNPCも自我を持ったみたいなんですけど、忠誠がえらいことになってまして」
仕方なく支配者ロールをしたのだとアインズは説明した。
「へえー。面白いですね。・・・とすると〈ユグドラシル〉時代のことは彼等にどう認識されているんですか?」
「うーん。なんとも言えないというか、現実にそくしたような感じで記憶しているようで。余りボロを出したくないので突っ込んで話が出来ていないんですよ」
「へー。でもいいですねー、あんな美人達に忠誠誓われてるってのは。手ぇ出し放題なんじゃないんですか?」
このこの、と羨ましそうにアインズに言うオデンキング。
「性欲、無いんです。骨だから」
「お、おう。・・・なんだかすみません」
悪いことを聞いた、とオデンキングは謝罪する。
「いえ、いいんです。なんだかんだ言って楽しいこともありますし、オーディンさんにも会えましたし」
嬉しいことを言ってくれるアインズ。
「・・・俺、ノーマルですからね?」
「そういう意味じゃないですよ!!」
なんとからかいがいのある骸骨だろうか。
オデンキングは会話をしながらそんな風に思っていた。
「性格とかも設定通りなんですか? シャルティアなんかはペロロンチーノさんに聞いた通りの感じでしたけど。あ、今更ですがシャルティアを迎えに出してくれてありがとうございます。楽しかったですよ」
「いえいえ、シャルティアも喜んでいたみたいですし、こちらこそありがとうございます」
サプライズな目論みはどうやら成功したようだ、とアインズは嬉しがる。
「性格はたぶん設定通りだと思います。ただ、設定の少なかったキャラはそのキャラを作ったプレイヤーの影響を結構受けてるみたいですね」
この10日と少しでそれなりに配下の性格を把握したアインズ。それほど間違った推測でもないだろうと思っている。
「逆に設定ギチギチのアルベドなんかは・・・あ、いや、ううんっ」
言い過ぎた、と誤魔化すアインズ。
それを目敏く見抜くオデンキング。直感が告げている。これは面白いことだと。
「アルベドさんが・・・なんですか?」
「い、いや何でもないですよ? 設定ギチギチのアルベドは設定通りの性格だなって話です」
ヤバい。アインズは自分の失言に頭を抱えた。
「ほほう・・・。本当になんでもないと?」
「ええ。むしろ何があるというんですか?」
じー。
骸骨の2つの穴に視線を向けるオデンキング。
内心焦るアインズ。
「そういえば宿屋の修理代俺が全部だしたんですよねー」
「うぐぅっ!?」
痛い所を突かれた。
アインズは〈ユグドラシル〉の金貨は大量に持っているがこちらの通貨の手持ちは少ない。
仕方なしに借りという形でお金を出してもらったのだ。
「是非その借りを返していただきたいなー」
「う、うう」
数分後、アルベドの設定を書き換えて自分を愛している、という設定を盛ったとアインズは告白させられた。
「ぶふっ、くっ、あはははは。そ、それは中々、くふっ、面白いですね」
笑いを堪えながらアインズの行動に腹を抱えるオデンキング。
「うう、やめて下さい。自分でも後悔してるんですから」
羞恥心の小さな波が連続しているアインズ。
まさか異世界にきてまであの時の恥ずかしい行動を他人に知られるとは思わなかったのだ。
「くく、つまりアインズさんはアルベドさんがお好き、と。良かったじゃないですか、相思相愛ですよ」
「もうやめたげてよう!!」
キャラを崩してまで懇願するアインズ。
「冗談です、冗談。それよりそろそろ行きませんか? 随分と待たせてしまってます」
そろそろ勘弁してあげるか、とからかいをやめるオデンキング。そういえばクレマンティーヌのことをすっかり忘れていた。大丈夫だろうか。
自分は〈ユグドラシル〉で異形種にも慣れていたがよく考えればクレマンティーヌはこちらの世界の人間だ。
「(もしかして生きた心地してないんじゃないだろうか)」
ずばり、そんなレベルではない。
「おっと、そうですね。オーディンさんと話していると楽しくてついつい時間を忘れてしまいます」
アインズは立ち上がってパーティー会場に向かう準備をする。
「では、行きましょうか」
「ええ」
部屋を後にする二人。
「俺は、ノーマルですからね?」
「だから違いますって!!」
締まらない二人であった。
アルベドが怖いって?
大丈夫。彼女も主人公に落とされますから(ギャグで)
そこそこ階層守護者達からの心証が良くなったオデンキング。
これぞニコポならぬシコポ。
ちなみにパーティーの描写はすっとばします。書いてもさしてギャグにはならないので。