本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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間違えて途中投稿してしまいました。申し訳ありません!


六日目

5月○日

 

朝8時 大雨 鎮守府正門

 

降り注ぐ雨。梅雨に入り村にも雨が続いている。多くの艦娘も寮で待機や勉学に励んでいる。そんな時でも憲兵は雨合羽を身につけ外で警備に当たっていた。冷たい雨の中でも微動だにしない。待機室で待っておけば良いのだが、仕事人間の憲兵であった。ふと自身に当たる雨がなくなり上を見ると赤い傘。気配がするので後ろを見ると戦艦大和がいた。

 

「おはようございます大和さん」

 

「おはようございます憲兵さん」

 

微笑みながら挨拶をする大和。彼女は出撃する際に多くの資材などを消費するため鎮守府で待機していることが多い。しかし、その戦力、火力は大きく統率力もあり多くの艦娘からは尊敬されている。そんな彼女はよく憲兵のもとに訪れる。

 

「雨が降ってますので部屋に戻ってください。私は大丈夫なので」

 

「ふふふ…大丈夫です」

 

憲兵の提案をバッサリと断り相合い傘をそのまま続ける。

 

「憲兵さん?」

 

「なんでしょうか?」

 

「顔が赤くないですか?辛そうですが」

 

「気のせいです」

 

「嘘だね」

 

ふと第三者の声がしそちらを見ると時雨が立っていた。憲兵は不味いと思い帽子を深く被り顔を見えないようにする。しかし、時雨は大和に頼み帽子を取らせる。そして憲兵のおでこに大和が手を当てる。

 

「風邪ですね………いつからですか?」

 

「問題ありません」

 

「い・つ・か・ら・で・す・か?」

 

「………………先日、雨の日に鯉のぼりを倉庫に直した日からです」

 

2日前、雨が降りだし鯉のぼりが雨で痛んでしまうと考えた憲兵は一人で夜中に鯉のぼりを倉庫に直した。その時はカッパも着ず雨にうたれながら作業をしており、翌日の朝から調子が悪かったが特になにもせず1日を過ごした。しかし、その無理が祟ってか今日の朝は体の節々が痛く、ふらふらの状態で警備をしていた。

 

「もう、戻りますよ憲兵さん」

 

「しかし!」

 

「大和さんはそっちをもってね」

 

「は、離して下さい」

 

ずるずると二人に連行される憲兵だった。

 

 

昼前 10時 憲兵寮の部屋

 

殺風景な部屋。憲兵の部屋を見た人間の感想はこれであろう。簡易的な台所。テーブル、業務用の机。そしてベッドとなっており、彼の私物は服などの日用品以外何もない。そんな部屋に大和と時雨は憲兵を連れてきて着替えるように促した。抵抗しても無駄だと考え、憲兵は着替えを持って洗面所へと入っていった。その間に大和は提督に報告してくると言い、部屋から出ていく。部屋に一人残された時雨は部屋を見渡す。目に入ったのは倒れている写真立てだ。時雨は棚の上の写真立てに手を伸ばす。手に取ると隙間から写真が落ちる。時雨は写真立てを棚に戻し写真を拾う。写真を見て唖然とした。

 

今のような無表情ではなく、笑顔で写る憲兵とその隣には綺麗な着物に身を包み、優しく微笑む女性が写っていた。

 

「どうかしましたか?」

 

突然後ろから着替えた憲兵に声をかけられ驚いた時雨は写真をそのままポケットにしまった。

 

「な、なにもないよ。憲兵は早く横になったほうがいいよ!」

 

「は、はぁ」

 

憲兵をベッドに寝かしその横に椅子を持ってきて座る。憲兵は依然として辛そうな顔をしている。時雨はハンカチで顔の汗を拭いていく。

 

「申し訳ありません。時雨さん」

 

弱々しくそう時雨に伝える。時雨は優しく憲兵の頭を撫でる。

 

「そこはありがとうって言ってほしいな」

 

「……すいません」

 

「君は謝るのが好きなの?」

 

そう言って笑う時雨。すると部屋の扉が勢いよく開かれた。

 

「憲兵さん!大丈夫ですか!?」

 

提督だった。憲兵は体を起こそうとするが提督はそのままで良いと伝える。時雨は席を立ち提督に譲る。提督は椅子に座りそして憲兵の手を握りながら謝る。

 

「ごめんなさい……いつも貴方に頼りっぱなしで…休みもほとんどなく働いてくれて…本当にごめんなさい。甘えっぱなしで……」

 

「気にしないで下さい。私の自己管理が出来ていなかっただけなので…提督の責任ではありません」

 

それでも謝り続ける提督の頭を優しく撫でる。

 

「提督はよくやっています。憲兵なんぞにここまでしてくれて……私はあなたの元で働けて幸せですよ」

 

その言葉を聞き提督は頬を朱色にし、顔を憲兵から背ける。

 

「君は本当に罪作りだね………もう」

 

おもしろく無さそうにする時雨を見て憲兵はどうして機嫌が悪いか理解できなかった。

 

 

昼 13時 憲兵寮の部屋

 

ふと目を覚まし窓の外を見るとまだ雨が降っていた。憲兵は体を起こしトイレに向かう。時雨と提督は憲兵が寝た後、静かに部屋から出ていっていた。トイレから帰ってきて体温を測る。38度とまだ熱は下がっていない。しかし憲兵は今日の郵便や、資材の計算、本営からの業務連絡や、今の世界の状況などの資料をまとめ始めた。

 

「あんた何してんの?!」

 

ふと声が聞こえそちらを見るとそこにはお粥を載せたお盆を持った瑞鶴が立っていた。憲兵は資料の整理を少ししておこうとと言うが、瑞鶴はテーブルにお盆を置き憲兵から資料などを取り上げる。

 

「病人なんだから無理したらダメよ」

 

もうと言いながら資料をテーブルに置き憲兵をベッドに寝かせる。

 

「ちゃんと治さないと…みんな心配してたんだから」

 

「すいません」

 

「分かったならいいわ。ほら鳳翔さんがお粥を作ってくれたから持ってきたわよ」

 

憲兵を寝かし、椅子に座る瑞鶴。お盆を膝の上に置き安定させる。

 

「ほら、あーん」

 

「…………」

 

「早く口開けなさいよ。食べさせるだけだから」

 

そう言って笑う瑞鶴。憲兵は瑞鶴の性格が一番接しやすいと常々思っている。憲兵はなんのためらいもなく瑞鶴に食べさせてもらっていた。

 

「憲兵さん大丈夫ですか?」

 

「憲兵さーん!雷が来たからには元気になるわよ!」

 

「憲兵。大丈夫かい?」

 

「もう!憲兵さんは病人なのよ!静かにしないと!全く子供なんだから!」

 

第六駆逐艦の子達が入ってきて食べさせて貰っているのを目撃された。その後、誰が食べさせるかで騒ぎになり後から来た鳳翔さんに怒られたのはまた別の話である。

 

 

本日の主な出来事

 

 

大和さんと時雨さんに熱が出ているのがバレて仕事を休む。

 

 

提督様や様々な艦娘に看て貰う。

 

一言

 

自己管理を見直そう。

 

最後に

 

本日は雨、提督様曰く異常なし。




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