本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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叩きつけてやれ!


二十三日目

11月ⅠⅠ日

 

朝 10時 商店街

 

「次は何の店かな?」

 

「次は乾物屋よね憲兵さん!」

 

「確かペットショップの隣ですよね?」

 

「そうなんですか?!」

 

「ぽい?!」

 

買い出しに出掛けようと提督に声を掛けたときに偶然遠征任務を終え執務室に居た時雨、夕立、朝潮、吹雪、雷が手伝いに行くと言い商店街へと出掛けていた。手伝ってくれるのはありがたいが彼女達は元気であるため手を引っ張られることが多いので体力が少し消耗していた。

 憲兵は先に歩く彼女達を見ながらゆっくりと着いていく。笑顔で談笑する彼女達を見てどこか心が安らかに感じる憲兵。彼女達が笑顔で元気でいてくれる。それだけで日頃の業務など苦にならない。提督、艦娘、町の人たちが元気でいてくれるなら何でもしよう。ならもう歳であり憲兵としての経験を積んだ自分に出来ることはこれから提督や艦娘、そして町を守るであろう秋山隊員のような後進に道を譲るのが妥当ではないか。訓練生育成教官に指名されたならその任務を全うしたらいい。だが、心に何かがひっかかる。そう考えていた彼の顔を覗き込む夕立。いつの間にか乾物屋に着いていた一行。

 

「憲兵さん?乾物屋に着いたっぽい!」

 

「…そうですね」

 

「ぽい?なにか考え事っぽい?」

 

「いえ…何でもありませんよ夕立さん」

 

まずはおつかいの任務を全うしよう。そう意気込み乾物屋へと入っていくのだった。

 

 

「かわいい~」

 

「ふわぁ」

 

「ぽいぽい!」

 

「わんわん!」

 

乾物屋での買い物を終わらせた憲兵と吹雪一行は隣のペットショップに訪れていた。最初は憲兵が入るのを渋っていたが朝潮がシュンとしたので仕方なく店へと入ったのであった。

艦娘達はペットふれ合いコーナーで動物とふれ合っていた。吹雪と朝潮は猫に夢中になり、夕立は柴犬と戯れていた。

 

「見て!私になついてるわよ!」

 

そして何故か頭にオウムを乗せ嬉しそうに憲兵に駆け寄る雷。憲兵は苦笑いしながらどう反応したらいいか分からずとりあえずよかったですねと雷に声を掛けていた。

 

「憲兵も触ってみなよ。すごくかわいいよ」

 

そう言ってダックスフンドの子犬を笑顔で憲兵に差し出す時雨。しかし憲兵は後ずさりし私はいいですと離れていく。それを見た一同。沈黙が走る。

 

「……もしかして憲兵さん」

 

その言葉の先を言おうとした朝潮。すると彼は焦りながら話し出した。

 

「そんなことはありません。犬が怖いなんてことはありえません。ただ、小さい頃に孤児院で飼われていたジャーマンシェパードドッグに追いかけられてから少し苦手ではありますが決して怖くはありません」

 

「…」

 

「なら抱っこしてみ…」

 

「私はいいですので皆さん心行くまでふれ合っていてくだ…」

 

そう彼が言い掛けた時だった。

 

「憲兵さん!」

 

後ろから夕立の声が聞こえ振り向く。

 

「わん!」

 

「ッ!?!?!?」

 

夕立が抱っこしていた柴犬が憲兵に吠える。すると彼は勢いよくペットショップから出ていくのであった。

 

 

 

夕方 19時 食堂

 

「憲兵さん走って鎮守府まで行っちゃって笑っちゃいました」

 

「血相を変えて走ってきたと思ったらそういうことだったんですね」

 

「憲兵さん、そのお肉貰ってもいいですか?」

 

「…勘弁してください。あとどうぞ赤城さん」 

 

「肉がうめぇなぁ!」

 

 夕食になり今夜は焼き肉の鎮守府。そこでは今日新たに発覚した憲兵さんが犬が怖いと言う話で持ちきりであった。吹雪が笑いながら加賀にペットショップで起きた出来事を話す。普段表情豊かではない彼女が少し笑っていた。天龍は憲兵の弱点が分かったからなのか満足そうに肉を食べていた。すると憲兵の隣で静かに食事をしていた龍田が妖艶な笑みを浮かべ憲兵の耳に顔を近づける。

 

「くぅーん」

 

「…?!」

 

耳元で子犬の鳴き声の真似をする龍田。憲兵はビクッと体を震わせ席から立ち上がる。

 

「…犬が苦手なのは本当みたいねぇ」

 

「龍田さんそういうのは控えてください…」

 

「大丈夫よ~貴方にしかしないから~」

 

ふふと笑う彼女に憲兵は深くため息をつきながら席に座る。天龍はこれから犬の真似をしたら憲兵が逃げだすのかとうきうきとしながら食事をするのてあった。

後日何で逃げねぇんだよ!と叫びながら全力疾走しながら追いかけてくる憲兵から逃げる天龍がみられることになった。

 

 

夜 21時 艦娘寮 ロビー

 

「こうしてアトラは元気に草原を走り回れるほどの元気を取り戻しました。その光景をアルバは遠い空から眺めるのでした…」

 

「ヲー…」

 

「アルバ…頑張ったよね」

 

「いいお話でした…ふふ…泣くとは思いませんでした」

 

「アルバ~」

 

夜に例の本を読み聞かせる憲兵とそれを聞く艦娘。物語が終わると結末に感動し目に涙を浮かべる艦娘達が多かった。

特に扶桑はさめざめと泣いていた。妹の山城も泣くのを我慢しているのであろう。顔を下に向けながら震えていた。

 

「これでこの物語は終わりです」

 

「いいお話だったのです」

 

「レディーは…泣かないもん」

 

「ボロ泣きっぽい」

 

「今度は何のお話を読んでくれるの?」

 

涙を拭きながら憲兵に次の物語は何を読んでくれるのかを聞く雪風。

 

「次は…そうですね…また物語を探してみます」

 

その返事を聞き嬉しそうにする雪風。憲兵は優しく彼女の頭を撫でる。雪風は気持ち良さそうに目を細める。するとクイクイと服の袖を引っ張るヲ級。憲兵は雪風の頭を撫でるのを止めヲ級の頭を撫でる。ヲ級は嬉しそうに微笑んだ後、彼の体に抱きつく。

 

「雪風は負けません!」

 

それを見ていた雪風が憲兵に抱きつく。憲兵は困った顔をしながら二人の頭を撫でていた。

 

「憲兵さんって雪風ちゃんとヲ級ちゃんには甘いですよね」

 

「確かに…」

 

「もしかして…ロリコン?」

 

「違います」

 

疑いの目を向ける艦娘達と提督に焦りながら弁明する憲兵。笑い声がロビーに響き今日も平和な一日が終わるのであった。

 

 

 

今日の主な出来事

 

朝 

 

鳳翔さんと間宮さんに頼まれおつかいに。帰りにペットショップに寄る。

 

 

夕御飯は焼き肉であった。龍田さんには不意を突かれましたが今度は動揺しないようにしよう。

艦娘寮で本を読み聞かせた…暖かい時間です。

 

一言

 

犬が怖いのではなく苦手なだけである。

 

最後に

 

本日も晴れ、鎮守府に異常なし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




たくさんの評価ありがとうございます!

まだまだ感想、評価、アドバイス待ってます

少し話が変わりますがハーメルンに作品を投稿しはじめて2年を過ぎるのに驚きました。こうして続けられるのも作者の作品を読んでくださって温かい感想やアドバイス、誤字脱字の報告をしてくださる読者の皆様のお陰です。これからもよろしくお願いいたします!




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