本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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このお話は時系列的に憲兵さんが来て一年目のとある日の1日です。


金剛の憲兵見習いの一日

金剛は提督が好き。この鎮守府の全ての艦娘が知っている事実である。人目を気にせず抱きつき、またある時は布団に潜り込む。彼女の提督である小雪自身は特に気にする様子もなく金剛のスキンシップに対して何も言わない。少しくらい反応してくれてもいいのにと思う金剛。

今日も金剛は提督の執務室に入り浸っている。提督は秘書の電と共に資料を整理している。真剣に仕事をしている彼女の顔を見ているだけでもいい。いつものかわいい顔も好きだが、真剣な顔も好きなのだ。金剛はソファに座りながら提督をじっと見る。至福のひとときだ。

そんなとき、執務室のドアを三回ノックする音が室内に響く。

 

「提督。今よろしいでしょうか?」

 

聞こえてきたのは低い男性特有の声。その声を聞いた提督の眼が輝き表情が緩んでいるのが見てわかる。入ってください!とげんきよく返事をする提督。失礼しますと扉を開けて入ってきたのはこの鎮守府に配属されている憲兵。身長も高く元陸軍だったためか体つきも逞しく、見た目はおっかない男性。しかし、見た目とは裏腹に性格は穏やかで優しい。彼もこの桜鎮守府の艦娘達に慕われている人物の一人である。しかし、金剛は彼が苦手である。嫌いではない。彼の人柄は認めるし、なにより妹の榛名を救ってくれた人でもある。感謝してもしきれないほどの人物だが

 

「憲兵さんはこのあと暇ですか?」

 

「すいません。この後大和さんと長門さんの送迎がありますので」

 

「むー…なら一緒に行きます!」

 

金剛のライバルでもあるのだ。提督は見てわかるように憲兵さんLOVEなのだ。彼女以外にも彼を想っている娘は多い。まずは金剛の妹である榛名、そして鈴谷、蒼龍、大和、時雨、吹雪、如月、曙などなど…。他はいいのだが提督が取られるのは嫌な金剛。提督とラブラブになりたい。でも提督が好きなのは憲兵。

 

 

 

 

 

 

 

 

なら憲兵さんの真似したらいいんじゃない?

 

 

 

 

朝 六時 憲兵寮 憲兵の部屋

 

「一日憲兵見習いですか…」

 

朝、眼が覚め支度を整えていた憲兵の部屋にやって来たのは金剛だった。憲兵は何事かと思い訳を聞くと今日一日憲兵見習いとして側に居させてほしいとのことだった。

 

「Yes!今日一日お願いしたいデース!」

 

大丈夫だ。問題ないと言わんばかりの笑顔でお願いする金剛。憲兵は困り、眉間を押さえる。

 

「提督の許可は…」

 

「取ってマース!」

 

「…わかりました。ならまず憲兵服を渡しますので着替えてください。女性用の物がありますので」

 

そう言って隣の物置へと入っていく憲兵。五分後、手に憲兵服を持ち出てくる憲兵。金剛はそれを受け取り憲兵の部屋の洗面所で着替えるのだった。

 

 

 

朝 七時 鎮守府正門

 

憲兵の服に袖を通した金剛は、憲兵からまずは鎮守府正門の掃除をすると言われ掃除をする。

 

「憲兵さんは毎朝してるんですか?」

 

「雨の日以外は掃除をします。鎮守府は軍施設なので外見が汚ければ住民の方の不安を煽ったり、苦情になりますのでできるだけ清潔にしています。それに皆さんが気持ちよくすごし、任務や作戦を終わらせて帰ってくる『家』なので…」

 

そう言い黙々と作業をする憲兵の背中を見る金剛。こういった考え方が好かれる一つの理由なのだろうと考えていた。

 

 

 

 

昼 十三時 鎮守府正門 休憩所

 

三時間の掃除、そして正門の警備が終わり時間を確認すると食事時だ。すると手に何かを持ち入ってくる憲兵。

 

「昼休みなので金剛さんは食堂でお昼ご飯を食べてきてください」

 

「What?憲兵さんは食堂にはいかないんデスカ?」

 

「今日は纏める資料が多いのでここで食べます」

 

「寂しくないんですカ?」

 

「……特に寂しいとは思いませんが」

 

「…食堂に行ってくるネー」

 

そう言って食堂へと向かおうとする金剛。扉の前で立ち止まり何かを考えている。憲兵はどうしたのだろうかと金剛に声を掛けた。

 

「どうかしましたか?」

 

「やっぱり食事は皆で食べた方が楽しいネ!憲兵さんも一緒に食堂に行くデース!」

 

そう言って憲兵の弁当箱を持ち憲兵の手を引っ張り食堂へと連行していくのだった。

 

 

鎮守府 食堂

 

憲兵さんの手を引っ張り食堂へとやって来た金剛は姉妹艦である比叡、霧島、榛名の元へと歩みを進める。

 

「あ、金剛お姉さまってひええ?!」

 

「あら、金剛お姉さまってば大胆ですね」

 

「あ、えっと…憲兵さん」

 

「憲兵さんも一緒にいいですカー?」

 

「いいですけど…どうして手を繋いでいるんですか?」

 

比叡の言葉を聞き憲兵の手を握っていることに気がつく金剛。お姉さまも憲兵さんを…榛名はどうしたら…と目をぐるぐる回す榛名。憲兵は困ったような顔をしている。ふと視線に気がつき視線の元を見ると提督が羨ましそうに金剛を見ていた。

 

「Oh…」

 

 

◇ 

 

夕方 十八時 憲兵寮前

 

「今日一日お疲れ様でした。色々と助かりました」

 

「私も色々と学ばせてもらったネー!ちょっと疲れたけど楽しかったデース!」

 

一日の業務を終え、いつもの服装に戻った金剛。憲兵はありがとうございますと頭を下げる。

 

「これをどうぞ」

 

「What?」

 

紙袋を手渡される金剛。なかを見てみると四つのティーカップが入っていた。

 

「買い出しの際に金剛さんがこれを見ていたので今日のお礼で買いました。よろしければ使ってください」

 

「え、あ、うぅ…提督の気持ちが少しわかったデース」

 

ずるいデス。そう思う金剛。

 

「ありがとうデース。大事に使いマス」

 

「では私は自室ですることがあるので今日はここで」

 

部屋に戻ろうと寮へと入ろうとする憲兵。

 

「憲兵さん!」

 

それを呼び止める金剛。振り返った憲兵の目を見る金剛。

 

「私、負けないデース!」

 

そう言って艦娘寮へと走っていく金剛に憲兵は何のことか分からず立ち尽くしていた。

 

 

 




感想、評価、アドバイス、その他もろもろお待ちしています!

ちなみに我が鎮守府で金剛は一番来るのが遅かったです。榛名→霧島→比叡→金剛の順番です。

デースとネーの発音が好きです。最近中の人が同じ人と知って驚きのあまり言葉を失いました。声優さんってすごい!

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