本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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憲兵さんが読んでる物語後編


花と青い鳥と少女の物語 後編

Ⅴ アルバと木の神グウィン

 

不気味なほどに静まり返った森を進むアルバ。2日飛び続けたアルバは疲労が溜まりフラフラとなっていた。アルバは近くの大きな木に止まり休息をとることにする。羽を休め疲労を回復させるアルバ。この森のどこかに七色の花がある。しかしこの森に入る前に上空から確認したが地平線の向こうまで広がる森を目にしたアルバ。あと12日で七色の花を探さなくてはならない。途方にくれるアルバだった。

 

「誰だ…私の枝に止まる不届きものは」

 

不意に声がアルバの頭に響く。アルバは驚き辺りを見回すが誰も居ない。不思議に思うアルバにまたも声が響いた。

 

「そこの青い鳥よ…そなたが止まっている木じゃよ」

 

すると枝が揺れる。振り払うかのように揺れる枝から驚き飛び退くアルバ。揺れる木を見続けるアルバ。すると木にうっすらと顔が浮かび上がった。

 

「ふむ…この森の者ではないな…何用でここに来た?」

 

「すみません…ぼくの名前はアルバと言います。この森へはどんな病気も直す七色の花を探しに来ました」

 

「ほぉ…あの花をか」

 

「知っているんですか!?」

 

花の在りかを知っているような口ぶりに食い付くアルバ。一筋の光が見えたと思ったアルバだったが木のグウィンは残酷な事を彼に告げた。

 

 

「七色の花はこの森にしか咲かないのは確かだ。しかし、この森では咲くことはない」

 

グウィンの言葉を聞いたアルバは途方に暮れた。この森には咲かないと言う事実が重く彼にのしかかる。しかしグウィンは話を続けます。

 

「この森は土、水、光、木の神様がおる。土の神ファーナム、水の神オストラヴァ、光の神ソラール、そして木の神である儂がグウィンじゃ。植物のことなら分かるが、それ以外のことはてんでわからん。それぞれの神に聞いてみるとよい」

 

その言葉を聞いたアルバは木の神グウィンにお礼をして土の神ファーナムに会いに行くことにしました。

 

Ⅵ 土の神ファーナム

 

アルバはグウィンに言われた通りに北にある大きな岩の前に辿り着いた。アルバは大きな岩に話しかける。

 

「貴方が土の神ファーナム様ですか?」

 

はじめは反応しなかったがしだいに岩に顔が浮かび上がった。

 

「ほぅ…珍しい…客人が来るのは何年ぶりか…」

 

「こんにちは。ぼくの名前はアルバと言います。聞きたいことがあるのですが七色の花を探しています。先程木の神グウィンに話を聞いたのですがこの森で咲くのは確かなのですがこの森では咲かないと聞きました。どうしてでしょうか?」

 

アルバは土の神ファーナムと会い、花についての話をしました。ファーナムはアルバにこう告げます。

 

「この森で七色の花が咲くのは確かだが、この森の土では育たぬ。この森の土は七色の花が咲くのには堅すぎる。まずは土を柔らかくし肥やすことだ」

 

それを聞いたアルバはまず土を肥やすことにしました。しかし鳥であるアルバには無理な話です。すると土の神ファーナムがしばし待てと言いコーンと音を立てた。

 

「どうかしたか主よ…」

 

地面から出てきたのは小さなもぐらだった。

 

「ハベルよ…この鳥の為に土を肥やしてやってくれぬか?」

 

ファーナムがもぐらのハベルに頼んでくれたのです。

 

「主の為ならば…ではアルバよ…私を運んでくれ」

 

「ありがとうございます。土の神ファーナム様。ハベルさん」

 

アルバはファーナムにお礼を言いハベルを掴み木の神グウィンの元へと飛んでいった。

 

木の神グウィンがアルバがもぐらを連れてやって来たのを見て驚いていた。

 

「ほほう…ファーナムが手を貸すとは…あいつは相手の心を読むことができる?手を貸したとなれば相応の理由があったのだな」  

 

「はい…ぼくの飼い主のテトラを助けたいんです」

 

アルバは旅だった理由をグウィンに話した。話を聞いたグウィンは協力してくれると申し出てくれた。アルバは頭を何度も下げ感謝した。

 早速土を肥やす作業をするアルバとハベル。ハベルは凄い早さで土を肥やしていきます。土を肥やす作業は5日掛かると言われアルバはその間に他の神の元へと訪れることにしました。

 

Ⅶ 水の神オストラヴァ

 

アルバはグウィンに言われた通り水の神オストラヴァの元へと向かっていました。水の神オストラヴァが居るのは木の神グウィンが居る森から西へ3日掛かります。アルバは何度か休息を取りながら大きな湖がある場所へと飛びました。その途中にペイトと言うカラスと出会いました。

 

「青い鳥さんよ。何を急いでるんだ?」

 

「水の神オストラヴァ様に会いに行く途中です。」

 

「まぁ、ご苦労なことだな。気を付けろよ。この森は恐ろしい化け物がでるらしいからな」

 

「ありがとうペイトさん!」

 

ペイトにお礼を言い飛び立つアルバの後ろ姿を見て怪しく笑うペイト。

 

「なぁに人助けですよ…人助け…」

 

 

 

大きな湖に到着したアルバ。湖のほとりに止まり水を飲む。すると水の中から透明な騎士が現れた。

 

「…珍しい青い鳥とは。私の名前はオストラヴァ。この湖のまぁ、主と言ったところだ」

 

「貴方が水の神オストラヴァ様ですか?」

 

「神とは大袈裟だ。ただの死に損ないさ。さて青い鳥よ何用でここに来た?」

 

「ぼくの友達テトラの為に七色の花が必要なんです。でもこの森では咲かないと聞きました。水の神オストラヴァ様。どうすれば七色の花を咲かすことができますか?」

 

その話を聞き考えるオストラヴァ。

 

「恐らくこの森の水がよどんでいるからであろう…この湖以外の水は酷く汚れている…七色の花は澄んだ水が無ければ咲くことはない…これを持っていきなさい」

 

アルバの目の前に1つの瓶が現れた。キラキラと太陽の光を反射させまるで宝石のように光る水が入った瓶。

 

「この水は私が500年浄化させた水だ。これなら咲くだろう」

 

「ありがとうございますオストラヴァ様!」

 

アルバは瓶を掴み来た道を戻っていくのであった。

 

 

Ⅷ アルバと光の神ソラール

 

アルバは木の神グウィンの場所まで戻ってきた。すると目の前には肥やされた土が広がっていた。

 

「す、凄い!」

 

驚くアルバ。そこへ土の中からもぐらのハベルが現れた。

 

「肥やしておいたぞ。この柔らかい土なら咲くはずだ」

 

「ありがとうございますハベルさん」

 

喜びを表すアルバを見たハベルは微笑みながら気にするなと声をかける。すると木の神グウィンが話しかけてきた。

 

「アルバよ…水も手にいれたのだな。最後は光の神だけのようだな」

 

「はい!今から向かいます!」

 

「その必要はない。呼んでおる」

 

すると光が空から差し込み一人の輝く男がおりてきた。

 

「ワハハハ。私の名前はソラール!光の神だ!」

 

誰が見ても光の神だと分かる風貌の男。アルバは頭をさげ事の次第を説明する。

 

「七色の花は光が必要だ!この森は暗すぎる!木の枝を切り光が入るようにすればいい!ではさらばだ!」

 

ワハハハと笑いながら消えていくソラールに感謝し頭をさげるアルバ。

 

「木の枝を切ってもよろしいでしょうかグウィン様?」

 

申し訳なさそうな声で聞くアルバ。グウィンはこころよく木を切ることを許してくれたのだった。

 

Ⅸ 七色の花

 

木を何とか切り光が射し込むようにしたアルバ。しかし、ここには土と水と光しかありません。七色の花の種が無いのです。アルバはどこにあるのかと考えていました。しかし、答えはすぐ近くにありました。

 

「小さき者よ…そなたの働きは見事であった。飼い主のためにその小さな体でよく耐えた。七色の花の種は私の体の木の実の中にある」

 

そう言って枝を揺らし木の実を落とす。

 

「これを植え水をあげなさい。そうすれば3日で花を咲かすだろう…」

 

そう言い残しグウィンは喋らなくなりました。アルバは話さなくなりただの木になったグウィンに頭を下げ光が差し込みよく肥やされた土に木の実を植え水をあげました。

 

「あと3日…間に合って下さい…神様」

 

 

花を植えてから3日目の早朝。アルバはハベルに起こされました。そこで目にしたのは今まで見てきたどの花よりも美しく咲き誇る七色の花が太陽の光に照らされていました。

 

「やった!やったよハベル!」

 

「あぁ!早く行かなければ間に合わなくなる!この花をテトラの元へと持っていくんだ!」

 

テトラの消えかかる命の猶予は14日。ここまでの作業で今日は13日目。町に戻るまで2日掛かる。今すぐに出発しなければ間に合わない。ハベルはアルバに急ぐように伝える。アルバは今までのお礼をハベルに伝え花をくわえ神々の森から出発するのであった。

 

 

Ⅹ 化け物

 

森を抜けたアルバ。背後から何かが着いてきているような気がしていたアルバは振り替える。すると黒い霧のようなモノが追いかけてきていた。驚いたアルバは飛ぶ速度を上げる。しかし霧はすっぽりとアルバを飲み込んでしまった。

 

「ふふふ…だから言ったのに…」

 

それを上空から見て笑う一匹のカラス。カラスは大笑いしながら神々の森へと戻っていった。

 

黒い霧の中でも必死に飛び続けるアルバ。しかし霧から出ることが出来ない。そんな時だった。

 

「アルバ!」

 

自分が救いたいと願っている少女が草原で走っている姿が見えた。

 

「アルバこっちにおいで!」

 

手招きをするテトラ。アルバはいつの間にか籠に入っていた。アルバは何事か理解できなかったがテトラが走っている姿を見て今までのことは夢であったのではと思っていた。アルバはテトラの元へと飛んでいく。

 

「おいで!」

 

あと数センチでテトラの手に乗る所まで来たアルバだが、動きを止めた。

 

「君は…テトラじゃない」

 

「何を言っているのアルバ?」

 

「テトラは…今…家なんだ。ずっと苦しんで苦しんで…僕はそのために旅に出たんだ!お前は偽物だ!」

 

そう言ってアルバは幸せな幻想とは逆の方に向かって飛んだ。

 

 

目を覚ますと夜になっていた。アルバはどれ程眠っていたのかがわからないが町の方へ向けて飛んだ。力の限り飛んだ。間に合ってくれと心の中で何度も繰り返し飛んだ。

 

体が悲鳴をあげているのがわかる

 

軋む音が響く

 

それでも飛ぶ

 

愛する家族を救うために…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母さん?」

 

「テトラ!?あなた!テトラが目を覚ましたわ!」

 

「なんという…奇跡だ!奇跡が起きたんだ!」

 

14日目を覚まさなかったテトラが目を覚ました。医者が後から診断したが病気はすっかり治り歩けるまでに回復していることに驚いていた。

 

「アルバ!やったよ!私歩けるようになったよ!」

 

小さい頃からの友達に報告するテトラ。

 

「アルバ?」

 

籠の中には何かの茎をくわえ息絶えているアルバの姿があった。

 

「アルバ…嘘だよね…あるばぁ…」

 

テトラはアルバを優しく手に乗せ涙を流すのでした…

 

 

 

 

 

「お母さん!お父さん!こっちこっち」

 

1年が経ち走れるようになるまで回復したテトラは夢見ていたお花畑で家族と出掛けていた。走り回るテトラを優しく見守る両親。花の冠を作ったり、家族でお昼を食べたりと心行くまで遊ぶテトラ。その少女の帽子には美しい青い羽が付いていた

 

 

                         

 

 

 

                         …fin

 

 

 

 

 




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