本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

2 / 48
これは憲兵さんがヲ級ちゃんに読んでる本の内容です。
一応書いたのでどうぞ


花と青い鳥と少女の物語 前編

Ⅰ少女テトラの友達アルバ

 

 

「聞いてアルバ…私、夢を見たの」

 

ベッドに横になりながらそう話すのは青い鳥アルバの飼い主のテトラだった。彼女は生まれつき身体が弱く、外で遊ぶことはおろか、歩くことも困難な少女だった。

 

「外で元気に走り回ってる夢。お母さんとお父さんとピクニックに行く夢」

 

アルバに語り掛けるテトラ。自分の身体が思うように動かない。誰が悪いわけでもない。しかし、同年代の子供たちが外で遊ぶ中、部屋で治療をするテトラにとっては毎日が苦痛だった。彼女にとっての世界はこの狭い部屋の中だけ。外に出ることは許されなかった。

 

「お医者様ももうすぐでこの病気も治るって言ってくれたから…正夢になるといいな」

 

そう言って微笑むテトラを見るアルバ。どうにか彼女に外の世界を教えてやりたいと考えるが、アルバはただの鳥。この鳥籠から出たことがないのだ。アルバにとって自分が外に出られないのはどうでもよかった。彼女の唯一の友達でいられるならそれでいい。彼女がいつか外へ出られるその日まで…

 

 

Ⅱアルバの旅立ち

 

 

テトラの容態が急変した。慌ただしくなる室内。苦しそうに呼吸するテトラ。その場に崩れ落ち、泣き続ける母親。娘を何とか助けてあげてくださいと医者へと頼み続ける父親。アルバは何も出来ない自分を嘆きながらただ苦しむテトラを見ることしか出来なかった。

 

夜、昼間の騒がしさから不気味なほどに静かになる部屋。眠りについていたアルバはふと眼を覚ます。月の光で部屋が明るい。そしてアルバはあることに気づいた。何故か鳥籠の入り口が開いている。それだけではない、窓も開けられていた。誰が開けたかは分からない。不思議に思うアルバ。すると今まで聞いたことのない優しい女性の声が聞こえた。

 

「青い鳥アルバ…この国のあるところにどんな病気でも治すことができる七色の花があります。もし少女を助けたいのなら旅に出なさい」

 

「でも僕はこの鳥籠から出たことが無いです。旅を出来るのか不安です」

 

助けたいが鳥籠から出たことがないアルバにとって外の世界へ旅に出るのは恐ろしかった。そんなアルバの言葉を聞き優しい声は非情な現実を告げる

 

「この子はもってあと2週間です」

 

アルバに伝えられたのはテトラの余命だった。あと2週間で彼女は外で走ると言う小さな夢を叶えることなく死んでしまう。アルバは決心した。

 

「僕頑張ります…テトラのために旅に出ます」

 

「小さな冒険者よ。この先様々な苦難が待ち構えています。しかし貴方なら乗り越えられるはずです」

 

アルバは震える羽を広げ羽ばたきます。そして籠から出たアルバは寝息をたてるテトラの枕元へと向かいます。

 

「テトラ。僕が君の夢を叶えさせてあげるからね。だから待っていてね」

 

そう告げアルバは窓の外に広がる無限の夜空へと飛び立っていきました。

 

 

Ⅲアルバとフクロウのアンディール

 

外へと出たアルバはまず町へと向かいました。町の鳥たちなら何かを知っていると考えたのだ。

町へ着き辺りを見回すが今は夜中。町には鳥が見当たりません。どうしようかと考えるアルバ。するとアルバのとまっている家の屋根に1羽の鳥がとまった。

 

「小さな青い鳥よ。どうした?こんな夜中に」

 

「僕の飼い主が病気なんだ。助けるためにどんな病気でも治す花を探しているんです。何か知りませんか」

 

「悪いが私は何も知らないなぁ。もしかしたらこの町の外れにいるフクロウのアンディールなら何か知ってるかもしれない」

 

それを聞いたアルバは教えてくれた鳥へ礼を言い、町の外れにいるフクロウのアンディールの元へと向かった。そこにいたのは眠たそうにしている大きなフクロウだった

 

「すみません。あなたがアンディールさんですか?」

 

「いかにも私がアンディール。どうした小さな青い鳥よ」

 

「どんな病気でも治す花を知っていますか」

 

フクロウのアンディールはそれを聞きふぉふぉと笑う

 

「懐かしいなぁ。その花の話を聞くのは…知っておるぞ。日が沈む方へ飛び続けなさい。すると大きな森が見えてくるはずじゃ。そこは人が入ることを許されない神々が住むと言われている森がある。神々の森…そこに七色の花がある。それがお主が探している万能薬になる花じゃ」

 

アルバはアンディールにお礼を言うとアルバは西へと向けて飛び立ちました。

 

 

Ⅳアルバと神々の住む森、木の神グウィン

 

西へと飛び続け2日経った。アルバはへとへとになりながら飛び続けていた。休息をとる時間などない。ただひたすらに飛び続けた。そして2日目の日が沈むとき、たどり着いたのだ。目の前に広がる森。侵入するものを拒むように不気味な雰囲気を出す森『神々の森』。アルバは入ることをためらった。心の中に巣くう恐怖の感情がアルバの決意を揺らがせた。

 

「怖い…でも…」

 

そんな彼の頭に浮かんだのは元気に花畑で走り回る事を夢見るテトラの姿。病にうなされ苦しむテトラ。

 

 

 

「僕はテトラのために七色の花をさがさないとだめなんだ。怖くなんかない…僕は臆病者だけどテトラを助けるためなんだ!」

 

自身を奮い立たせるアルバ。

 

「怖くない!怖くなんかないぞ!」

 

こうして青い鳥のアルバは禁じられた森へと入っていくのでした。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。