本日も晴れ、鎮守府に異常無し《完結》   作:乙女座

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十二日目

7月○日

 

朝 10時 鎮守府広場

 

「笹を用意しました」

 

「ありがとうございます!」

 

広場には3メートルほどの笹が10本用意されていた。今日は七夕と言うことで短冊と笹を憲兵と叢雲、吹雪、長門が用意した。憲兵は1本、叢雲と吹雪が2本ずつ、そして長門が5本運んできた。流石は戦艦。軽々と笹を持ち上げる様に憲兵は感嘆した。

 

「じゃあみんな!短冊に願い事書いていこう!」

 

提督の一声により艦娘達は短冊に願い事を書いていく。

憲兵は一人鎮守府の門へと向かおうと足を進めているとふと後ろから服の袖を掴まれた。後ろを向くとそこには響がじーっと見ていた。

 

「何でしょうか?」

 

「憲兵は書かないのかい?」

 

「私には願い事など……」

 

「………………」

 

響が無言で憲兵に短冊と筆を渡す。断ろうとも考えたがせっかく響がこうして渡しに来てくれたのだ。断るのも気が引ける。そう考え艦娘の輪の中へと響に連れていかれた。

 

 

「蒼龍?願い事書いた?」

 

「う、うん。書いたよ」

 

飛龍が短冊に蒼龍が何を書いたのかが気になり見せてよと言うが、蒼龍は絶対に嫌と言って渡そうとしない。まぁ、予想はできてるけどねとニヤニヤしながら蒼龍に言う。蒼龍はえっ?と疑問符を浮かべていた。

 

「憲兵さんと仲良くなりたいとか、付き合いたいとかそんなんでしょ?」

 

「ち、ち、ち、違うもん!」

 

顔を真っ赤にしながら否定する蒼龍。そこへ赤城がやって来た。

 

「私も憲兵さんのこと書いたわよ?」

 

ニコニコしながらそう赤城が言い短冊を見せる。

 

『憲兵さんから沢山お菓子が貰えますように』

 

その願い事を見て苦笑する二人。すると加賀も私も書きましたと見せてくる。

 

『憲兵さんの手料理をたべたいです』

 

どうしてこの二人はこうまで食べ物関連なのか。

 

「加賀さん。憲兵って料理作れるの?」

 

瑞鶴の疑問は憲兵が料理を作れるのかと言うところにあった。

 

「えぇ、ある程度の料理はできるらしいわ。それに美味しいのよ」

 

加賀曰く、母の日に鳳翔と間宮へ憲兵が料理を披露する機会があり、かなりのものだったらしい。

 

「でも…憲兵さんのカレーは比叡さんと同じですごく甘いんですよね」

 

翔鶴がカレーの味を思い出しながら笑う。憲兵と比叡がつくるカレーは甘く、駆逐艦や長門には評判だがそれ以外の艦娘からは不評なのだ。不味くはないらしいが。

 

「へぇ~食べてみたいなぁ」

 

瑞鶴、飛龍は最近ここに来たばかりなので憲兵の食べたことがないため二人は短冊に加賀と同じ願い事を書くことにした。

 

 

「ふんふーん」

 

「鈴谷はなに書いた……」

 

上機嫌に笹へ短冊を付けていた鈴谷に何を願い事で書いたのか気になり声を掛けた最上。目にしたのは鈴谷の短冊にびっしりと書かれた願い事。

 

『憲兵さんとラブラブになって結婚して、朝起こしてあげて―――――――』

 

「多いよ!」

 

「だってぇ~」

 

両手を頬にあてやんやんとする鈴谷。

 

「あんまり書きすぎるとお願いがかなわないよ?」

 

「えぇ~」

 

仕方ないかぁと言いながら短冊を取り外し新たな短冊に願い事を書く。

 

「これなら!」

 

『憲兵さんが今晩私の部屋に来て「いわせないよ?!」』

 

若干最上のキャラがぶれていた。こうしてあーでもないこーでもないと二人で騒ぎながら願い事を考えるのだった。

 

 

 

「むむむ」

 

「長門はなに書いたの?」

 

唸る長門に声をかける姉妹艦の陸奥。長門は陸奥に恐る恐る短冊の願い事を見せる。

 

『ヲ級ちゃんとイ級ちゃんと仲良くしたい』

 

「あぁ…無理だと思うわよ」

 

「何故だ!」

 

「だってヲ級ちゃんが皆に改めて紹介されたとき貴方抱き締めすぎて大破させちゃったじゃない」

 

「し、仕方ないだろう!?可愛かったんだから」

 

その事件があってからヲ級は長門を見ると一目散に憲兵の背後へと隠れるようになり、イ級たちは長門へ体当りをするようになった。体当りは痛くはないが長門の心は大破していた。

 

「まぁ、いいんじゃないかしら」

 

「う、うるさい!」

 

 

その頃憲兵は自身の短冊を笹に着けたあと、背の低い駆逐艦達の短冊を笹に結んであげていた。様々な願い事を書いている子達。

 

「私はレディーだから自分でつけるわよ!」

 

「憲兵さんに頼んだほうがいいわよ!私が頼んできてあげる!」

 

「いいの!大人は自分の力でつけるんだから!」

 

言い合いをする駆逐艦二人。それを響と電が止めようとしていた。憲兵はゆっくりと近づき目線を会わせるためにしゃがむ。

 

「暁さん。私が着けます」

 

「だ、大丈夫だもん!」

 

「人に頼らないのが大人ではありません。一人では無理なときに誰かに頼るのが大人ですよ」

 

「そうなの?」

 

「えぇ…だからお手伝いしますよ」

 

優しく暁に諭し短冊を受けとり笹へと結び付ける。

 

「あ、ありがとう」

 

「いえいえ」

 

「ヲ!」

 

後ろから短冊を渡してくるヲ級。憲兵は受け取り短冊に何が書かれているかが気になり見てみる。

 

『$=#<+#(*―#<=+%』

 

よく分からないが願い事なのだろう。憲兵は笹に結んで付ける。

 

沢山の願い事が書かれた短冊の風に揺られる様はとても綺麗であった。

 

 

 

 

 

 

本日の出来事

 

今日は七夕なので笹を用意。皆さん楽しそうにしておられました。

 

一言

 

皆さんの笑顔がこれからも絶えないことを祈ります。

 

最後に

 

本日も晴れ、鎮守府に異常なし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風に揺られる1つの短冊。書かれているのは

 

 

 

『君に会いたい』

 

 




お気に入りが凄いことに………

ありがとう!そしてありがとう!(某ヒーロー感)

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