ある日の昼下がり、中庭で花を眺めながらお茶会を楽しむ提督と戦艦組や空母、重巡洋艦組。駆逐、軽巡洋艦組は憲兵と遠足に行っている。
「私も遠足行きたかったなぁ」
「仕方ないネー」
保護者として憲兵が着いていき、提督はお留守番。最初は駄々をこね一緒に着いていくと言ったが結局着いていくことが出来なかった。残された組は仕事を一通り終わらせてからお茶会を開いていた。因みに長門が一番五月蝿かった。
「そう言えば提督と憲兵さんとの出会いって聞いたことがないんですがどうだったんですか?」
不意に赤城が提督に尋ねる。
「そう言えばそうね…聞きたい?」
「勿論です!」
食いついてきたのは蒼龍だった。提督は紅茶を一口飲み思い出すように話し出した。
◇
◇月○○日
桜の花が咲き誇る漁村の鎮守府の正門前に白い海軍服を身に纏った一人の少女が立っていた。彼女の名前は新田小雪。海軍学校を飛び級で卒業した若き天才である。彼女は本日付でこの漁村の鎮守府に配属されることになっていた。
「今日からここが私の……よし!」
気合いを入れて鎮守府に入っていった。
◇
執務室に入る提督を出迎えたのは一人の少女だった。
「は、はじめまして司令官。私は暁型駆逐艦の電なのです」
「はじめまして電ちゃん。私は今日からここで指揮を執らせてもらいます新田小雪です。よろしくね」
初期艦の電と挨拶を済ませる提督。鎮守府の運営の仕方など様々なことを電や資料などで確認し、鎮守府を見て回ることにする。倉庫や艦娘の寮、広場など電とお互いの話をしながら歩く。
「そういえば明日から憲兵隊の人がここに配属されるそうなのです」
「そうなの?確か憲兵隊って結構こわいんだよね?先輩の何人かが捕まったって聞いたことあるよ」
「陸軍のトップエリート集団ってきいてるのです」
提督も海軍学校の時から聞かされてきた憲兵隊と言う組織。本土防衛作戦で初めて艦娘と戦ったのは海軍ではなく陸軍だった。それから5年経ち、海軍が艦娘を管理するようになってから鎮守府内で艦娘に対する事件が多くなってきていた。そんな時に激怒したのが本土防衛作戦での生き残り陸軍だった。そして彼らは艦娘を守る為の組織『憲兵隊』を設立。艦娘を保護するための集団として鎮守府に配備される。そこから多くの提督が検挙されきた。今では憲兵隊のお陰で問題なく各地の鎮守府は運営されている。
「怖い人なのかな…」
不安を募らせる提督だった。
◇
「司令官さん。憲兵隊の方が来たのです」
「よ、よし!大丈夫大丈夫…きっといい人」
翌日の昼に憲兵隊から憲兵が来た。執務室で待つ二人。するとノックの音が聞こえる。
「ど、どうぞ」
「失礼します」
現れたのは身長180㎝ほどで鋭い目付きで憲兵隊の服を纏った男性だった。電ははわわと怯えており、提督も冷や汗を流していた。
「こんにちは。今日からこの鎮守府に配属されました憲兵です。」
帽子を取って頭を下げる憲兵。慌てて自己紹介をする提督。
「こんにちは…えっと昨日からこの鎮守府に配属されることになりました新田小雪です。よ、よろしくお願いします」
じーっと彼女を睨み付ける(見ているだけ)憲兵。
「失礼ですが……歳はおいくつですか?」
「え?今年で16歳になりました」
「………………少々お待ちください」
そう言って部屋から出ていく憲兵。提督は何かいけないことをしてしまったのでは?と考え顔を青くしていた。
ほどなくして憲兵は戻ってきた。提督は不安になり憲兵に何か問題があったのかと聞くと、なんでも提督が若すぎるとのことだったので大本営に確認をとったとのことだった。
「では今日からよろしくお願いいたします」
「よろしくおねがいしまふ!」
噛んだのが恥ずかしいのか顔を真っ赤にする提督と無表情の憲兵だった。
◇
「それが提督と憲兵さんのfirst contactですかー?」
「うん…あの時は憲兵さんあんまり話さないし少し怖かったなー。でも実は優しくてさぁ~。仕事も簡単にまとめてくれたり凄く助かってて……あの時くらいから気になり出したの……」
頬を少し朱色にしながら話す提督。金剛は少し面白くなさそうにしており、比叡がなんとか落ち着かせようとしていた。
「へーそうだったんですね」
「変わらないなぁ。昔も今も」
赤城が成る程と言う感じで返事をする。お菓子を頬張りながら変わらないねーと呟く飛龍。
「その後に榛名ちゃんが来たんだよね」
「はい!」
◇
まるで機械のように業務連絡や仕事を終わらせていく憲兵に提督はあまり話しかけることが出来なかった。次第に仲間が増えていく中、彼だけが交流を絶っていた。話し掛けても簡単な返事しかしない憲兵。しかも雑務や鎮守府内の掃除なども一人でスピーディーに終わらしていくその様子からまことしやかに艦娘達からケンペイロボと呼ばれていた。そんな時に初めて戦艦で来たのが榛名だった。彼女は憲兵が他の鎮守府から連れてきた艦娘だった。戦艦を手に入れ行動できる海域を広げていった。そして数日が経ったある日のこと。その日は風が強い日だった。
「お買い物?」
「はい…憲兵さんにその…お礼がしたくて……」
もじもじと顔を朱色に染めながらそう提督に話してきた榛名。何があったのかと聞いてみると以前買い出しの時に財布を落とし探していたときにたまたま備品を買い出しに出ていた憲兵も探すのを夜遅くまで手伝ってくれたらしいとのことだった。
「憲兵さんが…」
やはり怖い人ではなく優しい人なんだと再確認をし、快くお礼の品を買いに行くことにした提督と榛名だった。
◇
お礼の品を買った帰り道。
提督と榛名は鎮守府に続く道を歩いていた。
「いいの見つかってよかったね」
「はい!でも万年筆でよかったのでしょうか」
「喜んでくれるよ」
そう話しながら歩いている二人。
提督も日頃のお礼として手帳を買っていた。和気あいあいとしながら鎮守府への道を歩く二人。すると一人の女の子がボールを追いかけて公園から飛び出してきた。提督はその時トラックが迫ってきているのに気がつく。トラックの運転手は突然女の子が飛び出してき、ブレーキをかけるも間に合わない。咄嗟に提督は道に出て女の子を庇うようにして抱きしめ離脱をしようとするにも間に合わない。榛名の悲鳴が聞こえ目の前のトラックがスローモーションのようにゆっくり迫ってきた。その時だ。二人を黒い影が抱きトラックから回避した。
「大丈夫ですか?」
憲兵だった。
◇
事故にはならなかったので憲兵がトラックの運転手と話し合いをして事後処理をする。
その間に提督は女の子の母親と話をしていた。
「本当にありがとうございます。なんと御礼を言ったらいいか…」
「気にしないでください。今回は誰も怪我してませんから」
「ごめんなさいぃ」
怖かったのだろう。号泣しながら謝る女の子。提督は優しく頭を撫でながら泣き止まそうとしていた。
「提督」
話し合いが終わったのだろう。憲兵が声をかけてきた。手には買い物袋を持っており浮かない顔をする憲兵
「憲兵さん………」
「戻りましょう」
◇
鎮守府に着き憲兵は鎮守府内へと戻ろうとする。そんな憲兵を榛名と提督が止めた。
「そ、そのありがとうございます。そのこれ……この前のお礼です」
榛名はおずおずと紙袋を手渡す。提督は気まずそうに手帳を差し出した。憲兵は不思議そうに受け取る。
「今日はごめんなさい。本当に助かりました……貴方が居なかったら今頃私とあの子は……」
「気にしないでください。私は貴方と艦娘。そしてここの住民を脅威から守るのが仕事です。それに貴方は私に謝るべきではありません。貴方は人として女の子を守ろうとしたんです。それを誇ってください」
そう言って憲兵は買い物袋を持って鎮守府内へと戻っていった。
「ずるいね」
「そうですね……ずるいです…」
提督は頬を少し染めながら憲兵の後ろ姿を見つめていた。
◇
「あの時の憲兵さんかっこよかったなぁ…」
「かっこよかったです」
二人の乙女はキャッキャと思出話(憲兵さん)をしており金剛はティーカップを破壊し比叡が悲鳴をあげていた。
私の鎮守府に初めにきた戦艦が榛名です
知らぬ間にお気に入りが600越えててびっくり
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