やはり俺の文通生活はまちがっている。   作:発光ダイオード

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四月二十二日

拝啓

 

聞いた話によると何かに気が立っている時、その原因などを紙に書いて自分の中に溜まっているものを吐き出す事によって気持ちが落ち着くらしい。どうやら書く事で自分の頭から離れ、客観的に考える事ができるようになるそうだ。

手紙読ませてもらった。お前と雪ノ下と一色がすごく怒っている事がよく分かった。それだけ盛大に馬鹿だの阿呆だの比企谷マジ許すまじだの八幡だの言えば少しは気が収まっただろう。だったら怒るのは少し休憩して俺の話を聞いてくれ。俺だってそんな物があるなんて知らなかった……俺も被害者の一人だ、真犯人は別にいる。

そして八幡を悪口みたいに言うな、地味に傷つく。

 

一色がなんで俺の小説を持っていたかは一先ず置いておこう。その小説は陽乃さんがくれた物だ。俺が入院中にする事がなくて暇だと言ったら持って来てくれた。だからお前たちが小説に挟まっていたのを見つけた陽乃さんの写真とメッセージカードはあの人の仕業だ。きっと俺たちを引っ掻き回して楽しもうという魂胆だろう。

確かに陽乃さんは何度か見舞いに来たがお前たちの怪しむ様な事は何もない。俺が陽乃さんにそんな感情持つ訳ないし陽乃さんもまた然りだ。それこそぼっちの俺には無縁の話だ。まぁ多少は気に入られている感はあるが、それもちょっと興味がある程度だ。どうせすぐに飽きて終わりだろう。そこらへんは雪ノ下の方が分かってる筈だ。

あの人はいつも突然来るから俺も迷惑してるんだ。昼寝から目覚めたらすぐ側で俺を見てたり、足を固定されてて動けないのをいい事にちょっかいを出してくる。こんなん調子じゃ怪我の治りも悪くなる。

だがこんな時こそ平静を装わなくてはいけない。お前たちも取り乱していたら陽乃さんの思うつぼだ。これ以上無償でエンターテインメントを提供してはいけない。だからメッセージカードに書かれた「浮気はお姉さん悲しいからしちゃダメだそっ♡」なんて言葉に惑わされるな、心を強く持て。実際に俺もお前からの手紙を読んだ時は、その写真とメッセージカードを確認したい衝動に駆られたが今は落ち着いている…とても落ち着いている。

とにかく俺は一度陽乃さんに連絡を取る。そして陽乃さんから直接雪ノ下に俺の無実を伝えてもらえば、お前らも俺の事を信じてくれるだろう。だからそれまで落ち着いて待っていてくれ。くれぐれも早まった行動を取らない様によろしく頼む。殴り込みはノーサンキューだ。

 

土曜日に雪ノ下と駅前へ買い物へ行くそうだな。しかし女子というのは何故こうもウインドウショッピングが好きなのか。目的もなく買い物に行くとか考えられん。よく雪ノ下が首を縦に振ったな。どうせお前が強引に誘ったんだろうが、話を聞く分じゃ雪ノ下も満更でもなさそうだからな。まぁ、楽しく行ってくるといい。

駅前と言えば、一色と小町も一緒に買い物に行くらしい。

お前と雪ノ下は話を聞いているか分からないが、一色は少し前から学校で妙な視線を感じると言って相談してきた。おそらく一色のあざとさに絆された男子生徒か、一色の事を快く思わない女子生徒だろう。あいつに原因が全く無いとは言えないが誰かも分からない様な視線というのは不安になるだろう。事が事だし、相談を受けたからには何とかしてやろうと思う。それに一色もこれに懲りてあざとさを封印するかもしれないしな。お前も少し気に留めていてくれると助かる。

それはそうと、お前たちも十分注意して買い物に行ったほうが良い。怪しい奴は学校よりも、むしろ街中にこそ居るものだ。この世の中聖人君子などほんの一握り、出くわすなど滅多にない。目の前から向かってくる奴はみんな変態だと思え。世の中いい人そうだけど変態の人もいれば、悪そうで変態の人もいる。リア充なんて大体が変態だ。特にお前と雪ノ下が並んで歩いていたら嫌でも目立つだろう。そんな奴らに目を付けられない様、用心してくれ。

 

 

早々頓首

清廉潔白な比企谷

 

激おこぷんぷん由比ヶ浜様


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