やはり俺の文通生活はまちがっている。   作:発光ダイオード

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四月二十三日

拝啓。春たけなわの季節となりましたがいかがお過ごしでしょうか。俺はといえば先日の小説の件で奔走しています。陽乃さんは最初からご存知だった様ですが小説は由比ヶ浜ではなく一色が持っていました。今はまだ手元にありませんがひとまずそれは置いておきましょう。

 

俺は今怒りに満ち満ちています。その昂りは超サイヤ人もかくやと思うほどに怒髪天を衝いています。陽乃さんが小説に挟んだ写真とメッセージカードのお陰で現在人生稀に見る修羅場を迎え、そのせいで由比ヶ浜と一色に便箋から溢れんばかりの罵りを浴びせかけられ危うく溺れる所でした。雪ノ下については由比ヶ浜の手紙を読むと「比企谷許すまじ」なんて言ってる様なので、これは早急に誤解を解かないと禍根を残しかねません。

何故陽乃さんはこのような誰の得にもならない事をするのでしょうか。気付かない俺も俺ですが、頼んでもいないのにこうも勝手に活躍されては全く手に負えません。しかも先週進路説明会の打ち合わせで学校に来た時、一色に「比企谷君は今小町ちゃんに本を読むのを禁止されてるらしいから見つけたらこっそり没収してあげてね」なんて言ったそうですね。そのせいで一色は小説を持ち去り写真とメッセージカードを見つけてしまったのです。そしてそれを雪ノ下たちに言いつけたものだから俺は今前述の様な手紙を受け取り、不毛な誤解を解かなければならなくなったのです。全ては陽乃さんが独自の情報網を駆使して油を撒いた側から火をつけて修羅場の炎を燃え盛らせた賜物でしょう。先日来た時の陽乃さんは、笑顔の下に怒りや哀しみを隠しながら実はやっぱり笑っていたんですね。本当に反省して頂きたい。

 

もうすぐ怪我も治りますが、このままでは俺は退院しても学校に戻る事が出来ません。例え戻ったとしても次の日にはまた入院している可能性まであります。そんな俺を少しでも可哀想と思う心がまだ陽乃さんにあるのならどうか雪ノ下に説明して誤解を解いて下さい。今のあいつらじゃ多分俺の言う事に聞く耳持たないでしょうが雪ノ下なら陽乃さんの言う事は聞いてくれるでしょう。そうすれば後は雪ノ下があいつらに説明してくれる筈です。週末には三人で来るそうなのでそれまでに何とか話をして欲しいです。先程怒っていると書きましたがそれは嘘です。全く怒っていません。寧ろ尊敬しています。だから本当に陽乃さんだけが頼りです。今まで散々俺を振り回した事を思えばこれくらい聞いても罰は当たらないと思うのでどうかよろしくお願いします。

 

取り急ぎ。

 

 

あなたの下僕比企谷八幡

 

雪ノ下陽乃閣下

 


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