魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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コンニチハ!!(゜Д゜*)(。_。*)ヘ゜コリ

テラリアでボス討伐に踏み出せないビビりのハピナです!

……うん、すごくどうでもいいw


それはさておき、本当は明日投稿する予定の最新話をちょっとサービスして今日投稿しました。

(あれぇ、喜ぶ人いるかな)>(;゚∀゚)


今回は利奈と絵莉、芹香の3人がマミさんよろしく人間大砲で飛んだ後のお話。

いよいよリュミエールリーダー海里の魔法のお披露目となります。
不合格と言われ闘争心が燃え根性入れて書いたのは内緒ですw

ハチべぇ「バレバレじゃないか!」


⊂===(^ω^)===○)ω×)(/ ・゜ドカッ


運転の魔女の籠るエリア、それと運転の魔女自身もいよいよお披露目です。

さぁ、物語のページをめくりましょう、幕が再度上がりました……。

《3月2日》
○台詞最後の『。』削除
○顔文字抹殺、慈悲はない。
○『w』の削除や『ー』『~』の引き延ばし
○その他修正(文章の追加、索敵)



(9)心廃れ夢潰れ[後編]

効果音をつけるなら、それはそれは重々しい音になるだろう。

 

鈍色の空の下、いかにも鉄が錆びそうな怪しい空気の中。

 

その建築物は、結界のど真ん中に佇んでいた。

 

中から、骨から胸の奥まで響くようなエンジン音が漏れている……狂気的な笑い声も。

 

あまりに大きなドーム、それでも使われる鎖は周りと変わらなかった。

 

 

そこへ、この結界では見かけない鮮やかな色が3つ飛んできた。

 

 

上田「ジュイサンス!」

 

 

赤いのが呪文を唱えると、柔らかなクッションが現れて3人を受け止める。

 

 

月村「わっ!?」

 

篠田「ぷわっ!?」

 

上田「よっと!」

 

 

リュミエールの3人だ、青いコンパスの導きはとても正確だったようで。

 

 

篠田「ったた……おぉっ!? ふわふわのふかふか!」

 

月村「よくこの勢いですんなり着地出来るわね」

 

上田「そりゃあ自分の魔法だもん、ソロ狩で結構鍛えてるから適応能力高いのかなぁ」

 

月村「……恐ろしい子ね」

 

上田「冗談はさておき、これが清水さんが言ってたドームか……」

 

篠田「なんか臭い! ガソリン臭い!」

 

月村「うるさい音がこっちにまで聞こえるわね」

 

上田「私、ちょっと中の様子を覗いてみるよ!」

 

 

利奈は中の様子を確認しようとドームの鎖に手をかけようとした……が、それは遮られた。

 

 

清水((待て! 触るな利奈!!))

 

上田「!?っ」

 

絵莉「どうしたの利奈?」

 

上田「ごめん、ちょっと待ってて」

 

絵莉「え、なになに?」

 

 

鎖に手をかけようとした利奈だったが、鎖に手をかけずに一旦中の様子を覗いて見る。

 

すると、編み込まれた鎖の隙間、おかしな風景が広がる中で……

 

一瞬だけ、青い光が見えた気がした。

 

 

上田((そこにいるの?))

 

清水((距離はあるが目の前にな、こんだけ近かったら念話も楽だなこりゃ……))

 

上田((えっと……なんで覗いちゃいけないの?))

 

清水((舞は……いや、運転の魔女は音に敏感なうえに

やたら早いやつでな例えるなら人間版チーターか?))

 

上田((うんうん、理解出来るよ!))

 

清水((物分りが早くて助かる! それで俺らもやられたんだ……

 

仲間の2人は魔女と一緒に走ってるところだ。

 

……やるせねぇな、俺もこんなにボロボロになったんでまともに戦えもしねぇ))

 

上田((音? こんなにうるさいのに?))

 

清水((よっぽど自分の走りを邪魔されたくないんだろうな……

すぐにでも駆けつけるぞ、たとえレース中でもな))

 

上田((そんなに敏感なのね、その魔女って))

 

 

利奈は少し考えてみた、この場を切り抜ける奪還策。

 

 

とても音に敏感……

 

 

すぐにでも駆けつける……

 

 

上田((……あっ!))

 

清水((ぅおっ!? 強い念話が……急にどうした、利奈?))

 

上田((ちょっと思いついたんだ、このドームに入り込む方法。

ごめん! 忘れない内に2人に伝えてくる!))

 

清水((お、おう。 気をつけろよ!

あぁ後、俺は無事だって言っといてくれよな!))

 

 

そんな感じで念話を終えると、利奈はドームから離れて

クッションがある場所に戻った……って、まだあったんかい。

 

 

篠田「あ、おかえりぃ! 利奈!」

 

上田「絵莉ちゃん、芹香! 2人にちょっと話があるの」

 

月村「ふぅん? 退屈だし、聞いてあげるわ」

 

 

そこからは、利奈少ない対人能力で必死に説明する。

海里から聞いたことや思いついた作戦を入念に話す。

 

 

上田「……で、芹香には魔女を遅くする魔法を、

絵莉ちゃんには鎖を壊す魔法をそれぞれ放ってほしい。

 

私は絵莉ちゃんに協力する」

 

月村「わかったわ、どんな魔法を使うかはもう考えてある」

 

篠田「うぅ〜〜……あたしは壊すことは出来ないけど、

鎖を弱めることなら出来ると思うよ!」

 

上田「じゃあ、弱まった鎖を私が壊すって寸法でいいね」

 

ちらっと自分のソウルジェムを確認、少し穢れが溜まってきているが……

まぁ加減すればあの作戦は成功するだろうと検討をつける。

 

 

上田「それじゃあ早速始めよう! みんな、位置に着いて!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

一方海里は……利奈とある程度念話をした事で絶望感は和らいで

ソウルジェムも穢れなくなり、ある程度は安定していた。

 

 

今はリュミエールの行動の時を待つ。

 

 

海里(さて、作戦とやらはどんなもんなのかねぇ)

 

 

しばらく待っていると……不意に、ここから遠くの方にこんな音が聞こえてくる。

 

 

それは、猫と金が同時に鳴るような間抜けな音色。

 

 

海里(……音? な、なんだ……この間抜けな音は?)

 

 

すると、大きなエンジン音はその音の方へと行ってしまった。

その後すぐに、知った声の呪文がすぐ近くで聞こえてくる。

 

 

篠田「フラスコパーティHCl!」

 

 

いくつものフラスコが現れて緑色の液体を垂れ流す……鎖の壁一枚向こうが溶けた。

 

 

上田「クグロース!」

 

 

すかさず、赤く太い筒が溶けた鎖を無理矢理破壊して突っ込んできた!!

 

 

これで魔女の本拠地にトンネルが出来た!

そのトンネルを潜り抜け、3人の魔法少女が出てくる。

 

 

海里(利奈! 月村さん! 絵莉!)

 

上田「芹香!」

 

月村「わかってるわよ」

 

 

篠田「これで、理科の授業を終わります!」

 

 

絵莉が指示棒を一振り。

 

トンネルの周囲に散らばった塩酸を消すと、真っ先に芹香は前に出て辞書に手を飾した。

 

 

月村「第一章 炎の巻「溶解」、

 

第四章 地の巻「隆起」。

 

混合! 「地盤崩壊」!!」

 

 

辞書から2枚のページが飛び出すと、2枚は光になって1つになり……

目の前に見える道路らしき道の上で弾けた。

 

すると、道は橙色の色を放ってぐにゃりと曲がり、

そのまま無限マークの道筋全てを荒くしてみせた。

 

遠くの方からエンジン音が近づいてくる音がするが、その速度は明らかに先程よりは遅い。

 

 

上田「ジュイサンス!」

 

 

利奈は使い魔を閉じ込めていた白紙のガードを回収すると、

すぐさま、利奈は青い光が見えた場所まで走り出す。

 

……ん、誓詞の使い魔?

 

あぁ、それなら大丈夫だろう。 

 

今頃は自分達の倍近くいる格が違う使い魔に捕まり、新たな素材になっているはずだ。

 

海里がいた場所……そこは鎖の()()()だった。

 

さて、ここまできたらここがどんな空間なのかを3人も理解出来るだろう。

 

 

 

どす黒い灰色でドームの内装は乱暴に塗りたくられていた。

所々血のように赤い鎖があり、2色の鎖は複雑に編み込まれ、

命を宿したかのように脈打っていた。

 

それはまるで、黒い胃の壁のよう。

 

真ん中には無限の形の室内コース。

 

走る事だけに特化されたその場所は線も引かれず観客席もない……

ヘドロのような色のアスファルトが道筋にあるだけである。

 

まぁ、今となっては走りずらそうなボッコボコになってるが。

 

ドームを支えるように何本かの鎖が柱となって健在を……

 

いや、ドームから吊り下げてるだけの柱なんて、柱としての役割を果たしていないだろう。

 

 

 

 

利奈が光を見かけた柱の鎖をかき分けると、

ぐったりとして鎖の壁によりかかっている海里の姿を見つけることが出来た。

 

 

上田「清水さん! 大丈夫!?」

 

清水「だから海里だって! ……とまぁ、つっこむ位の元気はなんとかな」

 

 

疲れきった顔で海里はにへらと笑ってみせたが、

海里の首筋のソウルジェムは孵化とは言わずとも、かなり穢れが溜まっていた。

 

利奈はシルクハットからグリーフシードを取り出し、海里の首筋にあてる。

 

 

清水「っ……悪りぃ、グリーフシード使わせちまって」

 

上田「また貯めますよ、今はしっかり浄化します」

 

清水「貯めるってお前なぁ……あぁ〜あ、今度は俺が助けられちまったな」

 

 

海里が言っているのは、黒板の魔女戦の時の事。

利奈はそれを聞いてふと、笑うだろう。

 

 

上田「危ない時はお互い様ですよ……とと、浄化終わった。

これ位ならあと1回は使えるって感じかな?」

 

利奈は海里の首筋からグリーフシードを離すとシルクハットの中に戻す。

 

首筋のソウルジェムをほろって服の襟首を整える。

 

ついでに魔法でハンカチを出して、額の汗拭いてハンカチ消して長めの前髪整えて……

 

利奈は几帳面であった、これではちょっと過度である。

 

 

上田「これで良し!」

 

清水「……ぁりがと」

 

上田「え?」

 

清水「なっ、なんでもねぇよ!? 早く出ようぜ!」

 

 

海里は結局、利奈に一通り直してもらって鎖の柱から出てきた。

 

縦に伸びるようにして背伸びをする。

 

 

篠田「あっ! 海里おかえり!

なんかやたらピンピンしてるけど……良い事あったの?」

 

清水「え? あ、じょ、浄化の力はすげぇってことだろ!

ずっと柱に入ってるのも疲れるもんだぞ……」

 

そう言って何故か、海里は照れ隠しをした。

ふむ、確かに完全回復と言っても過言ではないだろう。

 

 

月村「っ!? みんな、身構えなさい、魔女が……来るわよ!!」

 

 

コースをずっと見張っていた芹香が声をあげる。

 

 

上田「アンヴォカシオン!」

 

 

利奈は棍を1本召喚して構え、絵莉は指示棒を握りしめ、海里は両手首の鎖に魔力を込めた。

 

 

遠くから迫るエンジン音……走りずらそうな感じはするが、それでも速い。

 

地面を削りながら魔女は強引に道路を滑走してくる。

 

その姿はまるで、干からびた亀のようだった。

 

 

真っ黒な4本の指をもった長い手足を持つ人型で耳は4つあり、

 

背中には赤い車のボディが亀の甲羅の様についている。

 

小さな足は4つの手が持つ巨大なタイヤに支えられ宙ぶらりん。

 

顔は鎖でぐるぐる巻きになっていてわからない。

 

クラクションの咆哮が周囲に木霊した、道削ってまで走りたいらしい。

 

 

【Pーーーー!!!!】

 

 

やかましく響くエンジン音。

 

 

甲羅から吹かす、排気ガスを撒き散らしながら……魔女はコースを走り続ける。

 

 

一緒に走っていた使い魔は凸凹した道路なうえに、この魔女の怒りの疾走。

 

あまりに魔女が速いため自分のペースを崩し、コースアウトしてしまった。

 

……魔女を向かい打つ体制のまま、滑走する魔女を見送る4人。

 

 

上田「……え?」

 

篠田「通り過ぎた!?」

 

月村「完全に私たちを無視して行ったわね」

 

清水「使い魔が……っておい!? お前ら大丈夫か!?」

 

 

何かを見つけたのか、海里はその場から走り出した。

 

 

上田「あっ!? 待って清水さん!」

 

 

慌てて後に続き、3人が海里を追いかける。

 

 

 

 

?「ぐ、ぬぬ……」

 

?2「ぅ、だ、大丈……大丈夫? 力強(ちかつよ)!」

 

地屋「正直言って大丈夫じゃねぇ、叫び過ぎて喉が痛ぇ……

そういうお前はどうなんだよ八雲(やくも)?」

 

空野「僕も喉痛いかも……」

 

人の言葉で話しながら、改造された自らの体を確認する2体の使い魔。

 

と、そこへ2体の見知った青が駆け寄ってくる。

 

後ろからは2人の魔法少女が知っている青を追いかける……遅れて、緑色のもう1人。

 

 

清水「おーーい! 力強! 八雲! お前ら無事かーー!!」

 

空野「あ、海里!」

 

地屋「おう! ちょっと色々あってトチ狂ってたがもう大丈夫だ!

……手足がとんでもない事になってるけどな」

 

上田「清水さ〜〜ん! どうしたのいきなり走り出しt……ひっ!?」

 

月村「使い魔……!?」

 

 

利奈と芹香は慌てて乱舞をとる体制に入ったり、芹香は辞書のページをめくったりした。

 

 

清水「だあああ待て! 待て!! 違う、これは違うんだ!」

 

「「えっ?」」

 

篠田「待っ、待ってよ〜〜!」

 

 

一旦コースから離れて4人と2体で輪を囲む一同、魔女はがたがたのコースを走り続けている。

 

こんな状況ながらも未だ爆走する魔女に警戒しつつ、海里は一つ一つ丁寧に話した。

 

今回魔女化してしまったのは、この使い魔に作り変えられてしまった

2人の 幼 馴 染 み なのだという。

 

海里は暇つぶしに偶然このデパート・エタンに来ていて、

3人で組んでこの運転の魔女に挑んだんだとか。

 

海里、力強、八雲の3人でよく組んでいたらしい。

 

で、挑んだのは良いが……この魔女の異常な素早さに翻弄され、

戦闘に敗北した2人は魔女直々に改造された。

 

海里1人でなんとかしようとも、魔力に限界が来たので柱に隠れて増援を待ったのだと。

 

 

上田「て、手足そんなになっちゃって大丈夫なの……?」

 

地屋「大丈夫じゃなかったらそれはそれで怖いな」

 

空野「骨折とかじゃなくて、なんかこう……粘土みたいに丸められたって言ったらわかるかな?」

 

月村「……恐ろし過ぎてなんとも言えないわね」

 

空野「命に関わらないなら大丈夫じゃないかな」

 

そう言って八雲はその車体となった人体の……

手足というかタイヤというか謎の部位を前後左右に、

回転もさせて安全だと動かして見せる。

 

確かになんともないみたいだ、形状がかなり気になるが。

 

 

篠田「痛くないの?」

 

地屋「改造させられた時は結構えぐい音鳴ったんだが、まぁ大丈夫だ」

 

清水「……本当に大丈夫なんだな?」

 

空野「もう、そんな顔しないでよ海里」

 

地屋「おう! 俺らはこうして無事だったんだしな!」

 

清水「……ごめん、無事で良かった」

 

 

その時、海里の固かった表情が少しながら和らいだ。

肩の荷が降りたとでも言うのだろう……全て降りた訳ではないが。

 

 

月村「再開に浸ってる所、悪いけどちょっと考えましょう。

今、私たちが立ち向かうことになる……魔女を倒す方法について」

 

篠田「海里達はどんな風に魔女に立ち向かったの?」

 

地屋「激! 増! 減!!」

 

清水「おい脳筋」

 

空野「『激増減』は力強の必殺魔法だよ、魔女の重量を増やしたんだ」

 

 

ふむ、技と言わない辺りがなんとも魔法使いらしい。

 

 

地屋「おう! 俺の魔法で魔女をおもいっきり重くしてやったんだが……

一向に止まらなくてな、全然気にしねぇって様子だった」

 

空野「僕の追い風もなかなか効かなくて……」

 

清水「結局そのまま倒そうって流れになっちまったんだよな」

 

篠田「それって……重くなったせいで、風が平気になったんじゃ「空気を読みなさい」」

 

芹香は絵莉の言葉を遮る。 海里はふぅっとため息を1つついた。

 

清水「ったく、どんだけ固いんだあの魔女は!

いくら攻撃しても全然苦しむ素振りがねぇんだ!」

 

月村「攻撃しても効いてる素振りがない……予想以上に厄介ね」

 

上田「みんなで考えてみようか、なにか打開策があるかも?」

 

空野「時間がかかるみたいだね……うん、

僕見張りをやってるからみんな安心して考えてて」

 

地屋「お? 考えるのが面倒になったか?」

 

空野「何でだよ!?」

 

清水「お前ら仲良いな、ホント」

 

魔女を倒す方法について深く考え込む利奈に芹香に海里。

 

八雲が魔女を見張る中、力強と絵莉は話になんとかついて行こうと必死になった。

 

 

しばらく考えて……ふと、利奈が声を出した。

 

 

上田「あ、あの、えっと……」

 

清水「ん? どうした利奈、何か思いついたのか?」

 

上田「これは直感なんだけど……もしかして、魔女を倒す方法は

()()()()()()()()じゃないかな、多分だけど」

 

清水「魔女を止めるだと?」

 

篠田「ちょっと簡単すぎるような気がするけど……」

 

月村「都合が良すぎるわ、他の考えを探しまし」

地屋「異議あり!!」

 

月村「……何かしら?」

 

 

地屋「それ、あり得るかもしれん!」

 

 

篠田「えっ!? ど、どういうこと?」

 

どこかで聞いたようなの裁判のセリフから、突然の肯定。

 

一瞬、海里さえ力強は冗談で言ってるのか? と思ったが、

そのいつにない真剣な目が信憑性を物語っていた。

 

使う機会が少なく鈍った頭を懸命に働かせた結果の回答だ、これは信用しても良いだろう。

 

 

空野「僕も力強に賛成だよ。

 

力強も同じだと思うけど、僕ら使い魔に作り変えられたじゃないか。

 

でも、今こうしてまともに話ができている……ねぇ、そういうことだろ力強?」

 

地屋「そうそう! 俺らが狂ってた時と今の違いは()()()()()()()なんだよ!

 

知ってたか? 俺ら型の使い魔って、完成した瞬間から全力で走らされるんだぜ?

 

止まるっていう手段を頭から抜かれたみたいにな」

 

空野「そうして走る度に気が狂ってくるんだ……」

 

月村「なるほど? つまり、あの魔女は走る事に執着してるってことね」

 

篠田「それが逆に魔女の弱点……! 全然思いつかなかった!」

 

清水「でもその止めるってのが簡単じゃねぇな、

そんな簡単に止めれたら俺らはこんなになってないだろ」

上田「それなんだけど!」

 

清水「うおっ!? またか! なんか思いついたんだな?」

 

上田「うん、みんなの魔法を見ててちょっとした作戦を思いついて……

あんまりたいしたことないんだけど、聞くだけ聞いてくれる?」

 

篠田「聞く聞く! あたしだったら思いつかないもん!」

 

地屋「俺もだ! 頭の味噌足りねぇもん!」

 

月村「あなたたちねぇ……」

 

 

利奈は少しの時間をもらい、全員の魔法をフルに使った運転の魔女討伐作戦を説明中した。

 

それは意外性が強い話、利奈じゃなきゃ思いつかないような作戦でもあった。

 

充分な時間をもらったおかげか、細部まで納得のいく説明が出来る。

 

 

空野「こ、こんな状況でそれを思いつくなんて……」

 

月村「……どこかで聞いたような台詞ね、それ」

 

上田「絵莉ちゃん、私の言った魔法ありそう?」

 

篠田「うん! 学校に関するものならなんでも召喚出来るよ!」

 

清水「よっしゃ! なら早速やってみようぜ!」

 

上田「……えっ!? 私の作戦でいいの!? 他に考えたりとかは!?」

 

月村「バカね、そんな明確で効率的な作戦、聞いただけで流すわけないじゃない。

 

少なくとも、この作戦を実行してほしいから言ったのもちょっとはあるわよ」

 

上田「……うん」

 

篠田「もぉ〜〜利奈ったら、素直で良いんだよ? あたしたちそんな意地悪じゃないんだから」

 

上田「ごめん、私……自分が押し付けがましいかと思った」

 

清水「……おいおい、俺らが利奈をそんな風に思ったことねぇぞ、

もうちっと信用しろって! ……大丈夫だからさ」

 

 

そう言って、海里は利奈の背中を軽く叩いた。

 

ちょっと大きめの手の感触、利奈はまるで……元気になるシールでも貼られたような気分になった。

 

再度、利奈はしっかりと気を再度引き締める。

 

 

上田「これより、私達リュミエールと使い魔2体による

『魔女討伐作戦』を始めるものとするよ! みんな、今まで説明した通りの位置について!」

 

月村「わかったわ」

 

篠田「はーい!行こう、力強! 八雲!」

 

地屋「可愛い子と同じ配置だなんてなぁ……」

 

空野「今はデレデレしてる場合じゃないだろ、力強」

 

上田「行こう! 海里!……あ、清(ポカッ!)mっ!?」

 

 

間違って名前で呼んでしまい、直そうとしたが、

利奈は海里に頭を軽くぺしっとチョップされた。

 

 

清水「直さなくても良いっての! やっと名前で呼んでくれたな」

 

上田「そっ、空耳じゃないかなぁ……」

 

清水「ほら、早く行こうぜ! せっかく引き締めた気が緩むぞ!」

 

 

ちょっと笑いながら海里は魔女に向かって走り出した、利奈も慌ててついて行く。

 

上田「あ、りょ、りょーかい!」

 

 

それぞれの配置へと走り出す一同。

 

利奈は海里と、魔女の元へ。

 

絵莉は使い魔の速さに注意しながら、己の配置へ。

 

芹香は魔法をかけて歩き出す。

 

 

月村「第五章! 嵐の巻『疾風』! 対象は前衛!」

 

 

橙と黄緑が混じった光を帯びた風は利奈と海里のを包む、その時から2人の走る速さは高まった。

 

清水「ぅおっ!? ありがてぇ! これでだいぶ楽になるな。」

 

上田「ありがとう芹香!」

 

月村「失敗するんじゃないわよ!」

 

上田「りょーかい!!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

……延々と、輪廻のごとく魔女は走り続ける。

 

彼女の欲は『走行』走る事だけで欲は満たされた。

 

道路の上にいなきゃ邪魔じゃないし、別に追い払う必要はない。

 

 

だが、走る度に膨れ上がる欲望は走るだけでは魔女は満足をしなくなった。

 

 

どうせ走るなら1番が良い。

 

 

元いた2種の使い魔を融合し、競うための車を作らせた。

 

自分が1番、自分が優勝。 それが性質のままの魔女の欲。

 

性質のままの……自身への、束縛。

 

だが、そんな私欲の輪廻をどうやら断ち切る者が現れたらしい。

 

 

ならば勝ってみせよう!

 

 

優勝という圧倒的勝利を!

 

 

このレース会場にいていいのは車だけ!!

 

 

上田「アンヴォカシオン!」

清水「ヴェルクツォイク!」

 

 

二刀流ならぬ二本流の魔法少女と、色んな道具を自分を輪状囲んで召喚する魔法少年。

 

 

2人の魔法使いが魔女に先手をかける!

 

 

上田「ボス、ステージ!!」

 

 

利奈のゲーム脳が起動する、魔女の体を飛び移りながらタイヤの付く手足を重点的に狙う。

 

利奈はお得意の乱舞を放った!

 

乱舞の攻撃による鋭い音が魔女の体のあちこちで鳴る、

ダメージは入ってるようだが……魔女が止まる気配はない。

 

海里は自分の周りを舞う道具の中から、大きめの釘を握った。

 

魔女に向かって投げると同じような釘が大量に現れ、魔女のタイヤに何本も突き刺さる。

 

……わずかに、魔女の走る速度は落ちる。

 

魔女もやられっぱなし……というわけではない。

 

クラクションの咆哮を多々鳴らしながら、頭を振り回して当たったら痛そうな鎖を振り回すし、

運転の使い魔が他の使い魔を髪の毛で操作しながら魔女の援護に向かった。

 

 

清水「っくそ!  まだ人間を使いやがるか!!」

 

上田「車にされたお客さん達は使い魔に操作されてる!

私が何とかするから清水さんは魔女を!」

 

清水「だから海里だって!!」

 

 

利奈は魔女の振り回す鎖をかわして魔女の甲羅の上に乗ると、

自らの棍にいつもより多めな赤色の魔力を込めた。

 

 

上田「スフェール!」

 

 

その場で乱舞しながら、利奈は大量の赤い魔法弾を打つ。

 

威力は落ちたが追尾性のある弾は操縦者だけを正確に撃ち落とす。

 

 

【brrrrrrrrrrr!?】

 

【brrrrrrrrrrr!!!!】

 

 

ボコボコの道路に転がり落ちるタイヤ頭の使い魔。

 

操縦者を失った車は魔女のスピードについて行けずに、そのままコースアウトしていく。

 

 

清水「釘はダメか……なら、これならどうだ?」

 

 

次に海里が手に取ったのは千枚通し、別名キリだ。

魔法発動で魔力を付与すると、再び魔女のタイヤに投げつけた!

 

 

清水「シュタルーク!」

 

 

同じような魔力付与のキリが魔女のタイヤに突き刺さる!

 

今度は結構効いたようで、キリ自体は無理矢理走る魔女によって折れてしまったが、

金具は刺さりっぱなしで空気が抜ける。

 

走る魔女の速度は、最初に比べかなり遅くなった。

 

それでも魔女は走る……が、利奈の作戦上ではそれで充分だった。

 

利奈の必殺魔法を使うまでもない。

 

 

上田((絵莉ちゃん! 準備を!))

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

利奈達から見てちょうどドームの反対側。

 

利奈の指示を受けて、柱に隠れていた魔法使い達が姿を表した。

 

絵莉が元気良く念話をする。

 

 

篠田((はーい! 細工班バッチリ!))

 

月村((班なんて作ってないわよ?))

 

篠田((だってかっこいいしわかりやすいもん!))

 

月村((……これにはまいったわね))

 

上田((あはは……とにかく頼んだよ! 私と清水さんで弱体化と気を引くのやっておくから!))

 

篠田((頑張りまーす!))

 

 

 

 

篠田「……さてさて、合図も来た事だし」

 

絵莉がひゅんっと指示棒を振ると、指示棒に魔力が込もった。

しっかり召喚する物を思い浮かべたあと、指示棒を思いっきり振る。

 

 

篠田「図工の授業を始めます!」

 

 

呪文とともに指示棒が強く光る。

 

すると、空中に柔らかな煙が煌びやかな火花と共に弾けたかと思うと、

道のど真ん中に巨大な黒板消しが現れた。

 

もう一振りすると、黒板消しの消す面に大量の木工用ボンドがべったりと付く。

 

 

篠田「頼んだよ2人とも……う〜〜ん、2体とも?」

 

 

地屋「人でいいよ!!」

空野「人でいいよ!!」

 

 

地屋「ま、まぁ事実だもんな……よし! とっとと運ぼうぜ!

背中に乗っけた感じ、アホみたいに軽いぞ」

 

空野「ホントだ、これならこんな体でも運ぶ事が出来るね」

 

月村「……少し急いで、魔女の姿が見えてきたわ」

 

地屋「お? おうおう」

 

空野「うん、急ごう!」

 

2体……じゃなくて2人がボンド付きの黒板消しを運ぶ中、

芹香は自身魔法の媒体である辞書に手をかざす。

 

 

月村「第五章! 嵐の巻『霧隠』! 対象は近辺!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

上田「あっ! 清水さん、 霧が!」

 

清水「おぉ、しっかり仕掛けを作ってくれたみてぇだな!」

 

 

利奈達に橙色の霧が見える頃、魔女の増援は全て片付いていた。

 

海里は魔女を傷つけていたノコギリを魔力に還元すると、

自らに引き寄せどこかに収納してしまった。

 

そのまま利奈の元へ向かい、利奈を抱き寄せ……て!?

 

 

上田「ぅわっ!? ちょ、ちょっと待って!」

 

清水「あ? あぁ、悪いがこれで我慢してくれ! 今のところはあまり時間がないんでな。

 

 

フリューゲル!」

 

 

海里は還元した魔力に少量の魔力を注ぎ足すと、

淡く光り輝く翼を作り出して魔女の甲羅から飛び立った!

 

 

 

 

間もなく、魔女は霧の中に身を投じる。

 

 

 

 

上田「っ〜〜!!」

 

清水「ん? 怖いか? ちょっと早く飛んでるからなぁ……」

 

上田「だだだ大丈夫! 大丈夫だから飛んで! 飛べ!!」

 

清水「……おう」

 

 

その素直な赤面は明らかで、海里はちょっとした笑いをこらえた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

さて、最後の仕上げといこうか。

 

魔法の霧の中がどうなってるかわかるのは、霧を発生させた主だけ。

 

芹香はメガネを掛け直して目を凝らす。

 

 

月村「追突まで残り20秒……しっかり準備出来てるんでしょうね?」

 

地屋「当たり前だろ!」

 

 

芹香は自らの横を見ると、そこには濃紅と天色の魔力がふつふつと沸く力強と八雲がいた。

 

空野「しっかし……よく気がついたね彼女、

『作り変えられたのは体だけで魔法は使える』なんてわかりずらい事に」

 

地屋「やっぱり1人で魔女を倒した魔法少女は違うってか? ホント、俺ら運が良かったな」

 

空野「うん、僕らは助かってなかったね……舞も」

 

地屋「……絶対に、救ってやろうな!」

 

空野「なら、力強も頑張らなきゃね」

 

地屋「うるせっ! 今回ばかりは気を抜かねえよ!!」

 

空野「抜かれたら困る!!」

 

月村「……来るわよ! 魔女まで、10、9、8、」

 

 

地屋「ウエイトトレード! 魔女と黒板消しの重さを……」

空野「荒れ狂う風よ! 巨大な道具に付きし糊の水分を……」

 

 

芹香の言う数が小さくなるたび、

力強と八雲の魔力は段々と高まって行く……

 

役目を終えた絵莉は祈りを捧げた。

 

 

 

 

そして、時は満ちる。

 

 

 

 

月村「今よ! 打ちなさい!!」

 

 

地屋「トレード!!」

空野「奪え!!」

 

 

 

 

【Pーーーー!!!!】

 

 

聞こえたのは大きなぶつかる音、全ての歯車は噛み合ったのだ。

 

魔女は巨大な黒板消しに衝突した瞬間、ボンドが固まり身動きが取れなくなる。

 

そして何故か体重が軽くなり、黒板消しは重くなり、

そのまま巨大な黒板消しは倒れて魔女を宙へと持ち上げた。

 

引き戻そうにもボロボロな身体からは体力が奪われ、思うようにその重々しい身体を動かせない。

 

 

もし、霧がなかったらぶつかる前に避けられただろう。

 

 

もし、魔女に体力が残ってたら

引き戻して黒板消しごとコースを走るだろう。

 

 

もし、黒板消しと魔女の重量を入れ替えるタイミングが、

もし、ボンドから水分を奪い乾かすタイミングが、

ピッタリとかみ合わなければこの作戦は成功しなかっただろう。

 

 

使い魔になってまで運転の魔女を救済しようとする、2人の、意思の強さ……

 

全ては魔女になってしまった幼馴染みの魔法少女のため、舞のため。

 

 

魔女はそこから体勢を戻そうと黒板消しにくっついたまま

クラクションの咆哮を鳴らし暴れまわったが、取れる事はなかった。

 

海里が4人の元に辿り着いて顔が赤い利奈を降ろす頃、

運転の魔女は全ての欲を失った。

 

束縛を縛る束縛……それが、この魔女の結末。

 

 

 

 

やがて、魔女から黒い魔力が吹き出した。

 

そして、全てが1点に飲み込まれる。

 

魔女もドームも鎖のビル群も、残った使い魔も全部全部、

結界ごとその結界にあるもの全て飲み込まれる……。

 

 

不意に使い魔となっていた魔法使いの体から、メリメリッと不気味で激しい音が鳴り始める……!

 

 

地屋「ぐ、あ!? 何だ!?」

 

空野「うわああああっ!!」

 

清水「なっ!? 力強!! 八雲!!」

 

2体の魔法少年の手足から黒い煙が勢い良く吹き出し、

潰れて丸められた手足が風船のように膨れ上がって行く。

 

吹き出した真っ黒な煙は、共に1点へ。

 

あとに残ったのは、透き通る鈍色のソウルジェムと

車のハンドルモチーフのグリーフシード。

 

 

魔法少女は、運転の魔女を救った。

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

地屋/空野「「舞!!」」

 

 

 

「っ……ひぐっ……ごめんなさい……!!」

 

 

 

上田「……ぇ、え? つ、使い魔が喋った!!?」

 

 

 

【やっと、君と、話せ、るね。】

 

 

 

〜終……(9)心廃れ夢潰れ[後編]〜

〜次……(10)鈍色の涙と粉隠の例外〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




なんともスッキリしない形で終わってしまいましたね、
今回の魔女戦である、運転の魔女戦 (乂ω′)

使い魔にされていた2人は……まぁ、不気味な音と煙をあげて元に戻って行ったようですね。

果たして無事なんでしょうか?


あぁ、そうだ、おまけとして。
昼寝で見た夢にめっちゃ可愛いハンターハンターのキャラが出てきたので、
忘れないうちにメモにガガっと書こうと思ってます。
何故ハンターハンターなんだ! 魔法少女まどか☆マギカ出してくれよw


それでは皆様、また次回。
ΒΥΕ..._〆('Д'*⊂⌒`つ

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