魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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まずは申し訳ない! 前章の重要な部分を慎重に書いていたら
こんなにも時間がかかってしまいました……前に投稿したのいつだっけ?

その分もあって今回は少しばかり短めです、次回がとてつもなく長いです。

となると、前章もいよいよ大詰めですねぇ……ここまで来るのにかなりの時間を要しましたよ。

さて、今回はつい最近釛が親に叱られた経験から後の話から始まります。

それでは、物語の幕を上げましょう……あらら、裾がほつれている。



(42)自由な食事会と暗躍者

 

和出「ったく、この前はひでぇ目にあったな……頭に拳骨って、うちの親父は昭和かよ」

 

 

寧ろ、昭和でないと歳が合わないのだが……ツッコミ役がいないのは少々残念だ。

 

そんな数夜は昼休みの今、授業や部活以外では使われない被服室にいた。

 

ホコリが多く割りと人が寄らないこの教室はいわば穴場、

窓を全開にし近くの椅子を一列に並べてベット代わり。

 

釛はいつもこの場所にいた、教室よりこの被服室の方がいる割合は多い。

 

特に気分が悪かったり会話が上手くいかなかったりするとこの場に逃げる、

以前『形なき魔法』について調べていた海里に尋ねられたのも被服室だったりする。

 

 

今日も椅子で出来たベッドに寝転がり、1人の時間を過ごす予定だったようだが……

 

 

白橋「お邪魔します! 話に来たよ!」

 

 

珍しく来客が来てしまったようだ、釛は驚いた勢いで起き上がったがベッドが崩れてしまう。

 

 

和出「っだ!? ぃてぇ……ちょ、なんで転校生のお前がこの場所を知ってるんだよ!?」

 

白橋「あれっ、来ちゃダメだった? どこにいるかなぁって探してたら、教えてくれた人がいて」

 

和出「教えてくれた人だと!? それって誰なんだよ?」

 

 

それを聞いた直希は後ろを見る、すると2人の生徒が被服室に入って来た。

片方は釛が嫌という程に見知った人物、恐らく案内人は彼だろう。

 

 

軽沢「僕だよ釛、やっぱりここにいたね」

 

和出「響夏じゃねぇか、また面倒な奴が来たなぁ……隣にいるのは連れか?」

 

上田「えっと、こんにちは」

 

軽沢「ここに来る途中で会ったから連れて来た、《気まぐれ》で」

 

和出「……ある意味、お前の《気まぐれ》が一番脅威だよ」

 

 

とりあえず一同は白い机を囲んで6つある椅子の内の4つにそれぞれ座る、

何故か机の上には紙パックの牛乳やら袋に入った黒胡麻ねじりパンやらが並んだ。

 

 

白橋「わあぁ、凄い! これ今日の給食に出てたのだ!」

 

上田「こんなにたくさん……これって、どうやって手に入れたの?」

 

軽沢「まぁ、釛と言ったら盗みだよね」

 

和出「おう! 給食室の前に大量にあったからな、ゴミになるよりは食った方が良いだろ」

 

軽沢「4〜〜5人分ってとこかな、それだけ盗んで誰にも見られてないから凄いよ」

 

 

直希は先ほど食べた給食が足りなかったらしく、早速パンを千切りながら食べている。

 

彼が細身だが実は食べる量が結構多い、こう見えて太らない体質なのだ。

 

響夏も喉が渇いたのか牛乳を飲んでいる、利奈は盗品だからなのか口にするのをためらった。

 

 

上田「…………」

 

和出「食わないのか? リュミエールのエースさんよ」

 

上田「えっ、でも……捨てる物だったとはいえ、盗んできた物だし」

 

和出「そういやチョコレートクリームもいくつか余ってたな、これなら食」

 

上田「食べるっ!!」

 

和出「……分かった、分かったから澄んだ目で俺を見るのをやめてくれ」

 

白橋「利奈って甘い物が好きなんだよね、前にアイス食べた時も夢中だったもん」

 

 

それをきっかけに利奈も少量は食べる、本当に甘い物が好きらしい。

 

まぁ、残りは直希が食べたりか釛が持ち帰ったりするだろう。

 

小さな食事会が執り行われる中、早速直希は釛に話を始める。

 

まず最初に話したのは、前日戦った時に直希が釛の魔法を使えた理由だ。

 

直希の魔法は『模倣』の魔法、それらを分かりやすく釛に教えていく。

 

 

和出「要するに、お前は魔法のモノマネをする事が出来るってことか」

 

白橋「うん! その代わり、僕は必殺魔法を使う事が出来ないけどね」

 

軽沢「『万能な魔法を使える対価』か、その辺りは僕も共感出来る」

 

和出「おう、お前の必殺魔法ってなんか微妙だからな」

 

軽沢「結構ハッキリ言ってくれるね、釛」

 

 

会話の中で、釛は直希の魔法を凄いと思うと同時に少し恐ろしくも思った。

 

対面した魔法使いの数だけ魔法が使える、彼の魔力は何にでも化けるという事になる。

 

しかもそれをアレンジする事だって可能、つくづく相手にしたくない厄介な魔法少年だ。

 

 

白橋「そういえば、何で3日も行方不明になっちゃってたの? みんな心配してたよ」

 

和出「何て言うかな……なんか、希望を感じなくなっちまっていたんだよな」

 

上田「希望を、感じなくなっていた?」

 

和出「その反動で絶望ばっか目に見えるようになってたんだよな、

きっかけは全く覚えてない……だけど、何をしても満たされない」

 

軽沢「それで盗みを働きまくってたってことでしょ、それが釛の生業みたいなものだし」

 

和出「後半は記憶が途切れ途切れになっているがな、あと生業って言えるほど立派じゃねぇぞ」

 

軽沢「分かってるよ、釛の悪い癖だからね」

 

 

世間一般では明らかにとんでもない癖だが、警察に突き出すにも証拠が1つも無い。

 

何とももどかしいが、今話しているのはそっちの話ではない。

 

釛は家にも帰らず日々を野宿で過ごし、無作為に沸く負の感情にもがき苦しんでいたのだとか。

 

時には壁を殴り、ガラクタを蹴り飛ばし……ストレスを発散する事も彼は試したらしい。

 

それでも癒されない絶望、その内ソウルジェムを気にかける余裕さえ無くなった。

 

 

白橋「大変だったんだね……あれ? って事は、ずっと外で1人でいたんだよね」

 

 

『和出「マジかよ、()()()()()()()()()()()()使()()()()()()んじゃ……っくそ!!」』

 

 

白橋「それなのに、何で昨日僕らが君を捜索するって分かったんだい?」

 

和出「あぁそれなら……別に話しても良いか、設置場所変えればいいし」

 

白橋「あれっ、どこ行くの?」

 

 

話している最中で釛は立ち上がり、黒板の横にある本棚に手をかけた。

本を何冊か取り出して後ろを探ると、そこから油粘土の塊のような物が出てきた。

 

 

上田「1cmくらいの大きさの……粘土かな、何だろうこれ」

 

和出「盗聴器だ、魔法使わないで自分で作ったから長持ちはしないけどな」

 

上田「へぇ、この粘土の塊みたいなのがと……えっ? 盗聴器ぃ!?」

 

軽沢「釛の魔法少年の時の服装はロボット、ある程度の機械なら作れるっぽいね」

 

和出「まぁ俺は機械専門じゃねぇからかなり不恰好だがな、

単に小さくするのは俺専門の魔法でお手の物って寸法よ」

 

 

全ての教室では無いらしいが、彼はこれを校内の至る所に設置しているのだとか。

 

女子トイレや女子更衣室には流石に設置していないと断言したが、

リュミエールが集まる場所としている使われていない理科室には設置してると言う。

 

盗聴器から昨日の捜索の話を聞いていたのだろう、釛は配備場所の穴を突いたらしい。

 

 

和出「まさか見つかるなんてな、来なさそうな所を突いたつもりだったんだが」

 

白橋「僕ってば寄り道しちゃったんだよね、担当の区域離れてさ」

 

和出「そこまでは計算に入れてなかったぞ、未知数だし予測しきれない」

 

 

そう言って席に戻りながらため息をついた、その手には盗聴器が握られている。

 

ついでに直すつもりなのか、ポケットから簡素な工具を出し釛は魔法で盗聴器を巨大化した。

 

油粘土の塊にしか見えなかった物体は、巨大化してみれば確かに何かの機械だった。

 

どうやら外装は雑に作られたのだろう、これでは縮小しても機械には見えない。

 

蓋を開けると何本かネジが転がったが、釛は無視して作業を始める。

 

 

和出「……うん?」

 

 

すると、間も無い所で釛はふと手を止めた。

 

 

軽沢「釛、手が止まってるよ」

 

白橋「まっ……まさか、壊れちゃったの!?」

 

和出「なわけあるかぁ!? ()()()()を見つけただけだ、

いくらなんでもちょっといじっただけで壊れるなんてあり得ねぇ!」

 

上田「妙な部分?」

 

和出「盗聴器ってのは一定の周波数を発する機械なんだが……

なんか、2種類の周波数を発しちまってるんだよな」

 

軽沢「不具合とかじゃないんだ、気づかない内に着けちゃったんじゃないの?」

 

和出「まさか! 設計図も使ってんのに、そんな器用な事は出来ねぇよ」

 

 

そう言って釛は苦笑いをする、疑問が残ろうが雑談を続けながら彼は作業を再開した。

 

改めて中身を見ると無駄な部分があったらしく、基盤を取ったり配線を足したりしている。

 

そんな中、利奈はとある話題を持ち出そうとした。

 

 

上田「あの、えっと……うぅ、どう言えば良いんだろ」

 

白橋「どうしたんだい利奈? ゆっくり話せば良いよ、利奈の話聞きたい」

 

上田「うん、ありがとう直希」

 

 

利奈の言葉は詰まり気味だが、それにも理由があるらしい……彼女の表情は真剣だ。

 

 

上田「……和出さんと軽沢さん、『濁色の魔力噴出』について何か知らない?」

 

和出「『濁色の魔力噴出』ねぇ、盗聴で言葉だけは知ってるが意味までは分からん」

 

軽沢「そう言えば……それについて、数夜が何か言ってたような気がするよ」

 

上田「ほっ、本当!?」

 

軽沢「美羽と最上がちらっと言ってたんだ、確か……『呪いに細工をしている奴がいる』だっけ」

 

白橋「呪いに細工? なんか、難しそうな話だね」

 

軽沢「僕もそれだけ聞いた、意味は全然分からない」

 

 

この場でも呪いというと、俐樹や知己が散々苦しめられてきた絶望の呪いの事だろう。

 

その呪いは証として片目に変化が現れる、特徴は『黒目が白目で白目が黒目』になるという物。

 

釛が片目に医療用の眼帯をしてるのもそれを隠すためだ、

響夏にも証はあるが『擬態』の魔法で隠してしまっている。

 

 

上田「呪いに細工って……2人にもその呪いがかかってるんでしょ、大丈夫なの?」

 

軽沢「そもそも呪いに細工があったって数夜の独り言を聞いてから知ったし、

それに気がつかなかった分には特に問題無いと僕は思っているよ」

 

和出「まぁ、呪いがどう細工されたか知らなきゃ追求も出来ねぇけどな……

よっしゃ! これで良しって奴だぜ、少しは長持ちするようになっただろ」

 

 

釛は作業を終わらせ盗聴器の蓋を閉め、菜種油色の魔法で縮小させた。

ちょうどそのタイミングで、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

 

軽沢「昼休みが終わるみたいだね、次の教科は英語だから早めに行かないと先生が来る」

 

白橋「やったぁ〜〜! 英語、僕の得意科目だ!」

 

和出「英語が得意科目……だと? マジかよ、俺は意味不明だぞ」

 

上田「行くのは良いけど、この余った食材はどうするの?」

 

和出「俺の腕をなめるなよ? 隠す方法なんざいくらでもあるぜ!!」

 

 

そう強くガッツポーズをする釛を尻目に、響夏は利奈と直希を被服室の外に連れ出した。

 

何やら釛は喚いているが、不機嫌そうな顔ですぐに盗聴器の再設置や食材の片付けを始める。

 

何故急に連れ出したかと響夏に聞けば、それは《気まぐれ》だと答えるだろう。

 

全く……釛と響夏は仲が良いやら悪いのやら、良く分からない。

 

とにかく今は急いで花組の教室に戻ろう、英語を担当する教師は怒ったら怖い。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

時間を進めて花組の帰りの会、湿度が上がったような若干重い空気に包まれていた。

 

何故かって? 理由は今日行われていた英語の授業、その時間での出来事のせいだ。

 

まぁ要するに宿題が面倒なタイプだったって事だ、それは自分で課題を翻訳するタイプの宿題。

 

その上宿題を出した教師は採点が細かい、点数は稼げるがその逆もあるという事になる。

 

そのせいか放課後は謎の賑わいを見せた、英語が苦手な者は得意な者に群がる。

 

 

利奈は英和辞書を片手に教室を出た、真面目な性格は時が経っても健在らしい。

 

英語が得意だと言ってた直希も何人かに声をかけられたが、その前に俐樹が連れ出した。

 

相変わらず不運なのは蹴太だ、既に不真面目の何人かに囲まれている。

 

他のクラスに聞ければ良かったがそれは出来ない、

花組は『1組』や『A組』と呼ばれる男体と同じ部類。

 

皆今日出された宿題を終わらす為のそれぞれの行動に出る、

教室内は机を動かす音と多数の生徒が会話する話し声で埋め尽くされた。

 

 

和出「教科書両開き1枚分って長すぎるだろ!? ったく、お前はどうすんだよ?」

 

軽沢「んーー? 気が向いたらやる」

 

和出「いつもそんなんで間に合うから不思議だよなお前は……ん? おっ、数夜じゃん!」

 

 

釛が肩を掴んで捕まえた数夜は、相変わらず面倒臭そうにしている。

 

明らかに顔色が白く健康とは言えなかったが、それ以外はいつも通りだ。

 

誰にも話しかけず、そのまま程々の早歩きで花組の教室を出ようとしていた。

 

 

前坂「……なんだ、お前らか」

 

軽沢「数夜また顔色悪くなってるね、血吐いたの?」

 

和出「ダイレクト過ぎんだろお前!?」

 

前坂「最近貧血薬を飲み始めたから大丈夫だろう、この身体はヤワじゃない」

 

軽沢「……血を吐いた事は否定しないんだね」

 

前坂「俺の事はどうでも良い、お前の方はどうなんだ? 釛」

 

和出「たはは……しばらくは大丈夫だぜっ!! 違和感はあるが、当分は平気だろ!」

 

 

釛は両手を拳にして突き上げる、まだ医療用の眼帯はしているが確かに大丈夫のようだ。

 

 

前坂「軽視するな釛、こいつをやるから今日は大人しく家に帰って休め」

 

 

そう言うと、数夜は釛に百均でも売ってそうな小さな布の袋を手渡した。

 

 

軽沢「数夜、これの中身って何?」

 

前坂「見るならここで開けるな、俺は先に行く」

 

和出「ちょ、おい!? 待てよ!!」

 

 

釛はここで見てはいけない中身の理由が分からず数夜に尋ねようとしたが、

数夜はそのまま逃げるように階段を駆け下りてしまった。

 

中身が気になった2人は、帰る前に誰もいない男子トイレでその袋の中を覗くことになる。

 

思いもよらないだろう、割れたハートがモチーフで鎖で縛られたかのような

グリーフシード、中にはそれが1つに限らず数個は入っていたのだから。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

少し飛ぶがさらに時間を進めて今は深夜、太陽は沈み切って星空が街と人々を見下ろした。

 

人々は皆建物の中だ、眠りについて家の灯りまで消してしまってる者も多数いる。

 

一部の者には好ましい時間帯だ、そんな夜を数夜も好んで行動していた。

 

 

前坂(やはり妙だ、一通り見て来たがあいつらは呪いが解けてしまっている。

あの呪いは自然に解けるようには組んでいない、俺が解かなきゃ解けない仕組みだ。

誰かが細工したのには間違いない、だが一体誰がそんな細工を……)

 

 

考え事をしながら街灯だけが頼りの暗い道を歩いていた数夜だったが、何故か急に止まった。

 

 

前坂「……ストーカーとは趣味が悪いな、何をそこまで警戒する事は無いだろう」

 

 

その言葉を言い終わるのとほぼ同時に、素早く指輪をソウルジェムに戻す。

 

そのまま数夜は群青色の魔法少年に変身、奇妙な杖を召喚し手にした。

 

自分の後ろに向かって杖を投げる! 魔力を込めていたのか、ぶつかった電柱にめり込んだ。

 

思わず電柱の裏から出て来た追跡者、数夜は急接近して拳を前に繰り出す!

 

だがそのパンチは受け取られてしまう、それでも追跡者の姿を目の前に捉える事が出来た。

 

 

前坂「なぁ? リュミエールのリーダーさんよ」

 

清水「……まぁ、相手が通称『花の闇』じゃあそう簡単に行くわけねぇよな」

 

前坂「何を企んでたかは知らんが、それ相応の覚悟は出来ているんだろうな!?」

 

 

数夜は掴まれた手を軸にして横蹴りを入れたが、一の腕を魔力で強化し海里は防いだ。

 

 

清水「上等だ、売られた喧嘩は買うぞオラァ!」

 

 

流石は不真面目の中でも一二を争う人物だ、やはり喧嘩慣れしている。

 

数夜から圧力と暴力を受けたが、海里の精神は微動だにしない。

 

そのまま2人はタイマンを張った、魔力の輝きで目立つといけないので体術が中心だ。

拳が入れば回避をして蹴りが入れば屈む、物が投げられれば別の物で弾き返す。

 

互いに動きの読み合いだ、どちらかが隙を見せるか疲れるまで続くだろう。

 

 

清水「強い魔法を持ってる割りには体術もなかなかやるじゃねぇか、

俺にはその魔法を使わないのか? 散々使って来たその呪いってやつをよ」

 

前坂「お前に呪いをかけたところでつまらないからな、無駄に魔力を使う気もない」

 

清水「まぁそんな強力な魔法を、人に言われて簡単に使いそうにも見えねぇな」

 

 

打撃の勢いは手数を稼ぐ度に威力を上げさせ、一手の重みはどんどん増した。

 

頰を狙って放たれたのとある一手、数夜は回避したが流れ弾は先程の電柱に当たった。

 

倒れる電柱に遮られ2人は一旦距離を置く、このままでは電線まで切れてしまう!

 

 

清水「っ!? やっべ!!」

 

前坂「ハァ……何をしている、一般人に影響が出るのは流石に無いぞ」

 

清水「悪りぃ、一旦こいつをなんとかするぞ!」

 

 

魔法使いの戦いで、一般人に影響が出してはいけないのは暗黙のルール。

 

2人は一旦タイマンをやめ、電柱の修理に取り組む事にした。

 

数夜が妙な杖を振るい魔法で電柱が倒れるのを防ぎ、

海里が様々な道具を空から取り出し電柱の修理をする。

 

 

 

 

やがて、暗がりの道に誰か通りかかる前に折れていた電柱はほぼ元の姿に戻った。

 

 

前坂「……興醒めだな、タイマンで戦っていたのに勢いが止まってしまった」

 

清水「おう、悪かったな骨を粉砕しちまうようなパンチを回避しちまって」

 

前坂「まぁいい、それで? 理由もなく俺の後をつけて来た訳じゃ無いだろう」

 

清水「気になる事があってな、お前の呪いについてある程度推測が纏まったから確信を得に」

 

前坂「ほう? 気分転換にはちょうどいい、聞かせろ」

 

 

休憩も兼ねているのか数夜はその場に座る、警戒の体制はそのままだ。

 

 

清水「いいぜ、ついでに答え合わせといこうじゃねぇか」

 

 

海里も同じくその場に座る、双方座ってでも対応出来るという姿勢の表れだろう。

 

 

清水「お前が呪いをかけた人物には2種類ある、1つは『星屑の天の川』のメンバー全員だ」

 

前坂「根拠は? 響夏は上田利奈に、釛はお前に調べられたがギャル2人はどう判断する?」

 

清水「出回るグリーフシードの数で判断したぜ、最近じゃあ数も減って偏りが見えやすいからな」

 

前坂「もうその辺りの情報はお手の物か、恐ろしい奴め」

 

清水「お前も人の事言えないぞ? で、もう1つは量産型グリーフシードの元になった奴らだ。

橋谷俐樹、津々村博師、根岸知己……この3人だろ、呪いをかけていたのは」

 

前坂「こじ付けに過ぎないな、根岸知己は証を見せたらしいが他の2人は何とも言えない」

 

清水「ああ、()()()()()()()()を見るまではこじ付けに過ぎなかった」

 

 

しばらく話し込んでいた2人だったが、ある時を境に数夜の表情は真剣さを増す。

 

 

前坂「……なに? それはおかしいな、どうやってその結論に至った?」

 

清水「『濁色の魔力噴出』だ! 知己は見てないから分からないが、

これらが起こった後から明らかに俐樹と津々村博師の孵化回数は減少している。

かけられる前より明るくなった、呪いの効果が無くなった結果だろうよ」

 

前坂「何故そうなる、2人の変化はお前の気のせいじゃないのか?」

 

清水「とぼけるな! 呪いの効果が『希望への鈍感』ってのも、分かっているんだぞ!!」

 

前坂「思い込みも甚だしい、お前はさっきから何を言ってる?」

 

 

海里は文字通りとぼけていると思ったらしいが、見ればそれは違うようだ。

 

言われた方は困惑の表情をしている、それは見覚えのない事を突きつけられた気分。

 

数夜は続けて言葉を口にするが、その内容は海里にとって衝撃的な内容となった。

 

 

 

 

前坂「『希望への鈍感』? 俺がかけた呪いに、そんな効果を付けた覚えは無いぞ」

 

 

 

 

それは根本からの否定だ、これが正しければ様々な事柄が根本から崩れる事になる。

 

 

清水「覚えが無い? どういう事だよ、希望を感じなくなる症状は1人に限らないぜ」

 

前坂「俺は真実しか言ってない、確かに希望を感じなくなるような効果は付与していなかった」

 

清水「俺が言ってる事も根拠や証言がある真実だ、そっちこそ真実を受け止めろ!」

 

前坂「効果か、なるほど? 何か違和感があると思っていたが、その正体はこれか。

俺の魔法がかかりやすくなる効果だけにしては、妙だとは思っていた」

 

清水「……その口振りに態度、嘘をついているようには見えねぇな」

 

 

海里と数夜は情報戦でも読み合いだ、言葉のドッチボールでも拮抗した状態が続く。

 

……が、しばらくしてその均衡を打ち破るが如く急に数夜は笑い出した。

 

何故笑っているのか? それは海里には分からない、彼は自分の無知に対し笑っている。

 

 

清水「何がおかしい!? 今話しているは笑い事じゃねぇぞ!」

 

前坂「いやはや、あまりにもお前と俺の情報が合致しなくてな……ここまで来ると笑いもする。

気に入った、明日このメモの通りの場所と時間に来い! 話の続きはそれからだ、清水海里」

 

清水「わっ!? とと……池宮市◯◯地区△△町◇◇丁目××-☆☆? おい、これってどういう」

 

 

少しの間だけ投げられたメモに目を向けていた海里、

目線を正面に戻したがそこに数夜の姿は既に無かった。

 

どうやら海里がメモを読んでいる間に塀を越えて逃げたらしい、何と逃げ足の速いことか。

 

メモに書いてある場所に何があるというのだろうか?

今からその場所に行くには、時間帯が遅過ぎるのが残念だ。

 

 

 

 

(……偶然にしては、かなり重要な場面に遭遇しちゃったな。

只でさえレベルが違うだったのに、正式な場を設けたらどうなるか。

これは他のリュミエールの子に伝えた方が良いね、特に彼女かな。

海里は情報屋のライバルとはいえ同じ第三椛学園の仲間だ、僕は守りたい。

そうなれば彼女に連絡を取りたいけど……あれっ、連絡先何も知らないや)

 

 

 

 

(どちらにしろもうすぐ全ての工程が終わる、1つの終わりに向かって。

適当に機会を作ろうとしたけど、まさかこんな幸運な事があるなんてねぇ。

この好機は是非利用させてもらおう、それで目的は達成されるもん!)

 

 

 

 

明日は多数の生徒が毎週待ち焦がれる休日だ、大事が起こる時間は充分過ぎる程ある。

 

 

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

清水「じゃあ話させてもらうぜ、途中で寝たりするんじゃねぇぞ」

 

 

 

上田「……勘違いも甚だしいよ!」

 

 

 

((もう駄目だね、最初から殺すつもりは無かったでしょ))

 

 

 

下鳥「この際ハッキリ言うわ、貴方が裏で様々な悪事に関わり暗躍していた事を認めなさい」

 

 

 

〜終……(42)自由な食事会と暗躍者〜

〜次……(43)無心な裏切りと真の闇〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 





いかがだったでしょうか? 今回は釛の意外な一面が明らかになりました。

よくよく考えれば彼の魔法少年姿はロボット、ある程度機械に精通してても変ではないですね。

だからと言って盗難が許される話ではないのですが……やれやれ、いつになれば捕まるのやら。

まぁ余った給食、特にクリーム系はポケットに忍ばせよく家に持って帰った記憶はあります。

チョコクリーム、コッペパンより食パンに付けた方が美味なんですよねw


さてと、今回は全体的に短いですがここまで。

次回は長文につき、目の疲労の管理にはご注意下さい。

それでは皆様、また次回。

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