魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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時には熱中症でぶっ倒れ炎天下の救急車で病院行き……

時には多数の虫刺されによる蚊のアレルギーで歩行不可……

これだから夏は嫌いなんだああああぁぁぁぁ!!!!。・゜・(ノД`)・゜・。


……はい、皆様こんばんは。 2ヶ月ぶりの夏大っ嫌いなハピナですよ、お久しぶりです。

まず最初に、こんなに遅れてしまって申し訳ない……
予告も無しに間が空くなんてあまりにも酷い話。

今後はこんなに間が空かないよう計画的に執筆に励みたいと思います、時には無理も必要だ!


さて、結構の前の話になってしまったので……ここで前回のあらすじといきましょうか。

前回は白の魔法少年チョークがリュミエールの本部に訪れたシーンだったはず。

そこで使い魔だったはずのチョークがヒトとなった経緯も一通り語られましたね。

今回はそんな日から1日立った所から始めましょう、視点はもちろん主人公。

それじゃあ幕を上げようか、物語は夢を見る事無い虚無の無意識から再開をする。



(31)腐った果実と仮の解決

目が覚めると朝、カーテンが開いた窓からは朝日が部屋に差し込んで眠気を消し去った。

 

早めの目覚めの後はしばらく横になったまま時間を潰す、

起きる時間を決めてあるからつかの間の自由時間。

 

枕元を見て……自覚した、彼は確かに願いによって人間になったのだと。

何故って? 必ずと言って良い程、毎晩枕元に置いていたグリーフシードが無かったからだ。

 

 

そう、彼女は上田利奈。 怒涛の1日を終えて、晴天の新たな朝を迎えた。

 

 

とりあえず着ていたパジャマを脱いで着替えを始める、まず手に取るのは下着や靴下。

 

チョークからの知らせは特にない、聞いたのは橋谷家に無事馴染んだという念話くらいか。

 

そういえばと思い浮かぶのは2人の女子生徒、掃除当番だった篠田絵莉と塾通いの月村芹香。

 

2人に会いたいな……利奈はそんな事を思い浮かべながら、着替えを終えて自室を後にした。

 

ちなみにチョークは地図片手に池宮を散策するらしい、曖昧な土地勘を安定させるのだとか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

おはよう、寒空の中でも朝は生徒たちを出迎えた。 今日も学べ、地元の学び舎で。

 

利奈は自分の教室に入ったのなら、何気無く朝の挨拶を教室に響かせた。

 

返ってくるのはクラスメイトの声、よく知る友人やちょっと知ってる他生徒。

 

ハチべぇと契約して魔法使いになってからかなりの時間が立ったというものの、

最初より随分と明るくなったなと彼女は嬉しく思っていた。

 

そういう自身を実感をする一方で……何故か聞こえない、一番の友(親友)の声。

いやそもそも発声してなかったのだ、机に向かいひたすら勉強を続けている。

 

利奈にしたら状況が最初の頃に変わっただけだ、あまり深くは考えない。

 

まぁそんな深入りが無いからこそ、芹香は彼女と仲が良くなったわけだが。

 

芹香の席の近くに来ると、強調を控えることを意識し笑顔で声をかけた。

 

 

上田「芹香おはよう、朝から勉強おつかれさま」

 

月村「…………」

 

上田「ん、芹香? 私邪魔しちゃったかな」

 

月村「……あぁ、おはよう。 気が付かなくてごめん、ちょっと眠くて」

 

上田「最近元気ないもんね、クマとかもひどくなっちゃってるし」

 

 

確かに芹香の眼の下には黒いまでの濃いクマが出来てしまっていた。

 

魔法使いは小時間の睡眠でも平気なほど丈夫な身体であるはずだが……

 

その状態で寝不足となると、相当な時間寝ないで行動しているということになる。

 

 

何故、最近は身体を壊すほどに芹香は勉強をしているのだろうか?

 

 

体調を崩すとなると、流石に何も聞かないというわけにはいかない。

 

利奈は芹香を心配して、どうしてこんなことになっているかを聞こうとした。

 

ところが、彼女の名前を呼んだところで都合悪くチャイムが鳴った。

 

芹香は勉強道具を片付けて1時間目に備える、教室には担任が入ってくる。

 

利奈も自分の席に戻る、聞くとすれば昼休み中がちょうどいい時間だろう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

またもや時間を進めて今は昼休み、給食を終えて長めの自由時間だ。

 

授業の方はというと、利奈は特に問題なく終えることが出来た。

 

あるとすれば……苦手な社会の時間があったせいで、退屈してしまった事くらいか。

 

早めの足並みで廊下を進む芹香を、利奈は後に続いてついて行った。

 

言葉を選びながら、芹香を励まそうと努力を重ねている。

 

 

上田「えっと……大丈夫? 最近全然寝ていないみたいだけど、何かあったの?」

 

月村「心配しなくてもいつも通り、何もおかしいところは無いじゃない」

 

上田「いつも通りじゃないよ! 現に休み時間はずっと寝ているじゃない!」

 

月村「寝不足で何が悪いのかしら? それとも寝ちゃダメなのかしら?」

 

上田「魔法使いが寝不足ってあり得ない話だよ、疲れもあるんじゃないの?」

 

月村「誰だって疲れることはあるわ、別に突っ込む話でも……何よその顔」

 

上田「……本当に、大丈夫? 今までこんな事は無かったよね?」

 

 

利奈の最後の言葉に、クールに声を発していた芹香は言葉を詰まらせた。

 

『今までこんな事は無かった』……親友となった利奈だから言える言葉。

 

実際に芹香は大丈夫じゃなかった、こんな状態で大丈夫な訳が無い。

 

話すのが苦手な利奈だったが、その気持ちは十分に伝わっている。

 

それでも……芹香は突き放そうとする、そうまでする理由があった。

 

 

 

 

そして発してしまった、言ってはいけない事を……彼女は言ってしまった。

 

 

 

 

月村「いい加減にして!! あなたには 関 係 無 い じゃない!!」

 

 

 

 

利奈は……泣いた、言葉を失って唖然とした顔で衝撃を受けて。

 

芹香はさすがにしまったと思った、彼女を泣かせてしまったのは初めてだ。

 

もう、後には戻れない。 自分から修復難儀な、大きな大きなヒビを作ったのだから。

 

 

月村「近い内にリュミエールを脱退するわ、方法はハチべぇにでも聞くつもりよ」

 

上田「どう、して……!? どうして、そんな悲しい事言うの!!」

 

月村「さっきも言った事忘れて無いわよね? 話はこれで終わりよ。

ここでそんなに泣いたら注目を集めるわよ、早く泣き止むことね」

 

 

芹香はまた前を向いて歩きだす、利奈にその後を追う気力は無かった。

 

ただ涙が止まらない、その場で身動きが取れず立ち尽くして無く。

 

それが()()()()()としてもだ……何故、それが本心じゃないかわかったかって?

 

 

じゃなかったら芹香のソウルジェムはこんなにも穢れていない、

橙色の宝石はまるで腐った果実のようにその色を黒く濁らせている。

 

 

武川「その時にオイラは笑って……え!? 上田さんどした!?」

 

灰戸「ん、どうした光……あれ、利奈ちゃんどうしたんだい?」

 

上田「わっ、私、芹香を、傷つけ……ちゃったぁ……!!」

 

武川「あぁあぁ、とにかく落ち着いておくれよ上田さん!」

 

灰戸「……僕らじゃどうしようもないね、一旦旧校舎の理科室に行こう」

 

 

利奈はよく知る知人に会って安心したのか、利奈の泣きは度を増した。

 

笑わすのが得意な光も、普段泣かない人が泣けばさすがに焦っている。

 

八児は冷静に2人を連れて行く先を進むのを再開する

ちょうど2人はリュミエールに会いに行くところだったらしい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

旧校舎の理科室に到着する頃には、ある程度利奈は落ち着いていた。

 

それでもまだ泣いているようだが……なるほど、利奈なりに気を使ったのか。

 

真っ先に絵莉と海里が来てくれた、2人は未だ泣き続ける利奈を慰める。

 

しばらくして……利奈は泣き止む、話を出来る状態に戻った。

お客含めたみんな席に着くと、利奈は一連の事情を説明をする。

 

当然芹香はこの場にはいない、どこへ行ってしまったのだろうか?

 

 

篠田「月村さん……そんな、利奈にひどい事をを言っちゃったんだ」

 

上田「違う、絶対何かの間違いだよ! 悪いのは…… 私 な ん だ ! ! 」

 

清水「落ち着け利奈! 誰も悪くねぇ、聞いた話が正しければ突発的な発言だろ」

 

ハチべぇ「そうだね、今の芹香の現状じゃリュミエールを抜ける事は難しいよ」

 

上田「……ハチべぇ」

 

 

利奈はかなり困惑している、『関係ない』と言われ悲しいもののその理由に心当たりが無い。

そんな都合など孵卵器(インキュベーター)が知るはずも無く、ただ現在における芹香の不利を言葉にした。

 

 

ハチべぇ「加入の時と同じように、脱退も単独で行う事は出来ないよ。

 

少なくとも、そのチームの半数以上が脱退に賛成しないと抜ける事は出来ない。

 

芹香が今すぐにでもリュミエールを抜ける事は現在あり得ない話だね」

 

篠田「って事は……まだ、月村さんと話をする余地があるってこと?

だって、そんな理由も話さないで脱退なんて悲しすぎるよ!」

 

清水「当然だ、脱退するならそれ相応の説明をしてもらわないと納得出来ん」

 

上田「……ありがとう2人とも、私以外に芹香気遣ってくれる人いてくれて嬉しいよ」

 

 

……思えば、彼女は契約前も1人で過ごすことが多かった。

 

利奈のように『道具』扱いされることはなかったものの、彼女は放置されていた。

 

言い方をひどくすれば()()()()()()と言ってしまっても過言ではない。

 

ずっと1人本を読みふけり、会話するとすれば利奈のあいさつくらいだった。

 

彼女の裏には何があったのだろうか? 巧妙に隠されていたのか海里でさえ知らない。

 

 

清水「花組のみんなの事情は大体は把握したが、やっぱ深部は知らないところもあるな。

例をあげるなら『前坂数夜』『古城(ふるき)忠義(ただよし)』『山巻(やままき)唐輝(からて)』、こんなもんだな」

 

篠田「へぇ~~? 海里でも知らない人っていっぱいいるんだ!」

 

清水「仕方ねぇだろ……山巻は1年の途中からの転校生だからあんまり知らねぇし、

忠義とはこれから話すところだぞ? さっき話してる途中で切れちまった話も含めてな」

 

 

海里が見る先、そこでは花組と月組の雑談が行われていた。

 

一連の話し合いが終わるのを待つのも兼ね、軽く話をしていたらしい。

 

雑談の内容が気になる? 言ってない? まぁ、どっちでもやることは同じだ。

少し時間を戻そう、それは光と八児が利奈を連れて来る少し前から始まる。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

それは利奈と芹香以外のリュミエールが集って、そんな時間も立っていない時だった。

 

理科室の扉からノック音が鳴る、どうやらこのチームを訪ねるお客が来たようだ。

 

休憩と称して絵莉は勉強の魔の手から逃げた、今来たお客を出迎える。

 

いつもなら逃げることなんて無いのだが……あぁ、新しい勉強方法に慣れなかったのか。

 

芹香がいないので今日は蹴太が教えている、彼の教え方は口頭が多い。

 

 

篠田「お客さんだから仕方ないでしょ? 一旦休憩 休 憩 !」

 

中野「でもまだ計算の途中……まぁいいか、一通り終わったら再開するよ」

 

篠田「わかってるって! は~~い、どちら様でしょうか?」

 

 

にこやかに笑って理科室の扉を開けると、そこには2人の男子生徒がいた。

 

その内の1人は最近リュミエールが共闘した魔法侍だ、もう片方はその相棒だろう。

 

その相棒はなんだか《ノリノリ》だ、両手を握って比較的有名な忍びの印を結ぶ。

 

 

?「どぉ~~もぉ~~! ちょいとお礼言いたくてわざわざ訪ねたでござる!」

 

清水「相変わらずテンションが高けぇな忠義、それでお礼ってなんの話だ?」

 

古城「おいおい、情報屋を名乗る海里がそれを知らないって抜けてるでござぁ~~る!!」

 

清水「……若干 ム カ つ く 言い回しも相変わらずだな」

 

火本「こら忠義! あんまい調子(おだめ)に乗ったら怒らせてしまうじゃねか」

 

古城「っはは、ごめんごめん! さっきまで2人で軽く社会の勉強してたからさ」

 

清水「さしずめ日本史の勉強ってとこか? 伊達に歴史好きって言われてねぇな」

 

 

火本徳穂と古城忠義、この2人はコンビを組んで和風ユニットとして魔法使いの活動をしている。

 

徳穂は自らを『魔法侍』と称し忠義は自らを『魔法忍者』と称す、時代感は古め。

 

双方社会の成績は優秀で、特に日本史を得意としている。 それどころか趣味に成り果てる。

 

おっと、ここで言う『コンビ』は()()()()()()()2人組で活動している集まりと定義付けよう。

 

彼ら含めて花組に存在する正式な『コンビ』は3組いる、どれも個性的なペアだ。

 

 

古城「いや~~ははは、冬場なのに水道の水がぶ飲みするとかアホな事したもんだよ、

腹の薬リュミエールの子が作ってくれたんだっけ? ありゃ本当に効いたわ」

 

清水「作ったのは俐樹だぞ、そこにいる三つ編みの女子生徒な」

 

橋谷「へっ!? ……あぁ確かにあの時作りましたね、き……効いて良かったです」

 

 

俐樹は頬を赤らめあからさまに照れている、感情が表に出てくるという事は素直な子だろう。

 

 

古城「それとこれ、そっちのグリーフシードで徳穂が結構浄化してもらったんだろ?」

 

 

そう言って忠義はグリーフシードを古めかしい巾着から取り出し、海里がいる前の教壇に置いた。

 

新品のグリーフシードと使いかけのグリーフシード……なるほど、使った量ちょうどという事か。

 

言い回しは確かに癖があるが、まぁ性格自体はそんな悪くないようだ。

 

 

清水「その分を返すってか? 別に返さなくても大丈夫だぞ、まだグリーフシードはあるしな」

 

古城「そういう余裕言ってられなくなるかもしれないよ? ここは受け取っておきなよ」

 

清水「……()()()()()()()だと? 何が言いたいんだ?」

 

 

その事について説明をしようとした忠義だったが、ちょうどそのタイミングで3人が来た。

 

3人……そう、利奈を連れてきた光と八児がこの理科室を訪れてきたのだ。

 

海里は一旦会話を止め、勉強から逃げて絵莉と共に利奈の元へ行く。

 

その間、光と八児は待ってる間暇を潰すのも兼ねて適当な雑談を開始。

 

和風コンビの2人も同じテーブルの椅子に座る、月の情報屋とは面白い話が出来そうだ。

 

 

火本「あげな大声(うごえ)出して泣くなんち、よっぽどんこっがあったんじゃろなぁ……」

 

武川「大抵の人の笑い取る自信あるけど、あそこまでとなるとオイラでもちょっと難しいかな」

 

古城「んん? たまに見かけてるけど、ただ単に笑わせてるだけじゃないの?」

 

武川「ちょ、心外だなぁ!? ただむやみやたらと笑わせてるわけじゃないよ!?」

 

灰戸「何も考えていないようで、実は相手の状態や事情も考慮して笑わせてるからね」

 

 

八児も八児で序盤の言い方がひどいような気がするが、悪意が無いので光は良しとするらしい。

 

まぁ、光と八児の付き合いが長いのも1つの妥協理由と言えるだろう。

 

話を一度変え、とりあえずお互いの来た理由について話す事にした。

なぁに、言ったって構わない。 特に隠すほど秘密な理由でも無いしね。

 

 

古城「僕は相棒がこのチームに結構お世話になってたのもあってね、お礼を言いに来たのさ」

 

火本「1人で行って()たんじゃっどんなぁ……面目(めんぼっ)()、忠義」

 

古城「いいって事よ! 相棒が世話になったら僕が世話になったも同じさ!」

 

 

この和風コンビは互いの信頼性が高いようで、見るからに仲が良さそうだ。

 

忠義が歯を見せて笑ったかと思えば、徳穂の無駄に広い背中を片手で叩いた。

 

叩かれた徳穂は微動だにする事がない……なるほど、体格にに合った筋力というわけか。

 

 

灰戸「僕はとある事件状況の報告にね、海里にちょっと伝えたい事があったんだ」

 

武川「オイラは特に理由は無いけど、ネタも練ってる途中だし暇だったからついて来た!」

 

灰戸「……え、理由無かったの? まぁ僕としては光がついて来ても構わないんだけどね」

 

 

八児の反応からして、何らかの理由はあるだろうと自分なりに解釈していたらしい。

 

結果見事に正解は理由無し、予想が外れた反動で八児は苦笑いしか出来ない。

 

()()()()()……というと、勘が良いなら何の事件の事かすぐにわかるだろう。

まぁ詳しい話は後ほどだ、その時になったら八児が説明してくれる。

 

 

古城「しっかし花組以外にも来る生徒がいたなんて意外、しかも情報屋ときた!」

 

武川「お、おぉ? 『以外』と『意外』で新たなダジャレの誕生か!?」

 

灰戸「偶然だと思うよ……うん、たまに互いの情報を交換してるんだ」

 

火本「そもそもクラスが()ごもんな、(まっ)で別な情報が交換出来(でく)っって寸法か」

 

灰戸「花組以外、僕含めてみんな一般人だからね……特に場所の情報が助かるんだ」

 

古城「場所の情報を頼りに、お笑い芸人もどきが注意喚起を広めるって訳?」

 

武川「それで合ってるけどお笑い芸人 も ど き ではないなぁ!?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

さて、互いの目的がわかった頃に利奈は落ち着きを取り戻した。

 

いわゆる『今に至る』という状況だ、八児は海里の視線に気が付いた。

 

いつもなら序盤火花を散らす2人だが……今回は控えておこう。

 

先に話をして良いよと忠義が譲る、まずは情報交換から始まるらしい。

 

海里が話したのは近況、どの辺に魔なる物が出やすいだとかの予想等。

 

 

清水「……ってことだから、当分はその辺の地域に気をつけろって言うと良いと思うぜ」

 

武川「その辺雪積もりやすいから割りと人多いんだよなぁ……うん、オイラに任しとけ!」

 

灰戸「他に雪が多い場所を提示すればなお効果がありそうだね……さて、次は僕の番か。

海里に情報を開示したんだから、僕も情報を開示しなきゃいけないね」

 

清水「オイオイ、いつその情報が情報交換になった? 安全の為には必要な情報だろ?」

 

灰戸「とは言ってもこれだけ特別なんて言ったら混乱するよ!

まぁ今日はこの情報を言いに来たんだし、構わないさ」

 

 

八児が語りだしたのは最近起こった事件の近況……そう、『密室盗難事件』について。

 

 

 

 

灰戸「花組に僕の知り合いがいるんだけど、彼から聞いたんだ。

……その事件の被害者たちの元に、盗まれた品が戻ってきたんだって」

 

 

 

 

清水「ハァ!?」

篠田「ええぇぇ!!?」

橋谷「戻ってきたんですか!?」

上田「……え!?」

中野「へ!? 嘘だろ!?」

 

 

驚きの声は重なり団子になって教室内に響く……無理もない、これは思わぬ展開だ。

 

 

清水「ちょ、それ 本 当 の話なんだろうな!?」

 

灰戸「何をそんなに驚いているんだい……チーム『ゲマニスト』、

そのサブリーダーである大翔に聞いたから間違いないよ」

 

清水「いや、お前の信用性の話じゃない……どうやらしてやられちまったみてぇだな」

 

武川「え、してやられた? 何かまずい事にでもなったの?」

 

 

海里が言ってるのはどういうことだろうか? まぁ簡潔にだが、軽く説明しよう。

 

一連の状況を説明するなら、『犯人が見つからないまま盗品が見つかった』ということ。

 

ということは、盗品を取り返す行動の必要が消え去った。

 

盗んだ犯人を捜す必要性が一部無くなってしまったのだ。

 

いや犯人探しをするのは重要なことだが、きっと被害者である彼らなら……

 

 

清水「『ゲームを取り返せればそれで良い』、ゲーム命なあいつらならそう言いそうだな」

 

灰戸「実際そんなことを言ってたって大翔から聞いたよ。

特に操太郎がもういいって言っていたね、努務はまだ許せないみだいだけど」

 

上田「犯人を捜す必要が、無くなっちゃったって事?」

 

清水「おぉ利奈、すっかり回復したみたいだな……まだ元気ない様子だが」

 

灰戸「全部無くなったって訳じゃないけど、相手側のダメージは減ったね」

 

 

問題はその盗品が見つかった場所だ、その場所は被害者それぞれのバックの中。

 

どこかに落ちてたとか置いてあったとかじゃない、 バ ッ ク の 中 だ !

 

下手をしたら、被害者たちがその『ゲームの存在に気が付かなかっただけだ』と

変な誤解を生んでしまうと共に騒ぎの反動だって降りかかるかもしれない。

 

『してやられた』、ホントにそうだ。 それも、軽く向こうの計算に入っていただろう。

 

一通り話が終わったのなら、海里は教壇に戻って肘をついた。 やっぱり納得いかない様子だ。

 

 

灰戸「前ほど表向きに探すのは、あまりメリットがあるとは言えない状況だね」

 

清水「……不本意だが、これで一旦解決ってことにした方が良さそうだな」

 

中野「まぁ、盗品が戻ってきたなら一旦は大丈夫じゃないかな?」

 

篠田「でもなんかスッキリしない終わり方だねぇ……盗んだってことは変わらないのに」

 

清水「それも今後の展開しだいってやつだな、とりあえず様子見といこうぜ」

 

 

一方、情報屋らが情報交換をしている間の和風コンビは社会の教科書を眺めながら待機中。

 

 

火本「……ぼっぼっ(そろそろ)忠義が話をしても大丈夫(だいじょっ)な頃合いじゃねか?」

 

古城「んん? あぁ、確かにもう話しかけても大丈夫そうな空気かな」

 

火本「お、ちょうどこっちに来たぞ。 (かた)っても良さそうだな」

 

 

海里は次に先程止めた忠義の話を聞くらしい、月組の2人は伝え方を相談している。

 

 

清水「それで、さっき言ってた()()()()()()()ってどういう事だ?」

 

古城「っとなぁ……まぁ簡単に言えば、出回るグリーフシードの量が減るって事だな。

 

僕ら魔法忍……じゃなかった、魔法使いは着々と力を付け環境に適応し始めている。

 

前程バカみたいに魔力を使ってしまう、君らに合わせて言うならそんな不真面目は減った。

 

まぁ未だに使う魔力の調節を間違えて孵化なんて事もあるけど、それでも少ない。

 

今後グリーフシードの数は減る、これを巡った争いも起きるかもしれない」

 

火本「(つん)と、最近の雑魚級は()よなってて簡易には倒せねごっなってきちょっな」

 

 

忠義はノリにも乗らず一連の発言について説明をした、口調は落ち着き聞きやすい。

 

彼の言う通りだ、時間が立って魔法使い達は確実にその力を高めている。

 

恐らく雑魚級の魔なる物は減り、1体1体の強さも上がっている。

 

下層の魔法使い達はグリーフシード不足に陥る時がじわりじわりと迫りくる。

 

最も恐れる事……()()使()()()()()()()だ、それはグリーフシードを巡る争い。

 

だからこそ、上層にいる魔法使い達がしっかりしなければならない。

 

それが忠義が言いたかった事だ、今回の返却もその貴重さを伝える為だろう。

 

 

話がまとまったなら、ちょうどその時に昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。

 

次の花組の授業は社会らしい、和風コンビは張り切って理科室を後にした。

次の月組の授業は数学、光は数回八児のお世話になるだろう。

 

利奈も他の皆と共にその場を後にする、泣き止みはしたがまだ暗い。

 

芹香は今、どうしているだろうか? その事ばかりが気がかりで悩ましい。

 

まぁ……芹香はその時荷物を持って保健室、そのまま誰にも会わずに帰ってしまうが。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

白い吐息は重々しい……帰り道な寒空の下、雪は降らずとも頭に積もる物がある。

カバンの

 

それは『疑問』か? 『後悔』か? 『悲しみ』か? それを判断する気力は既に無い。

 

ただ足跡を残しながら歩くだけだ、静かに帰路を進み行くだけだ。

 

 

上田「芹香、どうしちゃったんだろう……やっぱり私が知らない内に悪い事を」

 

 

泣き止みはしたが、最低でも利奈は今日1日この調子だろう。

 

その表情は不安げで暗い、やはり芹香の事が気になっているのは間違いない。

 

考え事で頭が満たされ周囲に意識がいかない、それは周囲の状況も同じだ。

 

今歩く先に曲がり角がある、住居の影に隠れ先が見えない曲がり角。

 

……もはや言わずともわかるだろう? つまり、()()()()()だ。

 

 

上田「そういえば帰り道におつかい……って、うわっ!?」

?「なっ、何でこんな目に絶対おかしいっt……ひえあぅ!!?」

 

 

突如、利奈は曲がり角を曲がった直後に人と鉢合わせになってしまった。

 

ぶつかってはいないが、何故か相手は尋常じゃなく驚いている様子。

 

街灯が少ない道だから暗くて怖く見えたのだろうか? それにしては驚き過ぎだ。

《ビビり》なんだろうか? まぁ利奈はそんな意地悪を言う性格ではないが。

 

 

?「ごっ、ごごごごめん! わざとじゃないんだ!! 今、僕は急いでて……」

 

上田「えっ、そんな恐縮しなくて大丈夫ですよ! 私怒っていませんし」

 

?2「って言ってるじゃないのぉ、大丈夫だよぉ唐輝君」

 

 

知り合いだろうか? 冷や汗をかいて怖がる少年にやさしい言葉をかけた。

 

まだ少年は震えているが……ふむ、利奈は怒っていないという事は理解したようだ。

 

綿菓子のように柔らかな雰囲気の少女が利奈に話しかける、その表情は柔らかな笑み。

 

 

?2「ごめんなさいねぇ? 怖がられ過ぎて気分を悪くしなかったぁ?」

 

上田「ビックリしちゃったのは私も同じです、大丈夫ですよ」

 

?2「……こうして面と向かって話すのは初めてですねぇ、上田さん」

 

 

名前を呼ばれたのにはまたちょっと驚いたようだが、すぐ納得した。

 

何故って? 彼女の服装が『第三椛学園』の制服だったからだ。

 

恐らく彼女は花組だ、その指には見知った指輪が付いている。

 

少女の後ろに隠れ怯える少年、未だ怯える彼は利奈を涙目で見ている。

 

そういえば少年は全速力だった、急ぐほどの目的があったのだろうか?

 

微笑む少女はどこかで見たことがある、記憶の片隅に彼女はいた。

 

それは回復専門の魔法少女、魔法に見合い語る口調も性格も柔らかだ。

 

 

 

 

利奈自身は気が付いていないが、これで花組全員を利奈は認識したこととなった。

 

正確には今目の前にいる『君』が認識したというのが正解か?

 

近い内に出席でも取ろうか? まぁ、それは今関係ない話だけどね。

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

「っあ!? 人が死んで……いや、じゃなきゃあんな気は感じれない」

 

 

 

「大丈夫だよぉ、姿見えないだけでちゃんと近くにいるからぁ」

 

 

 

「おい下がれ! 見た様子君は後衛向きだろ、前の方は上田さんと僕に任せろ!」

 

 

 

「……行くよ、今度は僕が命を賭けて助けに行く番だ」

 

 

 

〜次……(31)腐った果実と仮の解決〜

〜終……(32)ビビりな空手家と柔軟少女〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




さて、次回で花組の魔法使いの名字から名前に至るまでが明らかになる事となりますね。

人数は35人、全員出すのに結局半年もかかってしまったなぁ……1クラス分は案外多い。

出席を取るとなるとかなりの文章量になる、本編や番外やらどこで書くかは検討中。

後『改行が長い』なんてアドバイスを頂いたので、今回改行は少なめ(4行以内)です。

読みやすさが向上しているのなら幸いです、まぁ内容は変わらんので個人差はありそうですがw




さて、今回の雑談は『夏』に関する事にしましょうか。 書く元気実際無いので、今回は短め。

夏の恐ろしさといえば『熱中症』や『虫刺され』等の病があげられますね。

他にも海水浴やハイキングに花火大会と、外出が多く事故が多くなる時期でもあります。

あぁ……気候にはこんな地獄の時期が他にあるでしょうか、夏は嫌いです(´・ω・`)

皆様も夏の害にはお気をつけ下さいませ、じゃないと病院送りの結末が待っていますので。




次回は雑魚級との戦闘が入ります、文章量が15000字超えとなるので長文注意報喚起。

今回イラストは無いですが次回入ります、そっちの方も描いていかなければ。

それでは皆様、また次回。 22〜26日は用事があるので更新は不可能、悪しからず。

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