魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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注意書きなんてなかった(^q^)

いよいよ今回から魔女戦に入ります!
ちょっと長くなったので前編後編と分かれてしまいましたが……
その分ボリュームがあるってことで1つw

では、イヌカレーワールドならぬウサギカレーワールドをお試しあれ!(○´―`)ゞ

1月10日
○一部『』への変更
○…を……に延長
○その他修正

2月17日
○変則改行の本格修正
○『w』の消し逃しに対応
○その他修正、索敵



(3)初絶望と初戦闘[前編]

キーンコーンカーンコーン……コーンキーンカーンコーン……

 

 

それは魔女の始まりであり、それは世界の始まりである。

 

 

若干音割れしたチャイムで、利奈は目を覚ました。

 

 

利奈「うぅ……ぐ……」

 

 

止まっては動き、止まっては動き……なんだかカクカクする。

ふと、肩に何かが乗った。 それは利奈に語りかける。

 

 

ハチべぇ「この空間にいる間は魔法使いに変身した方がいい、

ここは利奈含め君たち人間が対応していない空間だ」

 

 

聞き覚えのあるハチべぇの声、利奈はその声に素直に従うことにした。

 

 

利奈「変、し……」

 

 

声帯までおかしくなっているのか?

震えたり止まったりして上手く声が出せない。

だが、利奈のソウルジェムは変身への強い意思に答えた。

 

指輪がソウルジェムになって赤い光が瞬く間に利奈を包み、

 

その姿を、まるで奇術師のような赤き魔法少女にした。

 

ソウルジェムはブローチになって利奈の首元に収まる。

 

 

利奈「かは……ふぅ、助かった。

……ダメだ、何があったのかぼんやりとしか覚えてないや。

それにしても、ここは……」

 

 

肩で息をしながら、スッと立ち上がって周りを見渡した。

 

 

そこに広がるのは可笑しな世界。

 

 

目線の先に続くのはステンレスの一本道……

少ないものの所々に穴が空いていて見落としたら落ちそうだ。

 

深緑の空中では数式が書かれては消え、謎の文字が書かれては消える。

 

道の下には大量の学校の机と学校の椅子。

 

真緑の猫人間のような変に着飾った人形達は白と赤の制服を来て延々と終礼。

 

 

「起立!礼!着席! 起立!礼!着席! 起立!礼!着席!」

 

 

所々に巨大なチョークで組まれた

異様な犬とも言えない猫とも言えない……

目の所には穴が空いている人型の生物がいる。

 

 

黒板の使い魔、役割は生徒。

 

 

そんな異様な景色を見て、利奈は1つの結論に至った。

 

 

ここは、()()()()()

 

 

上田「ハチべぇ、どうすればいいか教えて! 魔女はどこにいるの?」

 

 

利奈の冷静な立ち回り……まさかここでホラゲや鬱ゲーなどの

ゲームの経験が生きるとは本人も思わなかっただろう。

 

ハチべぇはその対応に驚きはしたが、変に首を突っ込むような真似はしない。

 

 

ハチべぇ「今回の魔女は、この結界の最深部にいるよ。

この結界なら、道なりに進めば魔女に会うことが出来る。

魔法少女の初戦にはまさに最適な環境だね」

 

上田「最適って……とにかく、みんなを起こそう」

 

 

 

 

利奈とハチべぇが呼びかけをした結果、しばらくして結界の片隅には数人の魔法少女が出揃った。

 

利奈以外の魔法少女達は特定の男性アイドルが好きなグループだったせいか、

そのアイドルの衣装の女性版だったり、武器が二刀流のうちわだったりと

なんだか戦う気が無いような戦闘には向いていない印象だ。

 

 

「うぅ……これが、魔女の結界ってやつなの?」

 

ハチべぇ「そうだよ、魔女が自分の理想を実現する為の空間だ」

 

上田「この辺りなら、他の場所よりは大丈夫みたい。

ハチべぇがここなら魔女から遠いししばらくは安全だって」

 

「な、なんだ……しばらくだけどここなら大丈夫なんだ」

 

「あれ? ちょっと待って、絵莉はどこにいるの?」

 

上田「わからない……多分この結界のどこかにいると思うよ」

 

ハチべぇ「それなら、絵莉はこの結界の奥の方にいる」

 

上田「……え!? それを早く言ってよ!奥の方って?」

 

「まっ、まさか絵莉は魔女にさらわれた……!?」

 

 

その言葉に一同は騒然となる。

 

だとしたら、まだ魔法を使って見ただけの絵莉……

 

戦闘慣れしていない彼女は、1人で魔女と対峙していることになる。

 

それはかなり危ない……!

 

 

「はっ、早く行かなきゃ……」

 

「え!? こんな気持ち悪い世界を!?」

 

「うぅ……やっぱり、怖いよ……」

 

「早くうちに帰って新曲聞きたいのになぁ」

 

 

仲間が危ないというのにこの子らは……そう思った利奈は強く発言した。

 

 

上田「行こう! 初めてだからって怯えている場合じゃないよ!」

 

そう、それよりも一番に絵莉が心配。

 

利奈の言うことに賛同しつつももたつくアイドル追っかけ一同。

 

 

上田「……ちょ、行こうよ! 絵莉ちゃん心配なんでしょ?」

 

「あぁ、うん、今行くから」

 

「こんな武器で魔女倒せるのかなぁ……」

 

 

うだうだ理屈を並べて出発を拒む、どこか面倒そうな魔法少女までいる。

 

 

絵莉は友人じゃないのか?

 

 

どうして非行動的なのか?

 

 

恐怖が勝るのか?

 

 

不甲斐なさにイラついた先の考え……ふと、利奈はある事が頭に浮かんだ。

 

 

上田「……ハチべぇ、本当に一直線なんだね?」

 

ハチべぇ「間違いないよ、この結界は一本道だ」

 

 

……そうだ。

 

 

今までも、そうしてきたじゃないか。

 

 

ひとりぼっちの掃除の時だって、

 

 

押し付けられた裁縫の宿題だって、

 

 

いつも必ずある帰り道だって……

 

 

上田「アンヴォカシオン(召喚)

 

 

もたついて出発する気がないアイドル追っかけ魔法少女達を見て、利奈は……

 

 

 

 

真っ赤な棍を片手に1人、ステンレスの道を駆け出した。

 

 

 

 

「!?っ、上田さん!?」

 

 

1人でやろう、1人でやればいい。

 

 

掃除も時間をかけて、1人で。

 

 

裁縫も嫌いじゃないし、1人で。

 

 

帰り道も早く帰れるし、1人で。

 

 

……()()()()()()()()、1人で。

 

 

上田(集団行動なんて私のやることじゃない……)

 

 

驚きを隠せないアイドル追っかけ魔法少女達がどんどん小さくなり、遠くなる。

 

 

上田「って早い!? 私こんなに走るの早かったっけ!?」

 

 

自分の知らない速度で走れている事に驚く利奈だったが、

いつのまにか右肩に乗っていたハチべぇがそれについての情報を口にする。

 

 

ハチべぇ「魔法少女や魔法少年は普通の人間より基本的な能力が大幅に上がるんだよ。

疲れにくいし傷が治るのも早い。 あと、念話も出来るように」

 

上田「あぁ〜〜……説明中ごめんハチべぇ、

そろそろ話すのやめないと舌を噛むことになるよ」

 

ハチべぇ「わけがわからないよ!」

 

 

あれ、ハチべぇに舌ってあるのか……?

 

 

上田の駆け抜ける道の穴から、チョークで出来た……『チョーク犬』とするか。

 

白、赤、黄に青のチョーク犬が飛び出してくる。結界に現れた異物を改良する為に。

 

 

黒板の使い魔、役割は教育。

 

 

魔女が授業を教えられる生徒になるよう教育する、それが役目。

 

 

まぁ、もちろん利奈はそんな事知らない訳だが。

 

 

上田「……孤独に舞おう、鮮烈に」

 

 

まるで自分に言い聞かせるように利奈はそう言うと、

持っていた棍で瞬時にチョーク犬を1匹なぎ倒した。

 

……利奈のゲーム脳が起動する。

 

 

上田「ゲーム、スタート!」

 

 

嫌な事なんて忘れてしまえ、思考の奥深くに眠れ!

 

 

1匹を合図に一斉に襲いかかる。

 

吠える声はカッ、カッ、と黒板に文字を書き込むような音。

 

利奈の走りながらの乱舞、なぎ払い、叩きつけ、打ち上げる……

一連の攻撃をは走りながらこなした。

 

まさか……芹香の倉庫で少し舞っただけの舞がもう身につくとは。

魔法少女というのはつくづく恐ろしいものである。

 

 

上田「アロンジェ(延伸)!」

 

 

時折、棍を伸ばし道の外に複数同時にはたき落とし・・・

 

 

上田「スフェール(放出)!」

 

 

遠くの敵は赤い光の球を作り出し、棍を振って投げつけた。

 

……待て、こいつ本当に初めてか? と思うほど利奈は強かった。

 

ハチべぇの予想……それは、利奈には魔法少女の『素質』が強くあるということ。

 

利奈は天性の魔法少女と言っても過言ではない。何故か?

それは利奈が相手をする使い魔の数をみれば一目瞭然だ。

 

……あり得ない、20〜30匹は同時に相手をしているだろう。

普通の初戦な魔法少女ならとっくの昔に教育されている。

 

 

ハチべぇ(なるほど、なかなか素晴らしい戦いをするね。

 

団体で契約、つまり『集団契約』はハズレが多いと思ったけど、

彼女がいればそのハズレを無に出来るね。 良い人材を見つけたものだ)

 

 

上田「ステージ、クリア」

 

 

そう言って、ふぅーっと溜まっていた空気を出すように息を吐いた。

 

長き孤独な戦いの末……ついに、利奈は道の終わりにたどり着いた。

そこにはやたら可愛く着飾られた教室のドアがある。

 

可愛い反面、何か恐ろしさのような感情を抱く利奈……間違いない。

 

 

上田「……魔女はこの先にいる」

 

 

左手の手の甲についたハート型の鏡で試しに自分の首元を確認する。

 

 

上田(う、うわぁ……確かに、ちょっと黒い濁りみたいなのが溜まってきてる)

 

上田「ハチべぇ、グリーフシード……だっけ?

魔女を倒したらドロップ……じゃなかった! 落とすので間違ってないよね?」

 

ハチべぇ「うん、間違いないよ利奈」

 

 

魔女の居城に入る前に一つ舞、そして教室のドアに手をかけ……

 

 

「待ってええぇ上田さあああん!!」

 

上田「……ん?」

 

 

一旦ドアにかけた手を離して後ろを向く、

そこには走ってきたアイドル追っかけ魔法少女達がのたのた走ってきた……遅い!

 

まぁのたのたと言っても、利奈より遅いというだけだが。

 

 

「あっ、暑い、暑い! 私の武器がうちわで良かったぁ……!」

 

「上田さん! 遅れてごめん!」

 

「いや~~助かったわね、なんでか敵の数が少なかったし」

 

 

利奈はそれを聞いてこの野郎……とちょっとイラっとしたが、

今いるのは、目の前に未知の敵がいる場所の入口の前……

仲間は多い方が良いし、今は怒っている場合ではない。

 

 

上田「ここまで来たって事は、戦う意思はあるみたいだね」

 

「う、うん。 最初は怖くて動けなかったけど……

やっぱり、絵莉を助けたいって気持ちが優ったんだ」

 

「時間かかっちゃったけど、なんとか上田さんの後に続く決心がついたよ」

 

 

利奈には敵が減ってから来たんじゃないかという予想があり、

さらにこの遅さでなんだか胡散臭く思えてしまったが……

 

本当に絵莉を思って来たんだという『気持ち』は、

散々道具にされたせいで花組を信頼していない利奈には届きにくい。

 

半信半疑な利奈……でもやはり戦力は多いに越した事はない。

 

 

上田「まずお互いの魔法を把握しよう、魔女に挑むのはそれからだね」

 

 

利奈が自分の持つ魔法をわかりやすく説明すると、

アイドル……面倒だから『追っかけ』で。

追っかけ一同は丁寧に自分たちの魔法を説明してくれた。

 

『うちわ』『紙吹雪』『メガホン』『CD』……

 

うちわはギリギリ前線に出られるかも?

 

だが可能性で決めるのは良くない、でも事実上前衛は利奈だけだ。

 

流石にこれには、利奈は苦笑いを止められない。

 

 

上田「……うん、なんとか色々と把握出来た。

私が魔女をひるませたりとかするから、みんなは魔女にそれぞれの魔法で攻撃を」

 

「はいはぁーーい!」

 

「なんかおかしい話よね、普段静かにしている上田さんが自己主張をするなんて」

 

「でもそのおかげでここまで来れたんだもん」

 

「そうそう! あぁ……なんで絵莉がやばいってのに

あんなにうだうだしてたんだろう……」

 

 

時間はかかったが来た……本当に戦う気がなかったら

追っかけ達はここにはいなかっただろう。

 

 

利奈は追っかけ達を信じてみる事にした。

 

 

とりあえず大体の作戦を組んで、後はその場の状況判断で。

 

 

上田 「準備はいい?」

 

「「「「はぁーい!」」」」

 

 

本当に大丈夫か……? なんて思う所だが、今更1人でって訳にはいかない。

魔法少女側の戦力(ほぼ固定砲台の可能性大)も多い方が勝利に近づくだろう。

 

いよいよ、利奈は教室の扉に手をかける。 力を込めてガラッと引いた。

 

……あれ、また扉?

 

ガラッと引いた、また扉。 ガラッと引いた、また扉。

 

 

上田「……なんだこれ?」

 

 

そしてまた引こうとした、その時だった。

 

 

ダンッ!

 

 

勝手に次の扉が開いた。次、また次、ダンッダンッダンッダダダダダダ……

 

 

しばらくして、やっと先が見える。 たくさんの扉の向こうには……

 

 

 

 

キーンコーンカー(ガキン!!……

 

 

 

 

学校のチャイムが割れる、高らかに響いていた鐘が崩れ落ちる。

 

魔女が片手を差し出すと、歪な模様の円柱の物体になった。

黒板には利奈達には読めない黄金の文字が書かれる。

 

この空間をものすごく模範的に言うならば……

小学校の教室を何倍にも大きくした部屋を想像してもらえればわかりやすいだろう。

 

壁に張り付くはアイドルポスター、顔は真っ黒に塗りたくられた。

 

学校の机と学校の椅子は、パーツだけでバラバラだ。

 

ランドセルを入れるような大きめの棚には、

点数の微妙なテストの内容が1つ1つ書き殴られていた。

 

扉の向こうは、扉の数倍の大きさの教室のような場所。

 

作りかけの教卓にいるのは……魔女。

 

黒板消しが素材の女体に、手足は4色マーブルの太めチョーク。

スカートは古びたカーテンで、頭は給食袋をすっぽり被る。

緑のすずらんテープはツインテールを作る。

 

延々と巨大な黒板に色々な物を書きなぐっていた。

まだ利奈達が来たことには気がついていない。

 

 

上田「あれが……魔女」

 

「ちょ、ちょっと待って! 絵莉はどこに……!?」

 

「本当だ、絵莉が見当たらないよ!」

 

「なんか、魔女?っていうのかあれ、書くのに夢中で、

まだこっちに気がついてないみたいだね」

 

「これは……チャンスかも?」

 

上田「よし、手分けして絵莉を探そう!

幸い、ここには隠れられそうなバラバラの机とか椅子とかあるし」

 

ハチべぇ「なんでそんなことをするんだい?」

 

上田「上手く隠れながら……え、なんでハチべぇ?

絵莉ちゃん探さなきゃ危ないよ!」

 

ハチべぇ「君はおかしな事を言うね、そんな事をしなくても

 

 

 

 

絵莉は()()()にいるじゃないか」

 

 

 

 

上田「……え?」

 

「絵莉が目の前にいるって……」

 

「どこにもいないよ、どこの影? ってか遠くて見えないか」

 

「絵ぇ〜〜莉ぃ〜〜!!」

 

「あっ、バカ! でかい声出したらまずいって!」

 

上田「………!!」

 

 

察しのいい利奈は恐ろしい事に気がつく。

そして思い出す、ぼんやりとしていた記憶を明確に。

 

 

ごうごうと唸る極彩色の魔力、

 

空間を覆っていく空間の壁を、

 

溢れる狂気に満ちた教材達、

 

()()()()()()()()()()()……

 

 

上田「そん……な……!!」

 

 

賢い利奈は至ってしまった……

 

 

ハチべぇは目の前にいるのが絵莉だと言った。

 

だが目の前にいるのは、今のところ確認できる範囲では

利奈と、追っかけと、魔女だけ。 他には誰もいない。

 

でも、今思い出した。 絵莉のソウルジェムの異変。

 

 

上田「目の前にいる、魔女が……」

 

「なっ、なによ!? そんなのあり!? 目の前にいる魔女が絵莉だっていうの!?」

 

上田「……え、んぇ?」

 

 

どうやら、利奈抜きで追っかけ達は話をしていたようだ。

 

その状況は見るからに、ほぼパニックと言える。

 

目まぐるしい言葉のどしゃ降りを利奈は上手く聞き取れない。

 

なんとか聞きとれるのは……やっぱり、ギャーギャーとうるさいパニックだけ。

 

利奈は自分一人で理屈をこねる事にした。

 

 

上田「……ハチべぇ、どういう事? 絵莉が魔女ってどういう事!?」

 

 

ハチべぇは怒りを露わにする利奈に対し、表情も変えずに淡々と説明した。

 

 

魔法少女や魔法少年は、願いを一つ叶える代わりに魔女と戦う使命を課される。

 

魔法は魔力を使用するか、絶望を感じるたびにソウルジェムが濁っていくので、

魔女を倒して得るグリーフシードに穢れを転嫁しなければならない。

 

それができずにソウルジェムが濁りきった場合は、とある結末が待っている。

 

 

その結末は絶望の化身、女は『魔女』で男は『魔男』になること。

 

 

上田「じゃあ……私たちは、絵莉ちゃんを殺しに……!!」

 

 

もちろん自分達もそういう事だという殺人的な結論もあったが、

それよりも絵莉に対する感情の方を脳が優先した。

 

悲しい事実、恐ろしい現実、これが魔法少女の実態。

これを知った他の魔法少女や魔法少年は怒ったり絶望したりするだろう。

 

……ん? なんか……変だ。 怒りの中にも疑問が沸く。

 

 

上田「これ、私たちにバレたら不味い事なんじゃ……

 

なんで、あっさりバラしたの?

適当な事を言えば、私達は絵莉を殺すってことを知らずに済んだのに……

 

ハチべぇ「わけがわからないよ、

 

 

 

 

いつ、僕は君達が絵莉を殺すって言ったんだい?」

 

 

 

 

上田「え、どういう……事?『倒す』けど『殺さない』ってこと?」

 

なんだなんだ? このさっきから続く急展開は!?

 

知らない情報がどんどん開示されて、続々と頭に入ってくる。

 

一生懸命の脳内整理を強いられる、そうじゃないと追いつかない。

 

 

ハチべぇ「元々、このシステムは僕と同類の先駆者が作り上げた物だった、

その結末は救いがない、迎える結末は死という残酷な終わりだけだ。

 

それによって信頼を大幅に失うどころか、時として敵と見なされた」

 

いや、重要事項言っていないで契約させてる時点で信用失ってるんですがこれは……

 

 

ハチべぇ「そこで、僕は新しくこのシステムを組み直した。

 

ソウルジェムとグリーフシード……

双方の生成手順を見直し、穢れる過程、発芽方法、を変更。

 

エントロピーの構築による影響の範囲も把握し、これら変更点の固定に成功。

 

さらに発芽時のエネルギーを」

 

 

まぁこの後も長々説明が続いた訳で。

 

こんなどのくらい信用するかを図り警戒をする真剣な状況だが、

流石にこの情報量には、容量が多い利奈の頭もパンク気味。

 

黒板の魔女は胴体を黒板にすりつけ一旦内容を全てキレイに消す。

長々とこんな所で話し込んでいるが、書くのに夢中で気がつきそうにない。

 

魔女は自分の欲望、やりたいことに忠実だ。

邪魔しなきゃ魔法少女達を襲う理由はない。

 

まぁ、彼女は珍しいケースではあるけど。

 

 

上田「あ、えっと、つまり、

その先駆者のだと死んでハチべぇのだと死なない?」

 

ハチべぇ「要約するとそうなるね、察しが早くて助かるよ」

 

 

なるほど……いや、なるほどって状況でもないな。

利奈は肯定と否定が両立した感情に明らかに混乱していた。

 

 

上田(あぁ、生き残るから良いのか。

いやいや良くない良くない! 契約の重要事項を一部隠したんだし!

で、でもこうやって言ってくれたんだよなぁ……

 

あああわかんない! 信じれば良いのか疑えば良いのか!!

学校の影響で自己主張を自粛してたからな、自分での判断がつかないや……)

 

利奈は棍をぶんぶん振りながら悩んだが、不意に肩を掴まれる……追っかけ達一同だ。

 

 

「……その話、本当なんだよね? よくわかんないけど、大丈夫なんだね?」

 

「本当わからない、どうしたら!」

 

「怖い……早くこんなとこから出たいよ!」

 

「あぁ、早く帰って新曲CD聞きたい……」

 

上田(え、あれ? 私この人達に話したっけ? 盗み聞き!?)

 

 

利奈を遠回しに除け者にしながら話は聞いていたのか、恐ろしい。

というか、わかるわけもないのに利奈に聞かれても困る。

話を聞くに、それを聞くべきはハチべぇだろうに……!

 

利奈はハァ……とため息をつくと、改めて気を引き締め話し出した。

 

ここで利奈がしっかりしないと、また最初のようにうだうだされてしまう。

 

 

上田「大丈夫だよ、ハチべぇによれば、魔女になっちゃった絵莉を倒したとしても死なない。

 

どう転ぶかはわからないけど……倒しても助かるってことは、

魔女になった絵莉ちゃんを倒せば魔法少女の絵莉ちゃんに戻るって事だと思うんだ」

 

 

まずは安心させる、友人の行く末を明確に。

 

頭の悪い人達に説明は筒抜けだろう……

 

利奈は前置きから中身すっ飛ばして一番言いたい結論だけを告げた。

 

 

上田「倒すのでもない、殺すのも違う……

救うんだ! 魔女から魔法少女を! 絵莉ちゃんを!!」

 

 

凛とした声で力強く言った。 追っかけ達の頭をドカンと叩く勢いで。

 

それでも魔女の書く手は止まらない、それでも追っかけ達に利奈の叫びは……

 

 

 

 

……届いた、届かないと思っていた。

 

 

 

 

「絵莉を、救う……」

 

「あぁ〜〜えっと……つまり、あの魔女を倒す事は絵莉を助けるって解釈かな多分」

 

「怖いけど、それは絵莉も同じ……だよね。」

 

「あっは、そうと決まったら早く終わらせよっか!

音楽を聞くのは大勢の方が楽しいもんね!」

 

 

筒抜け……ではなかった、それどころか全て頭に入ってる。

 

花組は芹香や絵莉以外は全員、

自分を道具扱いする話を聞かないバカだという

利奈の考えが初めて欠けた瞬間だった。

 

残念ながらその考えは崩れてはいないが、

今この場にいる追っかけ……いや、魔法少女達を信じて良いだろうと

利奈はやっと信じれるようになった。

 

 

上田「……ありがと」

 

 

小さな声で利奈はそう言うと、いよいよ本格的に作戦を組む。

 

 

絵莉を救助する一時的な『クインテット』が今、ここに完成した。

 

 

………………………………

 

次回、

 

 

 

「ばっ、化け物だ!? うわああああ!!!」

 

 

 

「遊ぶのと戦うのは違うんだ!」

 

 

 

「羽……?」

 

 

 

「ソリテールフォール!!」

 

 

 

〜終……(3)初絶望と初戦闘[前編]〜

〜次……(4)初絶望と初戦闘[後編]〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




いや〜出ましたね、決め台詞w
決め台詞というのは私が『魔法少女まどか☆マギカ』の
二次創作にてやりたかった事の一つなんですよね。

若干主人公補正入ってるような気もしますが…まだ大丈夫かな、うん。

多分だけど_(┐「ε:)_

次回は戦闘シーン中心に書いて、黒板の魔女との戦闘を締めくくりたいと思います。

お楽しみに!(♡・ω・)ノ

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