魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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なんかよくわからないけど、普段と比べ倍のスピードで書けました。
 何 故 w ^q^; やはり前後編は捗るのかなぁ……


色々あってこんばんは、最近時間に余裕のあるハピナです。

一番難儀としていたレポートも何とか合格の判子をもらって 開 放 感 !

肩を並べ歩く友人も、別の原作ながら復活してて嬉しい限り。

やっと書きたい展開を書けたのもあって近状は絶好調ですよ!!

……まぁ、それでも明らかに1人足りない足りない人物がいるのは事実ですが。


前回は犯人判明と同時に、ついに『花の闇』の主格が明らかになりましたね。

なにやら『絶望』の魔法を使って来たようですが……何が起こったのでしょう?

まぁ言わずとも自分で自身のソウルジェムを孵化させたという状況は
私が何も言わなくてもわかりそうなので言ってしまいますが(白目

探偵も泥棒も傍観者も、全員 巻 き 添 え で 結界へご招待です。

なにやらやたらと暗い世界観になっているようですが、
一体どんな世界や使い魔、そして魔男が待ち受けているのでしょうか?


さぁ、物語の幕を再度上げましょう。 今回は久々の前後編。
魔男の創った暗い暗い世界の中、最初に目を覚ましたのは……



(27)闇を秘め変えて[前編]

頬に触れるのは冷たさ、意識が明確になってくるとそれが金属だと理解できた。

 

目を覚ましそれを理解できたのは良いが、同時に理解してしまったこともあった。

 

……視界が、()()()()()()()()()の光景が逆立ちしたかのように真逆だ。

 

あり得ない光景に利奈は思わず目を瞑った、処理しきれない光景にめまいを催す。

 

そんな時、頼るように抱きしめる腕の中から声がした……ハチべぇだ。

 

ハチべぇ「利奈、何故君は魔法使いに変身しないんだい? 変身前の身体じゃ耐性が無い」

 

上田「……ぁ、あ! そっか、ありがとうハチべぇ」

 

ハチべぇ「身も蓋もないね、急だったとはいえ不意打ちには対応できないみたいだ」

 

ハチべぇを一旦そっと降ろしてあげると、利奈は自らの指輪をソウルジェムに戻した。

 

暖かな赤色の輝きを放つ魂、その光は本人の意思に答え制服だったその姿を変えた。

 

奇術師を模したマジシャンのような姿となる、その色は赤を中心とした色調だ。

 

異常が起きていた視界が元に戻ったのなら、利奈は周りを確認するために立ち上がった。

 

ある程度の確認が出来たなら、当然のようにハチべぇは利奈の右肩に乗る。

 

上田「ここは……けっ、結界!? うぅ、頭がぼんやりしててハッキリしないや」

 

ハチべぇ「結界に取り込まれた時に強く頭を打ってしまったようだね、

他の魔法使いも同じように結界に取り込まれてしまったようだ」

 

上田「みんな同じようににここに来ているのね、どこにいるんだろう?」

 

見渡す限りに多種多様の刃、取ってや柄見えず視界が滲むまでどこまでも刃が伸びる。

 

上にも下にも続いているようだが、横向きには途中から霧がかかったようにぼやけて見えない。

 

ふと、ぼやけた先を見通すなら……そこには誰かいた。 1人、いや2人。

 

上田「っ!? 誰かいるよハチべぇ、ちょっと大きく移動するから捕まってて!」

 

そう注意がけをしたなら、利奈はこの結界の足場となる金属を飛び移っていった。

魔法使いの身体能力、これがあればビルの屋上から隣へと飛び移ることだって容易だ。

 

巨大なはさみと思われる刃に足を降ろしたのなら、そこには俐樹がうずくまっていた。

 

見た様子利奈よりその病状はひどそうだ、元から身体の弱い彼女だからこそだろう。

 

上田「俐樹ちゃん!? 大丈夫……じゃ、なさそうだね」

 

橋谷「こ、これは、何、でしょう? すごく、視界が……吐き気が……!」

 

ハチべぇ「俐樹、君も魔法使いに変身するといい。 そうすればその具合の悪さは治るよ」

 

返事をするまでもなく、彼女は自身の指輪をソウルジェムに変えた。

 

柔らかな黄緑の魂の輝き……その優しい光はそっと俐樹を包んでいく。

 

その光が収まる頃、最初と比べて明らかに俐樹の姿は変わっていた。

強い身体に体質が変わったのなら、静かに息を落ち着ける。

 

 

その姿はまるで花屋から出てきたか弱い娘のようだった、言葉で雰囲気を示すならフェミニン。

 

花咲くようなふんわりとしたスカートがついた、黄緑のワンピースが基調となっている。

 

大きな花びら1枚を摘み取ったようなエプロンに、袖はチューリップのようにふんわりとしぼむ。

 

白のハイソックスを足に付け、その先は黄緑のツヤのあるパンプスを履いている。

 

手袋は付けていないので青いまでに白い肌が見えている、気弱なのを増徴しているようだ。

 

若干乱れた長い三つ編みは一旦解かれ、その魂の色に染まった三つ編みに再度結ばれた。

 

頭にはメイドカチューシャを装備、ソウルジェムはアンクレットとして輝く。

 

 

魔法使いへの変身を終えて呼吸を落ち着けたなら、彼女は立ち上がって周囲を見た。

 

橋谷「わ、私はもう大丈夫です……それより、あの人も起こしてあげてください」

 

俐樹が指さす先にも誰かいたようだが、起こされるまでもなく彼は起き上がった。

 

火本「ぐ……うぅ……なっ、(ない)があったんだ!? ……のわっ!?」

 

起き上がった……が、彼も利奈と俐樹に似たの症状が出てしまったらしく尻餅をついた。

 

ハチべぇ「わけがわからないよ、魔法使いの身体なら耐性があるという事を忘れているのかい?」

 

上田「必ずと言って良い程に入る前は変身してたからなぁ……ちょっと忘れてたかも」

 

火本「結界、への、耐性? そいでこげな具合が()るなっちょったのか……!」

 

気持ち悪さを振り払うように軽く首を振ると、徳穂は指輪をソウルジェムに戻した。

その色は和を感じさせる渋めの茶色、魂の輝きに包まれその身を別の姿に変える。

 

 

着物に羽織と袴、その姿はまるで江戸の街中を歩く1人の侍のような姿だった。

 

足には足袋を履いて質の良い(わら)草鞋(わらじ)をさらに履き、

その両手には布質だがとても頑丈そうな手甲を着けた。

 

腰には茶に輝くソウルジェムが付いた鞘に1本の刀が収まっており、魔力が鞘から漏れ出ている。

重量感あるその風貌……魔法使いならぬ()()()、そう呼んでも強ち間違いでは無いだろう。

 

 

今のところ周囲にいる魔法使いは利奈を含めて3人のようで、

海里や蹴太に釖、3人の姿はどこにも見当たらない。

 

こことは別の場所に出てきてしまったのだろうか? 辿り着く答え、現時点ではこれかな。

 

進めそうな先を探すが、奥の方は前も後ろも順に鈍り先が見えない……先に進むには危険だ。

 

上田「霧みたいなのがかかってて奥までよく見えない……

足場もあまり続いてないしみたいだし、行くのは危ないかな」

 

火本「だが、こん先から今の所はいない使()け魔が出てくる可能性もあっとが面倒だ」

 

橋谷「確かに、見ただけでも危なそうですね……わっ、私の魔法で、奥の様子を見てみます」

 

不用意にこの闇の中には入れないと彼女は考え、機転を利かせて魔法を使った。

 

彼女の魔法は『植物』の魔法だ、黄緑の魔力で植木鉢を作り出して魔法を唱える。

 

 

橋谷「ロンサム・アンヴィー!」

 

 

声量があって力強いけど優しげな声、彼女の呪文に彼女自身の魔力は反応する!

 

あらかじめ植物の種が仕込んであったのだろう、1本のツタが植木鉢から出てきた。

 

向かう先はもちろん見えない闇の先だ、これである程度はわかるだろうと彼女は言う。

 

……ところが、その目論見はあまり間を置かないで崩れる事になる。

 

何故って、闇の先に探りを入れていたツタが急速かつ順々に枯れ出してしまったからだ。

 

橋谷「ぇ、え!? 何ですかこれは!?」

 

ハチべぇ「危険だ俐樹! この様子だと闇の正体は魔男の黒い魔力、早くツタを放すんだ!」

 

火本「そげな事をしちょっ時間は無さじゃっとよ!!」

 

そう言った徳穂は次の瞬間、腰に刺していた鞘を手にして刀を素早く振り抜く!

 

いわゆる『居合い斬り』という斬り方で、その一部始終はかなり素早い。

 

目に見えたのは茶の魔力の残像……気がつけば、その刃は鞘に収まっている。

 

俐樹は焦っていたのか植木鉢を手放すことが出来なかった、まだ抱けるように持っている。

 

……いや、植物を愛する彼女だからこそ乱暴に手放すことは出来なかったのだろう。

それを考えれば、咄嗟にツタを斬ってくれた徳穂の判断は大正解だったと言える。

 

上田「俐樹ちゃん! 大丈夫!? どこにもケガはない?」

 

橋谷「わ、私は何ともありません……ごめんなさい! 臨機応変に、対応出来なくて……」

 

火本「大丈夫(だいじょっ)! 見た感じ、そん植木鉢は大事(でし)な物じゃろから仕方のない事だよ」

 

とにかくだ、無理に先へ進むのは危険だということがわかっただけで収穫だ。

 

となれば()()()()()()ということになるが……結界にゴールがある以上、それはあり得ない。

なら、いったいどこへ進めばいいのだろうか? 次に話すべきはその事ぐらいだろう。

 

そんな事を3人と1匹で話そうとした……その時だった、見知らぬ声が一瞬頭に響いたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*★*:;;;;;:*★*:;;;;;:*上へ*:;;;;;:*★*:;;;;;:*★*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上田「……へ、上? 今誰か『上へ』って言わなかった?」

 

橋谷「ま、まだ私は何も言っていませんが……そうですよね?」

 

火本「……ん、(おい)の事か? (おい)もまだ(なん)()ていないな」

 

ハチべぇ「念話さえ送られた形跡はないね、本当にそんな声が聞こえたのかい?」

 

上田「みんな何にも言ってないの!? あれ? 変だな、

確かに今、声が聞こえたような気がしたんだけど……」

 

利奈の様子からして、声の事はどうやら本当の事のようだ。 彼女は嘘をつくのが下手な性格。

 

だが周りがその声を聞いていないのも事実……これは不思議な話だ。

 

そうなると、それは念話も使われていない利奈にだけ聞こえた声ということになる。

 

真相を知ろうにも情報が少なすぎるし、事象があまりにも唐突過ぎる。

 

判明には行き届かないだろうが……まぁ、このおかげで1つわかったことがある。

 

火本「上田さんの()事が正しければ、こん先は上に()こて進めば良さそうじゃっど」

 

橋谷「た、確かに……前後左右に移動できないのなら、上下のどちらかに進むしかありませんね」

 

上田「よくわからないけど、今は他に情報が無いしとにかく上に進もう! 早速飛行魔法で」

 

火本「あぁ……上田さんごめん、(おい)は飛行魔法使えない部類の魔法侍なんだ。

幸い足場はずんばい(たくさん)あっで、別の魔法でついて行っ事は出来(でく)っ」

 

ハチべぇ「徳穂、そこは魔法侍じゃなくて魔法使いじゃないのかい?」

火本「そこは好きでそう()てるだけじゃっで見逃してくれよ!?」

 

橋谷「私は飛行魔法が使えます、あまり使う機会がなかったのでそんなに早くないと思います」

 

上田「2人とも上に行くのに支障はなさそうだね、一通りの準備が出来たら魔法を使おうか」

 

一時は行く先もなくどうなる事かと思ったが、どうやら無事にこの先の方針も固まったらしい。

 

目的は魔男討伐、目標は他魔法使いとの合流。

 

さぁ! この暗がりを切り裂くように飛び交い、未だ見えぬ先へ進もう!

 

 

上田「アヴィオン!」

橋谷「フライト・クローバー!」

 

 

2人は魔力を込めて魔法を放ったのなら、赤と黄緑の魔力は空を舞う。

徳穂は魔法を使わず、魔法を使う2人を様子を見守っていた。

 

利奈の魔法は自身の主力としている棍が基準、これを基礎とした箒を作り出してその上に立った。

 

俐樹の魔法は空で葉の広い四つ葉が作られたかと思うと、丈夫そうな茎やいくつかの花が咲き、

1人乗りの簡素で可愛らしいブランコ型の乗り物になった。 俐樹は静かに座る部分に座る。

 

上田「あれ、徳穂さんは魔法使わないの?」

 

火本「どげな飛行魔法か確認したかったんだ、2人とも適性型で(おい)の判断は(ただ)したろかい?」

 

橋谷「は、はい。 私は少し遅いですが……利奈さんも私も適性型です」

 

火本「ふむ、なら(おい)が安全を確認しかたで先導して()っも大丈夫(だいじょっ)そうだな」

 

ハチべぇ「君の魔法は種類が少ない代わりに細かな調整が出来るんだったね。

僕自身見たことがあるけど、場の状況を読み取って魔力消費を抑えようとしているんだ」

 

徳穂はハチべぇの言葉を肯定すると、自らの両手に魔力を貯め始めた。

 

どうやらハチべぇの言う調整をしているようで、その貯まる早さは遅い。

 

そして魔力を貯めきったかと思うと、力強く自らの両膝を両手で叩いた!

 

例えるなら電流のごとく、ふくらはぎを駆け巡って草履へと到達する。

 

さしずめ『魔力付与の草履』と言ったところか、光る草履というのはなかなか見ない。

 

火本「(おい)はそこあたいにある刃の足場を登るから、2人は(おい)の後をついてきてくれ」

 

橋谷「先導してくれるのは嬉しいです……けど、危なくないのですか?」

 

火本「そん心配(せわ)はいらんよ、飛ばずに移動すっで逆に機動性()こてかわしやしんだ!」

 

そう言うと、徳穂は早速高く飛んで1段上の足場に登って行った。

 

優しい事に、下を見下ろして2人が登ってくるのを待っている。

 

まぁ……そんな事知らずに、俐樹は慌てふためいてしまうわけだが。

 

橋谷「えっ、えぇ!? ちょ、ちょっと待ってくださあぁ~~い!!」

 

彼は優しい事に待っていてくれているのだが、俐樹は慌てて後を追う為に飛び立った。

 

俐樹から利き手でで支える先、クローバーの大きなプロペラが光を散らして宙へと誘う。

 

彼女自身は遅い遅いと言っていたが、飛び抜けて遅いと言えるほどの遅さではない。

 

上田「私を忘れてもらっちゃ困るなぁ……俐樹ちゃん! そんなに慌てなくても大丈夫だよ!」

 

利奈も俐樹の後を追って空を飛ぶ、その早さは俐樹よりも明らかに早い。

 

そりゃそうだ、彼女はどちらかというと早さ重視な魔法使いなのだから。

 

追い越そうと思えば追い越せるが、利奈は俐樹に追いついて共に上へと進んだ。

 

 

巨大な図体ながら、軽快に結界の大半を占める刃の足場を登っていく茶の侍。

 

方言混じりな念話を聞きながら、2人の魔法使いはその後を追っていった。

 

しばらく時間も立てば俐樹も飛ぶのに慣れ、最初よりは早くなっていた。

 

上田「俐樹ちゃん大丈夫? さっきよりかなり早くなっているみただけど」

 

橋谷「はい、大丈夫です! さ、先ほどより飛ぶのに慣れてきたので」

 

火本「しっかし、随分(あばてもなか)()け結界だな……ぼっぼっ(そろそろ)(ない)かしら出てきてもおかしくないんだが」

 

何も問題がないというのは確かに安全で良いことだが、この場では状況が変わってくる。

 

ここは魔男の結界……この広さと不気味さからして、おそらくボス級の物だろう。

そんな場所で何も問題が無いという方がおかしいのだ、こんな危険な場所では。

 

……まぁそんな利奈の一瞬の嫌な勘は、すぐさま当たることになる。

 

火本((っ!? いかん、上から(ない)かが来るぞ! 武器を構えろ2人とも!!))

 

その忠告とほぼ同時に、確かに上から何か落ちてきているようだった。

 

複数の落下物……距離が迫るにつれてそれ、いや()()()の正体は明らかになっていく。

 

ほぼ黒に近い四角い石、歪に寒色が混じった丸い石。 様々な石がその正体だ。

 

ただの石に見えるそれらは刃にぶつかるなり、乱暴に着地するなりして動きを変える。

 

どっちの石も丈夫なのか、あちこちにぶつかっても割れることはない。

 

これで終わりか思えば……それでは終わらない、それらは変化を迎えた。

 

 

四角い石の方はゴトッと一度動いたかと思えば、両端から漆黒の腕。

時々闇に溶けて見えなくなるまでの黒い腕、10の指は先が鋭く尖る。

 

丸い石の方は上下からこれまた鋭い刃が飛び出し、2つの目と口が現れた。

暗がりな闇からはどこからともなく小さな球体が生まれる、刻まれるのは逆十字。

 

刃の上は刃の明るみに照らされよく見える。 四角い石は行進し、丸い石はこまのように回った。

 

上からは降ってくる、左右からは投擲と体当たり……下からは無いのが幸いか。

何故か? 飛び上がるには、石の重量はあまりにも重い。

 

そんな2種の石の豪雨が3人の魔法使い達に襲いかかった、冷たく容赦ない凶器の雨が。

 

 

鋭利の使い魔、役割は衛星。

鋭利の使い魔、役割は研磨。

 

【挿絵表示】

 

 

 

橋谷「ひっ……ひえああああぁぁぁぁ!?」

 

か細い悲鳴が一帯にに響くが、《病弱》と言われる彼女も伊達に魔法使いをやっていない。

 

魔法の影響も多少あるが、体重含め総重量の軽い彼女は風邪の影響を受けやすい。

 

落下の勢いによる風の影響で押されたのもあって、なんとか回避出来ている。

 

上田「あっ!? 危ない!!」((俐樹ちゃん私から離れないで!))

 

利奈はその早さを生かし、降り注ぐ2種の使い魔を軽々とかわしてみせた。

 

余裕があるのか、飛んでくる投石を自前の棍で舞いながらたたき落としている。

 

俐樹に当たりそうな投石ごと叩き落としている辺り、彼女の技術の高さを思い知らされる。

 

徳穂も先程の宣言通り上手く回避出来ているようだが……この猛攻では全員、時間の問題か。

 

さすがボス級の手下と言ったところか、使い魔の強度は並大抵の固さではない。

利奈の棍でも、叩き落としてその軌道を変えるか弾くかが精一杯で破壊には至らない。

 

火本「投石が()こすぎっ!? こん投石がなきゃ四角(しかっ)い方なら斬れるのに!」

 

上田「……()()()()()()()斬れる?」((投石が無くなったら斬れるんだね!))

 

火本((え? そうじゃっど、集中が出来れば連続で斬ることも可能だ、四角(しかっ)い石に限るけど))

 

刃に岩石がぶつかる音でやかましいこの環境下では、かなり念話は重宝する。

 

利奈が提案したのは、自分は投石を弾くことに神経を注ぐということだった。

 

俐樹にもその提案を話したところ、彼女はこの場を凌ぐ方法をひらめいてるらしい。

実行までには時間がかかるらしいが……そうなると、彼女の必殺魔法だろうか。

 

上田((私が投石を全部弾くよ! 徳穂さんは石を斬って、俐樹ちゃんは魔法の準備を!))

 

この猛攻の中であまり時間は使いたくない、すぐさま利奈は行動に出た。

 

上田((ハチべぇ! 使い魔や魔女・魔男の他にも、魔力は感知できる?))

 

ハチべぇ((可能だよ、かなりの範囲において僕は魔力全般の感知が出来るからね))

 

上田((じゃあ悪いけど俐樹ちゃんの魔法の出来具合と、他に魔法使いがいないかの探知をお願い))

 

ハチべぇ((君が探してほしい魔法使いは海里や蹴太、それと釖のことだね。

おそらくここは違う場所にいるだろう、君は使い魔の投石を弾くのに集中するといいよ))

 

上田((ありがとうハチべぇ! それじゃ、私はしばらくこっちに集中するからよろしくね))

 

それを期に利奈の念話は途絶え、彼女は2本目の棍を出して飛ぶ速さを早めた。

 

 

火本((利奈さんをこげな()こで見たこちゃ無かったけど、

尋常じゃなく()え! いかなこて(まさか)ここまでとは思わんかったな))

 

橋谷((利奈さんは1人でボス級の魔女を倒した経験がありますからね。

あぁ……魔法の方は、もうしばらくお待ちください! かなり大規模な魔法なので))

 

火本((準備に(あせ)っこちゃ()よ俐樹さん、彼女と(おい)()いながい上に(すす)んからゆっくい準備(しこ)()か))

 

そう念話で語る徳穂、傍らで両手で刀を握りしめて硬質な石をばっさり切り裂いた。

 

何度も、何度もだ。 技術は高く、斬った後の残骸にさえ飛び移って移動する。

その繰り返しの一刀が力強く、1回1回止めてはいるが手際は良い。

 

俐樹はこじ開けて進む侍の後について行く、抱かえる植木鉢に魔力を注ぐ。

 

かなり凝った作りで、ある程度黄緑の魔力が貯まったこの植木鉢なら、

すでに魔法を使えそうなものだが……さらに魔力を込めるとなると、

恐らく()()()()()()があってとの事だろう、考えなしはあり得ない。

 

目指す量の半分程貯まった頃にふと横を見ると、赤い光が目の前を横切った。

 

この状況だと恐らく投石を弾いてくれている利奈だろうが、視覚で姿を捉えられない。

前のボス級の魔女の時は少なくともその姿を目で捉えることが出来たが、今は見えない。

 

彼女の強さは明らかな伸びを見せる……これが、魔法使いの才能というやつだろう。

ハチべぇが多くは彼女と共にいるのもわからなくもない、信頼度の他にも安全度が高そうだ。

 

 

長いこと上に登って行ってるが、特に変化も無く順調に上に登ることが出来ている。

降ってくる使い魔の数もだいぶ減ってきているが……そう都合良くはいかないらしい。

 

 

一帯に響く何かが折れた音……硬質な音、植木鉢に刺さったのは金属片。

尋常じゃなく驚いたが、植木鉢とその中身自体に支障は無いので問題なさそうだ。

 

 

俐樹は音の方を見て気がつく、この金属片の正体が 刀 身 なのだと。

 

 

火本「しもた!? 刀(つく)っ魔法は(おい)そげん()よは()!!」

 

 

どうやら彼の魔法は攻撃や防御のに長けているが、制作の方は苦手としているらしい。

 

切り損ねた使い魔が飛びかかってその両手を振り下ろす、目的はその鋭い爪で切り裂く事だろう。

 

さすがに不意打ちには対処出来なかったようだが、風を斬るような早さで目の前に何か来た!

 

利奈だ! 投石を弾いていた作業からのこの突進、これは恐らく捨て身。

自身を…… 身 代 わ り にしようとしているのだろう。

 

そんなの 不 本 意 に決まっている! 多少無理をしてでも今に間に合わせる!!

 

 

橋谷「インテンス・ジャックツリー!!」

 

 

呪文と共に魔力を充填し終わった植木鉢を上に突き出す、急いだせいか若干魔力がこぼれた。

 

まぁ多少雑だったとはいえ、どちらにせよ間に合ったようだ。

 

照明……いやそれ以上の、例えるなら太陽にも匹敵するような強烈な光が放たれた!

 

魔力の許容量を超えたのか、植木鉢はひび割れて木っ端みじんに砕け散ってしまった。

入っていた土は渦を巻きながら魔力に還元され、リンゴより一回り小さい位の種が出てくる。

 

晴天と共に照らされた草原のように輝く黄緑……俐樹は芽吹く時を感じ取れた。

 

両手を向けて意識を集中するなら、種の皮は弾けて何本かのツタが飛び出した!

 

ほとんどがハサミの刃などに絡みついて土台とし、上下に編み上げられて急速な成長をする。

時には丈夫そうな枝が生え、時には広々とした葉が生え、成長を繰り返す。

 

若干の光源とさえなるその強大さ……まさにツタどころか大木と言うのが合っているだろう。

 

やはり『植物』は生きる物の一種なのか、ありがたい事に余った魔力が俐樹に戻ってきた。

まさか、これが魔力を過剰に込めた効果だとは想わないだろう。

 

魔力不足になるかと思ったが……これは思わぬ幸運だ。

 

さすがにこんな大木の全ては操作出来ないようだが、ある程度の操作はできるらしい。

さしずめ自分から数mといったところか……有効が広範囲なのがなんとも必殺魔法らしい。

 

上田「うわっ、なにこれ!? つ、ツタ? ……そっか、俐樹ちゃんが助けてくれたのか」

 

ふとした時に利奈の驚く声がする、声がした方を見るなら、

利奈と徳穂にご丁寧にハチべぇまでツタに捕まっていた。

 

近くには砕けた石が転がっている、一部残骸から生える漆黒の腕が生々しい……

どうやらツタが利奈と徳穂を救う時に、襲いかかってきた使い魔も破壊してくれたようだ。

 

火本「(あっ)ねじゃねか!? いくら(おい)が危なかったからって、捨て身をされるのは辛すぎっよ!」

 

ハチべぇ「利奈が行動は時折自分を計算に入れない、自己犠牲なんて身も蓋もないね」

 

上田「あはは……ごめんごめん、こうでもしないと間に合わなそうで思わず飛び込んじゃった」

 

橋谷「みっ、みなさん! よかった……無事だったんですね」

 

ハチべぇ「僕までツタに捉えられるのはわけがわからないけど、

利奈と徳穂は窮地から救われたみたいだね、使い魔の攻撃もほぼ無力化したようだ」

 

ほぼ無力化……どういうことかと考えてみたら、そういえば四角い石の落下が無い。

 

投石はまだいくつかあるものの、その数は最初に比べて歴然と減っていた。

 

丈夫そうな枝は生物のようにしなり、飛んでくる投石をある程度はたき落とした。

 

広々とした葉は傘となって四角い石の落石を防いだ、何度も落ちるがその先にも葉。

 

まるで日光を求める植物本来の姿、その葉の重なり具合からすれば

徳穂はもう少し魔力を減らしてしまっても登る事が出来そうだ。

 

まぁ落石攻撃がほぼ無くなったとなれば、切り裂く攻撃が増えそうなものだが……

その辺は利奈が臨機応変な対応でが防いでくれるだろう。

 

橋谷「本当に怪我もなくて良かったです! みなさん、無事、で……」

 

まだ何か言いたかったらしいが、だんだんと声は萎縮して前のめりになり……

 

おっと、乗り物から身体が離れて落ちる前に利奈が支えてくれだようだ。

何処かに飛んで行ってしまいそうな俐樹の乗り物は、徳穂が捕まえて支えてくれる。

 

ふむ、宙を飛べはしないが椅子として座るぐらいなら本人でなくても出来るらしい。

 

火本「うお……っと! (あっ)(あっ)ね、俐樹さんの乗り物どっかに()っしまいそうじゃったな」

 

上田「俐樹ちゃん大丈夫!? 急に倒れそうになって危なかったよ!?」

 

ハチべぇ「俐樹、君が必殺魔法を使うのはこれが初めてだったね。

しかも、既に完成していた必殺魔法にさらに魔力を追加して込めた。

未体験の大幅な魔力消費だ、身体への負担が大きかったんだろう」

 

今までの状況からして……ハチべぇの言う事は筋が通る、

利奈に頼まれて魔力を感知していたからわかった事だ。

 

橋谷「すみません、気が抜けた瞬間に突然めまいがして……

でも移動に支障はありません、構わず先に進みましょう」

 

火本「明らかにフラフラじゃねか! 何処か休めそな場所は……

ダメだ無い、投石が邪魔で落ち着けそうな場所が無いな」

 

上田「それなら私に考えがあるよ! 私達の進行具合は下がるけど、

俐樹ちゃんの意思は尊重できるし先に進むことが出来る」

 

そう言うと、利奈は徳穂に俐樹を任せて作業に取り掛かる。

両手に魔力を込めたなら、頭に明確な完成品を思い浮かべて呪文を唱えた!

 

 

上田「アロンジェ・ジュイサンス!」

 

 

両手に持っていた棍を重ねて、少し時間を置いて手早く広げる。

 

すると、広げたその空間に布が現れた。 一連の動作はまるで巻物を広げる動作。

 

形状的に完成品は……空飛ぶ絨毯? いや、面白いが空飛ぶ担架と言ったところか。

 

人を乗せて飛ばすにはそれなりの技術が必要そうだが、

まぁ彼女ならこの魔法具を上手い飛ばせるだろう。

 

利奈もなかなかしゃれたことを考える、これなら寝たままでも移動可能だ。

 

火本「こや担架(たごし)じゃっとな? 何回も棍(つく)っだけあって器用(じく)なものじゃっど?」

 

ハチべぇ「前にも似たような構造のを利奈は作った事があるね。

これに乗って移動しても、身体に何らかの支障は無いと思うよ」

 

橋谷「そ、そうなんですか? では……少し休ませてもらいます」

 

そう言うと、俐樹はふらつきながら利奈の手伝いを借りて担架へと寝転がった。

 

こんな環境下でも担架に横たわって眠ってしまう……

無理して貯まりきるのを早めた位だ、かなりの負担だったのだろう。

 

……ふとした時、利奈は新たに作り出した棍で投石をはたき落とした。

ここはまだ魔男の結界、しかもボス級の魔男が主となる結界。

油断は出来ない……ここから出ない限り完全な安全は無いのだ。

 

上田「投石止まないなぁ……こんな大木があるのに、どこから飛んで来てるんだろ」

 

火本「全部(すっぺ)防ぎ切っのは流石に無理(むい)な話か、()よ先に進んだ方が良さげだな」

 

ハチべぇ「下の方は残骸の他にも生き残りの使い魔が大量にいるみたいだね。

進むなら上に進んだ方が良いと思うよ、今までの方向を無理に変える必要もない」

 

上田「それもそうだね、じゃあこの葉を屋根にしながら上に登って行こうか」

 

火本「おっと!? ()りけど(すす)んのは少し待っちょっただきたい! 

()か刀を(つく)いたいんじゃっどん、魔法で(つく)っは得意じゃねんだ。

武器もないし、時間をくるれあ(おい)としても助かっかな」

 

確かに武器がなければさすがに大変だ、利奈は彼の魔法での政策を待つことにした。

 

折れた刀を慣れた手つきで鞘に納め、そのまま居合の構えに入った。

鞘の中で魔力が練って新たな刃を作っているようだが……その速度は明らかに遅い。

 

利奈は2人の護衛をしながら準備が整うのを待つことにした。

1人は休養1人は準備、それらが終わるのをゆったりと待つことにしよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

少しの時間を戻し、少し上に視点を進める。 そこには2人の魔法少年の姿があった。

 

水彩画の海のように暗闇を魔力が照らしていた、その色は青と水色。

 

闇の中で青い光を放ちながら飛ぶ複数の青い物体……

よく見ると、それらはヒトの手のひら程の尖った鉄杭だ。

 

主に四角い石に対してだが、落下してくる石全般にその鉄杭は刺さって行く。

 

それらは青の魔法少年に殴り蹴り、水色の魔法少年の魔法、

つまり『念力』の魔法による石破壊の起点となった。

 

中野((ちょっと海里! 本当に進む方向は上でいいの!?))

 

清水((心配いらねぇよ、確かに下の方がいる魔法使いの数は多いけどな、

下の方には利奈がいる……魔力感知出来るハチべぇもいるし大丈夫だろ))

 

中野((まぁ彼女の実力は僕も知っている、僕らのチームのエースだからね。

それだったら孤立している上の方にいる魔法使いの方を優先しようというのはわかるよ))

 

どういうことかというと、2人が目を覚まして変身したところまでは最初の3人と一緒だ。

 

だが使った魔法が違ったようだ、海里が最初に使ったのは魔法のコンパスを使った探知の魔法。

 

事前に作っていたのだろう、時間をかけて作ったその品は性能が高いと言っていい。

……まぁさすがに距離が離れていれば鈍くもなるが、この単調な結界では十分だろう。

 

探査の結果、上には1人で下には3人魔法使いがいることがわかった。

 

魂を交わした知人(リュミエールのメンバー)なら誰かということまでわかるようだ、そうでなければ性質が精一杯らしい。

 

性質というと、主なのをあげるなら……そうだな、

『形ある魔法』か『形なき魔法』かは大丈夫と言えばわかるだろう。

 

いくらボス級とはいえ、魔法使いが3人もいれば使い魔くらいは凌げるだろう。

 

……え、『もし魔男に会ってしまったらいくら3人でも大惨事じゃないか』って?

そんな事はあり得ない、何故なら彼ら彼女らは扉の向こうにいると決まってるからだ。

それはシステムが位置付けた規則、破られるとしたら無いに等しいレアケースだろう。

 

 

行く先、蹴太を先導に先へと進む。 そのルートは最も効率が良く、魔力消費も少ない。

 

飛び交う投石も彼の『念力』の魔法が退けた、いくつもの逆十字の投石の軌道を変える。

 

踏みしめる場は海里が使い魔に刺した鉄杭なのだが、所々使い魔を壊しきれない。

 

そこで海里の出番だ、後続の彼は壊しかけの使い魔を破壊してくれる。

 

時には丸い石の使い魔の本体さえ殴り飛ばした、ケンカ強さはなんとここで生きた。

 

2人の息はかなり合っている、魔力の色が似ていると色々な点が合うのだろうか?

 

それはさておき、2人は順調に先に進んでいたが……変化は唐突に、下から現れた。

 

清水「順調に行けば上につくだろうn……って何だ!?」

 

中野「これは植物!? 下の方から生えてきたのか!? 成長が早すぎる!!」

 

清水「確実に魔法による物だ……あぁなるほどな、これは俐樹の『植物』の魔法だろ」

 

分析は蹴太の方が早かったが、情報は海里の方が多かった様子。

海里の言う通り、これは俐樹の放った必殺魔法だ。

 

丈夫そうな枝、広々とした葉……攻撃の収まり具合からすれば、魔法の意図は簡単に読める。

 

さしずめ攻撃の無力化と言ったところだろう、思わぬ魔法だったとはいえこれはありがたい。

しっかりとした足場になっているのに、これをわざわざ無視して進むのには面倒だ。

 

清水「よっしゃ! とにかくこれを利用しない手はねぇな、これに沿って進もうぜ」

 

そうと決まれば使わない手は無い、2人は大木の葉を足場にして再び上に進んでいった。

 

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大木の頂点に辿り着く着く先、そこは目的地である結界の終着点でもあった。

 

何だか比較的楽に登れてしまったような気もするが、

普通ならここまで苦労をしないようには登れていないだろう。

 

下から投石が飛んで来ているが、石は意外と重くてあまり上の方まで上がってくれない。

下にいるのに、上にいる魔法使い達に向かって落石攻撃だなんてもってのほかだ。

 

まとめると、頂上に辿り着いてしまえば鋭利の使い魔を倒したも同然ということだ。

 

利奈一行が頂上に着く頃、俐樹の体調もすっかり回復していた。

担架の上で起き上がり、登り疲れた2人に回復薬(花の蜜)を作る。

 

上田「俐樹ちゃん!? ダメだよ! もう少し休んでいなきゃ」

 

橋谷「わ、私はもう大丈夫です、体調の方もすっかり回復しました。

散々休ませてもらったんです! もう攻撃はなさそうですし、今度は利奈さんが休んで下さい」

 

上田「でも! ……うん、ありがとう俐樹ちゃん」

 

回復薬を完成させた俐樹だったが、珍しく強めに出て利奈にこれを押し付けて来た。

元々押しが弱いのが利奈だ、俐樹の意思も尊重して回復薬を受け取る。

 

ハチべぇ「君は休憩を取らなくても大丈夫なのかい?」

 

火本「(おい)? (おい)は剣道で元から身体(ごて)を鍛えちょったのもあっとかなぁ……そげん()れてはいないよ」

 

ハチべぇ「元から鍛えられていた身体が魔法使いの変身時にさらに強化されたようだね。

それなら、利奈とこれほどの差が出るのもわからなくもないよ」

 

 

利奈が俐樹から受け取った回復薬をゆっくり飲みながら休んでいると……

何やらどこか近くで一同を呼ぶ声がした、それは移動しながら近寄ってくる。

 

清水「お〜〜い! 俺達はこっちだ、先に着いて待ってたぞ!」

 

中野「利奈さん! 俐樹さん! 徳穂! みんな無事ですか?」

 

橋谷「ぁ、あら? リーダーさんに蹴太さん! お二人共先に登り切っていたのですね」

 

清水「おう、正直俐樹の魔法はかなり助かったぜ。

落石を避けながら登るのが、途中から楽になったからな」

 

ハチべぇ「大木の葉が傘の役割を果たしていたからね。

結果からしても、君達への負担もかなり減少したと言えるだろう」

 

上田「……よし、全部飲み切ったし体力も回復した! 私が足引っ張っていられないもんね!」

 

火本「うんうん、利奈さん含め2人共回復したようで良かったよ。

……あれ、とこいで例の盗人の姿が()んじゃっどん」

 

徳穂は釖がこの場にいない事が気になったようだが、それは海里が真剣な面持ちで説明し始めた。

 

清水「釖は……俺の魔法が合っていればの話だが、恐らくあの先にいるぜ」

 

海里が指差した先、そこには禍々しい黒色の扉があった。

とげとげしいドアノブは、まるで入る者を拒む様。

 

黒い魔力……ハチべぇでなくても、そこから漏れ出る魔力は明らかに危ないとわかる程だ。

 

清水「魔力に大きな乱れが無いから、多分魔男に捕まってるな……

死ぬ事は無いとはいえ、一刻も早い行動が必要になると思うぜ」

 

上田「魔男に早く挑もうって事だね、先頭は私が行こうか?」

 

清水「おう、利奈は入ったら速攻で釖の救出に向かってくれ。

もちろん、無理そうだったら無理して行く必要はねぇ。

俺と徳穂が先に行く、蹴太と俐樹は後に続いてフォローしてくれ」

 

方針が決まれば後は簡単な魔法の確認だ、それを終えたらいよいよ魔男に挑む事としよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦の時は近い、運命の時も近い。 刻一刻と時は立つ……

 

 

この時、利奈は思ってもいないだろう。

 

 

まさか、この先で思わぬ者に救われることになるなんて……ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒く渦巻く空間の中、わずかな光を反射してそこにいる者達の存在を示す。

 

1つは化け物1つは人間、空間内に存在するのは今のところその2つだ。

 

そこに立ち尽くす1人の魔法少年、伝わるはずも無いのに問いを投げかけた。

 

 

「……どうして、何でこんな事してまで俺を助けたんだ!?

お前がそこまで罪を被る必要ねぇだろ!! なぁ!!」

 

 

答えが返ってくるわけがない、そもそも言葉が伝わっているかさえもわからない。

 

目の前の化け物はただ、()()()()()魔法少年を見つめるだけだ。

 

続く問いを断ち切るかのような、金属を弾いたような咆哮が響く頃……

どこか遠くで扉が開く音がしたような気がした、それが開戦の音と認識する前に。

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

中野「やっと有利になったって言うのに……どこまでこの魔男は強いんだ!?」

 

 

 

橋谷「こんなの初めてですよ! どうしてこんなことになっているんですか!?」

 

 

 

清水「っ!? り、ぁ……利奈ああああぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「利奈をこれ以上傷つけるなああああぁぁぁぁーーーー!!!!」

 

 

 

〜終……(27)闇を秘め変えて[前編]〜

〜次……(28)闇を秘め変えて[後編]〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




 こ れ は 長 い w ^q^ 気合いが入っていたとはいえ、結果長文。

なんとか15000字以内には収める事が出来ましたが……
あれ、後書きまで来れた人いるのかな? みんな大丈夫?(不安

前後編は戦闘シーンも多数入ってくる為、文章が長くなりがち。

段落をなるべく切り離して読みやすくなるような努力はしているのですが、
やはり量が多いと大変な物ですね。 長文無双で申し訳ない。

前後編は結構重要なフラグとかも多数混ぜている為、
確実に長文となってしまうのが逃げられない道……どうしようもない。


……え、『服装の表現が細かすぎて頭に思い浮かばない』?

ご安心を! その辺は私も自分の表現力に限界感じて描きましたw

左から俐樹、利奈、徳穂です。 相変わらずの画力ですが、参考までに。

【挿絵表示】



はい、この先安定の 雑 談 となります。 読むのが面倒な方は、
長めの改行を入れておくので、容赦なくすっ飛ばしちゃってください!








今回の雑談は……そうですね、『ご当地』についてでも話しますか。
え、『前にも話した内容じゃないのか』って? キノセイデスヨー 多 分 ^q^

うちの地元には地元限定ハンバーガーショップがありましてね、
観光客だけでなく私含めた地元民も愛するお店なんですよ。

名物は甘辛いタレにつけ込んだからあげのハンバーガーなんですよ!
これが飽きない飽きない何個でも食べれる、からあげ単体も最高!

まぁ何個でもと言ってしまうのですが、胃袋的に1個が限界ですw
ですが通い詰めはしますよ、たまにやる割引がお得。

そんなお店なんですが……最近四六時中混んでいるんですよこれがonz

原因? そうですね、新幹線がやって来たと言えばわかるでしょうか?

休日どこも行列だらけですよ……こんな経済効果いりません(泣

終いの果て、平日も交通網渋滞で私生活にも支障が出る事態。

儲かるならまだ良いけど 赤 字 ってどうなってるんだよ電車会社!

調べてみれば、石川県も以前こんな事態になっていたようです。
……全部じゃないですが、石川県民の気持ちがわかった気がします。

頑張れ地元! だけどもせめて頑張りすぎるな!! 特に黒z(殴








さて、文章的には長く時間的には早い。 とにかく、今回はこの辺で。

次回はいよいよ花火のように華やかで爆発的な展開がお待ちかねですよ!

予告的には完全に不穏な空気が漂っていますが、果たしてどうなる事やら。


それでは皆様、また次回。 ここまで読んでくれてありがとです~~!!

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