魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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ちょうど1週間後・・・ に し た か っ た w

今回はボス級の魔女につきちょっと長め、長文注意報。

プロットを書いてみたのは良いけど、なんでか2話分だった^q^;


こんばんは! 最新話の執筆に息詰まっていたハピナですよ!

情報をじわじわ出すというのは難しいもので、
それは出し過ぎても隠し過ぎても面白くない。

自分としては読者様の『予想外による驚き』を発生させたい!
ある意味アハ体験? 『そうだったのか』発生が重要な目標かな。


さて、雑談はこの辺りにして前回のおさらいといきましょか。


校内で孵化してしまった魔女・・・彼女の名は『居場所の魔女』。
現れたのはもちろん魔女の結界、でも複雑な構造。
魔法使い達は苦戦を用いられてしまいますが、なんとか突破!

模倣を超える実態、魔法使い達は常に成長している。

さて、いよいよ魔女のいる結界の最深部へと進みますが、
果たしてどんな世界観・・・魔女はどんな姿をしているのでしょうか?

前編は終わり、次は後編。 上がる幕の先は、第2部。



(21)無意味な身代わり[後編]

あなたの記憶に私はいない。 私の居場所もどこにもない。

 

 

座れる席はない、望む席がない。

 

 

助けての声も沈んで、浮かび上がることなく誰も救わない。

 

 

助けて!! 助かって!! 助けて、助かって・・・・・・

 

 

 

 

あぁ・・・また、闇が、迫り来る。

 

 

 

 

お願い、お願い、お願い・・・

 

 

 

 

救いが無いのなら、せめて私の周りに来ないで。

 

 

 

 

 

 

あぁ・・・誰が正しいのもわからなくなる・・・・・・

 

 

 

 

 

どうか、忘れないで。 私はあなたの、味方だから。

 

 

 

 

 

 

あぁ・・・・・・どうか、どう・・・か・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

私、を、忘れ・・・・・・ない、で・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の意識は闇に溶けた、もう思い出せるのは自分の存在の薄さくらいか。

 

集団の堂々巡りから外れて自身さえ思い出せない、そこに残ったのは孤独だけだ。

 

自分かどれだかわからなくなる、追い求めても思い出せる訳もない。

 

ならせめて、この孤独から抜け出すことが不可能となったのなら・・・・・・

 

 

その孤独を抱かえ、その呪いとともに眠ろう・・・感じなくなるほどに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橋谷「・・・あれ? 怖く・・・ない?」

 

下鳥「今すぐ危害があるわけじゃなさそうね、安心なさい俐樹」

 

橋谷「う、うん。 ありがと・・・」

 

優梨の後ろで小さくなっていた俐樹だったが、ホッとして優梨の横に出る。

それほどにまでこの魔女の結界(深部)は狂気的な物は無かったのだ。

まぁ、かなり散らかっているようで死角が多く油断は出来ないが。

 

 

周囲を包むのは天然の木材の香りが、一同の鼻腔をくすぐってくる、

太陽と思えるほどの大きな電球は暖かに辺りを照らした。

まるでそれは晴天の森の中・・・だが、ここは室内なのには変わりない。

 

そこは巨人の家の中とも言えるほどの窓のない大きな室内だった、一般の体育館の数倍はでかい。

 

雑多に置かれているのは家具。 イスにテーブルやソファー・・・

かなりの数と種類があるが、どれも同じ木材のみが使われているようだ。

 

その最深部、そこに今回の魔女は鎮座していた。 それは、現実であり得るようであり得ない姿。

 

 

木目が薄い味のある桜の木材、それが魔女を構成するものだった。

 

主に円柱に削られた木材で彼女は組まれ、座る部分には桜色のクッションが使われている。

身体を支える足は4つ、無難。 その先はまるで桜の花びら、ひん曲がって支えている。

 

背もたれは緑と白の木材で葱を3つ組み合わせたような模様で組まれており、

その中央では使われるはずもない桜の形ににた口がある。

 

その背もたれの根本から生えているのは翼・・・だろうか?

ムチのようにしなる丈夫な枝に等間隔に細長い宝石が付いている。

こんなもので飛べるのかと疑問に思うところだが、これで飛べてしまうのが魔族の恐ろしいところ。

 

 

ここまでの説明だと一見その姿は普通の椅子だが・・・

もし、彼女が商品化されたとしてもその売り上げは0だろう。

 

 

もっとも特徴的な部位、それは座る部分についた鋭く尖る 剣 山 だ。

まるでそこに座る者を絶対的に拒みでもするようにクッションに鎮座している。

 

全てを拒み、それ以上の思考をやめた少女の末路・・・それがきっと彼女なのだろう。

 

 

居場所の魔女、性質は孤独。

 

【挿絵表示】

 

 

 

そして・・・その両端には眠る少女、モノクロの椅子に縛り付けられている。

 

下鳥「っ・・・!!」

 

橋谷「ヒッ!?」

 

さすがの優梨も、これには苦い顔をする。

俐樹も似たような反応した・・・どれだけ彼女は優しいのだろうか?

 

「あんな魔女の間近に置かれているなんて」・・・とね、その思考は正しい。

助けに行こうとも、至近距離だったらとばっちりが2人にかかる可能性がある。

 

「ちょ・・・ちょっと! 誰か捕まってるよ!?」

 

「やっべ、魔法使いでも捕まるほどに強いのか!?」

 

月村「落ち着きなさい、まだ被害も出ていないのに怖じ気づくのは早いわよ」

 

「でも・・・」

 

月村「周りをちゃんと把握しなさい、死角が多いし距離を詰めるのには最適だわ」

 

上田「そうだね、使い魔も見あたらないしまずは様子見かな」

 

月村「そうと決まれば行くわよ、適当に固まって魔女との距離を詰めるの」

 

今回の芹香はなんだかやたら積極的なような気がするが、何故だろうか?

・・・あぁ、優梨をちらちら見ている。 やっぱりライバル視はあるらしい。

 

下鳥「今はそうすべきなようね、行きましょう」

 

そんな意識など優梨は動じず、気にするのは2人の魔法少女の安否だけだ。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

さて、それぞれ魔女の近くで死角に来た。 早速念話で作戦を組んでゆく・・・

 

俐樹は相変わらず怯えていて、なにかを握りしめて震えている。

 

上田((俐樹ちゃん、大丈夫だよ。 魔女はこっちに気がついていないから))

 

利奈がそう念話を届けて肩に手を置くなら、俐樹は小さく頷いた。

 

 

まずはこれからどうするか考えよう、優先すべきは人命救助だ。

 

 

魔法使い達は・・・そうだな、魔女の近くの家具の山の影に潜んでいる。

 

この魔女の結界には天然素材の家具の山が乱雑にあるわけだが、

その内のいくつかが魔女の近くにあるのだ。 隠れ場所にはちょうど良い。

利奈は魔女から見て右の方に潜んでいる。 優梨と俐樹は利奈と一緒。

 

芹香は風香と八雲を連れて反対側にいる、優梨の役割を担うらしい。

向こうの方が不真面目は多そうだが・・・大丈夫だろうか?

まぁ今更変えることも出来ないのでこのままで頑張るしかない。

 

ただ、魔女に目という部位が見た感じ存在していない・・・視覚がない?

いや・・・それはあり得ないが聴覚が高い可能性はある。

とにかく警戒は行ってはならないということは変わらない、注意せねば。

 

 

利奈側としては柿色の魔法少女を救いたいところ、

向こうは朱雀色の魔法少女を助ける作戦を立てているらしい。

 

あぁ、柿色の魔法少女というのは「なう!」とよく言っていた方だ。

その姿を例えるならバレリーナ・・・これを習い事にでもしていたのだろうか?

 

モノクロの椅子に縛り付けられ、悪夢を見るような顔で眠っている。

 

下鳥「『ボス級』と呼ばれる程の強さ・・・ねぇ。 いかにも動かなそうだけど、油断は出来ないわ。

 

何か 囮 になりそうな物があればいいけど、あの様子じゃ生半可な物で釣れそうにはないわね」

 

「え? 物じゃダメって事?」

 

下鳥「見なさい、あっちもこっちも物だらけよ。

それにあの魔法使い拘束の仕方・・・下手に拘束を解いたら怪我をするわね」

 

ふむ・・・再度見るなら確かに、背もたれの一部となる棒や椅子の腕を添える部位まで

まるで蛇のように腕に腹に胸と絡みつき、過剰に彼女らを束縛した。

 

「・・・よくわからんけど、生き物じゃなきゃダメって事か」

 

「魔法で生き物を作り出せたりしないの?」

 

下鳥「無茶言いなさい! そんな練金術みたいな事出来るわけないでしょ!」

 

上田「出来たとしてもすごい量の魔力を消費しそうだね。

 

 

優梨、私が囮になろうか? 早さに自身はあるし大丈夫だと「ダメよ」・・・え?」

 

 

・・・その否定は即答だった、そんなの言語道断だ。 とでも言う勢い。

 

 

下鳥「誰かを犠牲にして()()に進めようだなんて作戦は絶対に実行しない。

そんな事をしたら()()の名が腐るわよ・・・あなたは『道具』じゃないんだから」

 

上田「!」

 

利奈は気がついてなかった。 自らの潜在意識・・・その思考が、

 

 

『道具』としての行動に出ようとしていたことに。

 

 

その後に続いたのは利奈にだけに伝わった言葉だった、それは念話。

 

下鳥((その考え方はもうやめなさい。 

まぁ、また言いそうになったら私が止めてあげるわ))

 

・・・頭に直接伝わった凛々しくも優しいその言葉に利奈は泣きそうになったが、

今は泣いてる場合ではない。 落ちそうになった涙を飲み込んで天を仰ぐ。

 

橋谷「あ、あの・・・」

 

静かになったその状況、俐樹はそのあまりにも小さな声を出した。

 

小さくもやっとの俐樹の主張、優梨はそれを聞き逃さない。

 

下鳥「どうしたの俐樹、何か思いついたの?」

 

橋谷「!、えっと・・・ね」

 

俐樹は聞こえると思っていなかったのか最初は驚いた。

少しずつ、ぽつぽつと、1つ1つ話し出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

(☆ぶれいくたいむ☆)

 

俐樹が自分の考えた作戦をゆっくりと述べたり、

 

それを優梨がまとめてみんなに伝えたり、

 

さらにそこから朱雀の魔法少女救出側に情報伝えたり、

 

それを元に利奈が戦術を組んだり、

 

まぁ色々となんやかんや・・・

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ハチべぇ「やはり人類にとって『集団』というのは個人より良いみたいだね。

この短時間で結論を見いだす事が出来ている、僕の見解は正しかったようだ」

 

「・・・なんか、ハチべぇがまた難しい事言ってるぞ」

 

やっぱりハチべぇの理論的な言葉は一部不真面目のには理解出来ないようで。

 

上田「みんなで上手く意見がまとまったねって言いたいんだと思うよ」

 

「お、ぉぅ。 な ん と か わかったわ・・・多分」

 

「今のでもわからない人いるんだ」

「うるせぇ!」

 

下鳥「今はケンカしてる場合じゃないわよ、それは個人差だから仕方ないわ」

 

「あ、そっか・・・ごめん」

 

「いやいや俺の理解力が足りねぇんだ」

 

雨降って速攻で地固まる、すぐ仲直り出来るのはイイコトだ。

 

上田「俐樹ちゃん、お願いできるかな?」

 

橋谷「はっ・・・はい! がっ、頑張ります・・・!!」

 

 

さて、視点をおもいっきり変えていっそ魔女からその作戦を見届けよう。

 

彼女はいる、そこにいる。 だがそれは彼女自身にはわからない。

 

存在意義を自分で見いだせない、そう考える思想も闇に溶けた。

 

 

ねぇ来てよ、こっちに来てよ。 私はここにいるよ?

 

 

そんな願いは 絶 対 に 達成されないだろう。

 

彼女自身が居場所となろうが、そこに座ることは出来ない。

 

その末路は混乱か? 求めてるのか拒んでるのかもはや理解不能。

 

 

だから彼女は、居場所を他所に求めた。 居場所を・・・()()のだ。

 

 

悪夢を見せて、居場所を無くす。 その記憶は彼女の物だ。

 

だが決してそれでは満足しない、だって()()()()()居場所ではないのだから。

 

無駄な努力を繰り返す、それは決して達成されることは無いのに。

 

 

・・・さて、そんな結末の見えない堂々巡りはここで終わらそうか。

 

 

不意に飛び込むその生気、魔女の意識はその方へ向いた。

 

違う、それは周囲にある無機質な部下とは全く違う。

 

『命』・・・確かなそれは魔女の意識を確実に引く。

 

 

ぽとっと地面に落ちたとき、ふとそれは()()の光を放った。

 

 

橋谷「インテンス・ローズっ!!」

 

 

それは主の声を合図にしたかのように自身を暴発させた。

 

黄緑の小さな球体・・・魔法を凝縮して作られた『種』。

 

弾けた魔力を糧に、吹き出したかのように咲き乱れる!

 

 

魔女は振り向く、動かすことのないと思っていた体を動かして。

 

そこには巨大な花が咲いていた。 茨を突き立て、誇るかのように咲くバラの花。

 

確実に驚きを抱いただろう、それは居場所を奪った者達から意識が離れる程。

 

彼女の行動はあまりにも早かった。 刹那、赤色の魔法がバレリーナを包む。

 

それは自身に使った脱出の魔法、今度は自分意外に対して使用した。

 

残ったのは肘掛けが異様に伸びた椅子だけ・・・背もたれに浮かび上がるのは泣き顔。

 

 

魔女は怒る。 そりゃそうさ、彼女は居場所を奪われた。

 

奇声を上げ、居場所を奪いし異物にその鞭のような翼を振り上げる。

 

 

上田「誰か!!」

 

お姫様だっこでバレリーナを抱えていたが、力が無い利奈は片腕で支えられるわけもなく・・・・・・お?

 

橋谷「はっ、はいぃっ!!」

 

その声に反応した俐樹とっさに祈りを捧げた。

 

茨が利奈の方へ伸びたかと思うと、バレリーナをその花の中にかくまった。

 

 

上田「アンヴォカシオン!!」

 

 

すぐさま利奈は魔女の猛攻に対処する、その赤々とした棍で攻撃を弾いた!

 

物体と物体がぶつかり合う重々しい音・・・なかなか強い打撃だぞこれは。

 

ならばと利奈は受け流し、回転させて再度殴り飛ばす。

 

魔女はそのままバランスを崩し、同時に利奈は半回転して棍の箒に着地。

 

その時に起きた、 と ど め 。 

 

吹き抜いた魔力のがぐらつかせ、魔女を転倒にまで追い詰めた。

 

ダァンっ! っと木材が地面にたたきつけられる音が大きく鳴る。

 

その傍らでは数人の魔法使いがモノクロの椅子に攻撃を仕掛け、

仕切る芹香の指示のままに体操選手もどき(朱雀色の魔法使い)を解放した。

 

芹香は風の魔法で家具の山の影まで彼女を誘ってゆく。

 

 

作戦、成功。 確認すべきは2人の安否。

 

 

かくまう花はふわりと落ち、家具の山の影へと優しく着地した。

 

魔力の光と共にふわりと咲いたなら、キラキラと消えていく。

 

そこに駆けつけたのは優梨、寝転ぶバレリーナの状態を確かめた。

 

下鳥「ほら、しっかりなさい!」

 

優梨は軽くペしペしとバレリーナの頬を叩く、目を覚ましたのは割りとすぐだった。

 

要因はやはり束縛していたモノクロの椅子にあったのだろうか?

まぁどう考えてもそうだろう、魔女が要因の可能性も否めないが。

 

下鳥「目を覚ましたようね、体の方は「あの子は!?」・・・あの子?」

 

「だっ、ダメ!! あの子はプリマにならなきゃいけないの!!」

 

いつも笑っている彼女だが、今は何故か顔を真っ青に青ざめてパニック状態。

 

何かあったのだろうか? あの子とは誰の事なんだろう?

 

彼女の友人だった優梨はその事情を知っていた、この要因は悪夢だと確信できる。

 

下鳥「落ち着きなさい! ここはスタジオじゃないのよ!」

 

「・・・・・・え?」

 

ハッとなり周囲を見渡したなら、その周りには大量の家具の山があった。

 

遠くからは大きな音がたくさん聞こえる・・・皆、魔女と戦っているのだ。

 

下鳥「早く準備なさい、今の魔女はボス級みたいよ」

 

「・・・う、うん。 準備なう!」

 

まだ現状を上手く把握できていないようだが、とにかく魔法で武器を作り始める。

 

みかんのような魔力の固まりが出来たなら、彼女はそれを引き延ばす。

慣れてるのか手際がいいもので、ベルトにしたのなら腰に装備。

 

下鳥「言っておくけど、私はまだあなたたちを許した訳じゃないわ」

 

「・・・把握なう」

 

下鳥「でも、今はそれも無しよ。 早くあの魔女を救いましょう」

 

そうして優梨も家具の山、影から飛び出し魔法使い達に加勢した。

 

戦う前の軟体操、身体の下準備。 彼女の習い事はバレエ。

 

 

一方の魔女と戦う魔法使い一同、先導は赤色の魔法少女。

入り乱れる攻防の中を飛び抜けて戦闘に貢献した。

 

モノクロの椅子の姿から人の姿に変え、手足を伸ばして襲ってくる使い魔。

 

奇声を張り上げてその鞭のような翼を振り上げ、振り下ろし、

一度手にした物を奪われた・・・その怒りのままに襲い来る魔女。

 

 

同じ物は無い様々な魔法。

 

 

個々を見失った色の無い使い魔。

 

 

自身を見失い、闇に溶けた魔女。

 

 

双方一歩も譲らず魔力は弾け、攻撃に追撃で空間には焦げが付く。

 

そりゃそうだ、だってこの辺は大部分が木材だもの。

 

上田「っええええええええええいっ!!」

 

不意に集団から飛び出し、利奈は高く飛んだ!

 

振り下ろしたその攻撃はモノクロの使い魔を強く叩き落とす。

 

家具の山にその手その足を絡ませ空中をターザンのように移動していたのを

叩き落とすっていうんだから、キレイに直下で落ちるしかない。

 

固いのか柔らかいのかわからないその感触・・・なんだか不気味。

例えるなら、太いしなやかな枝をおもいっきり叩いたという所か。

 

月村「追撃!!」

 

芹香の指示、とっさの判断。 彼女は辞書をばっと開く。

 

辞書のページを手にして使い魔に投げつけるなら、その後を追うように多種の魔法が周りにまとった。

 

芹香の放った魔法の効果は『誘導』その効果は補助だ。

ふむ・・・あらかじめ紙飛行機にして折り、辞書に挟んでおいたのだろう。

 

だいぶ補助に板が付いてきたようだ、自身の魔法を理解しているのだろう。

 

それはさておき魔法の行く先、落ち行く使い魔に文字通り追撃!

 

その加速した勢いのまま地面に激突、ゴキっと変な音と共に地面が割れた。

 

そりゃ割れるよ、この空間の床はフローリングだ。

 

言うまでもなく使い魔は絶命、白と黒がばらばらに裂けて砕けた。

残ったのは白と黒の木材の残骸・・・どうやらこの使い魔も木で出来てたようで。

 

 

となると、燃やせば簡単に倒せそうなものだが・・・これはさすがに不真面目達にも理解出来るようだ。

 

もし、この場に火の魔法なんて放ったら燃え広がって大惨事だ。

 

そんな事もあって、加熱系は使わずに皆戦っているのだ。

 

まぁ・・・そもそも火の魔法を使う魔法使いがこの場にいないのだが。

 

 

その頃バレリーナがやっと駆けつける、準備に時間がかかったらしい。

 

家具の山からおそるおそる出てきたが・・・ふと、腕を引っ張られ転びそうになる。

 

そこにいたのは体操選手もどき(朱雀色の魔法少女)、その行動に驚いたような顔をしている。

 

「ちょっ! どこ行こうとしてんの!?」

 

「出陣な「え~~なんでよ?」う・・・ほぇ?」

 

「魔力減るし面倒じゃん? 倒すとこ影から見てようよ、その方が面白いじゃん?」

 

「え、ズルなう? うん楽しそう、でもボス級の魔女なのに大丈夫かなぁ・・・」

 

楽しい事や笑える事に目がない少女、彼女はその子が言うことに賛同だった。

 

 

だが・・・不安もある。

 

 

もし今戦ってる魔法使い達が敗北したとしたら、次の標的は隠れていて生き残った自分たちだ。

 

それを覆すのには彼女なりの理由があったようで、まるで遊びの話のように話出した。

 

「そんなのリュミエールの魔法使いがいるから大丈夫だって。

ほらそこ! 今だって使い魔倒しちゃったんだからさ、もう1体もほっといてもやられるでしょ」

 

「リュミエール、規格外なう? なら大丈夫・・・かな?」

 

さすが《ご都合主義》、自分達で勝手に納得するような理由で発想をごまかしている。

 

遠くから魔法を放っても良い物だが・・・それも嫌なようだ。 そうさせているのは狂気的な理由。

 

「それにさ、欲しいじゃん? ボス級のグリーフシード」

 

「あの魔女の? ・・・泥棒なう?」

 

「なにが泥棒さ、元々()()()魔女なのよ? 泥棒しようとしてるのは向こうだし」

 

そう言って笑うだろう、今までにない狂気的な笑みで。

 

 

「私達はね、失敗したの。 それを知ったら、()()()は悲しむわぁ・・・」

 

 

うっとりした目で頬を両手で覆う、恋い焦がれたその瞳には一切光が無い。

 

 

「そう・・・だね、汚名返上なう」

 

悪い事でも思い出したかのようにバレリーナの顔は歪む、これではステージに立てない。

 

「隙を見て返してもらお、黒い魔力が死に際吹き出すのを利用すれば余裕余裕」

 

・・・都合の良いことに彼女らの魔法はベルトとリボン、現時点では嫌な予感しかしない。

 

 

朱雀が微笑む頃、ちょうど2体目の使い魔も白と黒の残骸と化す所だった。

 

残されたのは魔女だけ、相も変わらずその場に鎮座している。

 

いや、鎮座というかもう横向きに倒れてしまっているのだが。

 

ムチ状の羽根は魔法使い達を拒んでいるが、それも時間の問題か。

 

「やった! 使い魔全部倒した!」

 

「なんだ、大変だったのは最初だけか」

 

月村「油断してはならないわ、最後まで気を引き締めるの」

 

下鳥「でも魔力の消費には気をつけるべきね」

 

月村「・・・まだ私が話していたんですけど」

 

下鳥「あら、そうだったの? ごめんなさい」

 

月村「・・・・・・」

 

軽く棍を床に付き、利奈は詰まっていた息をいったん抜いた。

とてとてと、早めの歩きで俐樹が利奈の元に寄ってくる。

 

魔法使いの体ながらも元々病弱だった俐樹は息が切れていたが、

利奈に褒められて嬉しそうな顔で疲れを押しのけ、精一杯喜んだ。

 

そんな中・・・芹香のいつもと違う様子が気になるらしく、

戦いながらも彼女は芹香の事をチラチラ見ていた。

 

何故、優梨をライバル視しているんだ? 何故、いつもより《冷淡》なんだ?

 

今の利奈はその理由はわからないだろう、まさか・・・芹香が優梨に

本心をつかれて精神を揺さぶられたなんて思わないだろう。

 

もちろん優梨に悪気なんて無いが。 それは芹香の受け取り方。

 

橋谷「ほっ、細いのがぴゅんぴゅん・・・」

 

下鳥「おつかれさま俐樹、よく頑張ったわね。 あなたの咲かす花々キレイだったわよ」

 

橋谷「・・・・・・や、やっ・・・たぁ!」

 

俐樹は自身の武器であろうジョウロを大切そうに抱きしめる。

 

月村「そういえば捉えられた魔法使いがいないわね。

逃げたのかしら? 助けられたのに逃げるなんて考えられないわ」

 

上田「でも、使い魔に捕まってるよりは良いと思うよ」

 

利奈は本当にそう思っているらしく、自然にニコっとしてみせる。

 

月村「・・・その発想を持てるのがすごいわね」

 

その利奈の寛大さに芹香はただ関心するだけだ。

 

 

一通り話終わった頃・・・魔女はその翼をとぐろに巻き、

横向きに倒れたその身体を起こし始める頃だった。

 

上田「あっ、魔女がまた動き出したね。 それじゃあ私先に」

 

そう言って持っていた棍を構え直して魔女の方を向・・・

 

 

橋谷「っあ・・・!? 危ない!!」

 

 

俐樹は思わずじょうろを手放し、声しか出ずに顔を覆った。

 

上田「えっ、何? ・・・うわっ!?」

 

拍子、利奈は突然横に飛んで倒れ込んでしまった。

 

そこにいるのは・・・この環境下で忘れられていた、()()()()居場所の使い魔。

 

魔女の翼と同じような形状、色の鞭状の足が生えた家具と言ったところだろうか。

 

虫のようにうねうねと足を動かしながら魔法使い達に這い寄ってくる。

 

その動きの不気味なこと不気味なこと・・・家具の裏については触れないでおこう。

 

本来そこにいることが役割であった使い魔、魔女の危機に動き出したのだ。

 

 

居場所の使い魔、役割は存在感。

 

 

優梨の鞭に、利奈に不意打ちをした使い魔ソファーベースの使い魔は投げ飛ばされたが・・・

 

利奈が起き上がって周囲を確認する先・・・芹 香 が 倒 れ て い た。

 

色々と仕込みをしていたのか辞書の間に色々挟んでいたらしく、

芹香の周りにはほんのページで折られた様々な折り紙作品散らばっていた。

 

上田「芹香!!」

 

駆け寄って抱き起こそうとした利奈だったが、直前でその手を止めた。

 

・・・()()()()()、苦痛の表情で腹の辺りを痛がっていた。

 

どうやら芹香は利奈をかばったらしく、真っ正面から

 

月村「構わ・・・ない、で! 戦いに集中・・・なさい!!」

 

自力で何とかしようと、開いて投げ出された辞書に手を置いて

橙色の魔力を込めようとしたが・・・痛みで意識が逸れてなかな溜まらない。

 

そうこうしている内に様々な家具が虫のような身体と化して襲いかかる。

 

すごい数だ・・・優梨は俐樹の護衛、利奈は芹香の護衛にまわる。

 

他の魔法使い達もその対応に追われている、魔女は空へと舞い眼下を見下ろす。

 

 

動くと痛い、意識も(うつ)ろ。 激痛でずぶずぶと沈んでゆく自我。

 

重たいまぶたの中、その瞳を動かすなら・・・そこには赤が写る。

 

利奈が棍を振り回し、乱舞して戦っている。 自身に攻撃は一切当たらない。

 

月村「・・・・・・」

 

ふと、頭に浮かんで渦巻くのはあの言葉。

 

 

『利奈よりも結果に囚われているね、かわいそうな子』

 

 

月村(・・・結果)

 

それは、彼女の性格である《冷淡》の裏に隠された思想。

 

何も出来ない自分に対する怒りも相まって、負の感情がぐるぐると渦巻く。

 

大きく破けたエプロンについたネームタグを見るなら、

大きなオレンジのピンは穢れが目立つようになっていた。

 

月村(落ち着きなさい、こんなところで絶望してどうするの?)

 

頭の中でそう自分に声をかけた、自問自答で自画自賛。

 

求めるべきは結果、自分の不備のせいで悪い結果を出すわけにはいかない。

 

 

何体もの同時に相手にしているにも関わらず、難なく乱舞をこなす利奈・・・

ふとその後ろ、ゴトっと大きなベッドが一瞬動く。

 

黒い魔力の気配・・・不意打ちだろうか? 芹香は鈍った感覚の腕を辞書へと伸ばす。

 

案の定、そのベッドは真っ黒な足をぶわっと生やしたと思えば突撃してきた!

 

上田「・・・っあ!? しまった!」

 

辞書からちぎったページをぐしゃっと丸めてその使い魔に投げようとした・・・が、

痛みが予想以上に激しく、投げるまでの動作が上手くいかない。

腹の中は相当砕けてしまっているのだろうか? 魔法使いの体じゃなきゃどうなってたか。

 

月村(動 き な さ い ! ! )

 

歯を食いしばって痛みを振り切ろうとしたが、現実その意志と反してしまった。

 

居場所の使い魔は利奈の不意をついてその図体を利奈にぶつけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不意打ちねぇ・・・ずいぶんとふざけた真似してくれるじゃねぇか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・ない! そこに乱入した魔法使いの手、いや足によって床に叩きつけられた!

 

身体に対する魔力の付与、強化されたその蹴り下ろしは木材の体を真っ二つにへし折る!

 

あらら、完膚無きまでに壊しちゃったよ。 守るならずらすだけでも良かったのに。

 

・・・まぁ、利奈に危ない目に遭わせようとした奴なら彼は容赦しないだろう。

 

 

清水「よぉ利奈、戦闘の方は順調か?」

 

 

そう言って利奈の前に来るだろう、それが当然のように何食わぬ顔で。

 

上田「か、海里! 来てくれたんだね!」

 

月村((遅かったじゃない・・・死ぬかと思ったわよ))

 

海里が2人に話しかける頃、周囲は青々とした魔力を帯びた道具が使い魔の相手をしていた。

 

もちろん道具だけじゃ使い魔の相手なんて出来るわけ無い。

それを助けとして1人の魔法少女が戦いを繰り広げる!

 

篠田「ていやああぁぁっ!!」

 

魔力の毛を輝かせ、デッキブラシを振り回して使い魔の相手をした。

緑の魔力を振りまきながら、使い魔を魔法使いの多い方へと追っ払う。

 

 

清水「・・・ってお前大丈夫か!?」

 

月村((命に別状はないわ、動けなくてごめんなさいね))

 

だいぶ芹香の念話は聞き取りやすいものになってきていた、

痛みが引いたのか? ・・・いや、感覚が麻痺しているのだろう。

 

増援が来て安心してしまったのか力が抜けてしまい、

握りしめていたはずの紙くずは転がり落ちてしまっていた。

 

海里が連れてきたのか、回復魔法が使える魔法少女がやってくる。

 

その顔を知っていた利奈は軽くあいさつをしてお礼を言うと、

ほわほわとした雰囲気で照れた。 うむ、かわいい。

 

治療魔法が開始した。 回復特化なその魔力は傷を、怪我をも癒す。

 

話す行為さえ邪魔するほどの激痛が治っていく。

芹香の意識は遠のいた、1つの心のつっかえを抱いたまま・・・。

 

 

海里が粉砕したベットの使い魔を利奈と絵莉で修理、魔法でただのベッドに作り替えた。

裏の方が色々とひどかったようだが・・・絶命していたし隠しただけで終わり。

 

・・・ふむ、なんとかベットして使えそうだ。 海里はそれを治療専門の魔法少女に託す。

 

清水「月村さんを頼んだぞ御手洗! ・・・さて、どう倒してくかだが」

 

篠田「みんなぁ~~! 一通り追っ払ってきたよ!」

 

清水「お疲れ絵莉、倒してもらって悪かったな」

 

篠田「あ、ごめん倒してはいない、追っ払っただけ」

清水「お、おう。 それでも十分だ」

 

上田「ありがとう2人とも、まさか不意を打たれてたなんてなぁ・・・」

 

清水「間一髪ってとこか、間に合って良かったぜ」

 

 

芹香を治療に専念させ、3人は家具の山の陰に隠れて作戦会議。

 

海里が連れてきた魔法使い達は新しく現れた使い魔対峙に加勢し、

優梨の念話を頼りに絵莉を連れてここまで来たんだとか。

 

蹴太の姿が見あたらないが・・・どうやら塾に行ってて来れなかったらしい。

勉強も大事だが、助けになれないのが心残りと言っていたのだとか。

 

篠田「このメンバーなら、海里補助であたしと利奈で前衛かな」

 

上田「あれ? 絵莉ちゃんって直接攻撃な魔法使えたっけ?」

 

篠田「勉強関連じゃなきゃ武器っぽいのが出来るって最近わかったんだよ!」

 

清水「あのデッキブラシもそうだな、動きがなんか不慣れだったが」

 

篠田「う、バレてた? そうなの、まだ倒すまでは至らなくて」

 

上田「武器っぽいか、私前に出るのは得意だからサポートするよ」

 

篠田「うぅ・・・ごめん利奈! 精一杯頑張るよ!」

 

 

話がまとまった頃、それは海里は絵莉の補助をしていた道具を引き寄せ終わった頃でもある。

 

清水「さらっと決めちまったが、まぁこの状況で早めの決定は正解だろ。

それじゃ、とっとと行こうぜ! 後ろは俺に任せとけ!」

 

絵莉は指示棒を腰のベルトにセットすると、デッキブラシをがっちり構えた。

利奈の棍とは重さが違うのか、その構えはどこか槍を持つ動作。

 

篠田「学校でボス級なんてあぶな過ぎし、早く救出しちゃわなきゃね!」

 

利奈はいつものように軽くその場で乱舞して、慣れた手つきで棍を構える。

 

上田「ハチべぇ、まだ激しく動く事になりそうだけど・・・

ごめん、もうちょっと我慢してちょうだいね」

 

ハチべぇ「身も蓋もないね、どうして君は僕を気遣うんだい?

優先すべきは魔女の救出、君は目の前の敵にだけ集中すると良い」

 

上田「もうハチべぇったら・・・じゃあ遠慮無く戦わせてもらうよ!」

 

それぞれが戦闘に向けて心構えを作るその先、使い魔が生まれうようよ這い寄る。

 

 

さぁ、もう一息だ! 襲い来る使い魔の闇、照らす程の 光 が迫る!

 

 

上田「ボス、ステージ!!」

 

 

魔女の周辺、そこでは魔法の火花を散らしながら戦闘が繰り広げられていた。

 

魔法使い側は劣勢を強いられていたが、増援により優勢に逆転する!

 

様々な魔法が飛び交う中、あちらこちらに花を咲かす魔法少女が1人。

 

彼女自身・・・実は、元々病弱な体だったせいで

魔法少女に変身したとしてもその体力はあまり高くない。

 

ハチべぇ曰く、人道的に作られたこのシステムではこれが精一杯だったのだとか。

 

もし『先駆者』のシステムで契約していたのなら、

間違いなく、今の弱い体とサヨナラすることになっていただろう・・・と

自身の見解を述べた。 あながち、間違いではないだろう。

 

茨にツルの鞭、鞭を制すのは鞭? 現状ただ1人の指導官ポジジョンの優梨は

両手に握りしめた2本の鞭でしばき倒しながら周りを魔女へと導いた。

 

下鳥「使い魔はこれでかなり減ったわね・・・そろそろ頃合いかしら」

 

「もう突っ込んでも大丈夫かな?」

 

下鳥「そうね、まずは前衛の魔法使いであの魔女に挑んで、

中間や後衛の魔法使いは残りの使い魔を倒しながら補助に回りましょう。

弱った頃にみんなで魔女を救いに行く・・・これで良いわね」

 

「まぁそれが無難だろうな、ここまで来ればひねる必要もねぇだろ」

 

「なんか、ずいぶんあっさりしてたね」

 

それほどこの結界の前半が複雑化していたという事だろう、

ここまで来る者がいるのが想定されていなかったのか?

 

下鳥((前衛は私に続きなさい! 後衛は使い魔討伐と補助に回るのよ!!))

 

そう言って迫った使い魔をはじき飛ばして魔女へと突き進む先、

そこへ三原色の魔法使いが優梨の目に飛び込んできた。

 

清水「すまん優梨、集めるのに時間がかかっちまった!」

 

下鳥「十分よ、良いタイミングだったわね」

 

篠田「はっ、わわ・・・すすすすごい女王様だ!」

下鳥「出来れば優梨と呼んで欲しいのだけれども」

 

そういえば、絵莉が真っ向から優梨と対面するのは初めてだ。

おびえはしていないが、その風格に対し絵莉には緊張が見える。

 

上田「あれ? 一緒にいた俐樹ちゃんは?」

 

下鳥「俐樹の事ね、話すのは進みながらでもいいかしら?」

 

上田「進みながら・・・うん、大丈夫だよ」

 

よくよく考えたら、もうのんびり話している暇はない。

 

唇の魔女の魔女の時はあまり人が来ない4階だったが、

放課後とはいえ現在元2階・・・一般人が来るのも時間の問題。

 

 

利奈は乱舞で使い魔を一掃、道を切り開く。

 

海里が隙を作った使い魔、絵莉がデッキブラシで追い払う。

 

優梨は倒された使い魔のガレキを2本の鞭でどかして道を作る・・・

 

4人の行動は後続の魔法使い達に多大な進みやすさを与えた。

 

使い魔と戦いながら進む先、優梨は俐樹の事について利奈に念話で説明してくれる。

 

下鳥((俐樹・・・すごい才能よ、自分の体の弱さをしっかり自覚しているわ。

植物について詳しいし、その知識を生かして魔法にしてる様子かしら。

あの子自身があまり行動出来ない代わりに植物が頑張ってる感じね))

 

利奈はタンス型の使い魔を殴り飛ばして引き出しを飛び出させた。

 

ふと視線を家具の山に向けるなら、それらは植物が生えていた。

 

家具達はガタガタと動いて隙間から黒い足を出し脱出を計ろうとしているが、

細部まで生え渡った植物は解放するわけもなく、のんきに花を咲かせていた。

 

その状態のがいくつもある・・・この植物の拘束が無ければ、

使い魔の数はこんなものでは済まなかっただろう。

 

クラス全員が立ち向かってやっとの数になっていたのだろうか?

そんな大量の使い魔、考えただけでぞっとする。

 

上田((どうやってこんなに・・・・・・あ、種!))

 

下鳥((その様子だとわかっているようね、そういう事よ))

 

 

・・・うん、文章的に伝わらないので私が説明しよう。

 

 

俐樹、彼女の活躍で数々の家具(使い魔)の山は拘束されているが、

そもそも体力のない彼女がどうやってこんな広範囲に植物を生やしたのだろうか?

 

彼女も彼女なりに考えていたのだろうか?

 

魔女に捕まりし魔法少女(現在ズル真っ最中)を見つけた際、握りしめていた物・・・

それが、彼女が扱う植物の魔法・・・魔法の『種』だったのだ。

 

これはいわゆる物であり、小さく持ち運びに困らない。

 

俐樹はこれを魔力を込めて投げつけた先で咲くように作ったのだ。

()()()()()()咲くように作る時に工夫をして、

その『種』を他の魔法使いに撒いてもらうように優梨が指示。

 

俐樹だ誰よりも早く魔女へとその遅い足を進める中、

周囲では彼女の魔法があちこちで発動していたということだ。

 

 

そんな大活躍をした俐樹が魔女の元にたどり着く頃、4人はちょうど俐樹に会う。

すでに俐樹は戦っていた。 植物に魔力を注ぎ、その行く末を花にゆだねる。

 

上田「俐樹ちゃん!」

 

橋谷「あっ、利奈さ・・・これ、足場に使ってください!!」

 

俐樹がばっとジョウロを掲げたなら、植物は入り組んで複雑な足場となった。

空を滑空する魔女だが、これを使えば飛べない魔法使いでも届くだろう。

 

無論、飛ぶ者はしっかり飛ぶが。

 

下鳥「利奈! 海里! あなたたちは先に行きなさい!!

絵莉! あなたはタンリュカ・ルシウムで使い魔の気を逸らすのよ!」

 

篠田「っえぇ!? なんで私の魔法知って・・・ってそれどころじゃない、

はぁ~~い! あたしがんばりまぁ~~す!!」

 

優梨が強く指示をする先、そこには利奈と海里がいた。

絵莉は2人に「行きなよ!」と声をかけ、立ち止まって掃除用具入れを召喚する。

 

清水「利奈、行くぞ!」

 

彼は道中使い魔の邪魔を散々してきた道具達を素早く収納すると、

今度は1本の青々と光る剣をどこからか取り出してみせた。

 

戦闘に関する空気は読みやすくて助かる、利奈は次の行動を理解した。

 

上田「りょーかい!」

 

走り込んで軽く飛ぶなら、双方飛行魔法を発動する!

足場の間をかいくぐって来た使い魔もいるが、行動の方が早かった。

 

 

上田「アヴィオン!!」

 

清水「フリューゲル!!」

 

 

赤と青の魔力を散らし、2人の魔法使いは逃げる魔女へと向かっていった。

棍の箒と魔力の翼・・・両手が空いてる状態での攻撃は驚異だ。

 

あまり自身の攻撃が上手く出来ない俐樹を優梨が守り、

絵莉はチョークを飛ばしながら他の魔法使い含め遠隔射撃。

 

俐樹の植物の導きもあってか、2人は比較的楽に魔女の元へと行けた。

 

清水「一気に決めるぞ!」

 

上田「うんっ!

 

 

クグロース!」

 

 

2人の息はかなり合っているもので、利奈は棍を強化し海里は構えた。

双方の魔力がそれぞれの武器に蓄積されていき、魔力の刃を作る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放つ、2人の必殺魔法。 双方の刃からなる魔法の斬撃!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上田「ソリテール・フォール!!」

 

清水「オブリーオ・テンポラーレ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

容赦ない2つの攻撃が、魔女の木の身体に容赦なく交差し斬った!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やめて! 嫌!! やめ・・・テ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やめて、おねがい、や・・・メ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

 

いやああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユ     ル     サ     ナ     イ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、木材の針が粉々になった魔女の口のような模様から飛び出した。

なんと不運な・・・どうやらこの模様の部分が本体だったようだ。

 

状況はスローモーション・・・利奈の目の前に針が飛んでくる。

 

とどめにしようにも、使い切りの魔力の刃は使用済み。

 

止まる思考の中・・・・・・唯一思いついたのは先ほどの事。

 

 

芹香に返そうとしていた紙くず、使おうとしていたのか魔力がこもっている。

どんな魔法かはわかっていないが・・・今起こせそうな行動はこれしかない。

 

 

魔女の本体に紙くず(芹香の魔法)を投げつける!

 

 

不運の分が返ってきたのか、その魔法は強力な物だった。

 

 

第一章、炎の巻『爆破』、対象は未設定。

 

良い意味では・・・・・・倒された芹香の敵討ち。

 

 

魔女の断末魔と共に一体は爆風に包まれる、無論利奈も吹き飛んだ。

 

 

本来ならその衝撃で大怪我してる所だったが、彼女は1人じゃなかった。

 

 

バランスを崩した体は受け止められ、爆風を受け身にしてその場から素早く離れる。

 

 

下鳥「っ!? 逃げるわよ!!」

 

橋谷「ヒッ・・・・・・!?」

 

篠田「うわあぁ!? なんか大惨事だああぁ!!」

 

みんなそれぞれの飛行魔法やらいろんな手段でその場から逃げる、全力で。

 

 

爆風に混じって魔女がやられた時の黒い魔力も混じってるものだから、

その状況はかなりの大惨事となっている。 誰も巻き込まれなかったのが幸いか。

 

 

木材の身体が燃えゆく中、全てが1点に飲み込まれる。

魔女だった木材も、モノクロの裂けた死体も、そこら中にあった家具(使い魔)も全て、

全部全部、結界ごとその結界にあるもの全て飲み込まれていく……

 

あとに残ったのは、少し濁った桜色のソウルジェムと

家具中心で葱と桜がモチーフのグリーフシード。

 

 

魔法使いは・・・居場所の魔女を救った。

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

清水「おい一言多いぞ!」

 

 

 

上田「よかったね、俐樹ちゃん!」

 

 

 

下鳥「『アレ』? それって一体なんの事かしら?」

 

 

 

「俺の目の前にいるじゃねぇか」

 

 

 

〜終……(21)無意味な身代わり[後編]〜

〜次……(22)闇の仕置きと六つ目の光〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




・・・ふぅ、無事に討伐出来て良かったですね。
やっぱり時間はかかりましたが、なんとか書ききりましたよ!


利奈と海里の協力して放った必殺魔法、双方良い前衛でした。


俐樹の大活躍に優梨のサポート、双方良い後衛でした。


絵莉、もうちょい武器の練習せい! 芹香、あんまり無理するな!


そういえば、魔女の姿を真面目に描くのはこれが初めてですね。
いかがだったでしょうか? 上手く描けてるといいのですが。

・・・そうだな、今回はイラストについて話しましょうか。

情けない事に、まだ自分のパソコンは持っていません。 おっふ^q^;
デジタルは慣れないのでアナログで描いています、鉛筆ってすばらしい。

ペン入れには某数字のコンビニで安く売っている
『サラサボールペン黒』を愛用、これがコピックにじまない!
着色用に『サラサボールペン赤』も使っています、サラササマサマです。

使っているコピックは10本、色鉛筆1式と蛍光ペン数本。
たまに太い油性ペンかな? これが着色用の 神 器 !

アイディアは日常か悪夢のどちらかからもらっています。
今回の居場所の魔女は・・・ふむ、日常寄りに描いていますね。
完全な思いつきで描いているのもまれにありますw

一番描くのが好きなのはやはり主人公である『上田利奈』ですね、
好きなモノの詰め合わせなので描きやすさ爆発。

一番描くのが苦手なのは・・・実は魔女文字だったりしますw
あんまり描いてても面白いモノは無く、ひらがなを書くに同じ。
まぁ・・・その絵にまどマギっぽさがものすごい出るので
必ずと言っていい程、それ関連の絵には描いていますがね。

こんなモノでしょうか? あとは小話がダラダラダラダラ・・・・・・

まぁ、今も絵を描くのは好きだって言葉で後書きは締めましょうか。
(pixivに出す勇気は 皆 無 で す が ^q^;)


それでは、また次回。 ここまで読んでくれてありがとうございます!
文章長くて ご め ん な さ い でした!!

マタネー ヾ(・ω・ ).....ポチッ! □_ρ(-ω-。) OFF

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