魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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今週は投稿できないと言ったな? あ れ は ウ ソ d(殴


はい、1週間で書く量を2日で書きましたこのアホゥはww
書いてしまいたいことが山ほどあったのでねぇ、飲茶しました^q^
前回大きく進展すると宣言してしまったので、その分もね。

なので今回は文章が長めですゴメンナサイ・・・休憩挟みながらどうぞ。

あの心理状態だからこそ書ききれるシーンもあったのでね、
休憩ちまちま挟みながらなんとか完成させましたよ。


※というわけで鬱要素とまでは言いませんが・・・
 学校での劣等経験者の皆様にはかなりきついシーンがあります今回。
 その部分は『★』のラインで区切ったのですっとばしてください。


前回は確か・・・ボトルシップの持ち主がやっと見つかったんでしたっけ。
やり方が気にくわなかったようで本人は怒ってましたが・・・
どっちにしろあの反応、無事返すことができてよかったですね。

今回はちょうどその次の日、まずはこの事を伝えなければなりません。
というわけで利奈はいつものように学校へと向かうようですが・・・
本日の学校はなんだか情報で溢れてますね、何事でしょうか?

まぁそんな感じで、今回の舞台の幕は上がります。
今日は昨日と比べて冷え込んでいるようです・・・。



(19)被る黒と病弱少女

昨日はそんなに寒くなかった。

 

日差しは照って穏やかで、凍りつきもやんわりと溶け水になる。

 

一方本日、冷んやり冷え込み風も吹く。

無論、溶けた水は再び凍りつく。 凍った地面はツルツルだ。

 

 

ドシャッ!!

 

 

……あぁ、早速被害者が出たようで。

 

 

中野「なんで学校の目の前で転ぶかなぁ僕!!」

 

大勢いる前でド派手に転ぶ蹴太、

ついでにバックの中身もぶちまける。

一部の生徒達からは笑われてしまった。

 

 

な、なんというアンラッキー……

 

 

その場に軽く震えながらうずくまって

強打した尻の痛みに耐えるなら、

1人の生徒が駆け寄って来る。

 

その生徒は海里であり、周辺の教科書を拾っていった。

彼の行動力は尊敬すべきレベルにまで達しているだろう。

 

清水「おいおい……大丈夫か?」

 

中野「痛いけど大丈夫、ごめん海里」

 

「うわぁ、痛そうだね……」

 

「ちょっと手伝ってやるか」

 

1人助けたなら、また1人、また1人と彼を助ける協力者が増えていく。

あっという間に散らばった大量の教科書やノートは片付いた。

 

「次は気をつけろよ!」

 

中野「ありがとう! 気をつけるよ!」

 

清水「ほら、行こうぜ蹴太」

 

中野「はい!」

 

……ふむ、良い関係築けている。

2人は不真面目と真面目という完全な反対位置にあるが、

似てる面があったらしく息が合っている。

 

それにしても、なんと優しい世界。

真面目だぁーー不真面目だぁーーと

1人1人の個性は強いものの、いざとなれば団結と協力。

 

校則は破る物と言う生徒も

何人かいるという現状だが、

その土台はしっかりしているらしい。

 

……まぁ、土台がしっかりしてようが

その土台の上で全員が全員

納得の行く結果が生まれるという

都合のいい話にはならないが現実。

 

 

もしそうだったのなら……きっと、利奈は()()()幸せだった。

 

 

それはさておき、助けてもらえて良かったね蹴太。

《不幸体質》なのは確かに災難だが、

それをフォローしてくれる周囲がある。

 

最近は不幸だって蹴り飛ばすような奴が、

言うなら上司になったから安泰だろう。

 

外とあまり気温は変わらない玄関、

校内の暖かな風とはさみうち。

玄関と廊下を仕切るガラス扉の先に

置かれたストーブの熱風だろう。

 

玄関前の広場に並ぶ各学年と組・・・

それぞれの日直の生徒達は腕や足をさすりながら耐えた。

ストーブ近くの生徒達は、ひっそりとその幸運を喜ぶだろう。

 

 

雪を手で払うようにほろったなら、

日直生徒のかったるい挨拶を耳に校内を歩いていった。

 

海里と蹴太が会話をしながら進む先、

ふと、海里はその頭に念話を聞いた。

 

中野「ん?」

 

清水「あぁ、悪りぃな急に立ち止まって。

先に行っててくれ、ちょっと用事が出来た」

 

中野「?……わかった、先行ってる」

 

清水「おう」

 

蹴太が先に階段を上がって行くなら、

海里は逆に階段を降りて行った。

向かう先はいつか来た空き教室、

使われていない為鍵はかかっていない。

 

教室のドアに隠れた生徒を見つけ、

念話を送ると同時に肩に手を置いた。

 

清水((よぉ、朝っぱらから念話か?))

 

 

隠れていた利奈は驚いた。

人気者な海里はいつも、誰かと一緒にいる。

実際、今日も蹴太と一緒にいた。

 

邪魔にならないようにと

念話で後で話したいと送ったのだが……

海里の優先順位を利奈は知らない。

 

肩に感触を感じ振り向いたなら、

そこには海里の意地悪そうな笑みがあった。

 

上田「わっ!?……あれ、蹴太さんは?」

 

清水「先に行かしたぞ」

 

上田「え、大丈夫なの?

楽しそうに話してたけど」

 

清水「心配いらねぇぞ? 後からでも話せる内容だし、

口調からして利奈の方が重要な話っぽいからな」

 

大事な話だと察してくれるのは

コミュ症な利奈としてはありがたいが、

それと同時になんだか申し訳なくなった。

 

だが、それは話さない理由にはならない。

 

上田「なんかごめん、ありがとう」

 

それらの意味はこの言葉に集約される。

 

その意味を理解出来る海里は、

「謝る必要はねぇよ」と

利奈の少しの罪悪感を消した。

 

清水((んで? 話したい事ってなんだ?))

 

早めの登校な2人には、

まだまだ余る程の時間がある。

利奈がその辺の学校の椅子に座るなら、

海里はその辺の学校の机に座った。

こら!? 椅子に座れ海里!

 

上田「昨日の事なんだけど……」

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

(☆ぶれいくたいむ☆)

昨日のやり取りを説明中。

膜鳴の魔男の特徴やら、

ボトルシップの返却、

津々村 博師の事などなど……

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

上田「じゃあこれ、リュミエールに寄付ね」

 

そう言うと、利奈はシルクハットを出して

その中からグリーフシードを取り出した。

まだ使われていないとれたての、膜鳴のグリーフシード。

 

昨日の穢れは別のグリーフシードで浄化を済ませたらしい。

 

清水「これが昨日利奈が倒した魔男のグリーフシードか」

上田「2人で倒したの!」

 

清水「お、おう。2人で倒したんだな。

(話を聞く限りほとんど利奈だが)

すまん、1人で倒させちまって」

 

上田「いいよいいよ! いつもの事だから」

 

清水「で、津々村は俺らの探し方が悪かったと言ってたんだな。

すぐ見つかると思ったんだが、俺の判断ミスだなぁ……

 

先に俺だけに話そうとしたのはそれが理由だったのか」

 

上田「みんなで頑張って探したのに、

怒られただなんて言いづらくて」

 

清水「だが津々村の大事な物には間違いねぇんだろ?

別に話しても大丈夫だ、それ位で凹む奴らじゃねぇよ」

 

上田「……そっか、そうだよね。

わかったよ、先に海里に話して良かった」

 

利奈は一通り話を終えたのなら、

安心したようにホッとした笑みを浮かべた。

 

清水「話せてスッキリしたみたいだな。

この情報、確かに頭に入れたぜ」

 

上田「うん、ありがとう」

 

その辺りでちょうど学校のチャイムが鳴った。

ふむ、そろそろ教室に戻った方が良さそう。

早くしないと担任の先生が来てしまう。

 

清水「おっと、そろそろ行くか。

めんどくせぇなぁ……授業とかサボりてぇわ」

 

上田「わからないところがあったら、

また私や芹香が教えるよ」

 

清水「ははは……その時は世話になるぜ」

 

情報は多い物の、多いってだけで

やっぱり勉強は好きではないらしい。

褒める物ではないが流石不真面目。

 

利奈が行くよと促すなら、

海里はだるそうにその場を後にした。

次の教科は一時間目の数学。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「起立!」

 

「礼!」

 

「着席!」

 

今日やった所は多分図形、

利奈が独自の問題を作成して

授業とは別のノートに

書き込んでるんだから

間違いはないだろう。

 

こんな変わったノートを作るのは、

花組には利奈くらいしかいない。

彼女は図形問題が好きなようで。

……ふむ、彼女の図工の高さも

図解能力の高さがあってこそなのかな。

 

月村「あら、今日やった所の応用?」

 

上田「うん! 結構面白かったから

もう一回やってみようかと思ってさ」

 

月村「なら、点Aと点Dの長さをバラバラにしてやってちょうだい。

結構面白い事になるわよ、ガラリと変わるわ」

 

そう言って、芹香は手際良く

利奈のシャーペンと消しゴムで

今書いてる問題をちょっと書き直した。

 

上田「え、ちょ、それ難しいよ」

 

月村「あら? あなたなら簡単じゃない」

上田「出来るけど面倒だよ!

 

今日やったとこの応用?

え〜〜っとこの公式が当てはまるから

この長さをx、こっちをyにして……」

 

花組が契約してからというもの、たまにある芹香のいたずら。

積極的なのは良いが……難問は押し付けないでほしい。

 

まぁ解ける程度のばかりな辺り、

芹香の優しさが見えなくもない。

 

月村「その式違うわよ、

そうするとxが違う数値になるわ」

 

上田「……あ、ホントだ違う」

 

図形問題好きと理数系、

2人の頭の性質はどうやら合うようで。

唯一違う点があるとしたら、

芹香の英語嫌いな点くらいか。

 

 

「「GS比較大会〜〜!」」

 

利奈が黙々と計算をする中、

不真面目のうるさい声の中で

気になる内容が入ってきた。

 

上田「じーえす……?」

 

月村((グリーフシードの事よ、

一部の魔法使いはそう呼んでるみたいね))

 

上田「……あぁ((グリーフシードの事なんだ))」

 

見ている感じ、どうやら誰が

グリーフシードの数が多いかを

比較しようとしているらしい。

 

利奈と芹香が趣味よりな勉強片手に

その様子を見守る中、

遊びなんだか真面目なんだか

方向性がよくわからない大会が開催した。

 

 

火本「……(おい)も参加していいのじゃっとな?」

 

地屋「全然? 大歓迎!」

 

「実際みんなノリノリだし?」

空野「ノリノリなのは君だけだと思うよ」

 

火本「まぁまぁ、お手柔らかに。

(おい)と古城殿2人は(あす)っで確認するわけじゃね」

 

古城「2人組で活動してるのって

僕らと力強達ぐらいでしょう?

どの位の実力か確かめたくてさ」

 

火本「(ない)かあったら協力も出来(でく)

 

空野「へぇ、ちゃんとした理由があったんだね」

 

地屋「当たり前だろ? 俺が選んだ連中だぜ?」

古城「等の本人はぶっ飛んでるけどね」

 

その時力強は軽いチョップを喰らわそうとしたが、

忠義はそのチョップを見事みきり白羽どりをした。

その流れの鮮やかなこと鮮やかなこと。

 

大体は合っている事なので

八雲は若干笑ってしまったが、

徳穂は冷や汗をかいて薄ら笑い。

 

 

地屋「さて、そろそろ見せ合いといこうか」

 

空野「みんなどの位ある?」

 

古城「もらったのもあるが……

まぁ、1〜2個って位だろ」

 

火本「そいじゃあ、取り出そうか」

 

教室の片隅で一同は

胸ポケットやズボンのポケット、

和風の巾着……あ、これは徳穂のだ。

せーのの合図で取り出した。

 

それらは雑魚級の物ばかりで、

まだ使っていないのは1つあるかないか。

 

古城「やっぱりみんな1個か2個なのか」

 

地屋「まぁそんなもんだろうな」

 

火本「魔力切れがあらかしたじゃっど」

 

地屋「……あ?」

 

古城「『魔力切れがほとんど』だとさ」

 

地屋「あぁ、まだまだ俺らも未熟な魔法使いって事だな。

学習しない奴らもいるもんなぁ 俺 含 め て」

古城「ちょ!?」

 

地屋「……ってか八雲、八雲!

なにボケぇーーっとしてんだよ?」

 

空野「え、だって……」

 

八雲は何かに気がついたようで、

見せ合うグリーフシードを見て

なにやら驚きを隠せない様子。

力強はその様子を見て、ふぅっと息をつく。

 

地屋「またいつもの女々しさか?

言わないとわからねぇぞ、

何が気になっているんだ?」

 

力強の言う事となれば八雲は断れない、

ちょっとの間を置いて話し出した。

 

空野「……僕の中途半端と力強の新品、

徳穂の中途半端と古城の新品。

全部置いてみて、窓際でいいから」

 

古城「へ?」

 

火本「よくわからんけど、

とりあえず置いてみろ」

 

地屋「言い方が乱暴だな」

古城「今のも鹿児島弁ね」

 

地屋「お、おう。 じゃあ並べてみるか!」

 

そんな感じで、3人は八雲の指示通り

それぞれのグリーフシードを窓際に置いた。

もちろん、八雲自身も置く。

 

地屋「……は?」

 

古城「何で、え? 何で!?」

 

火本「(なん)ちこっなんだ?」

 

空野「ほら、やっぱり全部同じだよ」

 

まさに、八雲の言う通りだ。

4人が並べた4つのグリーフシード、

 

 

全てが同じ形状……()()()()()()なのだ。

すなわちそれは、『被る』という事。

 

 

2個くらい被ってしまうならわかるが、

それが4個も被るとなると……

1度孵化をしたなら魔力の節約だとか、

いくらバカでも多少の警戒はするはずだ。

 

古城「……なんでこんな事に

なっているのかがわからないな」

 

火本「魔力の()っこが下手な魔法使()けなたろかい?」

 

地屋「……忠義、徳穂は何て?」

 

古城「今の? 『魔力の扱いが下手な魔法使いじゃないか』だって」

 

空野「それは無いと思うよ。

魔女や魔男の討伐という運命を

背負うという対価があるんだ、

合理的なハチべぇがそんな中途半端な

魔法使いを創るとは思えない」

 

地屋「ん〜〜あ〜〜……ここで考えても全然わからねぇな」

 

火本「みんなはそんグリーフシード、どこで手に入れた?」

 

空野「僕は病院の近くで見つけた魔女を普通に討伐して手にいれたよ。

その時は・・・力強はいなかったな」

 

地屋「じゃなかったら2個もならねぇよ。

 

俺は別の魔男を倒した時に、

誰かのグリーフシードでみんなのソウルジェムを浄化して……

俺が最後だったから、そのまま俺のになった感じだな」

 

古城「僕も魔女討伐で手に入れた感じだね、

自慢の手裏剣でみじん切りにしてやったよ!

米粒みたいに粉々なのさ!!」

 

火本「(おい)は……あんまい覚えちょらんな、

無意識に持っちょった感じかな」

 

古城「まぁ全部全部覚えてるって

都合の良い話は無いからね」

 

火本「面目(めんぼっ)ない、覚えちょらん」

 

 

地屋「情報量が多い奴に聞いた方が早そうだな」

 

空野「情報量……やっぱり海里かな?」

 

古城「清水海里を?」

 

火本「確か、情報屋を名乗っちょったはず」

 

空野「昼休みに聞きに行ってみよう。

このおかしな現象……

何かわかるかもしれない」

 

地屋「そうすっか、2人ともそれでいいか?」

 

火本「そいでいいよ、(おい)はみんなに合わすっ」

 

古城「情報屋っていうくらいだから

そりゃあ大量の情報持ってそうだしね」

 

地屋「じゃあそれで決まりだな!

グリーフシード片付けるか……あれ、どれが俺のだっけ」

古城「忘れるの早っ!?」

 

空野「力強は脳味噌も筋肉みたいな人だからね」

地屋「間違いじゃないがムカつくな」

 

火本「右端のが力強ので、左端が(おい)のだよ」

 

地屋「……ん? おぉ、徳穂覚えてたのか!

サンキュ、おかげで助かったぜ」

 

力強が教えてもらった

グリーフシードを手に取りしまうなら、

徳穂も別のグリーフシードを手に取る。

 

空野「僕のはこれだね、力強の隣に置いたから」

 

古城「じゃあ僕のは残ったグリーフシード……っと」

 

さて、グリーフシードをしまったなら

次の教科の準備をしなければ。

 

地屋「次の教科何だっけ?」

 

空野「歴史」

「「よっしゃああぁぁ!!」」

 

八雲が次の教科名を口にしたなら、

徳穂と忠義はあからさまに喜んだ。

 

この歴史オタク忍者に、この歴史オタク侍あり。

 

地屋「2人の歴史好きには敵わんなぁ……

わかんないとこあったら教えてくれよな」

 

そう言う力強の表情は冷や汗に苦笑い。

八雲は2人の轟きに驚いて

その場で固まったままだ、

口をぽかーーんと開いたまま。

 

 

上田「解けたよ、芹香」

 

月村「……うん、正解。

あれだけ言っていた割には

あっさり解けるものね」

 

上田「あっさりじゃないよ!?

ひっかけ問題だって気がつくまで

無駄な回り道したもん!」

 

月村「利奈、次にやる所を見てみなさい」

 

上田「次?」

 

利奈はノートの下に敷いていた数学の教科書を手に取って

ページをめくったなら、とある事に気がつく。

 

上田「……あ、これって」

 

月村「来週は有利に勉強出来そうね」

 

上田「ありがとう芹香!」

月村「まぁ理解出来なきゃ意味は無いけどね」

 

 

ふと、学校のチャイムが鳴った。

 

一時間目の休み時間はもう終わり。

 

月村「良い暇つぶしになったわ、

次やる時はもっと早く

解けるようになっておく事ね」

 

一見冷たい言葉だが、

そう言う彼女の表情は

かすかに笑みを浮かべていた。

 

上田「次の教科も頑張ろうね」

 

月村「あなたの苦手な社会だけどね、

歴史なだけありがたく思いなさい」

 

上田「社会……うん、ガンバルヨ」

 

そう言う利奈の目は死んでいたが、

容赦無く次の教科の先生は

教室に向かい歩を進めるだろう。

 

バックに数学の教科書とノートををしまうなら、

入れ替わりで歴史の教科書とノートが出てくる。

例の図形ノートはというと、机の中。

 

 

上田「…………」

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

冷え込む廊下と窓には結露。

冬になってから時が過ぎ、

この寒さにもだいぶ慣れた。

 

授業終わりなそんな中を

ふらふらと歩く利奈。

付き添う芹香は若干呆れ気味、

後に合流した絵莉は気を使う。

 

時間を進めて今はお昼休み、

利奈は冷たい黒の机に突っ伏していた。

復習ノートにぐるぐると渦を書く。

 

上田「なんで日本人なのに世界の歴史勉強しなきゃいけないのさ! うぅ……」

 

篠田「利奈にも苦手な教科あったんだ」

 

月村「一番苦手なのは地理だけどね」

 

上田「頑張ってるんだけどどうしてもダメ!

もはや拒否反応というか……」

 

月村「そう言ってる割には平均点以上は取っているけど」

 

篠田「えっへへ〜〜んっ!

何かわからない事あったら聞いてね!」

 

月村「なに言ってるのよ、

あなたいつも平均点付近じゃない」

篠田「ろっ、60点もあれば十分でしょ!?」

 

上田「あはは……ありがとう絵莉ちゃん」

 

相変わらず厳しい芹香に、

厳しさを受ける絵莉があり。

いつもの光景、利奈は軽く笑う。

 

月村「歴史を教えてもらうなら別の人からにしなさい。

そうね、例えば……」

 

芹香が何か考えるちょうどその時、

使われていない理科室の扉がガララと開いた。

出てくる人数は5人程。

 

地屋「よぉ〜〜っす、海里いるか?」

 

火本「お邪魔しもっす〜〜!」

 

月村「……ちょうどあの、

歴史オタクコンビみたいにね」

古城「初対面でそれ!?」

 

空野「まぁまぁ……あぁ上田さん、

この前はうちの力強がお世話になりました」

 

上田「え? ……あぁ、唇の魔女の時の事?」

 

空野「ずいぶんと活躍したようで、

僕としてもとても嬉しいです」

地屋「オカンかよお前は」

 

武川「絵莉〜〜! 久々にオイラが来たぞ!」

 

篠田「ぴかり? ぴかりだ!

久しぶり、最近なにしてたの?」

 

武川「月組に対する情報伝達、

今日来たのは経過報告。

灰戸も元気だよ、忙しそうだけど」

 

ハチべぇ「最初は好奇心で動く

生徒が多かったみたいだけど、

最近では学習して注意が出来てるね」

 

上田「ハチべぇ! 月組に行ってたんだ」

 

ハチべぇ「正確には花以外の

クラスの観察をしていたのさ、

風も鳥も月も特にこれといった

目立つ変化は見られなかったね」

 

上田「そうだったのか、

淋しかったよハチべぇ〜〜!」

 

利奈がハチべぇをもふる中、

使われていない理科室の前は

今までに無い程の賑わいを見せた。

 

中野「な、なんかカオスな事になってるね」

 

清水「そりゃ5人も同時に

理科室に入って来たら

こうなるだろ、倍だぞ?

 

お前ら! そこで話してても寒いだろ?

とりあえずみんな座れよ、一通り話を整理しようぜ」

 

 

とりあえず海里の促しで理科室に入り、

適当に10人は理科室の椅子に座った。

 

海里は1人席を立ち、

教師でもしているかのような振る舞いで

一同の話をキレイにまとめる。

 

清水「地屋と空野と火本に古城。

お前ら4人が話したいのが

『グリーフシードに関して』、

で、ぴかりが話したいのが

『月組の現状報告』でいいな?」

 

空野「先にぴかり君からでいいよ、

僕らの話は長くなるから」

 

武川「お? ありがとう!

んじゃ遠慮なくパパッと話す!

 

 

月組の様子の話だけど、

最近『真っ黒人間』が話題になってるんだ。

夜中に突然現れて、何もせずに消える影」

 

清水「真っ黒人間?」

 

武川「ちょっとした怪談話なんだけど、

妙に信憑性があるらしい……

って灰戸が言っててさ、

一応海里の耳にも入れとけって。

 

花組に黒い魔法使いとかいたりする?」

 

清水「いや、黒い魔法使いはいないな……

というか、黒は穢れの色だからな?

真っ黒だったら即刻孵化するだろ」

 

中野「使い魔や魔女、魔男といった

魔なる物である可能性は無いのかい?」

 

清水「それも多分ねぇな、魔なる物だったら結界を作る。

怪談話とかの話になる前に誰かが倒すだろうな。

 

そうだろ? ハチべぇ」

 

ハチべぇ「海里の言う通りだね。

魔女や魔男はその理想を実現するため、

自身の魔力を使って独特の結界を創る。

 

例外でも無い限り、結界を創らないで

行動するというのはあり得ないよ」

 

清水「……となると、

気になるのは真っ黒人間の正体だが」

 

武川「む〜〜……やっぱり、

細かな情報が少なすぎるよね。

大雑把な目撃情報しかない。

 

もうちょっと重点的に

灰戸と協力して情報を集めてみるよ」

 

清水「おう、花の魔法使い達にも

この話を後で広めとくぜ。

今日はわざわざありがとな」

 

 

武川「はいはい! オイラの話が

終わったよ、次の人どうぞ!」

 

地屋「……なんか、やたら怖い話を

サクッと終わらしてきたけど大丈夫か?」

 

武川「全然? 問題なし!

わかんないものは仕方ないもん」

 

空野「それなら良いんだけど……」

 

古城「先に進まないなら仕方ないな、

僕らの話も始めようか」

 

火本「そいもそうか。

 

 

海里殿、まずはこれを見て()し」

 

地屋「お、早速出す感じか。 えっと例のGSは……と」

 

清水「……まだその呼び方使ってたのか」

空野「地味に気に入ってるらしいよ」

 

さて、しばらくすると

4人の例のグリーフシードが

黒の机の上で並ぶわけだが、

これにはリュミエール一同……

と部外者1名は騒然となる。

 

清水「ちょ、なんだこりゃ!?」

 

篠田「同じグリーフシードが4つも!

よく4つも同じのが揃ったね、なんかすごいよ!」

中野「そんなのんきな話ではなさそうな雰囲気だよ」

 

月村「ちょっと、利奈もなんとか言いなさいよ!」

 

上田「え、だって……」

 

驚きを隠せない利奈がハッとするなら、

シルクハットをぽんと出して

そこから1つのグリーフシードを取り出した。

 

 

それは机に並ぶグリーフシードと同型。

 

 

月村「……え?」

 

篠田「利奈も同じの持ってたんだ!」

 

上田「ソロ狩した時に取ったんだ。

名前は確か……疑心の魔女、

これは疑心のグリーフシード」

 

それは、7本の線と歪で様々な花をモチーフとした新品。

 

地屋「5……個?」

 

空野「この勢いだと……探せばまだまだありそうだね」

 

火本「(だい)かは()たんけど、

こん子ちっと孵化しすぎじゃねか?」

 

古城「不注意にも程あるね、

管理がまるでなってない」

 

清水「ちょ……っと待て、これは流石におかしい。

この事を俺に話に来たんだな?」

 

空野「海里なら何かわかるかなって」

 

地屋「無駄に情報量あるもんな」

清水「お前後で覚えとけよ?

 

……いや、流石にこれはわからんな。

こんだけ何回も孵化するっていうなら

フォローとか指導とかを

誰かがしてくれると思うし、

俺の所にも情報が入るだろ」

 

古城「情報屋でもわからないか……

なにかわかると思ったんだけどな」

 

火本「予想以上にややこし事情が

ありそうじゃっど、この案件」

 

清水「問題はこのグリーフシードが

誰を元にした物かって事だな。

 

『7本の線』と『花』……か。

線だけじゃ何の事かさっぱりだし、

花を扱う魔法使いはいくらでもいるからな。

特定には時間がかかりそうだ」

 

 

空野「今すぐの解決は無理そうだね……」

地屋「まぁ薄々そう思ってた点もあるな」

 

火本「武川殿が()ちょった『真っ黒人間』も気いなっ所だ」

 

篠田「怪談話……だっけ? 正体もわからないし、怖いね」

 

武川「そうだね絵莉。 聞いたことあるなオイラ、

『おばけは正体不明だから恐ろしい』ってね」

 

月村「・・・馬鹿馬鹿しい、

おばけなんて非科学的なもの存在するとは思えないわ。

 

まぁ、私達がいる限りそうとも言い切れないけど」

 

そんな話のまとめの中……

ふと、利奈の頭に1つの言葉が

記憶の中から浮かび上がってきた。

 

上田「『花の闇』……」

 

古城「『花の闇』? なんだいその言葉は?」

 

中野「……なるほど。

このグリーフシードの異常な『被り』、

これが花組の見えない部分である可能性は高いって事だね」

 

清水「裏で何かしら動いてるってことか……

上手いこと隠してるんだろうな、

じゃなかったら俺に情報が入らない訳がねぇ」

 

地屋「しっかしすげぇな、

そんなに自分の情報に自信があるのか?」

 

ニヤニヤしながらそう言う力強に、

海里の中のナニカがぷっつんといったらしい。

海里はにこやかに笑いながら、1つの情報を開示した。

 

清水「お前……昨日魔法の練習で

自らを無重力にして飛ぶ

飛行魔法の練習をしたらしいな?」

 

地屋「……げっ」

 

空野「昨日? あぁ、あの事か」

 

力強が引き気味の笑みで冷や汗をかき、

八雲が若干の笑いを堪える中、

海里の話はそれでも続いた。

 

地屋「ちょっ、海里、それどこで知」

 

清水「その時八雲もその隣で飛行魔法を練習していて、

その時に発生した風にお前は」

地屋「だあああぁぁぁ!? やっ、やめろ! 恥ずいだろ!!

 

わかった、わかったからそれは言わないでくれえぇ〜〜!」

 

清水「嫌 だ と 言 っ た ら ?」

地屋「許せ海里ぃ〜〜!!」

 

もはや、力強は半泣きだ。

ここまで引っ張っておいて

言わない海里も結局は優しい。

 

 

さて、この辺でお昼休みの終わりを告げる

聞き慣れたチャイムの音が鳴った。

 

清水「……時間に救われたな、力強」

地屋「恥ずかしさで爆破するかと思ったぞ!?」

 

空野「結局言わないでくれてるんだから、

海里に感謝しなよ? 力強、

その調子だといつか言われるよ」

地屋「マ、ジ、か、よぉ……」

 

火本「がっはっは!

仲がいいのは()か事だな!」

 

古城「その辺にして早く教室に戻ろう」

 

篠田「えっと、次の教科は何だっけな」

 

中野「花組の次の教科は英語だったはずだよ」

 

武川「うわ、オイラやっちゃった!

月組の次の教科体育じゃないか!」

 

月村「早く着替えてらっしゃい、

これに懲りて次からは時間割を把握しておく事ね。

……次は英語か、ハァ」

 

武川「おおおオイラ先に行くよ! 遅刻するうぅーー!!」

 

着替えも含めるとなると……

まぁドンマイとしか言いようがない。

彼ならなんとか間に合うだろう、多分。

 

上田「私達も行こうか、

ぴかりさん間に合うといいね」

 

利奈の言葉を皮切りにして、

一同は机の下に椅子をしまい

旧理科室を後にした。

 

暖かさに慣れた体に、

冷え込んだ冷気が肌を刺す。

 

 

上田「あれ、ハチべぇどこ行くの!?」

 

ハチべぇ「ちょっとした観察だよ、花以外の組に行くだけさ」

 

上田「あ、あぁ花組じゃないんだ。

見つからないように気をつけてね、ハチべぇ!」

 

ハチべぇ「君の忠告を頭に入れておくよ」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

授業風景は省略しよう、特に気になる点も無い。

 

まぁ簡易にまとめるとしたら、

3時間目の国語の時間に

利奈が当てられて噛む事なく

読み切ってやったぜ。という感じかな。

 

ふとした放課後、教室から出たものの、

利奈は気になっていた事があった。

 

もちろん、先程話した内容

『真っ黒人間』や『疑心の魔女』

の事も気になる所だが、

復習ノートがどこにいったかが

見つからずに困っていた。

 

上田「旧理科室に忘れてきたのかな……

今日は集まる予定は無いし、

ちょっと見にいってみるか」

 

生徒達が雪崩れ込むように玄関に進む中、

途中流れから外れて旧校舎へと

利奈は進む先を変えた。

 

 

魔法がかかっている旧理科室は暖かで、

ストーブが止まっていても

不思議な事にその熱を保っている。

 

『不思議な事に』?

いやいや、これは魔法の仕業。

 

思った通り、昼休みに利奈が座っていた

位置に相当する机の上に

そのノートは開きっぱなしであった。

 

光の騒ぎで皆、意識が逸れて

ノートに向かなかったのだろう。

 

上田「うちに帰ったら復習しなきゃ、

今日の歴史全然わからなかったしなぁ……」

 

ため息をついてバックに復習用のノートをしまうなら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの微か……どこからか、小さな悲鳴が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゃ、ぁぁぁ…………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上田「え、何……っあ!?」

 

悲鳴の後、ぶわっと感じる黒い魔力。

その魔力はすぐに収まった。

 

一連の出来事は目の前を

一瞬で過ぎ去る閃光のように、

止まる事を知らず始まり、収束する。

 

上田「……今の、一瞬だったけど

魔女か魔男が孵化した時のだよね?」

 

そうとわかれば一心不乱に走り出す、

向かう先は上の方……2階立ての旧校舎、その2階へ。

近づく度に大きくなるのは笑い声。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

駆け込む先、その先は女子トイレ。

旧校舎のトイレと言えども、

全て洋式で女性に優しい。

 

学校のトイレ……そこは時に溜まり場となる。

 

 

 

★★★★★★★★★★★★

 

 

 

「あれ? こんなとこに生徒?」

 

「未知の訪問なう〜〜!」

 

上田「今この近くで悲鳴が聞こえませんでした……え?」

 

2人の女子生徒が立つ後ろ、

そこにはぐったりとした

三つ編みの女子生徒がいた。

 

……手足を縛られ、予想だにしてなかった

2人以外の人物の登場、少女は弱々しい声を出した。

 

「助、け……て……」

 

涙目で縛られた両手を差し出し懇願、

その両手からこぼれたのは

卵型のソウルジェムだった。

穢れは4分の1程くらいかな。

 

上田「っ! アンヴォカ」

 

バックを床に投げ捨てて

武器である棍を召喚しようとしたが、

それを言い切る前に利奈は不意打ち、

手足を縛り上げられてしまった。

 

上田「うわっ!?」

 

支える物が一切無くなり、

利奈はそのまま倒れこんでしまった。

 

「おっと? 邪魔しないでね、

今ちょっとした『作業』してるとこだから」

 

「作業中なう〜〜! お邪魔は禁物!」

 

上田「作業……? 見た感じ、

それがまともじゃないのは確かだよね?」

 

利奈は強気でそう言い放ったが、

それを聞いた2人は笑い出した。

そして、片方は利奈を見て言うだろう。

 

 

「だから、なに?」

 

 

ゾッとする程の冷ややかな()()

……それは利奈がいつしか忘れていた『絶望』、

湧き上がる恐怖に声も出なくなる。

いわゆるフラッシュバックというやつだ。

 

「……ん、急に大人しくなった?」

 

「弱体化なう?」

 

「まぁ楽なのには変わりないからいいか、

どっちにしろこうしてれば2人とも言う事聞くし」

 

そう言った彼女の手に蘇芳色の魔力の花が咲き、

その花を握り潰したならそこからリボンが生み出され、

……弱る少女の首を巻いた。

 

「ひぐっ!?」

 

「なぅ……!? ちょ、それは

いくらなんでもやり過ぎなんじゃ」

 

「あんたもあの子知ってるでしょ?

あいつからも気をつけろって聞いた」

 

「…………」

 

「こうなったら絞りとろ、

この子の口止めはあいつの

呪いでもかけときゃいいでしょ」

 

上田(呪い……?)

 

「うぅ、外道なう……」

 

「こんな事してる時点で外道でしょうが、

まぁやめる理由にはならないけど?」

 

「……楽しさ優先、エンジョイなう!」

 

 

縛りあげた利奈を無視し、

2人は少女の目の前まで来て

少女を冷たい目で見下ろした。

 

「さ〜〜て? あんた今日は全然孵化してないよね?

あたしらを養う気あるの?」

 

「ご、ごめんなさ」

 

「謝れば済むって思ってるんだぁ?

おっかし! バカじゃないの?

……こうなったら()()、やっちゃう?」

 

「放火なう〜〜!」

 

「やっ、やめて!! お願い!!

私は、死んでもいいから……家族には手を出さないで!!」

 

「なにさ、良い顔出来るじゃん。 さぁほら、ほら……! ほら!!

 

 

早 く し ろ よ 病 弱 少 女!!

あんた、それしか価値無いでしょ?」

 

 

顎を掴みガンを効かせ、不気味な笑いで至近距離。

瞳でも焼くような目で少女の目を睨みつけた。

 

隣にいる《笑い上戸》な彼女はただただ、笑っていた。

 

 

 

★★★★★★★★★★★★

 

 

 

上田「ゃ……やめて!! ひどすぎるよこんな事!!」

 

一瞬絶望に勝る、利奈の希望。

それは声となって2人を刺したが、

それは2人に届く事はなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……2()()に届く事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、2人を何かがピシャリとはたく。

 

「っあ!? 痛った!?」

 

「激痛なう!?」

 

隙が出来た、状況が変わったその一瞬。

利奈の意識は絶望から脱し、すぐさま行動に出た!

 

 

上田「ジュイサンス!」

 

 

披露の魔法、演目は『脱出』。

赤色の魔法が利奈を拘束から解放したかと思うと、

利奈は2人を押しのけて少女の元へとすぐさま向かった。

 

上田「大丈夫!?」

 

出したシルクハットからグリーフシードを取り出したなら、

転がっていた半分にまで穢れたソウルジェムを浄化する。

 

「……っ! 怖かったよぉ……!!」

 

利奈から浄化し終わりキレイになった

黄緑のソウルジェムを受け取ったなら、

少女は安心したかのように泣き出した。

 

「みっ、未達成なうぅ……」

 

「ちょっとなんなのさ!?

もう少しで孵化するとこだったのに、

バカなんじゃないの!?」

 

?「バカなのはどっちかしら?」

 

流れにそって現れた第三者。

一同が声の方向を見るなら、

そこには1人の女子生徒がいた。

 

 

……下鳥、優梨だ。

 

 

「ゆっ、優梨!?」

 

彼女は蘇芳色のリボンを

慌てて解いたなら、ポケットの中に

ぐしゃぐしゃにして突っ込んだ。

 

「登場なう!? ど、どうして優梨がこんな所に?」

 

下鳥「あら、私が今日日直だったの、

あなた達は忘れているのかしら?」

 

「……あっ、見回りなう!?」

 

「校内パトロール!? 優梨の日直は明日でしょ!?」

 

下鳥「今日 但木君がお休みでしょ?

繰り上がったのよ、順番が。

まさかこんな事になるなんてね」

 

「っ……!」

 

「ゆっ、油断大敵なう」

 

下鳥「……それで」

 

その言葉の後、優梨は持っていた鞭で

床をピシャアンッ! っと叩いた。

この場にいる優梨以外の一同が驚くが、

利奈は病弱少女に大丈夫と声をかけた。

 

下鳥「これはどういう事かしら?

私に隠れて、私から離れて、

何かコソコソやっていると思ったら……

 

あなた達だったのね? グリーフシードを()()していたのは!」

 

上田(量産……え、まさか)

 

利奈は何か思いついたようだが、

今はこの病弱少女を守るので手一杯。

シルクハットを出す暇も無い。

 

「ちっ、違、誤解なう!」

 

下鳥「じゃあその子はどう説明するって言うのよ?

どう見てもボロボロじゃない!」

 

「学校で孵化してたから、助けてやっただけだよ!

だ、だってってほら、これが証拠!」

 

彼女はそう言って1つのグリーフシードを

強気で優梨に提示して来たか、優梨は別の所に目がいった。

 

下鳥「……あなた確か、左利きじゃなかったかしら?」

「え、あっ……!」

 

優梨の言う事が正しいとしたら、

彼女は墓穴を掘った事になる。

グリーフシードを持つ手は……右。

 

優梨が逆の方の手を鞭ではたいたなら、

条件反射と痛みで握りしめていた手は緩んで

隠していた物を床に落としてしまった。

その手からこぼれたのは……

 

 

2〜3個はあるグリーフシード、それらは全て同じ形。

 

 

下鳥「確かに、決定的な証拠ね」

 

「…………」

 

「勘違いなう、違うよ! えっと、これは……」

 

下鳥「白状なさい、もう……生半可な嘘は通用しないわよ!」

 

「な、うあぁ……」

 

完全にオロオロとする少女の傍、

もう片方はまだまだ余裕綽々だ。

 

「嘘? あたし達嘘ついてないよ? ねぇ、そうだよね?」

 

「……う、うん、正直者なう」

 

「長い付き合いだったあたし達を疑うの?

友達でしょ優梨、最高の関係!」

 

下鳥「……その最高の友達が、

目の前で悪さをしているのよ。

なら、その子の首の跡は何?」

 

上田「首の跡……? ごめん、ちょっと見せてね」

 

利奈の頼みに、病弱少女は素直に承諾した。

首元のレースをどかしたのなら、

そこには何かが巻きついたような跡が

くっきりと残っていた。

 

「……っはは、墓穴掘り過ぎだね」

 

「ダメだよ!! ばらしたらあの人が!!」

 

「いいよ、もうばればれだし」

 

流石に余裕が無くなってきたのか、

病弱少女の首を巻いた張本人の顔には

若干の狂気が見え始める。

 

《ご都合主義》……もう彼女の勝手な都合は通ってくれないらしい。

 

「でも、これを喋る訳にはいかないんだよなぁ……

あたし達、そういう立場には無いんだし?」

 

不意に、彼女はそろそろとその場から移動をし

閉まっていたトイレの扉をガンっと思いっきり蹴った。

 

 

……その時、黒い魔力が扉の奥から噴き出した。

 

 

「うっ……うわあぁあ!!」

 

上田「大丈夫、落ち着いて!」

 

利奈は病弱少女を肩に背負うと、優梨の近くに移動した。

……魔力の勢いが強く、逃げるのには間に合わないようだ。

 

下鳥「これは……孵化!? 今何をしたのよ!?」

 

「べっつにぃ〜〜?

ちょっとした細工を起動したってだけ!

さぁ、時間を稼いでよ! 知己(ともみ)!!」

 

「孵化なう……ね、ねぇ、なんか様子がおかしくない?」

「え? まさか! 普通に孵化しただ」

 

その言葉を言い切る前に

彼女が蹴った扉の鍵は壊れ、

尋常じゃない量の黒い魔力が噴き出した。

 

その黒い魔力の異常な量を見れば、

この孵化はただの孵化ではないのは明らか。

 

生まれる、ボス級の魔女が。

 

上田「っ……うわっ!?」

 

「きゃああぁぁ!!」

 

下鳥「変身なさい! 結界に取り込まれるわよ!!」

 

黒い黒い魔力の渦の中……見えたのは赤と黄緑、紫の光。

 

それさえも飲み込み、構築されるは雅な空間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所々鏡張りの柱がある床がツルツルの、

赤と青と白の金織桜文様な世界。

 

鏡に映るは、自分自身。

 

本当の君はどれかな? 本当の私はどれかな?

 

それがわかるのは自身だけ。

それに気づかぬまま、時は流れる。

個人を見ない、平等な、時が。

 

 

居場所の魔女、性質は孤独。

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

ハチべぇ「利奈! あそこを見て!」

 

 

 

下鳥「ったた……悪いわね」

 

 

 

「全校生徒……ですね」

 

 

 

月村「・・・世の中、結果が全てよ」

 

 

 

〜終……(19)被る黒と病弱少女〜

〜次……(20)無意味な身代わり[前編]〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




自分で書いたとはいえ、すごい情報量ですねぇ今回・・・
『真っ黒人間』『疑心の魔女』気になるのはこのくらいでしょうか。
シリアスはもうおなかいっぱいです、コメディでも書こうかしらw

・・・あぁ、『★』を読んでしまった人は大丈夫でしょうか?
簡素に述べるなら『病弱少女を強制的に孵化させようとしていた』です。
いやはや、世の中にはこういった事があるから恐ろしい・・・


暗い話はこの辺で蹴り飛ばし・・・いや殴り飛ばしましょうか!
危ない危ない、蹴り飛ばすのは先人の方がいるんだったww


次回から魔女戦ですよ! 戦闘シーン、私のいっちばん書いてて楽しい回!!
もうある程度の進展や設定は決めてしまっているのですが、
そうだとしても楽しみですねぇ・・・長くならないように注意しなきゃ。


おっと、病弱少女について描いてみたんですよ。
別の絵も同時進行で描いていたのでかなり手抜きですが・・・
ごまかしで比較対象も描いてみたのでご参考までに。

【挿絵表示】



さ、て、と、ここまで色々とうだうだ喋りましたが、この辺で雑談にしましょう。
今回のテーマは『ストレス発散』についてにしましょうか。
えぇ、これが無かったらうえマギはこの時間に更新されていないです^q^

ストレス発散と言っても人それぞれ、その数は多種多様。
かかる費用に行う方法やそれによって生み出す結果。
かかわってくる要素は様々です、中には面白いモノもあるかも?w

え? 私ですか?(オイ聞いてないぞ 私はですねぇ・・・
まぁストレスが軽い時は基本執筆や絵を描くことなんですが、

重かった場合は・・・


放り込んで切り刻んで投げ込んで切って潰してとどめは 焼 き 討 ち ですね☆

【挿絵表示】

上 手 に 焼 け ま し た (^言^)

【挿絵表示】



一番ひどい時は1日中寝ていますね、夢の世界ってやつですわ。
明晰夢は確率なんですが、悪夢を見ることはないので助かってます。
この体質に感謝ですよ、夢を見やすい体質なんてそう簡単にありませんものw


・・・と、もう少し話したいですが、眠くなってきましたねぇ・・・
自覚無くともさすがにこの執筆スピードは疲れたんでしょうか?
失礼、短いですが今回はこの辺で勘弁してくださいonz


それでは、ここまで読んでくれてありがとでした!
次回もお楽しみに、です!!


ヾ(´¬`)ノ~●~*バクダンフリフリバイバーイ

         ドゴォォォォン!!
           ; '      ;
     ホギャー!?  ,,(' ⌒`;;)
        ,' (;; (´・:;⌒)
      ∧_,,∧(;. (´⌒` ,;) ) '
    Σ<,,`Д´>((´:, ,; ;'),`
     と;    )つ(´:;`;;)
      〉 ) 〉 〉
      〈_フ__フ

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