魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!!

さぁ~~ぷらいずですよ! 皆様!!
いつもと違うハピナです! 眠気でテンション崩壊です!!

( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

……うん、少し落ち着きますか。


ストック分2日で書き上げましたよ! おかげでこんなに早く次話投稿、まぁ今年最後の投稿になりますがね。

今年最後で前編って お い コ ラ 自 分 (;゚∀゚)


さて、今回は唇の魔女の結界の方からお送りします。

欲の性質を持つ魔女による結界……

さぞかしネットリした世界観になってしまいそうですが、
実際のところはどうなんでしょうね (・∀・)ニヤニヤ

2015年も後2日、うえマギは中途半端な所で閉めてしまいたいと思います。

まぁ、悪い言い方をするとこうなりますw

良い言い方をするなら、前編と後編が年をまたぐ作品って……
きっとうえマギだけですね! ちょっとした自慢です!(違


さて、舞台の幕を開きましょう。

今回の始まりはというと、4階にあるちょっとした広場。

そこにある唇の魔女のエンブレム……現実から異世界への向こう側。


《5月24日》
○変則改行の本格修正
○『w』の削除や『「」』の変更
○その他修正(追加、索敵等)



(14)底無しの独占欲[前編]

 

見渡す限りの極彩色。

 

藤紫になるはずの色彩達はキレイに混ざる事なく歪み、空間を汚く着飾ざらせた。

 

綺麗なはずの緑に輝くダイオプサイドの床は、

口紅が厚く塗りたくられて本来の光沢を失ってしまっている。

 

所々に無造作に咲く紫陽花は枯れきって乾燥し、

はらはらと枯れた花びらや木の葉がべたついた床に落ちる。

 

スベスベの石の地面にべったりとした口紅、そこから生み出される結果は……

 

 

 

 

尋 常 じ ゃ な く 滑 る !!

 

 

 

 

中野「よし!まずは状況確n」

 

 

……蹴太は慎重に入ったはずだったのだが、例の如く盛大にすっ転んでしまった。

 

魔法使いの衣装を着た身体中が、口紅でべっとべとになってしまう。

 

 

上田「うわっ!?」

 

青冝「え? ちょ、大丈夫なの!?」

 

地屋「……お前、相変わらず運悪りぃな」

 

上田「相変わらず?」

 

地屋「なんだ? 上田さんは知らなかったのか。

こいつ、花組じゃあ結構有名な《不幸体質》なんだぜ」

 

 

それを聞いた蹴太はがばっと起き上がり、半ギレで喋り出した。

 

 

中野「すっごく運が悪いんだよなあぁ僕!!

でも気にしてないよ……うん、いつものことだから!」

 

 

怒鳴るも同然でそう言うと、彼は深くため息をついた。

 

傾いてしまったメガネを直し、一風変わって真剣な顔になる。

 

それが合図なのか、彼の体からふつふつと水色の魔力が湧き出た。

 

 

中野「イキシサコネス!」

 

 

蹴太が魔法を使うと、ふわふわと湧き出ていた魔力は彼を覆うように安定する。

 

すると……すごい事に、蹴太の体から『口紅のみ』が剥がれるように浮かび上がった。

 

服の細部、繊維の奥にまで入り込んだ部分も全て。

 

終わった後に強めに横に手を払うと、浮かんでいた口紅の水滴は周囲に散らばった。

 

 

中野「やれやれ……なんともひどい目にあったな。

これはもう一度、作戦を見直す必要があるらしい」

 

そう言うと、蹴太はその場で両手を広げたまま一回転した。

 

すると、周囲に水色の魔力は広がって口紅は石の地面を這うようにずれる。

 

蹴太を中心に、口紅が塗られていないスペースを作られた。

 

 

「いつもの地味な魔法だな」

 

「物を動かすだけなんてね、でもおかげで難なく入れそう!」

 

中野「ちょっと!? 誰だ今地味な魔法って言ったの!? 一応認めるけどさ!?」

「認めるのかよオイ!」

 

 

皆、彼の魔法を笑っているが、利奈は何か違う物を感じていた。

 

 

そう、彼は『強い』のだと。

 

 

彼の魔法は『念力』の魔法、いわゆるサイコキネシス。

 

物体を動かす魔法のようだが、服の奥にまで入り込んだ微細な物体まで正確に操れる辺りが繊細。

 

他の魔法使いとは違う、何か別質な強さを感じたのだ。

 

 

中野「ほら! みんな集まって! 使い魔がいない内に話し切ってしまおう!

……ん? どうしたの? 僕の顔になにか付いてる?」

 

上田「あっ、いえ! ただ、すごい上手に魔法を使いこなすんだなって」

 

中野「僕が? っはは、そんな明確に褒める程の事でもないよ。

ただ『正確』ってだけで、僕だけだと何の力も無い。 僕が出来るのは仕切る事だけさ」

 

 

そう言って蹴太は爽やかに笑った、その笑いがどこか切ないのは気のせいか。

 

 

青冝「上田さぁ〜〜ん!こっちよ〜〜!」

 

地屋「蹴太も来いよ! 仕切るっつってもお前一応前衛だろ?」

 

中野「あ、今行くよ! それじゃあ行こうか」

 

上田「はい!」

 

 

蹴太が歩を早めると、利奈は慌ててそれについて行った。

 

 

ちなみに、ハチべぇはというと……

 

 

上田「ハチべぇ、結構長く抱っこしてるけど痛くない? あ、肩に移すね」

 

ハチべぇ「問題ないよ、僕の事は気にせず魔女討伐に神経を注ぐと良い」

 

 

移動中、利奈はハチべぇに自分に肩に乗るよう促した。

 

魔女討伐でハチべぇがいる時は、大抵利奈の肩に乗っている。

 

作戦を一通り組み直したり、構成を組み直したり、

これらを素早く行うやら……様々な事をみんなで話し合う。

 

 

 

 

一通り組み直した結果……前衛と前衛補佐は分解され、2グループに分けられた。

 

『前衛』『前衛補佐』『後衛』は『前衛A』『前衛B』『後衛』に組み分け直される。

 

後衛と前衛も何人か入れ替わり、利奈と絵莉と芹香は結局、同じ『前衛A』のグループになった。

 

蹴太は『後衛』の戦い方をみんなで相談しながら新たに組み直している。

 

これからの時間は、それ待ちと言った所か。

 

絵莉は素直に嬉しいようで、いつものようにはしゃいだ。

 

……いつもと比べるとなんだか、それ以上のような気もするが。

 

 

篠田「利奈ぁ! 月村さぁん! やった! 一緒になれたよ! やったあぁーー!!」

 

上田「良かったね絵莉ちゃん!」

 

篠田「うんっ!」

 

月村「あら、いつもより元気じゃない」

 

篠田「あれ、そう? 変だな、元気ないと思ってたのに……まぁいっか!」

 

月村「……変ね、いつもと違うわ」

 

上田「え? どうして?」

 

月村「あなた相変わらず鈍感ね」

上田「それはいいから本題話してよ」

 

月村「絵莉、いつもなら『いつもこんな感じだよ?』って肯定するじゃない」

 

上田「……あ、今のって否定だった! いつもの絵莉ちゃんなら絶対否定しないもん!」

 

月村「あの子……今回の魔女関連で何かしら因縁がありそうね」

 

篠田「?、2人ともどうしたの?」

 

月村「なんでもないわ、いつものように他愛のない話をしていただけよ」

 

上田「……あぁそうだ、飛行魔法の調子はどう?」

 

月村「かなり長くもつようになったわ。 飛行魔法のページを何枚か書いて、

折鶴にして周囲に飛ばしておけば私の魔法は自動供給される」

 

篠田「私もだいぶ良くなったよ!真剣にネットとかで調べて、

燃やす元素の配分を変えたりして無駄をかなり少なくできたの!」

 

月村「そういう利奈はどうなの?」

 

上田「身体の一部と言っていいほど慣れたよ。

もう立ったまま乗っても大丈夫だし、意識しなくても落ちないんだ」

 

月村「へぇ、かなり慣れたのね」

 

篠田「その内に棍で飛びながらジャンプしたりしてね」

 

上田「お? それ良いかも! 飛び慣れたらやってみるよ」

篠田「やるの!?」

 

月村「今すぐは流石にやらないでしょう……

利奈、慣れているのは良いけど、¥調子に乗ったらダメよ」

 

上田「分かってるよ、流石に羽目は外さないって!

こんなベッタベタな中で落っこちたら話にならないよ」

 

月村「気をつけてちょうだいね」

 

 

大丈夫かしら……という感じで、芹香は冷や汗をかいて利奈に引きつり気味に笑っている。

 

 

一通り話を終えると、そこに力強と天音がやってきた。

 

 

地屋「あ〜〜……すまん、リュミエールの3人ちょっと一緒に考えてくれないか?」

 

上田「?、どうしたの?」

 

青冝「地屋、空飛べないんだって」

 

篠田「え!?」

 

地屋「違 う わ! 条件が悪いんだって!」

 

青冝「何よ、どうせ真面目に練習やってこなかったんでしょ?」

 

地屋「おま……!」

 

篠田「わあああ!? ストップ! ストップ! 天音ストップ!!

天音の《不真面目嫌い》はわかるけどまず理由を聞かせてよ!」

 

上田「不真面目嫌い?」

 

青冝「…………」

 

地屋「何があったかは知らんが、俺にも助けたいやつがいるんだ。

お前に怒ってる暇は無い……今のところは免除してやるよ」

 

青冝「ごめん、なさい。 地屋見たいな人見てると自分の意思関係なくイラつくんだ」

地屋「厄介な性格だなオイ」

 

 

まぁとにかく、事情を知った力強は天音を許してあげた。

 

「俺は大丈夫だからな」と大口を開けて笑い、ふぅっと息を付いて話し出す。

 

 

地屋「俺の魔法が『重力』なのはみんなも知っての通りだ。

 

それで自分の体重をそこら辺の……まぁ軽いもんと交換して飛べるようにする訳だ」

 

月村「壁や床を蹴るなりして移動するって訳ね。

それg「あぁ! そっか!」……何よ、ビックリするじゃない」

 

上田「ここ、えっと……この結界、

 

 

『支えになる物』が1つもないんだよ!」

 

 

それを聞いた芹香は「あぁ、なるほど」と納得したような反応を見せた。

 

 

篠田「ふえ? どういう事?」

 

地屋「海里の言ってた通りだな、どんだけ発想力持ってんだよ上田さん」

 

 

これは敵わんなといった感じで力強は呆れると、絵莉にもわかるように飛べない理由を語り出す。

 

 

地屋「ようは『軽くなるだけで操作は別』って事!

普段は壁とか床を蹴ったりしてるが、そんなのはこの結界にはねぇみたいでな……」

 

青冝「その辺の枯れた紫陽花で何とかすればいいじゃん」

 

月村「無理ね、あまりにも乾燥し過ぎているわ。

 

無理に手すりなんかにしたらすぐに千切れるか折れるでしょうね。

 

……また怒ってるでしょう? 少しは自覚しなさい」

 

青冝「う、うぅ……」

 

 

いつもように冷たくあしらう芹香、それを言われた天音はというと、

流石に気をつけようとちゃんとした反省の態度を見せた。

 

反省し落ち込む天音を見て、利奈はふと、ある事を思いついた。

 

 

上田「あっ、そうだ! 青冝さんちょっと協力して欲しい事があるの」

 

青冝「……え? 私が何すればいいって?」

 

上田「うん、それで地屋さんにもお詫びする事が出来ると思うよ!」

 

青冝「?」

 

 

良い事を思いついたとばかりに利奈は少し自慢げに微笑んだ。

天音はまだどういう意味かがイマイチ理解出来ていない。

 

 

 

 

ちょっと時間が立ち、蹴太が『前衛A』と『前衛B』に声をかけてまわった。

 

どうやら、魔法使いたちの話し合いが終わったようだ。

 

蹴太は場をまとめ、魔法使いそれぞれに準備をさせる。

 

 

中野「みんな! 準備はいいかい?」

 

 

その声に答える、数々の魔法使い達。

 

 

……時は、満ちた!

 

 

中野「進めえええぇっ!!」

 

 

上田「アヴィオン!」

 

 

篠田「パラフィン・ナフテン!」

 

 

月村「第五章! 嵐の巻「飛行」! 対象は自身!」

 

 

地屋「ウエイトトレード! その辺にある枯れた花びらと()()2()()()()()を、トレード!」

 

 

青冝「ダブルスブロウ!」

 

 

飛行魔法が使える魔法使い達はその極彩色の空の中、

輝かしいばかりの魔力の光を明るく放ち、飛び立つ。

 

力強はというと、自らの重量を飛べる程までに軽くし、

『うちわ』で羽ばたいて風に吹かれる羽根の様に軽々と宙を舞った。

 

天音はそれを見守りながら、危なくなったらうちわを操ってフォローをする。

 

 

地屋「ふぃ~~! 助かったぜ! ちょっと調節とかが難しいが、飛べない事はないな!」

 

青冝「調子に乗らないでちょうだい、どれだけフォローしてると思ってるのよ」

 

篠田「まぁまぁ、飛べたんだし良いじゃない。

良かったね天音! 前より楽に飛べてるでしょ?」

 

青冝「う、軽いし楽には……飛べてる、今回はそんな無茶しなくても飛びながら戦闘出来そう」

 

 

まだ納得してなさそうな天音、だが安定して飛行できているのは事実。

 

どちらにしろ、体が軽いので簡単に飛ぶ事ができる。

 

基本嫌いな不真面目だが、地屋は別なんだなと自分なりに納得させる。

 

天音は嫌悪感を工夫しながら何とか減らし、うちわで羽ばたいた。

 

 

ふと下を見るなら、飛行魔法が使える蹴太がわざわざ地上をその足で走り、

入浴の魔法の魔法少女と共に、行く先行く先をどんどん洗い上げた。

 

恐らく、まだ飛行魔法を上手く使えない魔法使い達の為だろう。

空を飛ぶ魔法使い達と地上を走る魔法使い達は双方良い感じの距離を保っている。

 

 

((ってかあり得ない程順調だな!?))

 

((今回は簡単に終わるかな))

 

((しっかし無駄に広い結界だな))

 

((もう歩いても大丈夫? 何もいないし))

 

中野((いや、もう少し飛ぼう。 何かあったら困るからね))

 

((そうだね、油断大敵って事かな多分))

 

((多分かよ、合ってるぞ!))

 

 

頭に特に範囲の決まっていない念話が響く中、利奈は現状に疑問を持っていた。

 

 

上田「なんか、変だ」

 

篠田「変? 変って?」

 

上田「……えっと」

 

月村「言いたい事はわかるわ、使い魔が『あまりにも少なすぎる』わね。

何かをしてて襲ってこないならまだしも、存在自体が無いというのはあり得ないわ」

 

上田「う、うん。 それが言いたかったの」

 

地屋「『今回だけ使い魔がいねぇから』とかじゃないのか?」

 

青冝「それだと都合良すぎるわ」

 

篠田「ん~~、どうしてなんだ……ろ……」

 

 

絵莉が今使っているのは、視力を高める視力検査の魔法。

 

目を抑える丸に棒がついた黒い器具を左目に押し当て、

ふと抑えていない方の瞳を緑に光らせ魔法使い一同のより遠くを見た。

 

……その次だった、絵莉が急に飛行魔法の出力を上げて1人飛んで行ったのは。

 

 

青冝「絵莉!?」

 

月村「なっ……何してるの!!」

 

上田「待って絵莉ちゃん!!」

 

地屋「お、オイオイどうした!?」

 

 

スピードが早い利奈を筆頭に、絵莉を追いかけ魔法使い達は先を急いだ。

 

 

……飛べない魔法使い何人かを置いて。 なんというアンラッキー!

 

 

中野((待っ!? 待ってくれ!!))

「……行ってしまった」

 

「何やってんだよあいつら!!」

 

「あの先に何かあったのかな?」

 

中野「……どちらにしろ僕らは急がなくてはいけない、僕は上げるよ! みんなの為に魔法の出力を」

 

「あたしも上げるわ!洗浄液の濃度を濃くして」

 

「ちょ!? 蹴太と琴音ばっかり負担はかけられねぇよ!」

 

「琴音、デッキブラシかモップ出して。 私達だって掃除くらいは出来る!」

 

御手洗「みんな……!」

 

中野「……っ、ごめん! 僕の作戦ミスのせいで……みんな、先を急ごう!」

 

 

そう言って、蹴太は取り払う床に塗られた口紅の量を増やした。

 

入浴の魔法を使う琴音も、洗浄液の濃度を増やし素早く洗う。

 

他の魔法使いも何もしないわけではなく、一生懸命に行く先の掃除に貢献した。

 

飛べない魔法使い達は団結して先を急ぐ、蹴太は責任感が強く特に頑張ったんだとか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一方、空を飛ぶ魔法使い一同。

 

しばらく空中を飛び抜けると、結界の場面は切り替わる。

 

ダイオプサイトの床や枯れた紫陽花は相変わらずで、

地面に塗りたくられていた口紅はどんどん塗りが薄くなり、

やがてダイオプサイトの床は塗られていない面が見えてくる。

 

その向こうには使い魔がいた、その数は……明らかに、多い。

 

これは1つの空間にいる量ではない、何度見ても多すぎる。

 

 

唇の使い魔、役割はマネキン。

 

 

それらの唇につく口紅は、色とりどりで1つも同じ物はない。

 

色んな化粧品の羽が付き、カチャカチャと音を立てて空を飛んだ。

 

主の姿を変えるため、彼女らは口紅の実験台……

つまり文字通りマネキンとなり、魔女の変身姿を写すのだ。

 

 

唇の使い魔、役割は嘘つき。

 

 

肌色の丸い体に、巨大な厚ぼったい唇。

 

そこから、女性の手足が生えた……なんとも気持ちが悪い姿だった。

 

彼女らはわけのわからない言葉で嘘を吐く……ようは魔女語といったところか。

 

魔女の浮気がバレないよう、彼女らは魔女に嘘を提供するのだ。

 

 

段々と近くなるにつれ、わかってくるその全貌。

 

使い魔の多さにも驚いたが、何より何故あんな多くの使い魔が

1つにまとまっているかの理由が利奈は気になった。

 

 

 

 

……それは、すぐにでもわかる事になる。

 

 

 

 

篠田「……ぴかり! ぴかりいいぃぃ!!」

 

上田「絵莉ちゃん待って! 突っ込んだら危ないよ!!」

 

 

化学反応による噴出の向きを変え、使い魔がうじゃうじゃいる中に突っ込む絵莉。

 

何人かが絵莉の後を追ったが、なにせ現実で言ったらジェットエンジンの仕組み。

 

追いつけたのは、まずスピード重視の利奈。

 

風と重量双方の自然の力を合わせ、スピードを早めた芹香と力強。

 

力強のサポートをする天音の以下4人だけだった。

 

高速で斜めに降りる中、なんとか話す余裕が残っていた利奈は絵莉に念話で問いかけた。

 

 

上田((え、絵莉ちゃん! 何があったの!?))

 

 

篠田((ぴかりが使い魔に追いかけられてるの!!))

 

 

上田((ぴかりさんが!?))

 

 

……絵莉の言う通りだった。

 

地上を見るなら、そこには迫る使い魔から攻撃しながら逃げる何名かの魔法使いと、

大きめのハリセンを振りまくって必死に追っ払いながら半泣きで逃げる、

身体の所々が口紅まみれになってしまっていた光の姿があった。

 

 

武川「なんでやねん! なんでやねん!! なんなんだよこれええぇぇ!!」

 

「というか意外と追っ払えてるよな、何者だコイツ……」

 

「おしゃべりしている暇があったらもっと倒しなさいよ!!」

 

空野「でもさっきよりはだいぶ減ったよ!

 

 

荒れ狂う風よ! 風球!」

 

 

武川「なんっ! でやっ! ねんっ!!」

 

 

一応確認しておくが……光は月組、一般人だ。

 

使い魔に主な標的にされているようだが、彼のお笑いスキルは意外な事にここで生きた。

 

光の常備のハリセンによる適切なツッコミによって隙ができ、

その隙をついて一緒に逃げる魔法使い達が倒していった。

 

 

どうやら、使い魔の目的は光らしい。

 

 

別の場面から使い魔を連れてきてまで欲する者を手に入れようとする辺り、

魔女の、欲にまみれた本質が垣間見得る……。

 

 

武川「わっ!? ハリセン折れた!!」

「なっ!?」

 

「力を入れ過ぎたから折れたのよ!」

 

空野「あっ、危ない!!」

 

 

……とそこへ、4人にしたら嬉しい増援がやってくる。

 

 

篠田「ぴかりいいぃぃぃ!!」

武川「え、絵莉!?」

 

 

篠田「教科書を開けえぇっ!」

 

 

地上すれすれで一回転、着地と同時に指揮棒を召喚。

 

 

篠田「タンリュカ・ルシウム!!」

 

 

絵莉が指示棒を振ると、空中にチョークが現れ豪速球で使い魔にぶち当たる。

 

チョークと言っても魔力のチョーク、弾丸も同然。

 

空に向かうなら使い魔は打ち落とされ、地に向かうなら使い魔は何体か倒された。

 

降り注ぐ弾丸の雨が使い魔達を貫き、その数を大幅に減らしたのだ。

 

鳴り響くプラスチックが割れる硬い音、口紅もろとも肉が殴られる柔らかで鈍い音。

 

気のせいか、チョークの量がいつもより多い。

 

どうやら相当必死だったようで、一度に大量の魔力を準備もなく

使った絵莉は、着地した瞬間にその場で軽くめまいが起こる。

 

 

篠田「はぅ……」

 

 

指示棒は落とさなかったもののその場に倒れそうになるが、それは別の人物によって支えられた。

 

 

武川「だっ、大丈夫かい絵莉!?」

 

 

絵莉は静かに呼吸しながらうっすら汗をかいている。

 

ぐったりとした様子で顔をあげると、その表情はどこか安心をしている。

 

 

篠田「良かっ、た……間に合った」

 

武川「……そっか、絵莉も魔法少女なのか。

ごめん、オイラのせいで絵莉フラフラじゃないか」

 

 

光は情けなさそうに唇を噛んだ、自分の情けなさに対してだ。

 

自分の不備のせいで大切な友人が無理をする事になってしまったと。

 

そんな様子を見て、絵莉は腹から声を出した。

 

 

篠田「……お笑い芸人が笑わなくてどうするの!」

 

武川「え?」

 

篠田「あたしが……勝手にやっただけ、ぴかりはいつもみたいに周りを笑わせていればいいの」

 

そう言って絵莉はまだふらつきながらも自力で地の上に立った。

 

若干無理をしているように感じるが、絵莉は光に笑みをみせる。

 

 

武川「……絵莉」

 

 

月村「お取り込み中悪いけど、来るわよ。

絵莉が倒した使い魔の数は全体のまだ半分と言ったところかしら」

 

芹香が声をかけてどこか指差すなら、その先には唇の使い魔達がうじゃうじゃと迫ってくる。

 

最初よりは数が減ったが、やはりその数は脅威だ。

 

 

上田「絵莉ちゃん、戦えそう?」

 

篠田「うんっ! ちょっと休めば後半には参加できそうだよ」

 

上田「わかったよ、絵莉ちゃんはしっかりぴかりさんを守ってね!」

 

 

そう言って、利奈は光のハリセンを握りしめる。

 

すると、赤々とした魔力が簡易的な紙製のハリセンを

やわやわと変形させながら、魔法使いが使いそうな重厚なハリセンに変えた。

 

 

武川「のわあぁ……!?」

 

上田「手元のスイッチで紙と鉄が切り替わるから! じゃあ行ってくる!」

 

武川「ちょ、ちょっとおおぉぉ!?」

 

 

こんな時でも、機能性を考える辺りが利奈らしい。

 

呆気にとられる光を絵莉に任せ、利奈は前線へと繰り出した。

 

 

地上からも空からも、不気味な使い魔は迫ってくる。

 

普通じゃないその数は棍1本で乱舞をしても恐らく押し切られるだろう。

 

かと言って、必殺魔法『ソリテール・フォール』を使いそうなタイミングでもない。

 

 

上田「あ、そうだ『あれ』試しちゃおっと」

 

 

利奈はニィっと笑うと、シルクハットを外して自分の前を半円になぞる。

 

すると、シルクハットからは先が尖った普段使う棍とは別タイプの棍を出し、

ちょうどなぞった跡のように半円の列を成して現れる。

 

シルクハットを被り直し、その場で回るように利奈は乱舞しながら棍を投げた!

 

その投げは的確で、1本1本が1体1体に鈍い音を立てて刺さる。

 

空にいる使い魔には当たりづらいものの、地上の使い魔達には確実なダメージを与えた。

 

 

月村「今回はその方向で行くのね。 いいわ、任せなさい」

 

 

芹香はある程度の距離を離して利奈の隣に来ると、辞書を開いた。

 

芹香が手をかざすなら、パラパラとページがめくれた後に

辞書は淡い橙の光を放ち、そこから1枚のページが浮かんだ。

 

 

月村「第四章! 地の巻『岩石』! 操作性は投擲!」

 

 

魔法のページが弾けるなら、その魔力はリンゴ程の大きさの頑丈な石に形を変える。

 

元々後衛担当と言えた程の芹香、空中の敵も正確に当てる。

 

 

上田「芹香やるじゃない!」

 

月村「専門ってだけよ、何でも出来る利奈にはかなわないわ……あ」

 

 

ふと芹香は素直な言葉が口から滑り出てしまった、利奈は意外と思っている様子。

 

 

上田「あれ? デレた?」

 

月村「う、うるさい! 戦闘に集中しなさい!!」

 

上田「りょうかぁ~~い」

 

 

顔を真っ赤にして叫ぶ芹香、利奈はニヤニヤしながら返事をした。

 

 

この2人、なんだかんだ言って仲が良い。

 

 

その内、空飛ぶ魔法使い達が使い魔に攻撃をしている利奈達に追いつく。

 

 

吹気「天音! 大丈夫!? 絵莉はどこ!?」

 

青冝「あぁ、うん。 さっき、私がフォローしてた人見送った。

探してた人は見つかったみたいで、絵莉は武川君守ってるよ」

 

録町「大丈夫だったの? 『天音が不真面目な人に付き合わされた』って

情報がこっちの方にもまわってきたんだけど……」

 

青冝「それに関しては、ちょっと考え方変わったんだ」

録町「え?」

 

宙滝「ね、ねぇねぇ……早く、行こうよ……みんな……戦ってる」

 

吹気「もう始まってるみたいだし、私達も貢献しよ!」

 

録町「むむむ……その他色々は(男性アイドル)君の曲でも聞きながら、

後になってからじっくり話し合おうじゃない!」

吹気「それ話にならないと思うよ」

 

青冝「うん、私達も行こう! チーム『クインテット』出陣!」

 

 

「「「「全ては(男性アイドル)君の為に!!」」」」

 

 

さて、チーム『クインテット』を含め真面目一行、流石と言った所だ。

 

言われずとも、空気を読んで援護射撃を開始する。

 

自分の魔法の性質もわかっているようで、硬いものや固形物は空へ、

柔らかいものや鋭利なものは地上へと、放たれては使い魔を倒していった。

 

 

魔力を帯びて、浴びて、飛んでゆく魔法の数々……この紫陽花色の空間を飛んでゆく。

 

それらは6月の雨上がりの虹のようにキレイな光を放ちながら飛んでゆく。

 

こんな酷い状況とはいえ……協力して作り上げる団結の虹を、

その光景を直接目にした魔法使い達と光を羨ましく思ってしまう。

 

 

上田「やあぁっ!!」

 

 

最後の使い魔も利奈が投げる根に串刺しにされる、鳴り響くのはドスッと鈍い音。

 

 

【yAAAAAAAAAAAAA!!!!】

 

 

脳天を貫かれた断末魔をあげ、唇の使い魔は倒し切られた。

 

 

 

 

一同は歓声をあげる、山場を超えたしばしの喜びを分かち合う。

 

 

月村「とどめ、持っていかれたわね」

 

上田「偶然だよ偶然! あぁ、絵莉ちゃんは大丈夫だった?」

 

篠田「……う、うんっ! あたしもぴかりも無事だよ!」

 

武川「オイラも絵莉のおかげで、こ ん な に 元気いっぱ……っ!」

 

 

元気に話しながら背伸びをした光だったが、左腕を抑えて痛そうな素振りをみせる。

 

 

上田「へっ!? 大丈夫!?」

 

武川「大丈夫大丈夫! ちょっとつった! ビリビリ痛いぞこの野郎!」

 

篠田「……ぴかり」

 

武川「だぁ~~いじょうぶだって絵莉! 実際倒せたんだしさ!」

 

上田「え、倒せた? それってどういう」

 

 

また1つ質問をしようとした利奈だったが、それはたくさんの遠くからの声に遮られてしまった。

 

 

中野「おーーい!! みんなぁーー!! ほげっ!?」

 

 

一同を見つけて駆け寄ってきた蹴太だったが、 ま た 転 ぶ !

 

相変わらずのアンラッキー……

 

転がっていたファンデーションのケースに足を引っ掛け、つまづいてしまったらしい。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

篠田「ごめんなさい!!」

 

 

ほぼ直角とも言える角度で絵莉は頭を下げた。

 

体制がキツイのか、絵莉はぷるぷると震えている。

 

 

「ちょ!? 絵莉頭上げて!」

 

吹気「ほら、絵莉は悪気はないんだしさ!」

 

篠田「でも、あたし相談もせず飛び出して……」

 

「いやいや、仕方ねぇよ。 話してたら間に合わねぇだろ」

 

「私や武川光が助けられたんだし!」

 

武川「絵莉がいなかったら危なかったよ、ありがとう絵莉!」

 

篠田「うん、うん……ごめんね、みんな!」

 

 

絵莉はみんなに許してもらう事が出来ると、蹴太は魔女から逃げ出す事に成功した4人に話を聞いた。

 

 

中野「……そうか、みんな無事なんだね」

 

分かったのは……まず怪我人は1人もいないという事、これは嬉しいニュースだ。

 

魔女の姿は詳しく見る事は出来ていないが、魔女は魔法使いなどの

ヒトを自らの体内に溜め込もうとする性質があるらしい。

 

1番の目的は光のはずなのに……

 

欲のままにヒトを体内に取り込み肝心の目的を逃すなんて、

今思えば何考えてるんだと疑問に思ったんだとか。

 

魔女の情報が出る度に絵莉は明らかに辛そうな顔をしたが、

光がお笑いでほぼ強引に笑わせたので周りの雰囲気は明るくなる。

 

 

「さっさと行こうぜ! 俺達以外にもまだいるんだ!」

 

「魔女のいる空間への入口はこっちよ!」

 

「……あ! あぁ、逃げてきた道戻ればいいのか」

 

武川「あんな化け物ももういないしね! ……ってオイラついて行って大丈夫かい?」

 

月村「こんな危なっかしい場所で1人でいるよりは安全でしょう?

ほら絵莉、彼は一般人なんだから守ってあげなさい」

 

篠田「あぁ、うん……え!?」

 

月村「私達は花組、月組の彼の事は知らないわ。

幼馴染みのあなたが、責任持って守ってあげるのよ」

 

篠田「……でも「守 り な さ い」ひゃ、ひゃいぃ!!」

 

 

おっかないオーラを浴びせられた絵莉は、暗い気持ちを忘れて光の元へと走った。

 

 

上田「優しくなったね、芹香。 まぁその前も優しかったけど」

 

月村「……気のせいよ」

 

 

絵莉はあれやこれやを光に教えている、光は時に笑いながら絵莉の話を聞いている。

 

絵莉は……どこか楽しそうだ。

 

 

地屋「ってか八雲、いつまで俺の腕掴んでる気だ? 息切れ治ったんじゃないのか?」

 

空野「……この腕離したら、また力強とバラバラになりそうで……」

 

地屋「オイオイ……もう大丈夫だ。周りこんなに魔法使いはいるんだし、もうはぐれねぇだろ?」

 

空野「……やだ、捕まってる」

 

地屋「 子 供 か お 前 は ! ? 」

 

 

しばらく空間を進み、遂に終点が見えた。

 

一同の前に立ちはだかる鏡の扉、削られて魔女のエンブレムが彫り込まれた扉。

 

来るべき時が来た、この先に待つのは魔女との対決。

 

 

中野「みんな、準備はいい?」

 

 

ここから先、魔女の特徴が少ししか分かっていない状況で、

下手な憶測で作戦を組んでも、それはほぼ無意味だろう。

 

蹴太の真剣な掛け声に、皆覚悟が出来たような返事をした。

 

 

中野「……行くよ」

 

 

蹴太は重たい扉を開き、その中に走って突っ込んでいった。

 

他の魔法使い達も、その後に続いて走り出す。

 

 

上田(……清水さん!)

 

 

いよいよ、魔女との対決に挑む花組の魔法使い一同。

 

それぞれの想いを胸に、囚われた魔法使いを助けに行く。

 

もはや……鼻に刺さるほどの香水のキツさがあるが、そんなもので意思は揺らがない!

 

 

魔法使いを救え! 魔法使いよ! それぞれの想いを糧に、力強く突き進め!!

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

月村「っ!? 待ちなさい!」

 

 

 

地屋「完全に無事って訳じゃねぇのか」

 

 

 

上田「ぴかりさん!! 絵莉ちゃん!!」

 

 

 

篠田「サイコ・サタン!!」

 

 

 

〜終……(14)底無しの独占欲[前編]〜

〜次……(15)底無しの独占欲[後編]〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 





う~~ん……化粧品についてがイマイチ自分はわからんですね。
ホント、女子力捨ててるな自分w(オイ


さて、何話ぶりでしょうか? 久々に中野 蹴太が出てきました。

見ての通りのアンラッキーぶりですね、
何故願いでその体質を取り除かなかったのか……

まぁ、今はまだ話す時では無いので置いておきましょう。

やはり魔女戦を書くのは楽しいですね……ってこれ言うの何回目なんだよ自分。
それだけ楽しんで書いてます、ハイ。

使い魔の数が多すぎるので、今回の使い魔戦は遠距離中心です。

あ、ちなみに利奈の棍投げは原作のさやかが落書きの使い魔に
剣投げる所を意識して書いてみました。

個人的にあのシーンはスタイリッシュでお気に入りの内の1つです。


最近は泥のように眠っていますね私、睡眠不足がここで来たのかなぁ……

雪かきなどをして一応の運動はしてますが、
まぁ執筆ばっかしてるし基本は寝正月でしょうね。オ フトゥンあったかいです。

ふわぁ……流石に昨日と今日にかけて夜更かししすぎましたね。

寝たの午前3時ですよ バ カ の 極 み  \(^o^)/

今日はこのくらいにしておきましょう。


それでは皆様、よいお年を。

私のように夜更かしをし過ぎて体内時計破壊しないように気をつけてw

(* ̄ー ̄*)/~~☆'.・.・:★'.・.・:☆'.・.・:★"ばいばい!

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