魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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で、き、たぁ……!! ものすんごい文章足したぁ……!!


はい、遅くなって申し訳ない。

おはこんばんちわ! 私的にはこんばんは! 心機一転のハピナです!

頑張りましたよぉ……!w

顔文字無双を乗り切るのは至難の技でしたよ私のおバカ!


例えば……例をあげるならこれかな

「空 (p=゚д゚)ニo)'д`)グハァ!? 地」

この表現、修正後がこちら。

「若干、弱々しいげんこつが放たれた。
漫画だったらでかいたんこぶができて白い湯気が立ち込めているだろう」

ふむ、確かに文章だと伝わりやすい。

……あはは、この作業をたくさんとなると目が疲れてしまいますねw

ですが、だいぶ慣れましたよ〜〜!

ストックを1つ2つ同じ作業をすれはこの作業をする必要はなくなりますね。

いやはや、ホントに何度手間なんだよ私……w


さて、私の愚痴(笑)はこの辺にして、
12月最初で祝二桁突入の第十話をとっとと開演させましょうか。

舞台は運転の魔女討伐後の事……。

《3月4日》
○変則改行の本格修正
○『w』の削除や『~』の引き延ばしってこれ文章下t(ry
○その他修正(追加や索敵等)



(10)鈍色の涙と粉隠の例外

グリーフシードの生成が終わると、そこはデパート地下の駐車場だった。

 

ふと、利奈は魔女のいた方を再度確認すると、

そこには車のボンネットに乗った

鈍色のソウルジェムと運転のグリーフシードがあった。

 

そして、その車の後ろ座席。

 

……女の子が苦痛の表情で、まるで悪夢を見るように眠っている。

 

 

篠田「戻っ……た? 戻った! 魔女を救えたんだ!!」

 

月村「どうやら上手くいったようね、みんなお疲れ様」

 

清水「おぉ! おぉ!! 2人とも体が元に戻ってる!」

 

海里が喜びと驚きが混ざる中、力強と八雲は骨を鳴らした。

 

 

地屋「うはは……相変わらず気味が悪りぃ感覚だな」

 

空野「痛みもないのにあんなに体がねじ曲がるなんてね、もう二度と味わいたくないよ」

 

 

地屋「だよな! ……あ」

空野「だよね! ……あ」

 

 

「「舞!!」」

 

 

利奈の背後から声がしたかと思うと、ダッシュで力強と八雲は走っていた。

 

2人の魔法少年がグリーフシードに目もくれず、舞がいた車のドアを開ける。

 

車の中で眠る女の子……舞の手にソウルジェムを優しく置いた。

 

 

すると、ソウルジェムが帰るべき場所へ帰り着いたようにふわっと光出す。

 

 

車道「……ぅ、ぅ……」

 

地屋「舞! 大丈夫か!?」

 

空野「大丈夫? 苦しくない?」

 

車道「……力強? 八雲? あた、あたし、あたしは……!」

 

目が覚めて意識が戻ったかと思うと、彼女は溜め込んでいた物を抑えきれずに、こぼすように……

 

 

大粒の涙を、ポロポロと流し始めた。

 

 

車道「っ……ひぐっ……ごめんなさい……!!」

 

地屋「うおぉ!? ちょ、急に泣き出したぞ!? どうする八雲!?」

 

空野「ぼ、僕に聞かないでよ!」

 

地屋「えっと、いや、舞は悪くない、悪いのはこいつだ!」

 

空野「ぼっ、僕!? 何で!?」

 

地屋「 適 当 ☆ 」

 

 

その時、力強の石頭に若干弱々しいげんこつが放たれた。

漫画だったらでかいたんこぶが出来て、白い湯気が立ち込めているだろう。

 

 

地屋「って!? なにすんだよ!? 俺は壊れたテレビじゃねぇぞ!?」

 

空野「適当ってなんだよ!?もうちょっと、ちょっとは真面目に考えろ!」

 

 

かなり怒り気味の八雲に、力強はニヤニヤとしながら対応する。

 

 

地屋「考える頭のお味噌が足りねぇんだもん、仕方ねぇだろ」

 

空野「足 り な く て も あ る だ ろ !!」

 

 

……まぁ、まるで映画や漫画で見るようなもわもわした煙が出て、

ちらほら頭やら手やら足やらが見えるような、アホらしい喧嘩が始まった。

 

 

地屋「この中途半端ガリ勉コンタクトが!」

 

空野「ガリべ……!? うるさい! この脳筋脳味噌溶解系男子!」

 

地屋「うらああああああ!!」

空野「なにをおおおおお!!」

 

 

月村「……くだらないわ」

 

篠田「こ、こんな時に喧嘩なんて……」

 

芹香はふぅっとため息をついて呆れ、絵莉は苦笑いで軽く汗をかいた。

 

収まる気配のない2人の喧嘩に対し、しばらくして利奈が行動に出た。

 

 

上田「えっと……みんな見てますy」

 

清水「待て、大丈夫だ」

 

上田「えっ?」

 

 

止めに入ろうとした利奈だったが、海里に止められてしまった。

 

利奈の両肩を持って喧嘩の方に向ける。

 

 

清水「まぁ、見てなって」

 

 

軽くニヤッと笑い、リュミエール一同は喧嘩の行方を見守る。

 

 

地屋「男のくせにパフェが好物っておかしいだろ確実に!」

 

空野「今時トレーニングで何個もタイヤ引きずって海岸を走ったりなんかしないもんね!」

 

車道「…………」

 

 

地屋「だあああお前って奴わああ!!」

 

空野「お前もなんなんだよ!!」

 

車道「……あ ん た ら」

 

 

車道「少しは気を使うのぜえぇぇぇ!!!!」

 

 

「「……あ、舞」」

 

 

地屋「しまったな……八雲」

 

空野「しまったね……力強」

 

 

 

 

車道「あんたらはバカなのぜ!? バカ!? 本当のバカ!?

バカなの!? 死ぬの!? どうしたいの!?

 

こちとらせっかく願いでレースの技術手にいれたのに

魔法少女の戦いでやられて逃げて両足骨折で当分レースは無理だって

一生できないかもって言われて絶望にドボンしたってのに!!

 

あたし男っぽいけど女の子なんだし昔からの仲なんだし

少しは! 少しは気を使うのぜ!!

 

なんか悪夢見てるみたいでわけわかんなくなって

見知らぬ人を車に変えちゃうし走る衝動でっぱなしで

バカみたいに車になって走ってあんたら車にして苦しめて

申し訳ない気持ちでいっぱいだってのに!!!」

 

 

 

 

……そう、でかい声で、舞は怒鳴り散らしながら

骨の振動で痛む両足を手で抑えて、泣きながら怒った。

 

 

車道「……最後に止めてもらって、すごく苦しかったけど、嬉しかったってのに……」

 

 

最後にそれだけ言うと、ぐすんと泣いて両足を摩る……

 

あぁ、まだ怒り悲しんでるなこれは……そんな彼女を、力強と八雲はなだめる。

 

 

地屋「悪かった、悪かったって!」

 

空野「泣かないで〜〜! 舞ぃ〜〜!」

 

車道「もう! あんたらは昔っから喧嘩ばっかりして……放置なんてひどいのぜ」

 

地屋「だから泣くなよ! 泣かないで下さい!」

 

空野「ごめん、ごめんって! 大丈夫だから! ごめんって!」

 

車道「ぐ、すん……ぷっ、そんな慌てなくていいのに」

 

 

力強と八雲の慌てっぷりに相変わらず涙で目が潤むも、ふと舞は笑みを浮かべた。

 

 

地屋「……ハァ、やっと落ち着いたか」

 

空野「僕と力強ってすぐに喧嘩しちゃうもんね、舞が止めてくれていつも助かってるよ」

 

落ち着いた舞を見て、力強と八雲はお互いに笑いあうと、舞にこんな言葉をかけた。

 

 

「「おかえり! 舞!」」

 

 

車道「……もう遅いのぜ!」

 

 

その言葉と共に放たれた2人へのデコピンは、何故かそんなに痛くないような気がした。

 

 

そうして、3人は笑いあう。

 

 

リュミエール一同は笑い合う。

 

 

魔女を救った達成感と笑いあう3人を見て、つられて笑みがこぼれる。

 

 

上田「ゲーム、クリア」

 

 

利奈は一通りをその目で見届けてゲーム脳を落ち着かせると、

魔法少女の変身を解いて荷物を背負い直した。

 

周りの魔法使い一同も変身を解く。

 

 

 

 

空野「あ……そろそろ使い魔にされていた人達も起きると思うから、

変な言い方だけど海里達は逃げた方がいいかも」

 

地屋「おう、この分じゃ事情の知らない奴らは騒ぎになるな」

 

車道「私達は同じように被害者面してれば良いのぜ」

 

地屋「……相変わらず女子力のない笑い方するな」

 

車道「やかましいのぜ!」

 

上田「りょーかい! んじゃ、行こうみんな!」

 

篠田「そういえばまだアイス食べてないもんね」

 

月村「何を言ってるの、その前にどこかで浄化しなきゃダメでしょう」

 

清水「よっしゃ! リュミエールのグリーフシードは

俺が預かってたから、そこから何個か使おうか」

 

上田「賛成!」

 

篠田「わかったよ!」

 

月村「意義なし」

 

 

地屋「ちょ、おい!? これはどうすんだよ!?」

 

 

力強は思い出したかのように

運転のグリーフシードを目の前にいた利奈に見せた。

 

それに、利奈は振り返ってこんな言葉をかけた。

 

 

上田「1番頑張ったのは使い魔になっても舞さん? だっけ。

その人を助けた2人じゃない!

 

このグリーフシードは2人の戦利品……とでもいうのかな」

 

 

それは、利奈がどこかで聞いた、焼き付いていた言葉。

 

 

清水「利奈……」

 

 

利奈はその後、運転のグリーフシードを結果的に

仲良し3人組に譲る形にしてみんなの元に駆けだした。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

その後、普通にエレベーターを使ってアイスクリーム屋に来店するリュミエール一同。

 

利奈達はソウルジェムを浄化した後行列を切り抜け、

見事それぞれの好きな味のアイスを手に入れた。

 

柔らかで暖かいのワッフルに、冷えつつもすぐ溶けそうな絶品アイス。

 

ん? 飯テロ? 知らんな! アイスってデザートだもん。

え? お風呂上がり? ……ゴメンネ。

 

 

利奈はシンプルなバニラ。

 

 

上田「はあぁ〜〜美味しい! なんか淡雪みたい!

ものすごいふんわりしてる!舌の上でサラッと溶けるけど濃厚で……!

ふわあぁ! 来て良かったぁ〜〜!!」

 

 

絵莉はサッパリチョコミント。

 

 

篠田「わ!? 鼻からもミントの味が抜けた!

チョコもこれ用に調整してる感じかな? とろける!」

 

 

芹香は濃厚な抹茶。

 

 

月村「……美味しい」

 

 

海里はビターなチョコレート。

 

 

「静かに食えるってのもありがたいもんだな、俺の仲間内だったら確実に騒いでる。

 

しっかし、本格的ってやつか? 砂糖があまり入ってないのがいいな」

 

 

アイスを思う存分に楽しんだリュミエール一同は、

ちょっと休憩を挟んでから運転の魔女戦の疲れを休めるため、

今日のところは早々に帰る事にした。

 

まぁ、利奈は道中弱い魔女や魔男を何体か見つけてソロ狩したが。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

うさぎの抱き枕を抱いて、ふわふわの毛布に埋れた。

 

利奈はシルクハットを召喚すると、シルクハットの中身を覗き、

自身の持つグリーフシードの数を確認する。

 

 

上田「……10個くらいかな」

 

 

そりゃあ集団にならず個人で街を自由に駆け回り、

その度に魔女や魔男を救ったら時間をかければそれだけの数になる。

 

なにせこんな魔女や魔男が生まれやすいハチべぇのシステムだ、

その辺にグリーフシード(未討伐)はごろごろある。

 

 

上田(……強くなったな、私)

 

 

不意に、口の中の味蕾が濃厚なバニラアイスの名残を思い出す。

 

リュミエールの面子で楽しくも、でも騒がしくもなく

軽い会話を楽しみながら食べた午後3時頃の休憩時間。

 

 

上田(私でも、あんな会話とか出来るもんだね)

 

 

抱き枕をキュッと抱いてごろごろしながらニヤニヤした。

 

 

……だが、そのご機嫌もすぐに収まってしまう。

 

 

上田(みんな、私以外でもそういうことできるんだっけ。

 

うん、楽しかった。楽しかったよ! 楽しかったけど、なんだかなぁ………。

 

やっぱり1人狩りは継続しなきゃ! 1人慣れが薄れちゃうもんね)

 

 

いつか捨てられるのでは? だってみんな他に人脈あるもん。

今に限らずそんな不安が利奈には常につきまとっていた。

 

心なしか、今の利奈のソウルジェムは輝きがいつもより足りない気がする。

 

 

上田「うぅ〜〜もう!! 考え込んでも仕方ない!

 

寝る! もう寝る! 難しい事寝て忘れる!!」

 

 

そう独り言をうだうだ言って、利奈は布団をかぶって寝る体制に入った。

 

最初は不安から寝付けないんじゃないか? と思っていたが、

あの楽しげなおやつタイムが頭にふと浮かんで……

不安から脱した時、すんなり利奈は眠りについた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

……音もなく、夢は始まった。

 

 

 

 

朝目覚めたのなら、ゲームのデイリーボーナスをもらうのを忘れたと頭を抱えて嘆くだろう。

 

 

 

 

ここは、黒板の魔女の結界。

 

 

 

 

いるのは、1匹の使い魔だけ。

 

 

 

 

黒板の魔女を倒したあの日からというものの、何度もこの夢を見た。

 

最初は使い魔に追っかけまわされ捕まって目が覚める……

なんてことが続いたが、次第に慣れて現状を把握できるようになった。

 

1つ、気がついた事と言えば……

この使い魔は()()()()()()という事ぐらいか。

 

利奈は今回も、ペタペタと裸足でステンレスの道を駆け出した。

 

 

上田「チョーク〜〜! 利奈が来たよ〜〜!」

 

 

お、おい待て! 名前まで付けてるのか!?

 

……利奈、割とメンタル強いらしい。

 

まぁ、いつも『道具』として扱われて、それを毎日のように

我慢しているので鍛えられたのもあるだろう。

 

それはさておき、チョークと名付けた使い魔を名前を呼びながら辺りを見回して探していると、

ステンレスの道の内の1つからひょこっと円筒の頭が出てきた。

 

 

巨大なチョークで組まれた黒板の使い魔、

異様な犬とも猫とも言えない生物……それがチョークだ。

 

 

上田「……あれ、チョーク? 今日はなんだか大人しいね、どうしちゃったのかな」

 

 

いつもなら穴から飛び出してと黒板にチョークで文字を書いたような音で鳴いて駆け寄ってくる。

 

今回はそんなことはせず、チョークは利奈に歩み寄った。

 

 

上田「どうしたのチョーク? どこか具合が悪いの?」

 

 

利奈がチョークの体を入念に調べていると、ふと、頭に声が響く。

 

念話……ではない。

 

念話だったら直接脳に声が届くが、これは骨、頭蓋骨を揺らすような風に感じる。

 

 

これは……声?

 

 

【……ィ……ァ……ィ、ナ、リィ……】

 

 

黒板に文字を書くような音はやがて音程を持ち……段々と、わかるようになってくる。

 

 

 

 

【やっと、君と、話せ、るね】

 

 

 

 

あまりの出来事に、一瞬1人と1体の間に静寂が流れる。

 

ハッと自分を取り戻すと、目の前の現実に対して思いっきり驚いた。

 

 

上田「……ぇ、え? えぇ!? つ、使い魔が喋った!!? というかチョーク話せたの!?」

 

【つい、さっき。 利奈が、来る、前に、突然】

 

 

いやさっきと言われても! というのが利奈の本音だった。

いくらこれがハッキリとした夢とはいえ、使い魔が喋るなんてあり得ない。

 

 

上田「いやいやいや! 突然じゃわからないよ! な、何かきっかけがあったの?」

 

【キッ、カケ? あぁ、きっ、かけ、ね】

 

 

チョークはその棒状だらけの体を

無駄にある関節で器用に折り曲げておすわりをする。

 

 

【いつも……いつも? のように、黒い、モヤを、食べていた。その時、突然】

 

上田「黒いモヤ?」

 

【持って、くる?】

 

上田「……いや、なんか嫌な予感しかしないから遠慮しとく」

 

 

その後も、チョークの不慣れな喋りの話は続いた。

 

チョークが説明してくれたのは、話せるようになったのはほんの少し前。

 

これと言った大きなきっかけはなく突然、思いついたらしい。

 

最初は声を出す発想さえなかったんだとか。

 

不意に声を出す事を思いついたのはいいが、

こんな硬質な体でどう音を出したらいいかわからなかったらしい。

 

色々試した結果、喉の奥にある変わった機関を震わせてみたら、

上手く音が出たのだとチョークはゆっくりと話してくれた。

 

 

【イナ……と、話せて、嬉しい】

 

上田「利奈だよ、リ!」

 

【……リ? ィナ、リナ】

 

上田「そうそう! 利奈」

 

【うん、リナと、話せて、嬉しい】

 

 

チョークは話した、利奈の事はまだ自らが仕える主がいた頃から見ていた。

 

自分の先生に従って、他の生徒と……他の生徒とはチョーク以外の使い魔の事だろう。

 

他の生徒と共に利奈を教育しようとしたが、

他の生徒を吹き飛ばし舞いながら進む利奈を誰にも止める事は出来なかった。

 

教育は結局、最後まで出来なかった。

 

ヒト……人間とは、ここまで鮮烈に舞えるものだったのか。

命令には従いたかったが、それさえ怯むものだったらしい。

 

 

【すごい、と、思った。 もし、戦って、たら、僕の、体、バラバラ】

 

上田「私も必死だったからなぁ……あの中にチョークも混ざってたのか」

 

 

その後は他愛もない雑談を手ぶりも混ぜて話し込んだ。

 

コミュニケーション能力が人より低い利奈だが、さすがに1対1の対談は難なくこなす。

 

チョークの喋りがただえさえ細切れで話してた為、

結果的に話の進行はゆっくりでとても楽しみながら会話が出来た。

 

 

楽しげに話していたが、ふと、チョークが話を終わらせる。

 

 

上田「……ん? どうしたの?」

 

【そろそろ、時間、だね】

 

上田「え? 時間って……まだまだ話足りな」

 

 

その時、瞬きをするようなほんの一瞬の時、利奈は忽然と姿を消した。

 

もうそこにはいない友人に対し、チョークは名残惜しそうな声を出した。

 

 

 

 

【……また、ね……利奈】

 

 

 

 

次に君がここを訪れた時は、もう少し……上手く喋れるように練習しておくからね。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

雀が可愛らしく鳴く何気無い朝、平日が始まる憂鬱な週の始め、目覚めた利奈の第一声は……

 

 

上田「だあああしまった!! 昨日のデイリーボーナス忘れてた!!

ああぁ……19日目だったのに……復活薬が遠ざかる……」

 

 

真っ白になって魂が抜けたかのように脱力をする利奈。

元から魂は抜けてるようなものだが、例えはこれが妥当だろう。

 

今日もソウルジェムは輝かしい、

こんなになっているが現在時刻は午前6時だ。

 

なんだ、余裕で学校に間に合うな。 歩いてでも間に合うだろう。

 

ふと、枕元に置いておいた黒板のグリーフシードが目に入った。

 

手にいれてから数週間は立っているが、何故か一向に穢れが溜まり切らない。

 

他のグリーフシードは、既にいくつもハチべぇに回収してもらっているというのに。

 

 

上田「ん? なんか、これについて夢で話したような……

まぁいっか、夢だから記憶がぼんやりしちゃってるし」

 

 

利奈は穢れが減った黒板のグリーフシードを手に取ると、

魔法で出したシルクハットの中にぽいっとしまいこんだ。

準備した荷物を持って、リビングに移動する。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

学校に着いて教室に入ると、早速利奈は猛獣達に捕まった。

 

この野郎、不意打ちか?

 

「ねぇねぇ! 他の子から聞いたよ! リュミエールがまた強力な魔女を討伐したんだって?」

 

上田「えっ? あ、いやあの」

 

「確か運転の魔女だっけか? 車にされた連中もいたらしいな」

 

「す、すげぇな! ほぼチートじゃねぇか!」

 

「時間が出来たら戦い方教えて欲しぃーーなぁーー☆」

 

上田「う、うん、時間が出来たらね」

 

 

聞いて来たのはやはり、運転の魔女についてだった。

 

魔女や魔男の時に記憶が残るのと同様、使い魔の時も記憶は残るらしい。

 

まぁ年が離れたデパートの客層には、

 

『よくわからないが、なにか恐ろしい事があった』

 

という事にはならなかったらしいが。

 

結界の中の様子、魔女の外見はどんなのか、どんな戦闘をしたのか……

そんな事を猛獣達は我先にと食いつくように声を出した。

 

でかすぎる声だったり、早すぎる声だったり……

聖徳太子じゃないんだから質問攻めにされても困る。

 

ちょっとした汗をかきながら対応に明け暮れていると、猛獣達をかき分けて利奈の前に誰か来た。

 

 

地屋「ほらほらどけどけ! リュミエール様のお通りだ!!」

 

空野「力強、その言い方はちょっとひどいよ……」

 

清水「そんな大々的にチームを宣伝してる訳じゃねぇしな」

 

「なんだそりゃ? 活躍してるのにもったいぶって」

 

地屋「うるせ! とにかく、そいつは俺らの先客なんだよ!」

 

空野「ちょっと上田さん借りてくよ」

 

清水「お前らはもうちょい情報収集でもしとけ!

まだ車の状態がどんなだったか詳しくわかってねぇんだろ?

ま、俺は情報屋やってるからわかってるけどな」

 

「なんだよぉ〜〜知ってるなら教えてくれたって良いだろ?」

 

清水「そういうのは自分で調べるから面白いんだろうが! 情報料とるぞ!」

 

「海里ずぅ〜〜るぅ〜〜いぃ〜〜!」

 

上田「……えっと、これは……」

 

清水「ほら、行くぞ」

 

上田「あ、うん」

 

 

どっちにしてもうるさいのはほぼ確定な気がするが……大人数より少人数。

 

海里のリードもあって利奈は無事、ジャングルのようになっている教室から脱した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

職員室の付近の空き教室、そこに利奈を連れ出した。

 

覗こうと着いて来た生徒もいたが、少なくとも猛獣達は天敵である教師の巣窟には近寄らない。

 

この空き教室の近くに、職員室があるということだ。

 

見た目が校則違反な生徒は来れない……なるほど、それなりに賢い。

 

ここで真面目と不真面目はふるいにかけられた。

 

4人が空き教室に着くと、力強と八雲は改まって並び、利奈に一礼してお礼を告げた。

 

 

地屋「グリーフシードありがとうございました!」

空野「グリーフシードありがとうございました!」

 

 

2人とも礼を保ったままの状態で、力強が片手をバッと上げて何かを差し出した。

 

それは運転のグリーフシードだった。

 

半分くらいは穢れているが、その大きめのグリーフシードはまだまだ使えそうである。

 

譲ったはずのグリーフシードを目の前に返却として差し出され、利奈は驚きを隠せない。

 

 

上田「えっ? え、えぇっ!?

でもこれは2人の戦利品……それは2人の物だよ?」

 

 

そう利奈が言うと、海里は大きく笑った。

 

 

清水「そう言うと思った! 俺も最初は使い切れって言ったんだが、

リュミエールがいなかったら俺たちは完全に心が死んでいたんだと」

 

地屋「俺らはもう大丈夫だ! 問題ない! まだまだグリーフシードのストックはあるしな」

 

空野「舞ちゃんも元気になったし、僕らのメンタルは当分

健全で過ごせると思う。 力強もいるしね」

 

地屋「おう! 八雲がいるしな!」

 

空野「……あれ、力強もそう思ってるの?」

 

地屋「んあ? 当然だろ?」

 

空野「力強……!」

 

 

うん、確かにしょっちゅう息の合うこの2人なら大丈夫だろう。

 

 

…………で、

 

 

清水「お前ら、何を期待してるんだ?」

 

 

……あれ、言われちゃったよ。

 

 

教室の外から中を覗く一部の女子生徒の目の色が変わる。

男子はツッコミを入れるなりしてそれを抑えつける。

 

そっち系に目覚めてない利奈はよく分かっていないらしい。

 

芹香は冷や汗をかいて利奈に「知らなくても良い事よ」と扉越しにジェスチャーをした。

 

 

清水「本題に戻るぞ! で、だ。こいつは俺ら3人で話し合って

リュミエールの物として受理することになった。

 

最終的にリーダーの俺が決めたんだし、他からの異論は認めない」

 

 

そう言って海里は指輪を光らすと、自分の周りに

淡い青を放ちながら輪状にグリーフシードを出現させた。

 

これらグリーフシード、リュミエールが所持するグリーフシードだ。

 

その功績の数に廊下にいた生徒達からも、思わず軽い歓声が沸く。

 

海里がその輪の中に運転のグリーフシードをかざすと、

ふわっと浮いて入って行く。 これで輪の仲間入り。

 

運転のグリーフシードは他のグリーフシードに比べほんの少し大きい。

 

ふと、何か後ろに気配を感じて海里は後ろを見ると、

利奈がこっそりグリーフシードをいくつか勝手に組み込んでいた。

 

清水「……なにしてんだよ利奈」

 

上田「え? あぁ、そういえば最近、リュミエールにグリーフシードを寄付してなかったなって」

 

清水「いや十分だぞ!?」

 

不意に、絵莉と芹香が空き教室に入ってきた。

絵莉は驚いた感じで、芹香は頭を抱えた。

 

 

月村「リュミエールのグリーフシードがなかなか減らないと思ったら……

利奈、あなた負担を自分にかけすぎよ」

 

上田「余りだから大丈夫!」

 

絵莉「余りってレベルじゃないよ!」

 

 

グリーフシードの寄付に関して論争を繰り広げるリュミエール。

 

それを聞いた廊下の外から中を伺うクインテットと真面目な生徒達は、誰しもが思うだろう。

 

 

 

 

ど こ の 次 元 の 話 だ よ !? リュミエール強過ぎか!?

 

 

 

 

これらはチートと言い切るにはかなり程遠いが、

通常層の魔法少女と魔法少年にしたらこの上ないチートに見えただろう。

 

普通のチームにしたら3〜4個、5個で良いくらいなのだから

10個以上が円になって連なっていたのにはそれはそれは驚いただろう。

 

まぁ無理もない、彼ら彼女らは

利奈が気がついたソウルジェムの

魔女魔男の探知機能を知らないのだから。

 

 

では何故、リュミエールはその探知機能を教えないか?

 

 

理由は簡単、『支援』の為だ。

 

 

真面目だけに教えたとしても、確実にどこからか情報が漏れる。

 

前にちらっと、魔法使いが複数で討伐した時の有利不利の話があったと思う。

 

そんな不利な立場にある魔法使いに、最低限のグリーフシードを支援として譲っている。

 

なにせ猛獣達の食い物争いは花組にしたら裏世界、

弱者的立場にしたらかなり厳しい点がある。

 

それをリュミエールが補う事で真面目な子らを支援し、

天秤のように花組の均衡を保っている状態だ。

 

もしリュミエールのような真面目側の優秀な団体がいなかったのなら、

花組は猛獣達の独裁国家になっていただろう。

 

 

「す、すげぇ……!」

 

「これどうやって集めたんだ?」

 

青冝「絵莉とんでもないチームに

所属しちゃっていなのねw」

 

録町「ただならぬ努力ってやつ?」

 

「こんだけ数があれば魔法が使い慣れてないやつも助かるわけだな」

 

「ねぇねぇ! 普段はどうやって魔法を使っているの?」

 

上田「ん? あぁ、えっとね」

 

 

聞きやすい声だったり、気遣う声だったり……話せる、話しやすい。

 

普段から1人、周りとは違う独特で電子的な趣味嗜好を持って孤立していた利奈。

 

それが今となっては『魔法使い』という共通点により

自然に、いつのまにか、利奈は話の輪の中に組み込まれていた。

 

 

これが、()()ということか。

 

 

これが、みんなで話すということか。

 

 

利奈はとても夢中になって、自分が理解出来るお題に添いたくさん話した。

 

しかも、その話をちゃんと理解し聞き取ってくれている。

 

昨日の夜は少々鈍っていたソウルジェムの輝きが、

今となっては少しキラキラと光っているようにさえ見える。

 

 

これが、ハチべぇのくれた()()か。

 

 

今の利奈は失っていた希望を一部取り戻していたように感じた。

 

チャイムが鳴るまで笑顔で話し込んだ、大勢での会話が楽しいのは本当に久しぶりだ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

魔法使いの巣窟となった花組、

絶望を与える魔女に魔男やソウルジェムとグリーフシード。

 

そういえば、この学校にいるのは花組だけ?

 

正解は×、花鳥風月の内鳥風月という3つの別のクラスもこの学校にある。

 

さて、これだけ真面目不真面目が話題にして話したり、

バカな奴らが写真や文章をSNSに投稿したらどうなるだろうか?

 

廊下の曲がり角にチラリ人影、時間になり偶然先生を呼びに来た

彼はタイミングが重なった。 話を聞いていたみたいだ。

 

 

「……すごいな、魔法使い。

 

これは嘘だとしてもオイラのお笑いの糧になる!

 

うちのクラスで話が持ち上がるのも、ここまで来れば時間の問題か。

 

これは楽しくなりそう!」

 

 

『魔法使い』という魅力的な存在は、どうやら1つの教室には収まりたくないらしい。

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

「……本当に良いんだな?」

 

 

 

「オイラも魔法少女? いやいや、魔法少年やりたい!」

 

 

 

上田「へ?」

 

篠田「ふぇっ!?」

 

月村「え?」

 

清水「なっ!?」

 

 

 

清水「利奈なら……俺のに似た魔法が使えるかもな」

 

 

 

〜終……(10)鈍色の涙と粉隠の例外〜

〜次……(11)黄の芸人と空飛ぶ手品師〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




ドドドド====┌(┌ ^o^)┐ホモォ !!!
ハピナ「お帰り下さい! お帰り下さい!! 帰れええええぇ!!!」


……はい、ちょっとだけネタ放り込みましたw

私にそんな趣味はありませぬ。

でも意外といるんだよなぁ腐女子、中学時代に女子が男×男の接続(規制)
写真を集団で見てて騒いでいたのはもはやホラーの領域だったなぁ…….w

ん? 私ですか? 普通ですよ? コートを頭から被って寝てましたよw
一瞬だけ見たけどあんなもんまじまじと見せられてたまるか!


さて、寒くなってきましたね。

こちらはただいま6℃、マフラーが欠かせなくなりましたよw
下手したら手袋かなぁ……まぁ、まだ大丈夫か。

みなさん寒い時には何か食べたり飲んだりしてますかね?

私はカップで熱めのほうじ茶をチビチビ飲むのが好きです、
慣れたらぐいっと飲み干します。

あの暖かな状態の飲み物が喉から食道を通り、
胃に到達した時の暖かさがたまらないですw

特にレポート書く時とか、眠気覚ましで飲んでますねグハァ!(吐血

みなさん風邪を引かないよう、気をつけて下さいな。

それでは皆様、また次回。

(○´ω`○)ノ**SeeYou**(○´ω`○)ノ

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