彼は仮面をかぶって生きていく   作:なんちゃって提督

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物語の構成を変更したせいで渋谷凛との会話で前話と食い違っている部分があります。具体的に言うと以前の構成では渋谷凛と主人公が出会ったのは「小学校高学年」となっていましたが、「小学校低学年」の頃に変更しました。合わせて、前の話も若干修正を入れているのでよろしかったら確認の方お願いします。読んでくださっている方々を混乱させてしまって申し訳ありません。

前置きはこれぐらいにしておいて、それではどうぞ。


仮面がはがれないように

渋谷凛と皮肉にも運命的な再開を果たした僕は、次の日から何事もなかったかのように普通に出勤した。珍しく僕が出勤しなかった為に、一部の人達に余計な心配をかけてしまったのは失敗した。休みの理由を誤魔化すのは面倒だったな……まさか本当の理由など言えるわけないし。

 

 

その為、出勤してから特に何もしていないというのに無駄に疲れてしまった。

 

 

「……と、いうのに武内さんは鬼畜ですか」

 

 

「え、何の話ですか?」

 

 

彼に悪気などあるわけがない。耐えろ、耐えるんだ。

 

 

「いいえ、こちらの話です。それで一応なんですけどもう一度聞いてもいいでしょうか」

 

 

「はい。実は先日お会いした渋谷さんが改めてバイトさんとお話したいとのことで」

 

 

やはり先程聞かされた話は聞き間違いではなかったらしい。

 

 

「……渋谷さんをアイドルにスカウトしようと?」

 

 

「はい」

 

 

「それで僕をダシにその話を聞いてもらおうということですか?」

 

 

「……言い方は悪いですが、その通りです」

 

 

申し訳なさそうに武内さんはそう言った。

 

 

ーーさて、どうするべきか。

 

 

正直に言うと、あの渋谷凛という少女とは顔を合わせたくない。理由は当然、僕の精神衛生上よろしくないからだ。

 

 

しかし、武内さんとしては渋谷凛をどうしてもアイドルにしたいらしい。この人はこう見えて、というより見た目のまんま頑固な人だからここで僕が彼女と会うことを拒否したとしても、別の方法で彼女と接触するはずだ。

 

 

遅かれ早かれ、渋谷凛とは再び顔を会わせることになるというのならば、

 

 

「分かりました」

 

 

「……本当ですか!」

 

 

無表情の武内さんの顔が僅かに緩んだ。これは彼が心から喜んでいるという証拠である。付き合いが長いと、こういった僅かな変化にも気づけるようになる。この人はそんなに渋谷凛をアイドルにしたいのか……

 

 

「場所と時間は武内さんと渋谷さんで決めてください。合わせますから」

 

 

「分かりました。あ、しかしバイトさんも学校などの用事があるのでは……」

 

 

「もう卒業に必要な単位は去年までに取り終えているので、今更一回くらい休んだとしても問題ないですよ」

 

 

大学の卒業に必要な単位は四年生になる前に取り終えている。ここまで来たら四年間で一つも単位を落とさないというのも面白いが今年はバイトも忙しいので厳しいかもしれない、なんて思っている。

 

 

「……分かりました。場所と時間が決まり次第、連絡します」

 

 

武内Pは僕の言葉にあまり良い顔をしなかった。想像でしかないが彼は大学時代、大学の講義をサボったりなどしなかったのだろう。真面目な性格な武内さんは僕が大学をサボるというのには思うところがあるのかもしれない。どうでもいい事だが。

 

 

とにかく、再び渋谷凛と顔を合わせることを考えると胃が痛くなってきた。冗談抜きで胃薬でも持って行った方が良いかもしれない。

 

 

自分の弱過ぎるメンタルに自嘲しながらも、僕はその日の仕事に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、渋谷凛と武内さんとの三者会談に指定された場所は喫茶店だった。最初はファミレスになる予定だったのだが、高校生の少女と大の男二人でファミレスなど通報されかねない光景を想像した僕の提案で喫茶店にしてもらった。

 

 

この喫茶店は僕の行き着けで、ここの店長さん(本人はマスターと呼べと言っている)とも面識があるので通報されるような事はないだろう。

 

 

僕は一番最初にやって来て、場所を提供してくれる店長さんに挨拶する事にした。ちなみに待ち合わせに指定された時間よりもかなり早い。

 

 

店長さんは入って来た客が僕だと分かると、笑顔を浮かべて歓迎してくれた。頭に白髪が混じっているが如何にも紳士、といった風貌で本人曰く、四十七歳との事だった。実際の年齢より老けて見えるのは店長には内緒にしておいた方が良さそうである。

 

 

「いらっしゃい。連れの人は?」

 

 

「まだです。とりあえず挨拶しようと思いまして」

 

 

「相変わらず真面目だね」

 

 

そう言ってテーブルにコーヒーカップを置いてくれた。

 

 

「砂糖とミルクは入れておいたけど良かったよね?」

 

 

「はい。ありがとうございます」

 

 

「あっと、お代はしっかり頂くからね」

 

 

本当にきっちりしている人だ。常連の僕にこれぐらいサービスで出してくれてもバチは当たらないだろうに。商売だから仕方がないと言えばそこまでなのだが。

 

 

とにかく、僕は席に着き、他二人の到着を待った。目の前に置かれたコーヒーを口に含む。

 

 

ふぅ、と一息吐く。

 

 

ーー柄にもなく少しだけ緊張しているのを自覚した。

 

 

身構える、と言った方が正しいかもしれない。これから渋谷凛と会うのが分かっているので、以前のような失態はしないと思うが、気をしっかり持つに越した事はないだろう。僕がかなり早くここに来たのも心の準備をする為というのも理由の一つだ。

 

 

「……おっと」

 

 

ポケットに入っている携帯が震えている事に気がついた。取り出して画面を確認してみると武内さんからのメールだった。

 

 

『仕事が一段落したのでこれから向かいます。急ぎますが、もしも渋谷さんが私より早く来た場合は先に話を始めていてください』

 

 

メールを読み終えた瞬間に頭を抱えたくなった。下手をしたら最初は渋谷凛と二人きりで話するということになるではないか。胃薬を鞄の中に忍ばせておいたのは正解だったようだ。

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

そんな店長の声に現実逃避から我に返った。どうやら新しい客が来たらしい。僕はその人物が武内さんであることを期待したが、

 

 

「お待たせ。待たせちゃったかな」

 

 

ーーつくづく人生とは思い通りにならないものだ。

 

 

「いいえ、むしろ早すぎるくらいですよ」

 

 

「それを言ったらおにいさんの方が早いよ。まだ待ち合わせの時間になってないし」

 

 

「とりあえず、座ってください。今日は逃げたりしませんから」

 

 

「逃げたって自覚はあったんだね」

 

 

渋谷凛が席に着く。

 

 

ーー大丈夫。

 

 

テーブルに置かれていたメニュー表を彼女に手渡して、

 

 

「何飲みますか?」

 

 

「それじゃあ……アイスティー」

 

 

メニュー表から彼女が選んだのはそれだった。余談だがこの喫茶店の紅茶はなかなか美味しいと思っている。僕は温かい紅茶の方が好みだがもちろんアイスの方も美味しい。

 

 

ついでに僕もコーヒーのお代わりを頼んで注文したものが来るのを待つことになった。

 

 

「それで渋谷さん、僕に聞きたいことって何ですか?」

 

 

単刀直入。回りくどくしていても、いずれは聞かれることだ。ならば自分から切り出した方が会話の主導権を握る事ができる。

 

 

「うーん、色々あるんだけど……まず最初に聞きたいのはその喋り方、どうしたの? もっと乱暴というか、ガサツだったのに」

 

 

「いつまでもあんな調子じゃいられませんよ。これでも働いている身ですので……僕はまだアルバイトですけど」

 

 

「ふーん。そんなもの?」

 

 

「そんなものです」

 

 

ーー大丈夫。

 

 

「何て言うか、あれだね。表情が柔らかくなったんじゃない?」

 

 

「そうかもしれませんね。渋谷さんと初めて会ったのはかなり昔ですし。あの頃はそうですね……反抗期だったもので」

 

 

「ふふ、そうかもね。いつも不貞腐れた顔してたしね」

 

 

「あはは、思い返すと恥ずかしいです」

 

 

渋谷凛は以前に、僕と出会ったのは小学校の低学年の時、と言っていた。僕の思い出してしまった記憶が確かならば、彼女に初めて会ったのは中学三年の終わりくらい、つまりは今から約七年前の出来事である。

 

 

だから僕は先日、目の前の少女があの時の幼女だとは気がつかなかったのだ。逆に彼女はよく僕だと分かったな、と冷静になってから少しだけ感心してしまった。

 

 

「渋谷さんは、高校生ですよね。何年生なんですか?」

 

 

店長が話の邪魔にならないように、そっと置いてくれたコーヒーに口をつけながら尋ねる。

 

 

「私は高一だよ。ちょっと前に入学したばっかりなのにさ、いきなり知らない人にアイドルになれとか流石に驚いたよ」

 

 

目の前に置かれたアイスティーにシロップを入れながら不機嫌そうにそう言った。武内さんの事だから何の脈絡もなく、勧誘の言葉をかけたのだろう。

 

 

「それは申し訳ない事をしちゃいましたね。でも、実際どうです?」

 

 

「……何が?」

 

 

「武内さんに……あの大きな男の人に言われたようにアイドルをやってみないか、という話です」

 

 

渋谷凛はそんな事を言われるだなんて想像もしていなかったのか、驚いていた。この少女と顔を合わせたくないとか考えていたのに、何を言っているんだと思われてしまうだろうが、もちろん理由はある。

 

 

「この話は武内さんが来てから詳しくすると思いますが、僕も渋谷さんの意思を聞いておきたいと思いまして」

 

 

武内さんが渋谷凛をアイドルにしたいと思っている以上、僕如きが阻止するなど不可能だ。可能性があるとすれば、彼女が「やるわけない」と拒絶する場合のみだが……

 

 

「別に、どうもこうもないよ。びっくりしたけどそれだけ。やるつもりもないし、そもそも私にアイドルなんて似合わないよ」

 

 

そうですか、と僕は短く返して再びコーヒーに口をつけた。言葉だけ聞くと、渋谷凛はアイドルなんぞにはならないと言っているように聞こえるが、

 

 

ーーその言葉は自分に言い聞かせているようにしか見えなかった。

 

 

人の心情を読むのは割と得意な方だと思っている僕だから気付けた、気づいてしまったのだ。喋りながらも渋谷凛の表情が僅かに曇った事に。

 

 

「……おにいさんは何も言わないんだね」

 

 

「何がですか?」

 

 

「てっきりおにいさんも私にアイドルをやれって言うのかと思ってた」

 

 

「言いませんよそんな事。アイドルの勧誘は僕の仕事じゃありませんから」

 

 

「……そっか」

 

 

それだけ言って彼女は何かを考えるように俯いてしまった。ちなみに今の僕はその考え事が何かを察して内心、息を吐いた。

 

 

ーー本当に、面倒くさい。

 

 

……なんて考えは振り払い、彼女の為を想っている言葉を発する。

 

 

「今の僕は社員ではなくアルバイトですが、仕事の内容は社員の方とそんなに変わりません。むしろ今は大きなプロジェクトのお手伝いをさせてもらっています。そんな僕から見て……」

 

 

渋谷凛は顔を上げて僕を見る。僕もまた、彼女から目を逸らさない。

 

 

「うちのアイドル達は全員、目的、目標は違うと思いますがそれぞれの夢に向かって頑張っています」

 

 

「夢……」

 

 

「いきなりアイドルになれだなんて言われて戸惑うのも分かりますが、逆に言えば滅多にないチャンスでもあります。アイドルになりたくてもなれない女の子が山のようにいるわけですし」

 

 

言いながら、念願のアイドルになる直前にその夢を奪われた誰かが頭に浮かんだがすぐに追い出した。その為、つい早口になってしまったが目の前の少女がそれを気にした様子はなかった。

 

 

とにかく、僕としては渋谷凛の意思を尊重してあげるだけ。その決断がどうであれ、受け入れよう。

 

 

……本音を言えば僕の胃の調子の為にもこの子には武内さんの提案を断って欲しいとは思うのだが、

 

 

あくまで表面上は渋谷凛を思いやってる風を装う。何て最低な人間だろうか。

 

 

「……もう一個、質問したいんだけどいい?」

 

 

「答えられる範囲でお願いしますね」

 

 

渋谷凛は考える表情から一転、真剣な眼差しを僕へと向ける。

 

 

「おにいさんは今の仕事……ああ、生活でもいいや。楽しい?」

 

 

シンプルだがその質問は僕の奥深くに突き刺さった。言葉の意味をしっかりと理解した上で僕はこう返す。

 

 

 

「はい。もちろん楽しいです」

 

 

 

ーーもう、大丈夫だ。

 

 

 

今は笑顔の仮面を張り付けたまま、こう言う事ができる。本気でそう言っているのだと疑いようのない声色と笑顔で、

 

 

「そっか。変な事聞いちゃったね」

 

 

「そんな事ありませんよ。うちの職場がキツイ環境なのは認めますし、仮に渋谷さんがアイドルになると決めたら覚悟しておく事をお勧めします」

 

 

「うわっ、一気に行きたくなくなったな」

 

 

「そう言わないでください。楽しい職場である事も事実ですから」

 

 

二人で笑い合う。前日に再開した時には考えられない程の和やかな時間。

 

 

「おにいさん、本当に変わったね」

 

 

「それは褒められてる、で良いですか?」

 

 

「うん、もちろん。昔のおにいさんも良かったとは思うけど」

 

 

ーー良い方向に変われているのならば、どんなに幸せだっただろうか。

 

 

「ふふ、それは嬉しいですね。あの時のちびっこがこんな事を言ってくれるなんて何だか感慨深いです」

 

 

「ちょっと、もうあの頃とは違うんだけど。身長だって伸びてるし」

 

 

「僕から見ればまだまだちびっこの渋谷さんですよ」

 

 

不満気な少女が何かを言おうとした時に僕の鞄に入れてあった携帯が振動した。

 

 

見ると武内さんから着信で、不貞腐れたままの少女から許可をもらって電話に出た。

 

 

『もしもし、今大丈夫でしょうか』

 

 

「お疲れ様です。大丈夫ですよ。それより随分と遅いですけどまだかかりそうですか?」

 

 

『いえ。もうすぐそちらに到着しますがまだ仕事が残っているそうなので私と入れ替わりで戻ってきて欲しいと部長が』

 

 

ふむ、本当に人使いの荒い人だ。部長のあの柔らかな雰囲気からは考えられない。

 

 

そして数回言葉を交えて通話を終了して再び携帯を鞄に入れる。どうやら武内さんの話を聞く限り、すぐそこまで来ているようなので僕はもう店から出て会社に戻っても良さそうだ。

 

 

「すみませんがこれから急な仕事で戻らなくてはいけないんです。もう少しでプロデューサーが来るそうなのでもう少しここで待っていてください」

 

 

「そっか。分かったよ」

 

 

意外にもあっさりと了承が得られたのを有り難く思いながら伝票を持って席を立つ。

 

 

「あ、お会計……」

 

 

「今日は僕が出しますよ。渋谷さんと久しぶりにゆっくりとお話できて楽しかったですし。これはそのお礼という事で」

 

 

やはり、笑顏を作れる。

 

 

もう彼女……渋谷さん(・・・・)相手でも普段と同じ様に問題なく対応できる。伝票を店長に渡してさっさと会計を済ませてしまう。

 

 

「でも、悪いよ」

 

 

「男ってこういう時は格好をつけたくなる悲しい生き物なんですから気にしないでください」

 

 

言うねぇ、と店長に茶化されながらお釣りを受け取る。見れば、テーブルに座っている渋谷さん(・・・・)も笑っていた。

 

 

「それなら遠慮なく。でも、ありがとうぐらいは言わせてよ」

 

 

「どういたしまして。それではまた、また会えるのを楽しみにしていますね」

 

 

「うん。またね」

 

 

小さく手を振ってくれる渋谷さんに頭を下げ、喫茶店の店長にお礼を言って店を出た。

 

 

店を出る直前に店長に「可愛い彼女じゃない」と茶化されたので、「あれに手を出したら犯罪ですよ」とあしらったのは余談である。あの人、あの歳で恋愛の話とか大好物なんだよな。

 

 

店を出たので頭の中を仕事へと切り替える。さてどんな仕事だろう、と考えていると、

 

 

「待って!」

 

 

背後から呼び止められた。声の主は先程まで話をしていた渋谷さん(・・・・)だった。

 

 

何だろう? 何か忘れ物でもしてしまっただろうか。とにかく、彼女の方へ振り返ろうとして、

 

 

 

 

「確か、ーーーーだったよね」

 

 

 

 

少女の言葉を聞いて僕の動きがぴたりと止まった。

 

 

「お母さんから聞いたんだけど名前、おにいさんに確認し忘れちゃって……」

 

 

ーーしまった、と思ったがもう遅い。

 

 

「間違ってないよね。お母さんも自信ないって言ってたから直接確認を……って、どうしたのさ」

 

 

動かない僕を不審に思ったのか、足音が近づいてくる。

 

 

ーー落ち着け、大丈夫だから。

 

 

足音が自分のすぐ近くまで来て、ようやくゆっくりと振り返った。僕と目が合った少女は、何故か肩をびくりと震わせた。

 

 

渋谷さん(・・・・)

 

 

「お、おにいさん……?」

 

 

渋谷凛は戸惑ったような表情で僕を呼ぶが、気に留めない。いつもの調子で言葉を紡ぐ。

 

 

「それは貴女の心の中にしまっておいてください。今の僕は会社でバイトさんで通っているミステリアスなキャラなので」

 

 

「え、えっと」

 

 

いつもの笑顔を浮かべているであろう僕とは対照的に、渋谷凛は未だに戸惑っている。

 

 

「お願いしますね、渋谷さん。それでは僕は仕事があるのでこれで……今度は346の本社で会えるのを楽しみにしています」

 

 

一方的に言葉をぶつけるだけぶつけて、僕は足早に彼女から離れた。

 

 

ーー渋谷凛のあの調子だと、あの子のお母さんは俺との約束は守ってくれているようだ。その点においては一安心する。

 

しかし、今更だが約束のついでに名前も隠しておいてもらえば良かったな。まさか再会できるだなんて思っていなかったから仕方がないのだが。

 

 

それにしても、

 

 

「名前、か」

 

 

誰に言うでもなく、呟く。

 

 

別に名前を捨てたとかそこまで格好をつけているわけではない。履歴書やら大学のテストにおいては名前を書く欄があるわけだし。

 

 

 

 

 

ーーただ、呼ばれると思い出してしまうんだ。

 

 

 

 

呼んでくれていた人を、大切な人を。

 

 

だから僕は他人に名前を呼ばせない。

 

 

こんなものは唯の我儘。そんな事は分かっている。

 

 

それでも、

 

 

「……さぁ、仕事頑張らなきゃ」

 

 

僕は気づけない。こんな事があっても気づかない。

 

 

名前だけはどうしても捨てられないと。この時に気づくべきだったのに。

 

 

今日も(ぼく)(ぼく)だけを見つめて生きていく。




今回も予定を変更してしぶりん回でした。ちょっと補足しないと読者の皆さんに伝わらない部分がありますのでそのうち書きますのでお待ちください……ごめんなさい、回りくどい文章大好きマンなんです。

それでは今回はこの辺りで失礼します。よろしかったら感想、評価等よろしくお願いいたします。


……しぶりんのお母さんとの約束って何なんでしょうね?

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