彼は仮面をかぶって生きていく   作:なんちゃって提督

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プロローグ

俺が目を覚ますと知らない天井だった。やけに白い。そして消毒液のような臭いが鼻についた。

 

 

どうやらベッドに寝かされているようで状況を確認する為に身体を起こそうとする。

 

 

「痛っ!?」

 

 

しかし腹部の辺りに激痛が走って起き上がることは叶わなかった。ベッドに倒れたまま、どうしてこうなったのか自分の記憶を探ることにした。

 

 

意識を失っていたからか、記憶が少し曖昧になってしまっている。えっと……俺の最後の記憶は……なんだったけ?

 

 

まず朝起きて、高校へ行っていつも通り退屈な授業を終えて……そうそう。放課後に担任に呼び出されて推薦入試で合格したっていう報告を受けたんだ。普段から真面目に勉強してたおかけで成績は良かったからな。俺もこれで来年から大学生かと思ったんだっけ。

 

 

すぐに母さんと……彼女にもメッセージで伝えておいた。自分の事のように喜んでくれたもんだからなんだか恥ずかしかった。

 

 

とにかく、そこそこレベルの高い私立の大学の入学が決まった俺は柄にもなく、放課後にクラスの仲の良い連中と一緒に焼肉が食べ放題の店に行って割と遅い時間まで食って騒いで。解散する頃にはすっかり真っ暗になっていた。

 

 

その後は家に帰って、玄関のドアを開けたら、

 

 

何故か家の中が真っ暗で、

 

 

何故か錆びた鉄のような臭いがして、

 

 

ーー何故かリビングに知らない人間が立っていて、

 

 

「うぁっ……!?」

 

 

ーー思い出した。

 

 

「ああっ……」

 

 

俺はその知らない人間に、

 

 

「うぇぇっ……!!」

 

 

刺されたんだ。

 

 

全部思い出した。

 

 

思い出した瞬間、気分が悪くなって吐いた。ベッドにぶちまけるという最悪の事態は防いだが、そのせいで床を汚してしまった。汚い。

 

 

思い出した。

 

 

俺は、

 

 

俺の家族は、

 

 

俺の大好きな人は、

 

 

「殺されたんだ……!!」

 

 

頭が真っ白になった。

 

 

何もかも嫌になった。

 

 

夢だと思いたかった。

 

 

とにかく暴れた。

 

 

ベッドから起き上がって部屋に置いてあった物を全てひっくり返すくらいには暴れた。

 

 

奴に刺された腹が痛んだが、気にしなかった。気にならなかった。

 

 

それどころが痛みを自覚して、これは夢なんかではないと思い知らされているようで腹が立って余計に暴れた。

 

 

しばらく暴れていると白い服を着た人間が数人入ってきて、俺を取り押さえようとしたが、俺はその連中相手にも容赦なく拳やら足やらをぶつけてやった。もう何もかもどうでも良くなっていた。

 

 

その時不意に、意識が薄れていくのを感じた。何となく腹部を触るとかなりの量の血が出ている事に気がついた。どうやら暴れ過ぎて傷が開いたらしい。

 

 

意識が薄れて立っている事も困難になり、その場に崩れ落ちた。

 

 

同時に白衣の連中が傍に駆け寄ってきた気がした。

 

 

俺は混濁する意識の中、誰かの声を聞いていたが考えていた事はたった一つだった。

 

 

 

 

――もう 死にたい

 

 

 

 

このまま二度と目を覚まさない事を祈りながら俺は意識を手放した。

 

 

 

 


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