彼らの異世界ライフ モモンガさんがやっぱり苦労する話   作:やがみ0821

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捏造設定あり。


光と闇がそなわり最強にみえる

 騎士達を駆逐した後、モモンガは情報収集に、メリエルとアルベドは村の警護ということになった。

 村へと入る段階でモモンガは嫉妬マスクをかぶり、メリエルは翼を体内へと収納する。

 メリエルが翼を体内へと収納できたことで、モモンガとメリエルは設定で書いてあれば現実化するようなものらしい、と再度確認することとなった。

 プレーヤーであっても、NPCと同じように文章で設定を入力することはできる。

 ステータスには全く何も影響しない為、完全に趣味の範囲だ。

 

 

 

「暇だわ」

 

 モモンガが情報収集の為に村長と話し込んでいる中、メリエルは暇であった。

 横にはアルベドがいるが、鎧を着ている為、色気も何もない。

 

「アルベド、何かないの? 至高の御方であるワタクシが退屈であるぞなもし」

「それでは下等生物をなぶり殺しというのは……」

「それはダメよ。娯楽を生み出すというのは最優先事項かもしれないわ……あまりに強大な力を持ちすぎるのも罪なものね」

 

 やれやれと溜息を吐くメリエル。

 

「暇だから、この村を発展させたらどうなるかなぁ」

「おそらくはこの辺りの領主に目をつけられ、奪い取られるだけかと」

「じゃあ私の軍勢を注ぎ込みましょう。泥沼の消耗戦とかゾクゾクするわ」

 

 うふふ、と笑うメリエルにアルベドは首を傾げる。

 

「恐れながらメリエル様。メリエル様の軍勢とはいったい……?」

 

 メリエルは不敵な笑みを浮かべ、ピースサインを作った。

 

「2つあるわ。1つはホムンクルスによる軍勢。こっちが主力ね。もう1つは……」

 

 そこで言葉を切り、メリエルはアルベドを真正面から見据える。

 

「宇宙でもっとも無慈悲で、もっとも強い、光の軍団よ。まあ、この身体ではそっちは使えないけれど」

 

 いつでも切り替えられるから問題ないわねー、と笑うメリエルにアルベドはその聡明な頭脳で察しがついた。

 

「……天使の、軍団? まさか、メリエル様は……」

「相反する種族だから取れないかなって思ったけど、そんなことはなかったのよ。天使であり堕天使でもあるって素敵じゃない」

 

 

 そう言った直後、見慣れぬ戦士団がやってきた、という村人の声を2人が聞く。

 

「もう面倒くさいから、超位魔法で一掃しようかな」

「それはさすがにダメでしょう」 

 

 割って入ってきたのは当然ながらモモンガだ。

 何だか嫌な予感を感じて、話を切り上げてきてみればこれであった。

 

「でもちょっと使いたかったり……ティアーズ・オブ・エデンとかドゥームズデイとか」

「やめてください。本当に。それヤバイものじゃないですか」

「やばくない超位魔法なんてないじゃないの」

 

 それもそうだった、とモモンガは思わず納得しかけたが、それでもここで使うのは問題がありすぎる。

 例えば、ティアーズ・オブ・エデン。

 味方NPC・PCをHP・MP共に完全回復(死亡含む)し、敵に対しては超広範囲致死級の神聖属性ダメージを与える。

 

 確かに、ユグドラシルでいうところの廃人プレーヤーがやってくる可能性は無きにしもあらずだが、何も今、超位魔法で確かめる必要はないのだ。

 

「じゃあ、ちょっとランクを落としてティアーズ・オブ・ムーンにしとく」

「いや……それもダメでしょう。確かに第10位階ですけど、それ、広範囲無属性攻撃ですし、村も一緒に消し飛びますよ」

「そのくらい避けれないなんて、もっと私を見習いなさい」

「皆がメリエルさんクラスになったら世界崩壊しますから」

 

 そんな会話を繰り広げる2人に対してアルベドはただただ戦慄する。

 超位魔法や第10位階魔法を使えて当然みたいな認識であることに。

 

 アルベドはより深い尊敬のこもった眼差しで2人を見つめていると、とりあえずは先方に会ってみようということで話が落ち着いたのだった。

 

 もちろん、メリエルは今回も交渉役をモモンガに丸投げしていた。

 

 

 

 

 

「見たところ、あんまり強そうじゃないわね」

 

 少し離れたところで、ガゼフ・ストロノーフと名乗った男とモモンガを見ながら、メリエルはそう言った。

 

「アルベド、あの男……ガゼフとやらを5秒以内に殺れる?」

「はい、メリエル様。勿論でございます」

「ここってあんまり強いのがいなくてつまらないわね。せめて、ヨトゥンヘイムくらいはいて欲しい。アイツも、私と引き分けた一人」

「そのヨトゥンヘイムというのは強いのですか?」

 

 問いにメリエルは困ったように、眉毛をハの字にしてみせる。

 

「……数多の軍勢の戦列を単身掻い潜って、最奥にいた私のところにきて、殴り合いして引き分けたっていえばどんなもんか分かる?」

「そのような者がいるとは……想像もできない世界です」

 

 感嘆したように溜息を吐いてみせるアルベドにメリエルは告げる。

 

「まあ、私よりも強い奴とか対等の奴はわりとゴロゴロいたのよ。昔は。今はどうなのかしらね」

 

 そう言いながら、モモンガとガゼフのやり取りを見ていると、最後にモモンガがアインズ・ウール・ゴウンと名乗って思わず彼女は目をパチクリとした。

 そして会話を終え、こちらへと戻ってきたモモンガは開口一番、告げる。

 

「この村を包囲する形で、別勢力が来ているみたいですが、協力はしないことにしました」

 

 下手に関わると面倒そうですし、と告げるモモンガにジト目をメリエルは向ける。

 

「何でアインズ・ウール・ゴウンって名乗ったのよ。ギルド名でしょ?」

「モモンガと名乗るのもアレかなと思いまして、とりあえず所属組織で……名乗って呪いとか掛けられたら面倒ですし」

 

 そういう系統の魔法もユグドラシルにはあったのでメリエルはなるほど、と納得する。

 

「とりあえずは彼らの戦闘を覗き見してみましょうか……あんまり、期待はできませんけど」

「お菓子持ってくれば良かったわ」

「メリエル様、こんなこともあろうかと……御茶会セット一式を持参してまいりました」

「さすがアルベド。私の嫁にしたい」

「く、くふー! ぜひとも!」

 

 なんだこれはたまげたなぁ、とモモンガが思いながら、持ってきたアイテム、遠隔視の鏡でもってガゼフ達の動きを観察する。

 横でアルベドとメリエルによる桃色空間が発生しているが、モモンガは努めて気にしないことにした。

 

 幸いにも事態の展開はわりと早い。

 敵はスレイン法国の陽光聖典とかいう輩で、ユグドラシルのモンスターである炎の上位天使を召喚している。

 

 あーこれ、ヤバイな――

 

 モモンガは本日何度目になるか分からない、ヤバさを感じた。

 メリエルは色々な意味でガチなのだ。

 天使なんて見たら、ヒャッハーとノリノリで虐殺しかねない。

 

 

「ここは私が出るから、メリエルさんとアルベドはここで……」

 

 待っていてくれ、と言おうとした時だった。

 メリエルがすんげえいい笑顔で遠隔視の鏡を後ろからじーっと覗き込んでいることに気がついた。

 

「これは私が出るしかないわね」

「いや、メリエルさん。あなたはやり過ぎてしまいますから……」

「私がやりたい。炎の上位天使とか雑魚だけど、天使相手となっては私がやらないと。それに、相手がもし至高天を召喚できるかもしれなかったら、どうする?」

 

 モモンガは押し黙った。

 相性的に熾天使クラスが出てきた場合、モモンガに勝ち目はほとんどない。

 たとえ、アルベドとタッグを組んでも、だ。

 しかし、メリエルは違う。

 彼女はモモンガが知る限り、唯一、善と悪に対しては最高の相性を誇っている。

 

「……分かりました。くれぐれも、やり過ぎないでくださいよ? 情報源は欲しいので」

「わかってるわよ。あ、なんかガゼフが死にそうよ。転移させたげれば?」

 

 そんなやり取りをしているうちに、ガゼフは瀕死、他の戦士達は残らず大地に倒れ伏していた。

 

 


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