彼らの異世界ライフ モモンガさんがやっぱり苦労する話   作:やがみ0821

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帝国&法国「無理」

王国「\(^o^)/」

またせたな!

年内には完結させたい(願望


終末時計の針を進めよう

「で、どうする?」

 

 どうする、と声を掛けられたモモンガはどうしましょう、と言葉を返す。

 メリエルとしてはどっちでもいい――どっちに転んでも大して影響はないと確信している為だ。

 

 ナザリックのモモンガの私室で、今2人は起こったことに対して協議をしていた。

 

 

 

 事の始まりはメリエルが数日前、王国にある屋敷に戻ったとき、帝国と法国の使節団がちょうどやってきたことに遡る。

 

 今まではルプスレギナがメリエルの不在を理由に追い返していたのだが、メリエルがいたことからルプスレギナは当然、メリエルに話をもっていき、そのまま相次いで面会したというところだ。

 

「どっちも私とパイプを作りたいみたいね」

「まあ、そうでしょうね。メリエルさんはド派手に暴れてますから……やっぱり私もそのくらいしたほうがいいんでしょうか……」

 

 冒険者生活も良いのだが、どうにも力を十分に振るえないという縛りがある。

 メリエルのようにはっちゃけでブチかますわけにもいかないのだ。

 

 そんなモモンガの心を見透かしたのか、メリエルは短く問いかける。

 

「やりたい?」

「ええ、まあ、ドカンとやりたいですね」

「欲求不満かー、よしよし、ならばあなたの初体験の相手に……」

 

 モモンガは無言で手刀をメリエルの頭に叩き込んだ。

 いたい、と声を上げるメリエルに黙らっしゃい、とモモンガは答える。

 

「セクハラはいいとして、本当にどうします?」

「そうね、デミウルゴスの意見を聞きたいような気もする。彼に任せとけばいいような感じだけど」

「いやホント、すごいですよね」

「すごいよねー」

 

 ねー、と言い合うモモンガとメリエル。

 

 とはいえ、そんなことをしていても何も始まらない。

 ある程度、統一した意見をもっておかないとダメなのである。

 

「いっそのこと、時計の針を早めてみる? 予定ではもうちょっと先だったけど、法国と帝国、その上層部に私達が仲間であることを見せつけるとか」

「あー、それ面白そうですね。どうせなら、サプライズで乗り込みますか? 定例会議とかで偉い人達全員が集まるものはあるでしょうし」

 

 モモンガは久しぶりに本来の姿で暴れられそうと思い、楽しげにそう問いかける。

 

「いいわね、それ。それと、そうね、ここは一つ、上下関係をはっきりさせる為にやっときましょうか」

 

 メリエルはそう言うと、モモンガが何かを言うよりも速く、彼に向かって跪いた。

 

「何なりとご命令を。モモンガ様」

 

 モモンガの背筋に悪寒が走った。

 これまで感じたことのない恐怖に思わず冷や汗が出たのでは、と錯覚する。

 

「……あの、やめてください。本当に洒落にならないくらい怖いので」

「えー、なによー」

 

 ぶーぶー、とブーイングを飛ばすメリエルは立ち上がって、そのままソファに座った。

 

「この私を配下にできるのよ。泣いて喜ぶと良いわ」

「絶対遠慮します。あれですか、寝首を掻くとかそういうことを企んでいるんですか?」

「いやー、別にそんなことは企んでいないんだけども。ほら、人前に出るから、モモンガに仕えている私っていうのを演出しようかと」

「やめてください、死んでしまいます。恐怖で」

「もう死んでるじゃないのよ、種族的に」

 

 あ、そうだった、とモモンガはハッと気がつく。

 

「で、まあ、練習とかしなくていい? 帝国とか法国の前でこういうことやっとかないとダメな気がする」

「あ、それ全部面倒事を私に押し付けようとしてますね? わかりますよ?」

「モモンガ様は至高のみんなを纏める至高の御方ですしー」

 

 再度、手刀をモモンガは叩き込む。

 のおお、と変な声を上げて痛がるメリエルを見て、溜息を吐くモモンガ。

 

「で、どうするの?」

「ドカンとやりたいので、デミウルゴスに話を振ってみましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石です、モモンガ様」

 

 話をモモンガがデミウルゴスに持っていったら、なぜかそんな言葉が返ってきた。

 持っていったといっても、彼がデミウルゴスを探したわけではなく、念話を飛ばして自室に来てもらっていた。

 入れ替わりになるように、メリエルは王国にある屋敷へと戻っている。

 

 えぇ、と困惑するしかなかったが、とりあえず、尋ねてみる。

 

「どの程度、理解したか、どう動くべきか、答えてみよ」

 

 支配者っぽい口調も慣れたような、慣れていないような。

 

 最初からメリエルさんみたいなキャラでやればよかったよなー

 でもなー、こういうのがいいんだよなー

 

 とかなんとか思いながら。

 

「はい、モモンガ様。まずモモンガ様とメリエル様の御二人で帝国と法国の首脳部に直接会いに行った場合ですが、相手に対して圧倒的な格上である、抵抗すらも無駄という印象を与えることになるでしょう」

「確かに」

 

 肯定し、モモンガは続きを促す。

 

「となれば当然、どこまで自分達の生存圏及び利益を確保できるかという話になってきます」

「ふむ……」

 

 抽象的な話にモモンガはちょっと困惑するが、努めて冷静に振る舞う。

 

「多少の混乱はあるかもしれませんが、許容範囲内に収まるかと」

「つまり、問題はないということで良いな?」

「はい、問題はありません。そして、その2国を押さえたということは極めてスムーズに建国ができるでしょう」

 

 デミウルゴスの言葉にモモンガはそんなにあっさりいくものなのか、と疑問に思う。

 

「王国に関してはどうだ?」

「そちらはおそらくはメリエル様が直接に動いて潰すかと」

 

 デミウルゴスの即答に、モモンガは「あー……」と何とも言えない声を上げた。

 大いにありえる話だ。

 

 ついこの前も冒険者やってるときに念話を送ってきて、王国は私の実験場にするとかなんとか言っていた。

 さっき話したときはそんな素振りは微塵もなかったが、たぶんもう頭の中に色々描いているのだろう。

 

「ただ私としては王国の、とある人物は取り込みたいと思っておりまして、メリエル様にも畏れ多いのですが、そのようにお伝えしてあります」

 

 モモンガは思わず首を傾げた。

 あのデミウルゴスがそこまでいう人間が、あの王国にいるのだろうか、と。

 

「幸いにもメリエル様も乗り気で、ついでにその友人も一緒なら、という条件付きでご協力していただくことになりまして」

「あー……少し待て」

 

 モモンガはそう言って、念話をメリエルに飛ばす。

 

『メリエルさんメリエルさん。なんかデミウルゴスが取り込みたい人物云々って言ってるんですが』

『あー、ラナーっていう王女様よ。頭脳が化け物らしいわ。中身はトチ狂ってるらしい』

 

 えぇ、とモモンガは困惑。

 

『なんでそんなのをうちに入れるんですか?』

『脅威になるんじゃないかしら? だから手元に置くと』

『なるほど。で、その友人も一緒にとかなんとか、メリエルさんが条件つけたとか言ってるんですが』

『ラキュースとは良いお友達になりたいの』

 

 モモンガは予想外の人物の名前に、何考えてるんだこいつと思ったが、ぐっと我慢する。

 るし★ふぁーとはまた別方向での問題児なのだ、これくらいは大したことないと言い聞かせて。

 

『姫騎士っていうか、そういうのの闇堕ちって素敵……素敵よね?』

 

 そういう単語を出されるとモモンガとしてもなんとも言えない。

 とはいえ、彼とて冒険者をする傍ら、情報収集に励んでいる。

 なにより、エ・ランテルでズーラーノーンを処理したとき、実際に会っている。

 

『少なくとも、簡単にそうなるような輩には見えなかったんですが、何するつもりですか?』

 

 生真面目な堅物ではなく、柔軟であり、大抵のことでは心が折れるようなタイプにはまったく見えなかった。

 ついでにいえば、彼女の周りにいたその仲間達も物理的にはともかく、精神的にどうにかできるタイプには思えなかった。

 

『そんなの簡単よ、民衆の憎しみを煽るだけで余裕』

「うわぁ……」

 

 モモンガはドン引きした。

 デミウルゴスははてな、と首を傾げる。

 

『あー、えーと、何でですか? やっぱり趣味ですか?』

『いや、そうしないと堕ちないと思うからね。ついでにいうと、ある程度の見目麗しい実力者達を集めて、コレクションしたい』

『欲望全開ですね』

『あなただって欲望全開でいいのよ。どうせ夢の続きみたいなもんなんだし』

『いや、そう言われるとそうなんですけどね……』

 

 モモンガは頭をかく。

 欲望全開と言われても、ぶっちゃけどうしていいか分からないというのが本音だ。

 

 そもそもからして、彼がリアルではYggdrasilが全てであり、それ以外に娯楽というものは無かった。

 

『ちょっともっかいそっち行くわ』

 

 その言葉と共に、メリエルが目前に現れた。

 デミウルゴスは戦慄した。

 

 何か、よろしくないことが起きたのでは、と。

 

「あー、デミウルゴス。今からモモンガに娯楽について教えるから下がってよろしい」

「畏まりました」

 

 デミウルゴスはメリエルの言葉の裏を読みながら、そそくさと退室していった。

 

「で、モモンガ。もしかしてだけど……娯楽とか知らないの?」

「……ゆ、Yggdrasilが娯楽でした。あと、アニメとか……」

 

 メリエルは天を仰いだ。

 

「し、仕方がないじゃないですか! ただのリーマンに色んな娯楽ができると思ってるんですか!?」

「あー、うん、まあ、Yggdrasilに課金してたら無理よねぇ……食事とか?」

「合成のまずいものしか生まれてこの方、食べたことがないですよ! 生まれて初めて美味しい料理を食べたのがこうなってから、人化アイテム使ってようやくなんですよ!?」

「私が悪かった。全面的に悪かった。よし、じゃあ、人生やり直しをしよう。これから毎日、あなたは三食おやつを……そうね、私が適当にメニューを料理長に伝えとくから、それ食べなさい。あんまり高級過ぎるかたっくるしいものじゃなくて、ほどほどにチープなやつのほうがいいでしょ?」

「……ゲテモノはやめてくださいよ?」

 

 モモンガはこれまでのメリエルの悪行にそっと釘を刺した。

 

「そんなことはしないわよ。あとはそうね、なんかしたいことない? 今ならこの私が全力で願いを叶えるわ」

「全力で……」

 

 うーむ、とモモンガは腕を組んで考える。

 しかし、中々思い浮かばない。

 

「もしかして、私と寝たいとか?」

 

 きゃー、と自分の体を両手で抱いてみせるメリエルにモモンガは回し蹴りを叩き込んだ。

 しかし、軽々とガードされる。

 

 露骨に舌打ちしてみせるモモンガにメリエルは頬を膨らませる。

 

「軽いジョークよ」

「勘弁してください。まあ、娯楽については考えておきます。とりあえず、冒険者生活は一時取りやめて、帝国と法国に関してはデミウルゴスも問題ないとのことでしたので、やりましょうか」

「じゃあ、やりましょう。王国に関してはちょっと色々考えているから。あ、デミウルゴス使うかもしれないけども」

「わかりました。ちなみに、何をやるつもりですか?」

 

 モモンガの問いにメリエルはにっこりと笑う。

 その笑みを見たとき、モモンガは碌でもないことに違いがないと確信した。

 

 そして、それは正しかった。

 

「王国が存続することに意味は見いだせない……つまりはそういうことよ。位置関係的にも王国は理想的……領土は広いほうがいいでしょう?」

 

 

 


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