器物転生ときどき憑依【チラシの裏】   作:器物転生

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ダンジョンマスター物を読みたいけれど、
ヒロインとイチャイチャしたり、人類と仲良くしたりするからUZEEEEEE。
ーーと思ったので自分で書いてみる。

1、仲間を作らない(知能のある味方を作らない、外部に協力者を作らない)
2、威厳のある喋り方(好意を示さない、人類と親しくしない)


人類に敵対するダンジョンマスター【幕末史】

日本より異なる世へ迷い込み、幾年ほど経ったのかを知る術はない。

人らしい肉体は失われ、もはや人としての名も思い出せなかった。

余の霊魂を留める今の器は、錆びぬ鋼の外殻だ。

白く濁った全身鎧の中身は空で、叩けば間抜けな音を鳴らす。

そこから声は出せぬものの、他者に念を伝える事は可能だった。

 

日本のあった世と違って、この世は中心に御日様の座する球体の空間だ。

余の領域は今や、天を見上げた先にある真逆の大地まで広がっている。

それらは鋼によって整地され、日光を鏡のように反射していた。

つまり余は、この世の全てを征したという事だ。

草の根まで生物を絶やし、命のない世界は完成した。

 

しかし、このまま余の領域を維持する事は叶わぬ。

もはや余の領域を広げて、資源を得る余地はなかった。

消費される資源を絶やせば、余の下僕は単なる金属の塊と変わりない。

そうなれば余の領域と共に、余の身も滅び去る事だろう。

分かった上で余は領域を広げ、そして世を滅ぼした。

 

白く濁った鋼で覆われた大地こそ、余の領域である証だ。

そこに踏み込めば空間は波打ち、真の領域へ繋がる。

四角い鋼の通路に余分な物はなく、通路は直線で交差していた。

碁盤の目状であり、真の領域の端から端まで直線で繋がっている。

真っ暗で照明は無いものの、そもそも余の下僕は明かりを必要としなかった。

 

領域の上から戻った余の足下を、最も数の多い下僕は這う。

片手の平に載る大きさの円い形で、余の指3本分の厚さしかない。

その厚さの内、指1本分は掃除に用いる吸着部分だ。

この【壱脚型】という下僕は、余の領域の掃き掃除や拭き掃除を代行する。

吸着部分と反対の面に、充電する際に用いる接触面を備えていた。

 

壱脚型の接触面へコードを繋ぎ、充電しているのは【参脚型】だ。

1つ飛ばした弍脚型は、腕のない参脚型に代わってコードを引き伸ばしている。

余の下僕は充電を欠かせないために、参脚型を人体で例えるならば血管と言える。

3つの車輪を回して移動し、コードの生えた四角い箱の後方に、荷を運ぶ容器を備えていた。

参脚型の運んだ廃物は、迷宮の核へ取り込まれ、物資を生産するために必要な資源へ変換される。

 

ヒトのように2本足で歩き、子のような大きさの下僕は【弍脚型】という。

壱脚型の掃除に余る死体や落下物を、参脚型の容器へ集める役目を持つ。

参脚型からコードを引き出して充電するために、弍脚型の腕は適していた。

この弍脚型は壊れた壁と床の補修や、余も構造を知らぬ下僕の修理を行える。

3本の棒で形作られた弍脚型の腕は、廃物を砕く程度の出力は有していた。

 

壱脚型は掃除用であり、弍脚型は修理用であり、参脚型は運送用と言える。

そして【四脚型】は獣に似て、余の領域に侵入した生物を狩る戦闘用だ。

短距離であれば、車輪で走る参脚型も追い抜ける。

しかし、四脚で走るために電力の消費は早く、長距離は途中で力尽きる事もあった。

最大の攻撃手段は口で、肉によって形作られた体ならば難なく千切り取れる。

 

脚のない下僕は【零脚型】と呼び、鋼の翼で飛び回る。

激しく羽を上下させて、さらに本体も小型なため、電力の消費は早い。

余の領域に侵入した生物を発見すると、余に信号を送る機能を持っていた。

この零脚型は資源の消費量を激増させるものの、索敵のために欠かせない物だ。

資源を用いて自身を強化した余にとって、今となっては最大の敵と言える。

 

縦横と通路を直線で伸ばした領域の中央に、1つの部屋を置いてある。

廃物を運ぶ参脚型の出入りする、あらゆる物資を資源へ変換する場所だ。

壁から生えた数多くのコードは弍脚型によって繋がれ、参脚型へ充電している。

縦穴の底に領域の核を置いたので、その機能を用いる際は下へ降りる必要を生じた。

この【領域の核】を破壊されると、余も領域も消滅する。

 

余は無機物を好み、命ある物を好まない。

最初は余もヒトであった、しかし今は鋼の鎧に過ぎぬ。

余の感知する感覚は、生命を歪な肉塊として捉えていた。

少しずつ広がる余の領域は、生物の生息できぬ世界へ作り替える。

それ故に、余と生物の対立は避けられぬ必然の事だった。


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