器物転生ときどき憑依【チラシの裏】   作:器物転生

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【あらすじ】
ゴーストスイーパーの唐巣神父と接触し、
タダオを狙う悪霊について相談しましたが、
うっかり霊力を使ったので怪しまれました。




「悪霊よ、退け! お前は私の邪魔をする者だ。主のことを思わず、人のことを思っている。悪霊よ、退け! さもなくば主と聖霊を拝み、ただ仕えよ」

 右手に持った聖水をタダオに振りかけ、左手に持った聖書を読み上げる。これが唐巣さんの除霊方法なのだろう。唐巣さんが聖書が読み上げる度に虚空から光が湧き出て、タダオの肉体に染み通る。唐巣さんは自身の力ではなく、神や聖霊と呼ばれる存在から力を借りているのだ。これならば霊を誘引するタダオの霊力を使うことなく、悪霊を除霊できる。

「立ち帰れ! 立ち帰れ! お前達の悪しき道から。お前は生きている。主と精霊は貴方の死を喜ばない!」

 唐巣さんは聖書のページを捲りつつ、そこに書かれている聖句を読み上げる。その聖句の内容から察するに、聖句の内容によって発揮される効果は違うようだ。タダオの中にいる私を除霊するために、有効と思われる聖句を選び、次々に読み上げている。

 しかし私に影響はない。痛みも何もないのだ。儀式の始まる頃は緊張していたものの、今は儀式が終わったら唐巣さんの除霊方法を学びたいと思っている。最初は正座していたタダオも脚を崩し、今は腰を落としていた。儀式が終わるまでタダオが暇そうなので、過去に見た映画のイメージを伝える。気合を入れて儀式を行っている唐巣さんには悪いと思うものの、タダオが喜んでくれたので良しとしよう。

 

「産まれた時から一つの体にいたせいで、引き剥がせないほど精神が融合しているのか・・・いや、それにしてはタダオ君と心眼君の意識が明晰だ・・・もう少し強めにやれば・・・いやいや、下手をすればタダオ君の意識が失われてしまう・・・やるにしてもタダオ君の精神が成長してからでなければ・・・しかし、時間が経てば経つほど精神が成長し、競合の起こる危険性が・・・」

 何やら除霊に失敗して落ち込んでいる唐巣さんに対して、「そんなの知ったこっちゃないね!」という感じで私は、除霊方法を教えてくれるようにタダオを通して頼んだ。すると唐巣さんは疲れた顔で「それはいいね」と言ってくれる。疲れているのに子供の我がままに付き合ってくれるなんて、唐巣さんは良い人です。

 小学校を卒業すると、いつもと同じ教師の推薦によって東京の高学力校を受験する事になる。そのためタダオは唐巣さんの教会へ引っ越し、受験に合格すると教会から通学するようになった。その事にタダオは前向きでは無かったものの、ちょっと霊気を漏らして悪霊を引き寄せてみると納得してくれた。

 どうなったのかと言うと、悪霊によって教会の扉がドンドンと叩かれたり、ドーンと吹っ飛んだりしたのだ。霊の見えないタダオは死ぬほど怖がっていた。もちろんタダオに怪我は負わせていない。引き寄せた悪霊は唐巣さんに除霊してもらったからだ。これも唐巣さんが居るから出来ることだろう。唐巣さんには、いくら礼を言っても足りない。と思って唐巣さんを見たら、タダオの中にいる私をジーと見ていた。バレテーラ。

 これまでのタダオは霊を見たことがなかった。見えないまま殺されていった。見えない何かに殺されるのは、とても怖ろしかっただろう。しかし、今回のタダオは霊と戦う準備が出来ている。それは唐巣さんの力を借りるために「タダオが霊に狙われている」と私が言ったからだ。

 もうタダオが霊に狙われている事を隠す必要はなくなった。引っ越しの一ヵ月後に現れる大型の悪霊から逃げ切るためだ。なのでタダオが訳も分からず殺される事はないだろう。ただし、タダオに霊力は無いという事になっている。私がタダオの霊力を抑えているからだ。なので私が霊の場所を探知して伝え、タダオが回避するという事になった。

 今のタダオのように、前ループのタダオに悪霊の場所を教えていれば死なずに済んだのだろう。しかし、霊が回避できる物であれば私は回避する。悪霊に狙われているという事実を知らないままタダオが生きて行けるのならば、その方が良かったのだ。ならば悪霊の存在を教えるわけにはいかなかった。

 悪霊に襲われたタダオが「助けて!」と私に叫んでも、一気に霊力を放出して悪霊を脅かす以上の事はできなかった。それを霊の数が多い東京で行えば悪霊に包囲されるので、ここでは霊力の放出もできない。今の私に出来るのは霊の位置を教えることだけだ。

 ああ・・・分かっている。何もかも言い訳だ。唐巣さんに助力を求めようと思った500回目のループまでは、タダオを霊に関わらせる必要は無いと思っていたのだ。あの犬に似た大型の悪霊さえ現れなければ・・・。

 

 東京へ引っ越して一ヶ月後、難関である大型の悪霊が教会を襲撃した。教会の壁をゴンゴンと叩く音がすると思ったら、少し前に修理された教会の扉を吹っ飛ばして、巨大な犬のような悪霊が現れたのだ。おそらく教会の壁が予想以上に堅かったので、脆くなっていた入口から入るしか無かったのだろう。もしかすると、タダオの霊力で誘引した悪霊の襲撃に懲りて、唐巣さんが教会に霊的な防御法を張っていたのかも知れない。

 悪霊が事前に壁を叩きまくってくれたおかげで、襲撃に気付いた私達は準備が整っていた。タダオは教会の奥にある部屋で隠れ、唐巣さんが広間で悪霊を迎え撃つ。なので唐巣さんが戦う所は見れなかったものの、大型の悪霊は唐巣さんによって除霊された。おかげで教会は強い地震が起きたら崩れそうな有様だ。広間に散らかった長椅子の破片を片付けている唐巣さんとタダオは大変そうだった。

 そして唐巣さんは無料で除霊をするような人なので、修理に金を使えば食費が無くなってしまう。なので中学校から帰ってくると、私の指示を受けつつタダオが教会を修理する事になった。時間があれば長椅子も作ろうとは思うものの、しばらくの間は教会に長椅子は無く、広間は空っぽのままだろう。

 

 悪霊の位置をタダオに伝える事で、タダオは死ななくなった。そこに居ると分かっていれば慌てず騒がず、反対側に逃げれば良いのだ。私のサポートがあれば楽に逃げ切れる。しかし、悪霊から逃げ回っているタダオを見ていると、これで良かったのかと疑問に思ってしまう。悪霊の存在を知らなければ、悪霊に怯えて逃げ回ることは無かったのだから。

 そうしてタダオが死ぬことなく月日は流れ、ついにタダオは中学校を卒業した。小学生の頃の思い人と交わしていた文通はタダオに恋人ができた事で途切れ、その恋人はタダオを狙った悪霊に巻き込まれて殺され、煩悩を活力として生きていると言っても間違いではないタダオは3年掛けても主や聖霊の力を借りるには至らず、霊力を使えないという事になっているタダオは、霊力を必要としないオカルトグッズしか用いる事はできず、悪霊と戦う効率的な手段を得られないまま有名な高等学校へ進学する事になった。封印符という悪霊を吸引する物もあるが、日常的に使えるような値段ではない。

「タダオ君、君の入学する高校の近くに白龍会という道場がある。ゴーストスイーパーの育成を目的とした道場だ。その気があれば覗いてみるといい」

「分かりました、唐巣先生。3年間、ありがとうございました」

「心眼君もさようなら。また会おう」

「ええ、また必ず、会いに来ます」

 お前誰だよ、と突っ込みたくなるくらいタダオは変わってしまった。唐巣さんの影響は少なくない。しかし、それ以上に悪霊から逃げ回る日々が、肉体でタダオの煩悩を満たしてくれた恋人を悪霊に奪われた事件が、タダオの精神に傷を付けて歪に成長させてしまったのだ。霊に関わらせなくないと思っていた私の、不安通りになってしまった。やはりタダオを霊に関わらせるべきでは無かったのだ。

 私にとっては生温い3年間だった。肉体を持たない私は唐巣さんと接触できない。タダオの内から唐巣さんを見ている事しかできない。出会った時以上の関係になることはなく、出会った時以下の関係になることもなかった。あいかわらず私が霊力を放出すると、唐巣さんはタダオの中にいる私を見てくれる。しかし、それ以上の関係になる事はなかった。ああ、どこからか破滅の足音が聞こえる。

 

(なあ、心眼。オレ、お前の記憶を頼りにするのは止めようと思ってるんだ)

 入居した学生寮でタダオは、その意思を私に伝えた。なぜだろう、理解できない。そんな事をすればタダオは生きていられない。私が答えを教えたから、タダオは良い点数を取ることが出来たのだ。その私が答えを教えなければ、これまでのように満点を取ることは出来ない。天才と言われたタダオは、何もできない凡人に落ちる。我欲を禁じている唐巣さんの影響を受け過ぎたから、そんなバカな事を考えるようになってしまったのだろうか。

(ひでーな。そんなにオレは頼りないのか? まあ、そうだろうな。惚れた女を巻き込んで、目の前で死なせたオレだ。確かに頼りねー。

 だから、お前に頼るのを止めるんだ。お前に甘えたままじゃ、いつまで経っても一人立ちできない。お前が要らないって訳じゃないんだ。お前が嫌いになったって訳じゃないんだ。ただ甘ったれな自分が許せないだけなんだ。

 お前はオレに甘いからな。つい頼っちまう。それじゃダメだって、そう思ったんだ。だから心眼、オレは自分の足で立てるようになりたい)

 要らないのでは無いとタダオは言う。しかし、タダオが私に頼らないのは、私にとっては要らないと言われたに等しい。一人立ちしたいと言うのは、自分の足で立てるようになりたいと言うのは、私の力を借りないという事だ。ああ、分かっていない。タダオは何も分かっていない。御主が私を否定するという事は、自分自身を否定するという事なのだ。

(大げさだな。悪霊の探知は御前の仕事なんだから、全く頼りにしない訳じゃないだろう。お前が居なかったら、とっくの昔にオレは死んでいたさ)

 互いに依存しなければ、御主と私は生きて行けない。片方が一人立ちすればバランスは崩れ、台無しになってしまう。どうか止めてくれ。このままで私はいたいのだ。御主のために私は存在しているのだ。それなのに御主に頼られなくなれば、私は存在する理由がなくなってしまう。

(心眼、お前も一人立ちしなくちゃいけないんだよ。自分の存在理由や行動原理を他人に丸投げしちゃいけないんだ。何もかも他人のためじゃなくて、自分のためにしなくちゃいけない。理由を他人に任せていれば、自分の進みたい道を見失ってしまうんだ)

 タダオのくせに分かった風な口を利くな。御主に何が分かる。私と違って愛され育った御主が、何を偉そうに説いているのだ。お前も一人立ちをしろだと? さんざん私に頼っておいて、今更そんな事を言うのか。自身にとって都合の良い時に限って依存を止めるなど勝手なことだ。自分は依存しておいて、私は依存するなと言うのか。

(おいおい・・・お前だって好い歳だろ。もう、そんな歳じゃねーんだよ)

 バカな事を言うな。私が何歳だと言うのだ。合計3000歳ほどか・・・いや、こんなことを言っても御主は分からないだろう。何しろ御主には言っていないからな。さきほど私が好い歳と言ったな。まさか御主と同じ歳だとでも思っていたのか。そんな事はない。そんなはずが無いだろう。まだ私は、この世に産まれてすらいないのだぞ。まだ私は御主という母体の中から、生まれてすらいない。どうして私を産んでくれなかった。なあ、母よ。

(初耳だー! オレが母親だなんて聞いてねーぞ、心眼! だいたい、産まれるのが怖いとか何とか言ってたのは御前じゃねーか!)

 母というのは物の例えだ。しかし、親であることに違いはない。私にとって御主の父と母は祖父と祖母だ。とは言ってもアレを祖父や祖母と思ったことは無い。私にとって最も大事なのは御主だ。御主以外の生物は、どうなっても良いと思っている。なにしろ御主は私の母体なのだから。

(いや、それは嘘だろ。つい最近まで唐巣さん唐巣さんって先生に御執心だったじゃねーか。お前は自分を見てくれる人が欲しかったんだろ。オレ以外で最初に自分の存在を信じてくれたから唐巣先生を好きになったんだ。刷り込みみたいな物だな。でも、オヤジとオフクロは最初に信じてくれなかった。だから子供の頃、自分のことを誰にも話さないようオレに忠告したんだろ)

 そうだな。そうかも知れない。きっと御主の言う通りなのだろう・・・もういい。ばーかばーかきらいさいてー。タダオなんて知らない。テストで0点とって皆に見放されてしまえば良いのだ。ああ、昔は「好きです」とか「お姉ちゃんみたい」とか言って可愛かったと言うのに、どうしてこんな変わり果てた姿になってしまったのだろう。月日って言うものは残酷だ。

(うるせー! それは言うんじゃねー! お前が頭の中で唐巣さん唐巣さんって唐巣先生を呼んでる時、どんだけオレが微妙な気分だったか分かってねーだろ! 気分は姉の恋人が中年の親父だった事を知った中学生じゃ!)

 私は寝るのだ。起こさないで欲しい。

(いつだったか忘れたけど、寝る必要はないって言ってたじゃねーか!)

 あー、あー、聞こえないなー。

(そうかよ。じゃあ、少し黙っててくれ)

 私が黙っているとタダオは電話を掛けた。相手はタダオの両親だ。これから会いに行くことを伝え、タダオはバッグに荷物を詰め始める。しかし、私の記憶によればタダオの両親は外国にいるはずだ。タダオが掛けた電話も何気に国際電話だった。いったい何故、両親へ会いに行くのだろう。嫌な予感がするものの、初めての事なのでタダオの行動が読めない。

 タダオは飛行機を予約し、外国へ渡った。滑走路だけで待機所すらない飛行場で、タダオは両親と再会する。とは言っても、タダオの父親が海外へ転勤したのは最近で、タダオは少し前に両親と対面して別れの挨拶をしていた。まさか両親も、タダオが海外まで会いに来るとは思っていなかっただろう。タダオが両親に会うのは、それほどの用事ということだ。

「心眼の力に頼りたくないって言ったら、心眼が愚図り出したんだ。心眼が居ないとオレは凡人だとか、オレに頼られなければ存在する理由がないとか、オレは依存しておいて自分は依存するなと言うのかとか、この世に産まれてすらいないとか、どうして産んでくれなかったとか、オヤジとオフクロは親じゃなくてオレが母親だとか、オレ以外の人間なんてどうなってもいいとか・・・どう思う?」

「子供だな」

「子供ね」

 なんという外道だ。これが人間の遣ることか。タダオの両親の前で、それを言うとは思わなかった。タダオの両親の言った子供という感想が、私の心に突き刺さる。恥ずかしくて、苦しかった。しかし、なぜ私は恥ずかしいと思っているのだ。なぜ私は苦しいと思っている。タダオ以外の人など知った事ではないと言うのに、なぜかタダオの両親の言葉は私の心に傷を付ける。

「やっと本音を言ってくれたな。ずいぶん時間が掛かったもんだ」

「心眼、あんたも私達の子供なんだよ」

 そう言ってタダオと両親は抱き合う。こやつらは何をやっているのだ。そこに私は居ないと言うのに、御主達と同じ場所に私は居ないのだ。両親の温もりを感じるタダオの感覚を共有しているものの、私が抱き締められている訳ではない。抱き締められているのはタダオであって私ではない。

「仕方ないだろ。御前に体はないんだから。ちゃんと欲しいって言わなかった御前が悪い。だから今はこれで我慢してくれ。日本に帰ったら唐巣先生と相談して、御前の体を作ってやるから。唐巣先生に頼んでもダメだったら、オレが御前の体を作ってやる。いつか御前が一人で立てるように、オレが助けてやる。これまで御前がオレを助けてくれたようにな」

 簡単に言うな。唐巣さんに出来ない事が、御主に出来るものか。霊力も何もない御主には何もできない。そもそも御主から私を分離する必要があるのだ。それは唐巣さんにも出来なかった事だ。3年の間に何度、唐巣さんが私の除霊を試みたのか、御主は知っているだろう。

「心眼が協力してくれれば、意外に簡単かも知れないぜ」

 そんな訳はないと思っていると、タダオから思念が伝わってきた。タダオは私が霊力を抑えていると気付いているのだ。私が霊力を放出すれば、簡単に行くと思っている。それは違う。私が霊力を抑えているのは、タダオの霊力が霊を引き寄せるからだ。儀式の間に霊力を放出しても、悪霊の群れに取り込まれるだけだろう。

 しかし説明しなければ、このバカ者は分からない。そうしてタダオの霊力について伝えれば、タダオは悪霊を自身の目で見たいと思うだろう。自身に霊力があれば戦うことだって出来るかも知れない。そうなれば、さらに私を必要としなくなる。記憶に頼らず、霊力に頼らず、最後は私に頼らなくなる。ならば霊力を放出する訳にはいかない。それに、恋人を殺されたのだから、タダオは悪霊と戦おうとするだろう。それはタダオによって最良の未来とは言えない。

(心眼は霊力を抑圧してるんだろ。それって霊力を圧縮して防護壁みたいにしてるって事なんじゃないか。だから唐巣先生の儀式じゃ、お前に干渉できなかった)

 そんな訳はない。霊力が防護壁のようになっていたのならば、悪霊の干渉も防げたはずだ。下級魔族も退ける実力を持つ唐巣さんの力で、私に干渉できないはずがない。逃げずに済むほどの防御力が自身の体にない事は、悪霊から逃げ続けた御主も良く分かっているだろう。

(唐巣先生は、オレの体や魂に悪影響が出ないよう手加減してただろ。心眼に干渉できなかったのは、たぶん唐巣先生の出力不足だ)

 そんな事やってみなければ分かるまい。ああ・・・やってみなければ分かるまい。己の墓穴を掘ったか。分かった。良いだろう。それがタダオの望みならば、それを私は叶えなければならない。好きにするといい。私は御主のために存在しているのだから、御主の望みを叶えよう。

(お前が叶えるんじゃない。オレが叶えてやるんだよ)

 タダオと両親は共に食事を行い、翌日にタダオは飛行機で日本へ向かった。しかし、その途中でタダオの乗る飛行機は、空を飛ぶ巨大な妖怪の内部に取り込まれてしまう。悪霊ではなく妖怪だ。まさか時速1000キロで雲の上を飛んでいる飛行機が襲われるとは思わなかった。

「ぎゃー! このままじゃ死んでまうー! いやじゃー! 妖怪の腹の中でグズグズに溶かされて死ぬなんて嫌じゃー! そうだ! おい、心眼! 霊力を出せ!」

(ここならば霊力を放出しても悪霊は寄ってこないだろう。しかし、霊波によって光るだけだ。驚かせるだけでダメージも何も与えられない。むしろ妖怪の栄養になるかも知れぬぞ)

「そんなのやってみなきゃ分かんねーだろ! いいから、やれー!」

 やれと言われたのならば、やらねば成るまい。私はタダオの霊力を放出した。その瞬間、タダオを中心に衝撃波が広がる・・・いや、違う。これは結界なのだろうか。タダオを中心として広がる球のような物が現れた。それは飛行機の座席を人ごと壁に押し退けて潰す。

 退けられたクッションが破れ、骨組みの金属が潰れた。人の体は始めに骨が折れ、次に肉が潰れて中身が飛び出す。それらクッションの綿や金属の破片、骨の破片が刺さった人の肉片を引き連れて、球のような物は飛行機の壁を内側から圧し破った。

 機体が割れてバラバラになる。さらに球のような物は広がり、飛行機を丸飲みにした巨大な妖怪の体を押し退けて風船のように膨らませた。ゴムのように伸びた妖怪の体は一瞬だけ耐えたものの、限界を越えて破裂する。そして球のような物が消えると、宙に浮くタダオと空気だけが残った。

「のわー!」

 しかし、ここは高度1万メートルだ。飛行機を失えば、地面に向かって落ちていくしかない。さきほどの現象には驚いたものの、これは無理だろう。いや、地面に衝突する寸前に、もう一度霊力を放出すれば・・・と思っていたら空間が歪み、とても言葉では言い表せない形容し難いものが現れた。それを見たタダオの思念は意味不明な怪電波を発信し、私の思念に応えなくなる。何事かと思っていると、意味不明なタダオの思念と共に、タダオの記憶が私に流れてきた。まるで、死に瀕した時に見えるという走馬灯のようだ。

 どうやらタダオの霊力は、外宇宙の怪物を呼び寄せてしまったらしい。やはりタダオの霊力は封印するべき物だと再確認する。あんな物が出てきたら、視界に入れただけでタダオが発狂してしまう。そうして落下するタダオの体は怪物と接触し、肉体の死と共に私も死んだ。

 

<503回目>

 また私は産まれた。いいや、そうでは無い。この世に産まれたのはタダオだ。これから両親に抱き上げられるのはタダオであって、私ではない。私はタダオの中から、タダオの人生を見上げることしか出来ないのだ。タダオの得た物はタダオの物であり、私の得た物は何もない。

 しかし、タダオは私を「外へ出してやる」と言った。タダオの両親は私も「自分の子」なのだと言った。私は人であることを許されたのだ。タダオのために生きる必要はないと説かれたのだ。そうして私は、ここに居る。何度も繰り返した人生、その全ての始まりの場所へ再び戻ってきた。

 やはり分からない。誰も知らない。私の気持ちなど分かっていない。それは当たり前の事だ。繰り返している事を話さなかったのは私なのだから。では、繰り返している事を話したら、タダオの両親は何と言うだろう。それでも人である事を許されるのだろうか。それでも自分達の子なのだと認めてくれるのだろうか。

 例えば私が生まれたばかりのタダオを殺し、タダオに成り代わったとしても許してくれるのだろうか。タダオの道具ではなく人として生きようとするのならば、タダオを殺そうとするのは当然の事だろう。自分の体を取り戻そうとするのは当然の事だ。なぜならば、それは私の体なのだから。

 1つの肉体に2つの心は納まらない。互いを人だと認め合えば、殺し合う以外に道はないのだ。もしもタダオが私と同じように肉体を動かせず、感覚を共有する存在であれば、私を取り除こうとするだろう。感覚を共有するばかりに肉体の素晴らしさを知り、肉体の操作権を持つ者を羨ましいと思ってしまうからだ。それは誰だって同じだろう。私と同じ環境を体験すれば、誰もが同じように行動するに違いない。

 親から受ける愛情も、親友と交わした友情も、恋人と重ねた愛情も、タダオの物ではなく私の物だ。タダオの体は私に与えられるべき物なのだから、タダオを殺したとしても許されて良いはずだ。私は奪うのではなく、取り戻すのだ。それでもタダオの両親は、私を許してくれるのだろうか?

 ・・・そんな事は有り得ない。私は存在を許されない者だ。許されてはいけない者なのだ。その存在を認めてしまえば、あらゆる非道を行うだろう。もはや今さら、人である事など出来ない。人生の始めにタダオを殺さず、タダオを生かす事を選択した時点で、私の人生は行き詰ってしまったのだ。

 それでいい。そう在るべきだ。そうあれかしと私は、私に言い聞かせる。私は道具でいい。タダオのために最良の未来を引き当てるための道具で良い。それ以上の物であってはならない。己の欲求に従って不相応な高望みをすれば、全てが台無しになってしまう。今さら在り方を変えることなど出来はしない。

 

 さあ、503回目の人生に備えよう。

 私ではなく、タダオの人生に。

 

 

 

loop number 502 → 503




<if タダオの霊能力>
 私は人であっても良いのだ。私は人であることを許された。タダオのために生きる必要はないと説かれた。私を知る者は、私に我慢する必要は無いのだと言う。ならば、私は自由になっても良いのだ。誰にも何にも囚われる事なく、私は私のために人生を始める。善も悪も構わず、私の思うままに生きる。
 まずはタダオの霊能力を使ってみよう。そう思った私は霊力を放出し、赤ん坊のタダオに思念を伝える。放出した霊力に霊が引き寄せられようと、私の知った事ではない。今まで出来なかった事なのだから、今やらなければ意味がないのだ。それでタダオが死んだとしても、また繰り返せばいい。そんな事よりも、今やらなければ後で後悔するに違いない。
 赤ん坊のタダオに伝えた思念は、光で出来た剣状の物が自身の体に突き立つイメージだ。タダオは産まれたばかりで動物のような思考だったため、簡単にイメージを受け入れてくれた。そのイメージを自身が考えた物だと錯覚しているのだ。そうして、私の伝えたイメージ通りにタダオの霊能力は発現する。
 放出された霊力が空中で剣状に集積し、赤ん坊であるタダオの体を突き刺した。タダオは痛みに泣き叫ぼうとするものの体に力が入らず、ビクンビクンと震える事しかできない。タダオの肉体を通して、近くにいた人々の叫ぶ声が聞こえるような気がした。しかし聴覚の精度が悪くて、上手く聞き取れない。タダオを突き刺した剣状の霊力は形を崩し、大きく開いた傷口から血が噴き出る。そんな痛みに耐えられるはずもなく、赤ん坊のタダオは死んだ。
 おそらくタダオが成長すると、剣のような物が自身を傷付けるイメージを恐れるようになる。そうして、自身を傷付けるイメージは拒否されるだろう。しかし、タダオが赤ん坊の今ならば、私のイメージを伝えるだけでタダオの霊能力を発動できる。もちろん、タダオの霊力を放出していなければ使えないものの、霊力の操作権は私にあるので問題ない。
 410回目のループで霊能力を使うために、図書館で調べ物をした事がある。その時タダオが夢中になっていた『暗黒魔闘術』という本に「裏暗黒魔闘術を使用するためには強靭な魂と、それを加工する強い精神力を持つ魂」が必要と書かれていた。それを私は霊能力に言い換えて「強靭な魂の発する霊力と、それを加工する強い精神力を持つ魂」が必要なのかも知れないと例えた。そしてタダオの霊力が十分にある事から、私は私の精神力が足りないと考えたのだ。
 これは今思えば逆だった。なぜ逆に例えたのか。きっと無意識の内に、タダオを己よりも下に置きたいと思っていたのだろう。強い精神力が必要なのはタダオで、私は加工される魂の役割だったのだ。私が霊力を放出し、それをタダオが加工する。前回の人生で飛行機ごと妖怪を退けた力が発動したのも、条件が揃っていたからだ。つまり、どんなに私が霊力を放出しても、タダオの意志がなければ霊能力は使えない。
 ならば、私の思う通りに体が動くように、タダオを人形として育てよう。私が霊力を放出し、私の意思で能力を使うのだ。人形として育てるのに失敗した時は肉体を殺し、リセットされた次の人生で遣り直せばいい。何度でも何度でも、私は遣り直す。私にとって最良の未来を引き当てるために。

<if その後の御話>
――エセ心眼は魔導書である。
魔導書に記録されているため、記憶は劣化しない。
――タダオも人生を繰り返している。
しかし、赤ん坊の脳では記憶できず忘れている。
妙神山の修行で、影法師として肉体をエセ心眼は得るだろう。
肉体を得た心眼は、悪意と同じだけの愛情を込めてタダオを愛す。
このエセ心眼の元となったのは、GS試験で消滅した心眼だ。
しかし、今さら心眼であるとは認められず、小竜姫のキスで生まれる心眼を殺す。
心眼としての知識だけを奪い、己の糧とするだろう。

遅かれ早かれ、神族のヒャクメによって、エセ心眼が人生を繰り返している事は暴かれる。
だからルシオラという魔族を失った時、タダオはエセ心眼に繰り返すことを願うのだ。
そうして何度も繰り返す度に、エセ心眼という魔導書は力を増して行く。
やがてタダオは、自身が魔導書であると知ったエセ心眼と契約を交わす。
タダオも記憶を維持できるようになり、やがて魔神を越えるほどの力を手に入れるだろう。

しかし其れは、また別の機会に・・・。

<if デモンベイン>
 タダオは高等学校を途中で退学した。学歴に傷が付くという教師の言葉に耳を貸さず、同級生に落伍者と笑われながら高等学校を去る。その後、町の外れに横島探偵事務所を開き、近隣住民の抱えるトラブルを解決する探偵となった。
 探偵と言っても、やっているのは家電製品や水道管の修理ばかりだ。これは神父の教会に住んでいた頃に磨かれた技術が役立っている。一日一食の食費に困る貧乏探偵だったものの、近隣住民が野菜や残り物をタダオに差し入れていたので死ぬ事はなかった。
 真夜中に近い時間、タダオは自宅である横島探偵事務所へ帰り行く。電灯を取り替えようとして天井から外そうと試みたものの、外し方が今一つ分からず、電灯が宙吊りになってしまい、タダオに助けを求めた近隣住民がいたのだ。駆け付けたタダオは電灯を住民に代わって取り替え、その御礼として握り飯という晩御飯を手に入れた。
「・・・退け! 避けるのだ!」
 握り飯を口に詰めていたタダオは、少女のように可憐な声を聞く。自分に向かって言われているような気がしたものの、辺りを見回しても人の姿は見当たらない。町外れの住宅区では車通り以前に人通りが少なく、明かりが消えて真っ暗な住宅も多かった。どこから聞こえたのかと考えつつ、握り飯を飲み込んだタダオの上に、人が降ってくる。
 それは少女だった。腰まで伸びた薄紫色の髪、ささやかに膨らんだ胸と尻、そこまでならメインヒロインとして活躍できるほど美しい少女で済んだのだが、その少女の顔に目は一つしか付いていなかった。一つ目少女とでも言うのだろうか。新緑のような翡翠の輝き、それを秘めた瞳が、下敷きにしているタダオを見つめる。
「バカ者め! なにをキョロキョロしておった!」
「ひぃー! 堪忍やー! 出来心やったんやー!」
 一つ目の少女に怒られ、反射的にタダオは謝る。軟体動物のようにニュルリと少女の体の下から抜け出し、自身の両手で少女の脇を持って立たせると、少女の正面に回って素早く土下座する。あまりの速さに目が追い付かなかった少女は、言い知れない気持ち悪さを覚え、土下座をしているタダオの頭を、ついつい踏んでしまった。
 それも仕方のない事だ。下敷きにしていたはずの青年が自身の背後へ消えたと思ったら、後ろから両脇に腕を差し込まれて体を持ち上げられ、驚いて後ろを振り向いたら姿は無く、どこに行ったのかと思ったら正面で土下座していたのだ。とりあえず、これ以上ヘタな動きをされないためにも、タダオの頭を押さえるのは良い判断だろう。
「ちぃ! 御主のせいで追い付かれたではないか!」
 庭もプールもない住宅地に不釣合いなリムジンが急停車した。黒い覆面を付けた男達が下車し、日本では輸入すら禁止されているはずのマシンガンを構える。流れるような早さで銃撃体勢が整った事から、銃器を使い慣れている事が察せられた。それを目に映したタダオの体は考えるよりも早く逃走を選択し、素早く少女を抱き上げる。どこぞのエセ心眼によって霊力の脈動を阻害されない限り、このタダオという男の第六感は尋常ではないのだ。
「ちくしょー! ブルジョワめー! リムジンで乗り付けた上に物騒な物を持ち出しやがってー! せっかく他人の歯形が残ってない飯に有り付けたと思ったら、こんなオチかー!」
「バカ者おろせ! 放さぬか! このままでは防げぬ!」
 障壁を展開しようとした少女だったが、タダオに右へ左へと揺さ振られて意識が遠くなる。このままではマシンガンから放たれた無数の銃弾に2人は貫かれると思われたものの、少女を抱えたタダオは銃弾の隙間を縫うように回避した。
 とても人間とは思えない。それを証明するかのように、銃弾を回避するために稼動するタダオの全身は、上半身と下半身が「く」の字に曲がったり、脚が直立しているのに胴体が真横へ曲がったりと、人体として認識できないほどの体勢を可能としていた。もしも抱えられている少女がタダオの姿を見れば「吹き飛べ、外道が!」とか何とか言って、タダオを地平線の彼方へ吹っ飛ばすだろう。
「Heeey!There boy!It is girl please for me!DO NOT THINK!」
 銃弾から逃げ切ったタダオと少女の前に、大型バイクに乗った白衣の男が立ち塞がる。バイクのエンジンをブンブン言わせながら、落ち着きなくエレキギターをクルクルと振り回す白衣の男は、タダオに向かって英語の文法に似た名伏し難い言語で「その女の子くれよ!(意訳)」と話しかけた。しかしタダオは聞き取れなかったため困惑する。
 次の瞬間、「吹き飛べ、外道が!」という少女の声と共に吹っ飛ばされ、白衣の男は地平線の彼方へ消えた。
「くっ・・・あまりのキチ○イっぷりに、うっかり力を使い過ぎたか・・・」
 少女の顔から血の気が引いていく。「やはり術者なしでは・・・」と言い残して少女は気絶した。この意味不明な事態は何なんだ・・・と頭を抱えたタダオは、とりあえず少女を抱っこして自身の探偵事務所へ運ぶ。まさかマシンガンを持った連中が走り回っている場所に、少女を置いて行く訳にはいかない。
 抱っこした少女の肌から表面の柔らかさと深部の硬さ、人肌の温かさと湿り気を感じながらも、けして下心は無いとタダオは自身に言い聞かせる。いつも寝床として使っているソファーに少女を降ろすと、気絶していた少女は意識を取り戻した。
「おっ、気付いたか」
「ここは?」
「オレの事務所だよ。ここまで来れば安心だろう」
「・・・御主が、私を?」
「ああ、白衣の男が吹っ飛んだ後、急に倒れちまったからな」
「そうか・・・礼を言おう・・・ん?」
 一つ目の少女は起き上がり、タダオに顔を近付ける。翡翠色の一つ目が目前に迫った。思わず視線を下に逸らすと、小さく張りのある少女の胸が見えてしまい、慌てて右に視線を逸らすと、少女の背に付いている一対の羽のような物が見える。その羽はパタパタと動いていた。
「御主・・・冥い闇の匂いがする。魔術師か?」
「ちがうんやー! ワイはロリちゃうんやー!」
 冥い闇の匂いと言われても身に覚えが・・・と思ったタダオだったが、さきほど見た少女の胸を思い出してしまう。これがオレの冥い闇か!と思い立ち、柱にガンガンゴンゴンと額を打ちつけた。タダオが否定したので勘違いか?と思った少女だったが、タダオの首筋に自身の顔を近付け、クンクンと匂いを嗅いでみる。少女の息が首筋に掛かり、タダオを苦しめた。その様を見て、少女は妖しく笑う。
「なるほど・・・生まれつきか。魔との親和性が高いのだな。妖に好まれそうなタイプだ。どうりで一つ目の私を見ても怖がらないわけだ。それどころか気になるのだろう?私の体が。私を見ていると、御主の胸が高鳴るのだろう? より強い魔に、魔は惹かれるものだ。御主と私の出会いは必然であったか。
 しかし・・・そうか。本は持っておらぬ、と。それは良い。見たところ御主は、かなりの資質を秘めておる」
「HAHAHAHAHA!You are good hide!However, I am GREEEEEAT GENIUS!Doctorrrrr WEST!You are DO NOT DECEIVE, It is impooooossibility!」
 いい雰囲気を前触れもなく打ち破ったのは、さきほど空へ消えた白衣の男の大声だった。窓から外を見ると、横島探偵事務所は黒い覆面を付けた男達によって包囲されている。マシンガンを持った数十人の武装集団に対して、タダオは何とか逃げ出そうと身を伏せて床を這った。さきほどと変わらない調子の少女が、そんなタダオに声をかける。
「御主、名を何と言う」
「ん?タダオだ。横島忠夫。そう言えば名前を聞いてなかったな。お嬢ちゃんは何て名前なんだ」
「アルだ。アル・アジフ。私は御主と契約する」
 床を這っていたタダオの顔を、少女の手が包んだ。少女はタダオに顔を近付け、タダオは必死に逃れようと試みる。しかし、床を這っていた体制が悪かったため、残念なことに逃げ切れなかった。その時、神か何かに導かれたかのように雲の切れ目から、魔の象徴である月が垣間見える。近くの窓から青白い月の光が差し込み、タダオと少女を闇から浮かび上げた。
 唇が触れ合い、暗闇に光が生まれる。その真っ白な光はタダオと少女を飲み込み、横島探偵事務所の窓から光が放たれた。それを見た白衣の男は「いかん!撃てぇぇぇ!」と号令を下すものの、放たれた銃弾は光に絡め取られて、空中で動きを止める。その光の中で、アルと名乗った一つ目の少女はタダオに告げた。
「ヨコシマタダオ。我が名をしかと心に刻み込め。我が名はアル・アジフ!
 アブドゥル・アルハザードによって記された最強の魔導書なり!」
 そうして魔導書と契約して魔導師となったタダオは、何者も寄せ付けぬ力で敵を撃退した。しかし、ドクターウェストの持ち出したビルよりも大きな破壊ロボにより、横島探偵事務所はミサイルで木っ端微塵になって、タダオも地面の崩落に巻き込まれる。その後、地下に広がっていた秘密基地っぽい地下通路をタダオは探索し、人型のロボットを発見した。これ幸いとアルが接収もとい強奪し、タダオはロボットに搭乗する。その名をデモンベイン、魔を断つ剣と云う。

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