器物転生ときどき憑依【チラシの裏】   作:器物転生

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原作名:Fate/stay night
原作者:TYPE-MOON


【憑依】カリバーン【Fate】

完全な体が欲しい。

痛むこともなく、苦しむこともなく、病むこともなく、老いることもない、完全な体が欲しい。

そう願った妾が手に入れたのは、長剣に分類される剣であった。

 

 

この身は黄金の剣となり、何者かの墓石に突き立っている。

これまでに数多くの人々が妾の柄を握り、この身を引き抜こうと試みた。

しかし妾を抜くことは叶わず、残念そうな表情を浮かべて人々は引き下がる。

 

何となく妾は感じていた。

アレも違う、コレも違う、望む物には届かない。

妾の使い手として、相応しい者は一人も居なかった。

 

次の挑戦者は、金の髪と緑の瞳を身に持つ少年だ。

人々の輪から進み出た少年は、美しい装飾の施された柄を握る。

その時、「剣が抜けないように施されていた魔術」が解除された事を、妾は感じ取った。

 

……なるほど、この少年か。

たしかに悪くはない。これまでの人々に比べると段違いの適正だ。

しかし、最高の使い手ではないと感じた。肉体は万全でも、精神は合わぬだろう。

 

『Artoria, ut eam diligentius considerare coram te iterum sumam eam.

 Quod tangere non est semel gladium.

 Si erit vobis ultra quam humana』

 

ローブを被った魔術師っぽい男が語りかける。

その言葉に少年は頷き、聞いた覚えのない言語で言葉を返した。

しかし妾に翻訳機能は付いていないらしく、何を言っているのか分からぬ。

 

それなりに重い妾が持ち上がる。

見た目に反して、少年は意外に力があるようだ。

純粋な肉体の力だけではなく、魔力を用いて肉体を強化している事を感じ取れた。

 

少年は妾を引き抜き、頭上に掲げた。

少年と黄金の剣を指差し、人々は驚きの声を上げる。

人々の歓声を受け、今この瞬間に何かが始まったのだと、妾にも分かった。

 

伝説が始まったのだ。

この少年を主人公とした伝説が。

少年の使う剣として、その伝説に妾も加わる事となるのだろう。

 

ふむ……。

さきほどから思っていたのだが……。

もしや、これは、アーサー王が選定の剣を抜く場面なのではないか?

 

妾は握っているのはアーサー王か。

そして王を選定する剣こと、妾はカリバーンだ。

そして、さきほどチラっと登場した魔術師っぽい奴が、マーリンであろう。

 

なぜか剣に意識を放り込まれたものの、

カリバーンのように名のある剣ならば、悪くはないのかも知れない。

王であることを証明する剣なのだから、クズ鉄のように使い捨てられる事はないはずだ。

 

……いいや、待てよ。

たしか、カリバーンは「折れた」のではなかったか?

折れたから代わりに「エクスカリバー」を妖精から貰った、という話を聞いた事がある。

 

うむむ、これは問題だ。

妾が折れたら、どうなるのだろう?

少なくとも、折れない方が良いに決まっている。

 

「Audio vocem de gladio」

 

アーサー王が魔術師に話しかけた。

妾を指差し、次に耳の辺りで手をフリフリしている。

これは……もしや、心の声もとい思念が伝わっているのかも知れぬ。

 

『こっち向いてアーサー!』

『妾は此処にいる……!』

『オンドゥルルラギッタンディスカー!』

 

アーサー王がビクッと体を震わせた。

ちょっと刺激が強かったらしく、アーサー王の手から妾は滑り落ちる。

選定の剣を落としたアーサー王に対して、魔術師は不思議そうな表情を浮かべた。

 

「Tuum est actus!」

「Innocens ego sum」

 

突然、アーサー王が怒り始める。

状況から察するに、魔術師の悪戯と思われたようだ。

話の内容は良く分からないものの、魔術師は「(´・ω・`)知らんがな」という顔をしている。

 

すまぬな、メイガスよ。

謝る気は無いが、御主は妾のために犠牲となって欲しい。

神の祝福を受けていない魔剣と思われて、アーサー王に捨てられるかも知れぬからな。

 

言葉を交わす手段は後回しにするのだ。

さきほど感じたアーサー王の思念は、聞いた覚えのない言語となっていた。

これではアーサー王が日本語を覚えない限り、妾と思念を交わす事は出来ぬだろう。

 

さて、アーサー王はブリテンの王となった。

そうは言っても、世襲の疑いがある選定に納得しない者達はいる。

各地の王(自称)だ。その王達は連合を組み、アーサー王を袋叩きにしようと企んだ。

 

勝つのは世襲か、もしくは実力主義か。

首都を取り囲まれ、アーサー王は逃げ道を塞がれる。

籠城するべきか悩むアーサー王は、魔術師ことマーリンの助言を受けて出陣した。

 

アーサー王は馬に乗り、戦場を見渡す。

選定の剣である妾は、アーサー王の腰に差されていた。

とは言っても妾は飾りだ。アーサー王の主な武器は、従者の持った槍となるだろう。

 

「Utere Gladius regis」

「Numquid non infestum?」

「Certus」

 

魔術師もといマーリンが、アーサー王に話しかけた。

すると、凛々しい表情を保ったままアーサー王は、妾を鞘から抜く。

しかし、「嫌だけど仕方ないから抜いている」という感じの思念を、妾は受け取っていた。

 

どうやら妾は、アーサー王に嫌われているらしい。

王である事を証明する剣なのだから、大切に扱うべきであろう。

ちょっと変な思念を発するくらいは、広い心で受け止めて欲しいものだ。

 

「Ego doceo Britanniae rex!」

 

アーサー王が何やら叫ぶ。

そして、黄金の剣である妾を、勢いよく振り下ろした。

すると前方に見えていた敵集団の上半身が真っ二つになり、一斉に倒れる。

 

敵集団は横長い戦陣を組んでいた。

アーサー王の不思議な攻撃によって、その中央に大きな穴が開いたのだ。

敵集団は死体の山で分断され、そこは巨大な斬撃を振り下ろしたかのような有様だった。

 

戦闘開始の号令でもあったアーサー王の一撃で、戦場が動き出す。

アーサー王の力を見た味方の兵達は、勢い付いて敵の陣形を食い破った。

アーサー王の力を見た敵方の兵達は、混乱を治め切れないまま食い尽くされてしまった。

 

「Quid est rei?」

「Ego tamquam maledictionem」

「Est maledictio!?」

「Mane frigus. Gladium non maledicebat」

 

何やらアーサー王が慌てている。

魔術師が止めなければ、今にも妾を捨てそうな勢いだ。

妾が察するに、さきほどの斬撃は予想外の物だったのだろう。

 

一振りで軍を半壊させたのは、妾とて予想外だ。

現代と違って、この時代は不思議な力が当たり前のようにあるのだろうか。

とは言うものの、アーサー王に心当たりが無いとすれば、あの斬撃は妾の力なのだろう。

 

光の速さで攻撃したのか?

いいや、それならば味方にも当たっていたはずだ。

さきほどの攻撃は味方を擦り抜けて、敵兵に限って着弾した。

 

察するに、「攻撃対象の選択」といった所だろう。

単純に考えれば「選定する剣」だから、「選択する能力」が付いていると思われる。

特長としては、距離を無視して攻撃できる事と、複数の個体を一度に攻撃できる事か。

 

便利な能力ではないか。

それなのに騎士王は、妾の何が不満なのか。

まさか王を選定する剣である妾が、魔剣だとでも思っているのだろうか。

 

……例えば、聞き覚えのない言語で声が聞こえる。

相手の言語を理解できなければ、不気味な声が聞こえるとしか思わぬだろう。

ああ……うむ……それは剣が呪われていると思っても、不思議ではないのかも知れぬな。

 

そんな訳で鑑定を行うため、妾は魔術師に預けられた。

剣の柄に接触した指の先から、魔術っぽい何かで、妾は全身を探られる。

とりあえず気持ち悪かったので拒絶すると、魔術師の指は妾を擦り抜けてしまった。

 

それに驚いたのか、微かに顔の筋肉を動かす魔術師。

どうやら指が擦り抜けたのは、魔術師にとっても予想外の現象のようだ。

その後も魔術師は頑張って触れようと試みるものの、妾に干渉する事はできなかった。

 

魔術師は、妾を移動させる事すらできない。

ふふふ、困っておるのぅ。どんな魔術も、妾には通じないようだ。

道具として他人に使われるだけかと思っていたが、使い手を選ぶ権利はあるらしい。

 

やがて魔術師は部屋を出て行った。

そして騎士王を連れて戻り、黄金の剣である妾を握らせる。

一度握ってパッと、妾を捨てるように放すと、2人は悩ましい表情で話し合いを始めた。

 

「Oportet te habere Gladius regis」

「……Non habent electionem」

「Gladius regis gladium, aequalis expectabo」

「Illud commisi」

 

騎士王と魔術師から不穏な気配を感じる。

まさか妾を見限って、新しい剣を用意しようと考えているのではないか?

妾を抜いて一年も経っていないというのに気の早い連中だ。そんなに妾が怖いのか。

 

……まあ、捨てられても構うまい。

この「選定する力」があれば、熱い溶鉱炉に放り込まれても問題なかろう。

それに妾は王を選定する剣なのだ。妾を求める者達は、山のように存在するに違いない。

 

「その時」は、騎士王の子供が生まれた後に訪れた。

騎士王のお気に入りだった新人騎士が、他の騎士に殺されたのだ。

とは言っても、仇討ちのためとはいえ、最初に斬りかかったのは新人騎士だった。

 

騎士王は怒り、殺した騎士に斬りかかる。

妾を振り上げ、無防備な騎士の背中を斬り付けた。

それは、決闘によって罪の有罪・無罪を問う騎士らしからぬ行いだ。

 

本来ならば剣が折れていた所だろう。

騎士らしからぬ行いによって、カリバーンは折れるのだ。

その後、騎士王はカリバーンの代わりに、エクスカリバーを持つ事となる。

 

しかし、ちょっと待って欲しい。カリバーンは妾なのだ。

後ろから斬りかかった騎士王が悪いのであって、剣である妾は悪くない。

使い手の扱いが悪いせいで、妾の身を折られてなるものか。悪いのは騎士王だ。

 

だから妾の刀身は、騎士を傷付けない。

黄金で形作られた妾の刃は、自然と相手の体を擦り抜けた。

それだけではなく騎士王の手からも擦り抜け、妾は地面に転がる。

 

そんな妾に対し、騎士王はカッと目を見開いた。

今まさに殺そうとした相手の事を忘れ、選定の剣を凝視する。

震える手で妾を掴もうとするものの、騎士王の手が柄を握ることは叶わなかった。

 

幸いな事に、その場にいるのは騎士数人だ。

駆け付けた魔術師は騎士達から記憶を消すと、選定の剣に土を被せて隠した。

呆然としている騎士王を連れ去り、それを終えると、疾風の如き速さで戻ってくる。

 

そして魔術師は、一夜で墓を作った。

固めた土に載せられた重い石は、選定の剣である妾の墓標だ。

妾の姿は見えないように覆い隠され、秘密を暴かれないように強い魔術を掛けられた。

 

ふふふ、こんな事で隠し通せるはずがあるまい。

妾が折れたのならば、「アーサーの力に耐え切れなかった」という言い訳も出来ただろう。

妾を拾うことが出来れば、「剣に墓を作る」という不自然な事をする必要もなかっただろう。

 

言い訳も証拠隠滅もできはしない。

誰よりも強く、騎士王は実感しているに違いない。

ああ、騎士王よ。御主は王ではないと見なされたのだ!

 

見ろ、騎士王よ!

剣の墓を探るように見つめる騎士達の視線を、妾は感じ取れるぞ。

どこぞの妖精から新たな剣を頂こうとも、妾の墓を無かった事にはできない!

 

妾の墓を見る度に、人々は疑いを強めるのだ。

「アーサーは選定の剣を抜けなくなったのではないか」と。

「次の王が生まれないように、選定の剣を埋めたのではないか」と。

 

繁栄の影で、衰退の準備が整っていた。

疑惑の種は撒かれ、静かに芽吹きの時を待つ。

それは冬季に咲く花だ。ブリテンの終わりを告げる者が、偽りの墓を暴いた。

 

「……Rex sum……Factus sum Rex……!」

 

魔術師ことマーリンの死。

その影響で弱くなっていた魔術を破り、彼は妾に手を伸ばす。

選定の剣である妾は自然と彼を受け入れ、王に選ばれた彼は妾を手に入れた。

 

正体を隠すために、彼は兜を被っている。

しかし妾には、その下にある素顔を感じ取れた。

騎士王に似た可愛い顔の彼は、騎士王の息子モードレッドだ。

 

「Respice! Patrem! Me electum!

 Dixisti "Rex non digna"! Ligula! Ligula! Ligula!

 Non ex eo quod Rex, reperiri noluisti!」

 

何やら声を荒げるモードレッド。

騎士王に対する怒りと憎しみを、彼は吐き散らす。

さきほどの感情を妾が頑張って解析した所によると、次の通りだった。

 

母モルガン「貴方は近親相姦によって生まれた不義の子です。こっち来んな」

モードレッド「俺がアーサー王の息子だって? そいつは良い事を聞いた」

 

モードレッド「俺は貴方の子なので、次の王は俺ですよね」

父アーサー「何を言っている。お前は王の器ではないし、息子とも認めない」

 

モードレッド「え?」

モードレッド(モルガンの子だから、尊敬していたアーサー王に俺は嫌われている・・・)

モードレッド(まさか俺が円卓の末席として扱われているのは・・・)

モードレッド(アーサー王の陰謀か!?)

モードレッド(アーサー王に認めて貰おうと、今まで俺は努力してきたが・・・)

モードレッド(……いいぜ! そっちがその気なら、殴ってでも俺を認めさせてやるぜ!)

 

という訳で、モードレッドは騎士王に対する反逆を決意したらしい。

そうして以前から怪しいと思っていた墓を暴き、選定の剣である妾を手に入れた訳だ。

その時、妾が折れている訳でも、魔力を失った訳でもない事に、モードレッドは気付いた。

 

妾は騎士王の疑惑を裏付けする証拠となる。

人前でモードレッドが黄金の剣を掲げれば、騎士達はハッと目を見開いた。

すでに選定の剣は騎士王の下には在らず、モードレッドを新たな王と定めたのだ。

 

『アーサーは選定の剣を抜けなくなったが、

 その事実を告げず、王で在り続けるために選定の剣を埋めた』

 

騎士王の誇りは、騎士王自身の行いによって汚された。

人々の信じる騎士王が失われた事を、モードレッドは人々に告げる。

ブリテンの王としてモードレッドは、王位に縋り付く死者を滅さなければならない。

 

モードレッドは兵を率い、騎士王を迎え撃った。

その腰に差されているのは、黄金の剣である妾だ。

しかし、騎士王から届いた和議に応じ、モードレッドは騎士王の下へ向かった。

 

「Arthurus, Vos potest trahere gladio?」

 

交渉の行われる中、モードレッドは妾を地面に突き刺す。

何が始まるのかと思いきや、妾の前に進み出たのは騎士王だ。

騎士王は凛とした表情を変えないまま妾に手を伸ばし、迷いなく妾の柄を掴む。

 

スカッ

 

……しかし、掴み取る事は叶わなかった。

騎士王の手は妾の柄を擦り抜け、決して交わる事はない。

その場を重い沈黙が支配し、そのまま誰も動けなくなってしまった。

 

「……HAHAHA……HAHAHAHAHAHA HAHAHAHAHAHA!!!!!! 」

 

突然、モードレッドが笑い始める。

騎士王の無様な姿に、耐え切れなかったのだろう。

尊敬していた父の哀れな姿を見て、モードレッドは爆笑していた。

 

しかし、モードレッドは喜んでいない。

妾に伝わってくるのは悲しみの感情だけだ。

モードレッドの中で、何かが空っぽになってしまったらしい。

 

それはアーサーに対する感情か。

きっとモードレッドは失望してしまったのだろう。

モードレッドの憧れであったアーサーの哀れな姿に、絶望してしまったのだ。

 

アーサーを殺すだけならば、簡単な方法があった。

アーサー王の和議を受け入れず、妾を一振りすれば良かったのだ。

それを行わなかったのは、アーサーに対する期待を捨て切れなかったからだろう。

 

壊れたようにモードレッドは笑い続ける。

そんなモードレッドに対して、騎士王側の兵士は怒りを覚えた。

敬愛する騎士王に対する侮辱に耐え切れず、その兵士はモードレッドに切りかかる。

 

モードレッドは笑いながら兵士に斬られた。

それでも声は止まらず、血塗れのモードレッドは笑い転げる。

剣を抜いた兵士にモードレッド側の兵士は怒り、呆然としている騎士王に斬りかかった。

 

まあ、後は言うまでもあるまい。大乱闘の始まりだ。

騎士王は瀕死の状態で運び出され、どこかへ去っていった。

モードレッドは妾の側で、愉快な表情を浮かべたまま死んでいる。

 

戦闘が終わり、後に残されたのは死体の山だ。

数え切れないほどの死体の山によって、大地は埋め尽くされている。

空も赤く、地も赤く、地平線も赤く、まるで地獄のような風景に変わり果てていた。

 

大怪我を負ったアーサーは死ぬのだろうか。

まあ、あの様子では生き残っても王としては在れまい。

「ブリテンの王」は命を落とし、これよりブリテンの衰退が始まるのだ。

 

それから数日たった。

死体を漁る盗賊っぽい人々が、妾に触れようと試みる。

しかし、その手は柄を擦り抜け、妾を掴むことは叶わなかった。

 

やがて人々の死体は骨となる。

それでも妾は地面に突き立ったままだ。

なので、近くにいる虫の様子を観察して楽しむ事にする。

 

多くの血を吸った大地は栄養に満ちているのか。

雑草が勢いよく生え、その陰に数多くの人骨は隠された。

戦場の跡は緑に覆われ、モードレッドだった物も大地へ埋もれる。

 

その側で、墓標のように妾は突き立っていた。

時々、僧侶っぽい2人組が訪れ、妾に向けて祈る。

祈られているのは妾か、それともモードレッドなのだろうか。

 

そして、ようやく妾を運ぶ物が現れた。

神父っぽい服装の人は、清潔な布で妾を包む。

その扱いが気に入ったので、妾は運ばれてやる事にした。

 

ああ、今さらだが……、

さらばだ、最も新しきブリテンの王モードレッドよ。

妾は朽ち果てぬ身ゆえに、二度と会うことは無いであろう。

 

選定の剣は、海の見える教会へ運ばれた。

そこで妾は大切に保管され、長い時を過ごす事になる。

次に妾の使い手が現れるのは、1500年ほど先の未来だった。

 

 

「まさか本当に伝説の聖剣を見つけてくるなんて……傷一つない。

 これが1500年も前の時代の発掘品だって?」

「これ自体が一種の概念武装ですもの。

 物質として当たり前に風化することはないのでしょうね。

 それに1500年も経った今も、持ち主以外に触れる事すら許さないなんて」

 

「これだけ縁の品として完璧な聖遺物があるなら、

 間違いなく召喚に応じるのは目当ての英霊になるだろう。

 伝説の騎士王アーサー・ペンドラゴンだ」

 

なんだ、Fate/zeroではないか。

ところで、そこのカップルよ。一つ忠告してやろう。

妾を触媒にすると、おそらく召喚されるのはモードレッドだぞ。

 

おーい。

……聞こえぬのか。

妾は知らぬ。知ーらーぬーぞー。


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