ウルトラマンが、降ってきた   作:凱旋門

52 / 99
四十八話 勝利/Alien balbalu

「セヤッ!」

 メビウスはセブンにもういい、と視線を送ると、タイラントに向かって構える。

 これは彼の戦いだ。彼だけの。

 メビウスは跳躍してタイラントに飛び蹴りをくらわせる。タイラントをそれを受けて数歩後退し、その隙にメビウスはタイラントを殴る。それは決して素早いものではない。一発一発に怒りを込めてぶん殴る。

 しかしタイラントも黙っておらず、鉄球のような左手をメビウスに降り下ろす。だが、メビウスはそれをかわそうともせず、そのまま胸で受け止めてみせた。まったく動じず、どうやらきいていないようだ。そんなタイラントにメビウスは強パンチをくらわせる。するとタイラントはまたも数歩後退した。

「ハァァァァ……」

 メビウスは低い声とともにメビュームブレードを出現させる。しかしそれは今までのメビュームブレードとは違う。薄く炎を纏っている。

「ハッ! セヤッ!」

 メビウスは、今度は素早いスピードでメビュームブレードを使い、タイラントにこうげきする。タイラントも負けじと右手のバラバの鎌でそれを防いでいくが、リーチの長さがつ違う。徐々に追い込まれていったタイラントは鉄球からエースを葬ったワイヤーブレードをメビウスの左腕に巻き付けた。そしてそのまま再びメジャーのように引き寄せようとする。しかし、メビウスも負けていない。ワイヤーブレードを両手で掴んで逆に引きちぎろうとする。

「フンッ!!」

 メビウスはワイヤーブレードを掴み、そのままそれをぐるぐると回す。タイラントがエースにやったことをそのまま返してやってのだ。

 メビウスはタイラントを地面に叩きつけ、その後にワイヤーを引きちぎった。

 しかしタイラントはすぐに立ち上がってメビウスに向かってくる。

 メビウスは胸の前で両手を×に交差させ、その時に右手をメビウスブレスに被せるようにする。するとメビウスの体はたちまち紅蓮の炎に包まれる。そしてそのまま両手を数学の弧を描かせるようにあるところまで持っていき、一瞬静止させる。そして拳をギュッと強く握る。そして両手はそのままゆっくり腰の横にもっていき、そこで空手のポーズをする。

「セヤァッ!!」

 メビウスはそのまま手を前に押し出した。そこから放たれた赤い炎の球体はまっすぐこちらに走ってくるタイラントへと宙を翔る。

 オレンジの火球が町を飛ぶ。

 地面を抉り、雨を蒸発させる。

 タイラントにはそれを避ける時間などなかった。赤い球体はタイラントに激突させると、周辺のビルごとその存在を蒸発させる。その時の衝撃波は凄まじいもので、爆心地から五十m離れたところにあったバスすら吹っ飛ばした。

 爆発の後、そこに広がっていた光景は巨大なクレーターのように削れた道路と、破壊されて何がなんだかわからなくなったビルの瓦礫だった。タイラントの姿は、肉片は、そこから完璧に存在を消していた。

 メビウスはただそこに立ち尽くす。そしてしばらくの後、セブンに何か悲しそうな視線を送ると、その姿を消した。

 

 火星。

「ヘアァッ!」

 ゼロはゾフィーの姿をした偽者に対してエメリウムスラッシュを放つ。偽者のゾフィーは空を低空で飛んでそれから逃げていく。エメリウムスラッシュの緑色の細い光線が、逃げるゾフィーを攻撃しようとして地面をガリガリと削る。

 と、次の瞬間だった。

「死ねぇ!!」

 今までずっと逃げていた偽者のゾフィーがくるりと振り向いてこちらに腕をLの形に組んでM87光線をうってきたのだ。突然のことに逃げるだけの時間はなく、ゼロは慌ててワイドゼロショットを放つ。

 二つの光線がぶつかり合い、衝撃波を発する。それは地表の砂を巻き上がらせ、また、仮死状態で転がる二人のウルトラマンの体をずりずりと移動させる。

「くっそおおおおおおお!!」

 ゼロは苦しげに叫ぶ。

 それはふと見たら両者の力は互角に見えた。しかし、よく見るとゼロの方が若干押されぎみだ。そして数秒もするとゼロは押し負けて吹っ飛ぶ。

 火星の大気圏外に追い出されるが、すぐに体勢を立て直すとまた火星に向かって飛行する。しかし地上1万mほどででゼロ静止してはキョロキョロ辺りを見渡す。どこにもゾフィー(ババルウ星人)の姿がない。

「どこだ……」

 と、ゼロの真後ろの空間にワームホールが開き、そこからゾフィーの姿をしたババルウ星人が飛び出してくる。突然のことにゼロは対応できず、その方向を向くことはできたがそのままババルウに体を掴まれて地面に叩きつけられる。

 しかし二人ともまだ立ち上がれる。二人は接近戦に突入する。

「ダァッ!」

 ゼロの素早い攻撃をゾフィー(ババルウ星人)は受け流す。そして逆に右腕のカッターで切りかかる。ゼロはそれをすべて寸前のところで避けていく。しかし、右腕だけに気をとられたのが間違いだった。ゼロが予想もしていない左腕の強烈なパンチを受けてゼロは吹っ飛んでしまい、地面に仰向けになる。

「あ? そんなもんか、ウルトラマンゼロさんよ」

 痛みのあまり倒れたまま立ち上がれないゼロにゾフィーは数百m離れたところからそんなことを言う。そして次の瞬間にババルウ星人は本来の姿に戻る。

「お前にはゾフィーの姿で葬るよりももっといい姿がある」

 そう言うと、ババルウ星人の姿はまた変わっていく。その途中でゼロは立ち上がる。しかしふらふらだし、カラータイマーも赤く点滅する。意識も朦朧としていたが、ゼロはその姿を見て意識がはっきりすることだろう。

「どうした? お前の親父の姿だ」

 そこにいたのは真っ赤な色をして、頭にアイスラッガーを着けた戦士。ウルトラセブンだった。

 グツグツと何かが体の中で煮えたぎる。尊敬する親父をバカにされた気持ちが爆発しそうだ。よりにもよってこんな奴に親父の格好をされて、ゼロが平気でいられるはずなかった。

「うおおおおおおおお!!」

 何の考えもなしにゼロは走る。怒りに身を任せて。

 セブン(ババルウ星人)はニヤリと笑った。

「死ねぇ!! ゼロォォォォォッ!!」

 素早く両手を水平に真横に出し、その後、パワーをためる。プロテクターにまがまがしい光が吸い込まれていく。そして両手をLの形に組んでネオ・ワイドショットを発射する。

 まがまがしい光の粒子の粒たちが、ゼロに降りかかる。とっさにゼロは両手で体を庇おうとするが、そんなものに意味はない。ゼロに光線が直撃し、エネルギーがごりごりと削られる。

 しかし直後体が解放され、ゼロはその場に膝を着いた。何があったのかと顔をあげると、そこにはエネルギーがきれて動けないはずのエースがいた。

 エースはゼロの前に出て、サークルバリアで光線を受け止めていた。

「フゥゥゥゥンッ!!」

 気合いを入れるかのようにエースが言った。

 エースのカラータイマーは少しだけ光を取り戻していた。気合いかなにかだろうか。

 しかしババルウ星人にそんなことは関係ない。光の粒子はエースのバリアを、体をガリガリとむしり取っていく。まるで銃弾のシャワーだ。

「エースッ!」

 ゼロが叫ぶ。

「俺は大丈夫だッ! お前は逃げろ!」

 苦しそうな声でエースが言う。

「大丈夫なわけ――」

「俺をあまく見るなッ! ……お前はこれからのためにも生きろッ!!」

 バリアがまるでガラスのように豪快に破壊された。

 エースはそれでも体全身で光線を受け止めている。しかしそのエネルギーは凄まじく、次の瞬間には強力な光のエネルギーがその場を飲み込んだ。

 地球を守れ。俺たちの愛した地球を守れ。最後にそんな言葉が聞こえたような気がした。




 ※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。